こころナビ

Q-X 製作


某鬱ゲーで鬱になり、某グロゲーに辟易し、しばらくそういうのは勘弁してくれという気分に落ち込んでいた俺が癒されたいと思い選択したのはこの「こころナビ」

別に強烈な泣きも、感動も、萌えも、何も期待していませんでした。
唯一気になっていたのは攻略対象ヒロインに実妹フィンランド人がいるということくらい。

次に何かやるまでの場つなぎ、その程度の認識で始めた「こころナビ」

ただそれだけで終わるのか、それとも意外な面白さを発揮するのか。
それではレビューのはじまりはじまり。

<ストーリー>

今からほんの少しだけ未来の世界。
そこでは、IRISというシステムによって、ラウンダーと呼ばれるキャラクターを使ってインターネットを巡回することが流行っていました。

主人公今関 勇太郎もそれを楽しむ一人。
自らの通う学園での、進学のことしか頭にないクラスメイトたちに嫌気がさした彼はその反動としてインターネットにのめりこむ毎日を送っていました。

そんな彼の元にある日届いた差出人不明のメール。
「恋をしよう!! 幸せになろう!!」と書かれた怪しげなメールの添付ファイルを開いてしまったからさぁ大変。


魔法のブラウザ「こころナビ」で勇太郎はどんな出逢いをするのでしょうか?
どんな風に、恋を感じるのでしょうか?
(メーカーサイトより一部引用)


とまあこんなお話。
ありふれた学園物エロゲーに少々のSF設定ををプラスした感じです。

SF設定はよくある「電脳世界」ですが、上述の仮想人格"ラウンダー"を使っているというところが普通と違うところですね。
何かしらの手段(ありがちなのでは首にコードつなぐとか)で意識のみをネット上に上げるのではなく、あくまでも"ラウンダー"を操作しているだけ。

おかげでネット上で知り合った"ラウンダー"のマスター(実世界で操作している人)は気になるあの娘、などといったシチュエーションが実現しています。

あと、魔法のブラウザとか自分で言っている時点で既に察しが付くかもしれませんが上述のSF的設定は実にご都合主義な物なのでそういう点で期待しても無駄です。
・・・そんなところで期待しているの俺くらいかもしれませんが。


と、設定談義はこれくらいにして話全体について述べるとしましょうか。

このゲームは、一言で言えばネットジャンキーで引きこもりな主人公の更正物語。
手を変え品を変え各ヒロインのシナリオで語られる「人と触れ合うのは楽しいことなんだよ」「恋をするのは素敵な事なんだよ」という事をメインテーマにヒロイン達との出会いによって成長する主人公はなかなか素敵です。

言っている事自体は物語のテーマとしては使い古されたものなのですが、全編に漂うのんびりというかまったりというか独特の雰囲気のために不思議とくどくは感じませんでしたね。


お話の構造はよくある「前半共通ルート→好感度で個別ルートに分岐」なんですが、個別ルートの入り方が主人公(というかプレイヤー)に任されているというのはなかなか珍しいのではないかと思います。
具体的に言うと告白する相手を選択肢で選ぶんですけど。

おかげで絶対に成功しない告白に主人公を突き進ませる事も可能です。
あまりにも不毛なので俺はやりませんでしたが。
あと、実妹シナリオ入るためのここの選択肢の文章は面白すぎ。


別に物凄く感動したり、泣けたりする訳でもなく、フォント特大で「○○萌え〜」とか叫びたくなるほどキャラが魅力的なわけでもなく(一部除く)、ギャグや掛け合いで爆笑できるわけでもない。

それなのに終わった後には何故か悪い気はしないのですよね・・・
やはり前述の全編通して流れる独特の雰囲気のせいではないかと。


でも、なんで実妹なんだろ?

<キャラクター>

今関 勇太郎

主人公。ネットジャンキーの引きこもり(一応学校は行ってますが)
進学のことしか考えないクラスメイト達に嫌気が差し、インターネットの世界にのめりこむ。

・・・家に帰ってきて最初にやることがPCの電源を入れることとか痛いんですけど。
序盤のネットジャンキー生活はヲタの皆さんには身につまされる部分もあるかと思います。
少なくとも俺はやっててちょっと辛かったです。
名前と彼がWeb内で使うハンドルネームは変更可能なのですが、俺は戯れにHNを「a-park」に変更して(名前はそのままでした)やってみたらa-park君とかa-parkさんとかa-park様とか連呼されて実名プレイより恥ずかしかったです

以下ヒロイン達。
紹介の気合の入れ方が違うのは仕様です。

今関 凛子

主人公の実妹
兄をしのぐほどのインターネット中毒にして、弱みを見せないクールな態度で周囲を煙に巻く少女。
基本的に人が嫌い。特に男が嫌いで「恋愛なんてくだらない」と思っている。

おいおい、兄妹そろってヒッキーかよ。
というか兄以上です彼女。
主人公は一応学校に行っている(そうしなきゃ話進みません)のに対して凛子が学校に行っている描写は俺の覚えている限りでは皆無。真正だよこの人。

エロゲーの妹キャラというのは基本的に「お兄ちゃん大好き(はぁと)」的性格付けのことが多いですがこの人はまさにその正反対。

凛子シナリオ以外で恋人が出来て浮かれる主人公に対して「兄ちゃんウザイ」「ニヤニヤしててキモイよ」などとのたまってくれたのはある意味感動ものでした。

倉持 小春

主人公の隣の家に住んでいる1才年下の幼馴染。
明朗快活なスポーツ少女。寝起きが悪いので毎朝主人公に起こしに来てもらっている。

まぁ、あれだ。よくある明るい幼馴染キャラ。それ以上でもそれ以下でもなし。
むしろ特筆すべきは個別ルート入ってからの主人公の無駄に積極的な姿です。
彼女が出来て浮かれるのはわかりますが、いくらなんでもあれはちょっと引きました。

妹に「キモイ」とか言われてるのも納得ですよ。

アイノ=ペコネン

フィンランド人の少女。北欧の住人なのに寒さが苦手。
人見知りがちな自分の性格を直そうとサイトを開設したところで主人公と(Web上で)出会うのだが・・・


人見知りを直そうとしてネットに走るって何か根本的なところで間違っている気がするんですけど(笑
シナリオの展開上フィンランド人である必要性はほとんど感じませんでした。というか外国人である必要すら。
アイノは日本語話せますし、カルチャーギャップも無し。
あれなら別に東北や北海道の人でもよかったんじゃないでしょうかね(暴言)

あと、フィンランド人のエロゲーキャラなんてこの人くらいだろと思い調べてみたところ意外にいるんですよね。
どうしちゃったんだフィンランド。

初瀬 みまり


近所の神社の巫女さん。おっとりした見かけによらず人の気にする事でもズバッと言う。
霊感が強い上に、そういった心霊関係の話が大好き。
Webの中でも、そういうサイトを開き、何かやっているらしいが…?


でも怖がり。
お店で最後の一つになった商品に手を伸ばしたら隣からも手を伸ばされ、そちらを見たら気になるあの娘というシチュエーションはこの手のお話の定番ですが、この人と主人公はハードディスクの安売りでそれをやってくれるダメ人間っぷりは見てて笑いました。

仲手川 夢

本人はつっぱってるらしい、勘違い不良のクラスメイト。
一生懸命ワルぶっているが、どこか空回り。
部として認められていない飼育部を存続させるため、一人で頑張っている。

うーん、微妙・・・
つっぱてる理由とか、動物好きなところとかが一応語られるんですが個別ルート入ってからは凄い駆け足で進まれてあっけにとられている間に終わってしまった感じでした。
Web上で知り合ったラウンダーの中身は実は・・・というのも個別ルート入った直後に明らかになってしまうので意外感も無し。
もう少し何かあればなぁ・・・

ルファナ

Web上でだけ出会う謎の少女。
誰のラウンダーなのか、そもそもラウンダーですらないのかも全く不明。
主人公と何かしら過去に関わりがあったらしいが・・・


「○○でしか会えない」「素性は全く不明」「主人公は忘れてしまっているが過去に何かしら関わりがあった」等のどこかで見たような設定。
えてしてこういうエロゲーキャラにありがちなように彼女も能天気な不思議ちゃん系です。
ルファナシナリオでは「こころナビ」の成り立ちや目的について語られますが、凄いSF設定を脳内で考えていた(Web上のラウンダーの集合無意識が生み出した恋愛を通して人間の感情についてデータ収集するプログラム、だろうと思っていました)のに全然たいしたことなくてがっかり。

上でも書きましたがそういう話ではないので期待しても無駄だということですね。
それにしても、「こころナビは心の綺麗な人にしか届かないんだよ」が比喩じゃなくて本気で言っていると知ったときは正直驚いた。

<グラフィック・音楽>

グラフィックは普通のかわいらしい絵柄で誰にでも受け入れられるものなのではないかと思います。
正直それ以上の細かい上手下手は俺には判断できません。

CGが各キャラ12枚と少ないうえにそのほとんどをHシーンで使ってしまっているため日常シーンのCGが少し足りない気がしました。
しかし、立ち絵のバリエーションが豊富で台詞にあわせてかなり細かく変化させてくれるのはよし。


音楽は26曲+Vo曲2曲。
特にどうということのないよくあるエロゲーサウンドとでも言うべき曲たちなのですが、一部やけに耳に残る曲がありました。
総合してみれば可もなく不可もなくというところ。

またこのゲームパートボイスなのですが、各キャラの登場時とHシーンくらいにしかしゃべらないので全プレイ時間の7割くらいはボイス無しで進みます。
おかげで唐突にしゃべられてかなりびっくりすることがしばしばでした。
あれならボイス無しでもいいんじゃないかとやってて思いました。

<システム>

各種操作がウィンドウ上部のメニューバー(Windows標準のあれです)からしか操作できないちょっと古臭いシステムです。
機能としてはスキップあり(既読のみ)セーブ数は20箇所、名前変更可能、回想系はCG、音楽、Hシーンともに完備。
特に不便はないのですが、(欲を言えば未読スキップがあればよかった)妙にCPUパワーを食うのが難点といえば難点ですね。

<総括>

まさに可もなく不可もなくといった作品。
やっている最中はその独特のまったりした雰囲気に当てられそれほど悪くはない(というかむしろ気持ちいい)のですが、終わった後までそれが継続してしまうというか、あんまり心に残らないのですよ。

文章や設定は悪くないと思うのでもう少しなにか工夫があれば一気に面白くなったと思うんですけどね・・・

あ、でも凛子は非常に素敵でした。世の「妹キャラ」の真逆を行くあの言動はなかなか面白かった。
逆に言えばそれ以外は平凡だということなんですけど。