しすたぁエンジェル

Terra Lunar 製作


「物語」というのは大なり小なりある程度はご都合主義を含むものです。

エロゲーというのはその中でもご都合主義の占める割合が比較的大きい部類ではないでしょうか。
たまにご都合主義だけで出来てるみたいな作品もありますが。

ちなみにこの「しすたぁエンジェル」のメーカー公式サイトのジャンル表記がどうなっているかというと


超絶対ご都合主義的恋愛妹アーカイブノベル






うわぁ、自分で言っちゃったよ。

<ストーリー>

「お兄ちゃん・・・?」

病室のベッドで目を覚ました”オレ”を見つめる見知らぬ少女。


いや、見知らぬのは少女だけではない。
そもそも彼には、自分が誰なのか、なぜこんなところにいるのか、皆目見当がつかなかったのだから。

記憶喪失を抱えたままその少女 寺井 流菜と暮らすことになる主人公。何でも彼女は主人公の妹だと言うのだ。

さらには主人公の元婚約者(自称)の後輩雛城 真美、自宅の空き部屋に転がっていたメイドロボのメムなんてものまで乱入してにわかに主人公の身の回りは(おもに女性により)騒がしくなっていく。


彼女達に振り回され(嬉しい)悲鳴を上げっぱなしの主人公。

どうするどうなる!? オレの夏休み!







と、こんな感じのゲームです。
一言で言い表すなら、「女三人寄れば姦しい(かしましい)」
(意味が判らない人はこちらをどうぞ)


はっきり言うと、このゲームにあっと驚くような展開はないです。泣きもないですし、物凄い感動があるわけでもありません。
それではHシーンが無茶苦茶エロいかと問われればそこらのエロ薄純愛系エロゲーと同程度かそれ以下です。


ではなにが面白いのか。


それは異常にテンポのいいヒロイン3人(+たまに主人公)たちの掛け合い。

誰も真面目に突っ込みを入れないので果てしなく暴走していくバカ4人素敵です

さらにはテンポのいい会話を支える過剰なまでの演出がさらに笑いを誘ってくれます。
メムが映画を上映するシーンでちゃんと動画が流れるなど本当に気合が入っています。
ムービーじゃないんですよ?テキストウィンドウを残したまま背景が動画に。

他にも台詞にあわせて背景変化とかアイキャッチとか次回予告とか凝りに凝っていました。


さらには声優さんの熱演もあいまって、序盤の4人の共同生活の共通ルートではかなり笑わせてもらいました。



しかしそれを除いてしまったら「前半コメディ、後半シリアス」「ヒロインの不幸とその解決」というありふれたエロゲーフォーマットにのっとったストーリーなので、後半個別ルートで一人のヒロインばかりが登場するようになると前半の掛け合いの面白さが激減してしまい正直あまり楽しくないです。

展開自体はそれほど目を引くものではないですし。


あ、3人クリアした後入れる深月シナリオ終盤の話のあまりの強引さにはちょっと引いた。

<キャラクター>

主人公

「おにいちゃん」「せんぱい」「ご主人様」「キミ」などと呼ばれるため名前は不明。

というか、ぶっちゃけ自分の名前思い出していないのではと思えるくらい記憶喪失であることを感じさせない能天気な奴です(笑)

自分の記憶がないことについてうじうじ悩んだりとかは一切無し。ある意味最高に潔いですね。
まあ、あれだけ騒がしい生活をしていればそんなことより目先のトラブルに気をとられてしまうのかとも思いますが。
あと、微妙に鬼畜入ってます(w


以下ヒロインズ。

寺井 流菜

自称主人公の妹。主人公のことを「おにいちゃん」と呼んで慕います。
愛しの「おにいちゃん」と2人きりで甘い夏休みを過ごすはずが、ヒロイン残り2人の乱入によってその望みは打ち砕かれることに。

恐らくメインキャラ中一番の常識人(比較の問題ですが)
残りのバカ三人に対するツッコミ役として大活躍です。

えらい問題を抱えさせておきながら何も解決していない流菜エンドを見た瞬間全力でモニターに突っ込みたくなりました。

雛城 真美

主人公を「せんぱい」と呼び慕う少女。眼鏡っ娘。
初登場シーンのあまりに気合の入った演出は大爆笑でした。
真美シナリオは後半に入った途端急激にファンタジーなお話に変貌するためちょっとついていけませんでした。

メム

正式名称MM−○×
主人公宅の空き部屋から見つかったメイドロボ。
以前の記憶を失っており、目覚めてから最初に見た人間である主人公を「ご主人様」と呼び慕います。
「記憶が無い」と言う点で彼女に親近感を抱く主人公ですが・・・

多分一番バカなのはこいつです。

メムがボケ→真美が的を得ない受け答え→主人公がさらにネタを膨らませる→流菜の手厳しいツッコミ
が基本パターンですから。

声優さんも物凄くがんばっています。
自己紹介のくだりで、「私はMM−○×と言いまして、(中略) でございます」(実際はもう少し文章があります)としか表示されていないのに、実際は1分間くらいひたすら喋り続けられたのには参りました。


あと、どうやら俺の人外キャラ属性はロボットにまで対象が拡張されたらしく、特に目新しい要素のないシナリオなのになぜか妙に心に残りましたね。

深月

主人公が街で出会った謎の少女。全てを見透かすような言動が不審さを煽りますが・・・

主人公が記憶喪失になった原因と深く関わってくるキャラクター。
上の三人のエンドを見た後深月シナリオに入れますが、どちらかというと豪快に話を放り投げた流菜シナリオの補完という意味合いが強いですね。
このルートでは遂に主人公が記憶喪失になった原因が明かされるのですが、正直言って適当に読み飛ばしていると訳判りません。

俺は後から考えて大体こうだろうと言う理解に達しましたが、未だに謎は残りますね。
サブキャラたちはいることにはいますがメイン4人ほどのインパクトは無いので割愛。

<グラフィック・音楽>

グラフィックはかなり特徴的です。アニメ調の塗り+比較的頭身の小さいキャラで独特の雰囲気をかもし出していますね。
あまりエロゲーらしからぬ絵柄です。
が、話の基本コンセプトがドタバタコメディーであることを考えるとある意味ではぴったりかもしれません。

俺はあんまり好きになれませんでしたが。


音楽はまさにチープと言う言葉を体現したかのような素晴らしい出来。
起動した瞬間タイトルバックの曲のあまりのチープさに爆笑しましたよ。

やはりこれも曲としてはかなりいまいちですが話のノリにはぴったりなので違和感は無かったです。
ぎゃくにあんなドタバタで生音バリバリの美しい音楽とかやられてもかえって浮くんじゃないでしょうか。

<システム>

メッセージウィンドウ上のアイコンクリックからセーブ、ロード、既読スキップを行う独特のシステム。
そのため、メッセージウィンドウが消滅する選択肢を選ぶ際にセーブが不可能という欠点を抱えています。

また、はっきりと確認した訳ではないですがほんのちょっと選択肢を間違っただけでもバッドエンド直行、しかも選択肢がわかりづらい&多いこともあって攻略が若干難しめです。
特に深月シナリオに自力で入るのはかなり至難の業だと思われ。
俺はほぼ全期間に渡り攻略サイトのお世話になりました。

そういったこともあって前述の選択肢でセーブできない仕様がかなりの欠点に感じられますね。


CG閲覧、音楽鑑賞はありますがHシーン回想は無し。まぁ、これは正直言って別になくてもいいでしょう。

<総括>

ストーリーの項でも書きましたがこのゲームはとにかく掛け合いの面白さに尽きます。
声優さんの熱演も過剰なまでの演出も全てはそのため。

感動とか、泣きとか、深いシナリオを求める方には合わないと思いますが軽い話で笑いたい向きにはぴったりかと。

ノリが合えば序盤〜中盤の4人の共同生活パートで大笑いできること間違い無しなので。
逆に言うとそれ以外の物を求めるとちょっとがっかりしてしまうかと。


良くも悪くも、「ラブコメ」と言う感じでした。