Fate /stay night

TYPE-MOON 製作


「月姫」を送り出したTYPE-MOONの商業化第一作に当るこの「Fate /stay night」

世のエロゲーマーさんたちの期待を大いに集め発売されたこの作品、俺は訳あって発売日買いができず定期巡回先のヲタク系サイト管理人さんたちのほとんどが「Fateサイコー!!」と痛々しく叫んでいるのを傍目に見ながらプレイできない我が身を嘆いたものでした。

発売日買い出来ないことは前々からわかっていたため下手に情報を仕入れるとかえって辛いだけだと判断し徹底的に情報を遮断。

「バトル物らしい」「人外キャラがいるらしい」(ここ重要)程度の情報しか知らないで購入に赴きインストールしてさあプレイ開始。


で、その後俺は一体どうなったのでしょうか?。

それは以下のレビューを参照です。そんな訳でFate /stay nightレビューの始まり始まり。

<ストーリー>

「聖杯戦争」

全ての願いをかなえる「聖杯」を実現するための大儀式。
選ばれた7人の魔術師が、古の英雄を”サーヴァント”として召還し、そのマスターとなり戦う殺し合い。

聖杯を手にできる者は7人のうちただ独り。奇蹟を願うのならば、自らの手で持って最強を証明しなければならないのだ。



主人公衛宮 士郎は幼い頃大火災で両親を失い、その後魔術師を名乗る人物に引き取られ成長することになる。
養父の反対を押し切って魔術を習い始める主人公であったがもともと魔術師になる才能などない体、いくら努力を重ねようが実を結ぶことはない。

その養父も今は亡く、主人公は半人前の魔術師となった。
誰もを救う「正義の味方」でありたいと願いながら。

そんな中街の裏側で始まる「聖杯戦争」。ふとしたことからサーヴァントの一人”セイバー”の少女と契約した主人公は自らの意思に関わらず「聖杯戦争」に巻き込まれていくこととなる。

果たして「聖杯戦争」の行方は? そして主人公は「正義の味方」を貫き通すことができるのか?




とまぁこんな感じで。まさにバトルシーン重視の伝奇物といった雰囲気です。

また、「月姫」から変わらない相変わらずの設定ヲタな部分は健在。
魔術とか魔術師といった漠然としたイメージで捉えられがちなものを無理やり論理的に説明したかのような(笑)広範囲かつ詳細きわまる設定は魅力でもあり欠点でもありますね。

前半は作品世界における「魔術」「魔術師」といったものの位置づけ、「聖杯戦争」「マスターとサーヴァント」といったシステムに関する設定の説明でだいぶ時間をとられますから。これは特にシナリオにおいて顕著でした。
逆にこれら設定を違和感無く受け入れることさえできてしまえばより深く作品世界に没頭できると言う訳です。


「誰もを助ける正義の味方」であろうとする主人公が、そんなものは現実にはありえないという冷酷な事実に直面し、「正義のあり方」を追及していく話かと。
こんな風に言うとなんかくだくだしく議論とかしてそうですが心配ありません。
価値観の違いはガチンコ勝負で白黒決めるというのが基本姿勢なので(笑) 
拳で語り合いですよ。


そしてそのバトルシーンですが一言で言えば最高
サーヴァント対サーヴァントは言うに及ばず、マスター対サーヴァント、強大な敵に対して同盟を結んで立ち向かうとか、様々なシチュエーションで魅せてくれます。
俺はセイバーシナリオのセイバーVSライダー戦で”垂直の壁を駆け上りながら戦闘”というのを見た時点でこれは何でもありなんだなと実感しましたね。実際そうでしたし。
セイバーの剣を白刃取りする人間が登場したときはもう笑うしかなかったです。

<キャラクター>

衛宮 士郎

主人公。いい年こいて「正義の味方」になりたいと切望する甘ちゃん。
この話は彼が現実に触れ、それでも正義の味方を貫き通すか否かのストーリーと言ってもいいかと。

シナリオで「万人のための正義の味方になるより一人の少女の幸せを願う」彼を非難する人も多いですが、俺は別にあれも一つの選択であって良かったんではと思います。


そして不死身。どう考えても死にそうになるとハイパーモードとかが発動しているとしか思えませんこの人。
まいどまいど死の淵から大逆転をかましてくれます。

まぁ、選択肢の選び方によってはあっさり死んでしまう事も多々ありますが


バトルものの主人公ですから戦闘シーンでの活躍数も多いものの単純にどつきあいに強いのではなく、補助系能力と言ったらいいのでしょうか一風変わった風に戦う彼は新鮮でした。
まぁ、直接の戦闘力ではセイバーに、魔術師としてはに遠く及ばないのですから仕方ないでしょう。





以下ヒロインズ

セイバー

主人公と契約を結ぶサーヴァント。
”セイバー”(剣士)の名が示すとおり優秀な剣士であり、総合的な能力では全サーヴァント中最強と言われる存在。
直接的な戦闘力の低い主人公をサポートし、前面に出て敵と渡り合います。


来ましたよ人外キャラ。(参考:管理人は人外キャラが大好きです)
俺はこういう「私は戦うためだけの存在ですから」的人外キャラクターが大好きなもので。

シナリオもこういった属性の人のパターン的に
「私は戦うためだけの存在ですから」→それでも女の子として扱ってくる主人公に戸惑う→紆余曲折を経て結ばれる
と言う定番パターンを踏襲。

いや別に定番だろうがなんだろうが全然かまいませんよええ。


ちなみにほかのヒロインのシナリオでは単なる食いしん坊キャラになってます。
セイバーシナリオでの葛藤やらなにやらはどこ行った(w

遠坂 凛

魔術の名門遠坂家の当主にして主人公の同級生。容姿端麗、品行方正、まさに非の打ち所のないお嬢様。
すぐに化けの皮はがれますが。

徹底した現実主義者、なのですが常に非情になりきれないという性格付けは上手かったですね。ていうか萌えた。

サーヴァント”アーチャー”のマスターとして主人公と共に聖杯戦争に身を投じることに。
どのシナリオでも頼れる相棒&魔術関係の設定の説明役として大活躍してくれます。

皮肉屋のアーチャーとのコンビも非常にいい感じでした。

間桐 桜

主人公の部活の後輩にして親友の妹、毎朝朝食を作りに主人公の家に通って来たり寝坊をすれば起こしてくれたりとエロゲーの”妹キャラ”のお約束満点な人物。
魔術師でもなんでもない一般人であり、聖杯戦争などといった非日常に巻き込まれる主人公にとっては平穏な日常の象徴ともいえます。

バトルに次ぐバトルのセイバーシナリオではそのおかげで序盤で物語からフェードアウトしていって以後全然登場しなくなってしまうのが悔やまれるところですね。いや、本当に全然出てこないんですよ。

戦闘シーンに登場させるのは無理だとは言えもう少しやりようがあったのではないかと。
そのおかげでシナリオでいきなり登場機会が増えると妙に唐突な感があるんですよね。


ちなみに桜シナリオで話が進むにつれてそこはかとなく壊れていくのが、こういった「何かに執着するあまり微妙に狂ってしまったキャラ」が大好きな俺としては非常にツボでした。




ヒロインじゃないんだけど。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン

通称イリヤ。サーヴァント”バーサーカー”のマスター。
無垢さと残虐さを兼ね備え持つ悪魔っ娘にしてFateにおけるロリ担当。

主人公と敵対するマスターとして主人公を殺しまくってくれます。
かと思えばまとわりついてきて「シロウはわたしのこと好き?」とまぁそういう人。嫌いとか言ったら殺されそうですが。

全てのシナリオにわたって敵か味方かどちらともつかない微妙な立場で登場し大活躍。

彼女のサーヴァントたるバーサーカーとのロリ&マッチョコンビもそのギャップがまた良かったです。
シナリオでの「バーサーカーは強いね」のシーンはちょっとほろりとしました。


あと、時間不足でイリヤシナリオが削除されてしまったのはFate最大の損失だと思うんですがどうよ?
人外ロリ好きとしてはたまらないものがあったんですがね(←死んどけ俺)

言峰 綺礼

主人公達の街の教会の神父にして聖杯戦争の監督役である魔術師。

第一印象は物凄く怪しいんですが、実際怪しかったという期待を裏切らない人物(w
顔も台詞も濃すぎです。魔術師のくせに肉体派だし。

悪役もいいところなのですが、悪いながらも一本筋の通った彼はある意味ガキな主人公より格好よかったですね。

間桐 慎二

間桐 桜の兄にして主人公の親友(?)

一言で言い表すなら ザ・小悪党

なんか裏でこそこそと暗躍してたりとか、しかもそれがあんまり大勢に影響を与えないところとか。
憎たらしさは凄いですけど。

主人公が「あいつは付き合ってみればいい奴なんだよ」とやたらと言っているのですがどのへんがいい奴なのかさっぱりわかりませんでした。
悪役は悪役でも言峰とは大違い。




これら以外にもサーヴァントたちもなかなかいいキャラしてました。
セイバーはもちろんのこと、熱血漢のランサー、イリヤとのコンビが非常によろしいバーサーカー、ある意味第二の主人公とすら言えるであろうアーチャー、薄幸の悪女を地で行くキャスター、登場時は誰もがびっくりなアサシン、実はかなりのお茶目さんなライダー。

単なる戦闘シーン用キャラではなく、それぞれ強い個性を持っていてよかったです。

<グラフィック・音楽>

グラフィックは「月姫」同様相変わらずの独特の絵。

塗りは格段に進歩していますが、原画自体は「月姫」の頃からそのままなのでちょっと違和感があるかも。
下手糞で見ていられないというほどではないですがね。

しかし立ち絵の異常なまでのバリエーションの多さは多少下手だろうがなんだろうが余りあるものがあります。
本当にころころ表情が変わりますから。
「話しながら目を伏せる」「手前で話している人の発言に後ろでもう一人が一喜一憂」
なんていうのをテキストで描写無しに立ち絵の変化だけでやってしまうのは正直驚きでした。

また画面演出も激しかったです。
特に戦闘シーンで、斬撃やら刺突やらのエフェクトだけで話が進んでしまうことすらありました。
文章で一切説明なし。
これは効果音とあいまってかなり緊迫感のある戦闘シーンを演出できていたと思います。
が、妙にマシンパワーを要求するのが玉に瑕。


音楽は良くもなく悪くもなく。
いや、普通のゲームと比べたら十分いいのかもしれませんがシナリオほどのインパクトはないです。
それよりも400個以上ある効果音の方が注目するべきかと。(音楽鑑賞モードで聴けます)
「走ってくる音」がきちんと左右移動しているように聞こえるところとか地味ながらもすごいことなのではないでしょうか。


ちなみにキャラクターボイスはなし。物語のボリュームを考えると妥当でしょう。
これで声があったらもう一枚CDが増えそうですよ。

イリヤが「ローレライ」を歌う所とか声がついていたらどんなに良かっただろうと思われるシーンもありましたがね・・・

<システム>

・・・とりあえず非の打ち所が見当たらないのですが。
安定動作するのはもちろんのことセーブ個数、スキップ関係、設定事項の細かさともども水準以上。
非常に快適にプレイができました。

難点といえば、前述のように画面エフェクトがかなり激しいためマシンパワーを要求されることとなぜかセーブデータのファイルが「マイドキュメント」内に作成されることですかね。
普通にアプリと同一フォルダに作成すればいいのに。

あ、それ以上にHシーン回想モードが無いのが最大の難点かも。

<総括>

結局この話は「正義の味方」を目指す甘ちゃんな主人公の成長物語かと。

「正義のあり方」について悩み、「正義の味方」を貫き通した後に待つ悲惨な最期を目の当たりにし、自らの信奉する正義と愛する少女を天秤にかけざるを得ない立場に悩む。
そして彼が最後に選ぶ道は一体どのようなものか、てな感じで。
3人のヒロインのシナリオで三者三様の道を主人公は選びますが、どれもきちんと描けていてなかなか良し。

個人的には文句なしの名作だと思うのでこれ以上はもはや好みの問題でしょう。

無茶苦茶に長いプレイ時間(メーカーによるとコンプリートまで平均60時間だそうです)に耐えられれば未プレイの人はぜひ。