Nitroplus 製作
悪の秘密結社と闘う正義の味方は好きですか?
巨大ロボットに乗って戦う正義の味方は好きですか?
ヒロインとの愛の力で絶体絶命の窮地を脱する正義の味方は好きですか?
このゲームにはその全てが詰まっています。
まさに勧善懲悪、弱きを助け強きをくじく。
ヒーロー物としての王道中の王道。
そんなゲーム、斬魔大聖デモンベインのレビューです。
20世紀初め頃をベースにしつつも、魔術や錬金術といったものが存在する世界。
アーカムシティに暮らす主人公の大十字 九郎は、繁盛しない探偵業で食うや食わずの毎日を送っていた。
そのあまりの生活力のなさに、友人のシスターライカには会うたびに説教をされる始末。
そんな彼の元に街の支配者である覇道財閥のオーナー覇道 瑠璃からもたらされた魔道書探索の依頼。
高額の報酬に釣られ依頼を受けた主人公は、その探索の過程で謎の少女アルと出会う。
街の裏でうごめく悪の魔術結社”ブラックロッジ”から狙われるアルを救った主人公は、成り行きで覇道財閥が対ブラックロッジ用に
開発した巨大ロボット”デモンベイン”に乗り込みブラックロッジと戦う事になる。
そしてそれは、世界の命運をもかけた高いにつながってゆくのであった・・・
うん、まさにヒーロー物ロボットアニメのノリですね。
暗躍する悪の秘密結社、それに対抗する正義の組織と彼らが擁する正義の巨大ロボット、そしてロボットに乗って悪と戦う
ヒーローとヒロイン。
覇道財閥とデモンベイン以外にも、アーカムシティの人々をブラックロッジの脅威から守る仮面の変身ヒーロー”メタトロン”とか、
悪の組織には付き物の狂科学者ドクターウェストとか、それだけでお腹一杯になりそうな人たちが目白押し。
当然”ブラックロッジ”の大幹部である魔人たちはそれぞれ自分の巨大ロボットを保有しており、主人公はデモンベインを駆って
彼らと死闘を繰り広げることに。
そしてそれら戦闘シーンが熱すぎ。
ヒーロー物的な物語のノリに合わせて、バトルも”リアルさ”というよりは”格好よさ”重視なんですが、その重視っぷりが半端じゃないです。
なんたって魔術や錬金術が許容される世界ですから本当に”何でもあり”
巨大ロボット同士の必殺技の応酬とか、絶体絶命のピンチを新兵器によって切り抜けるとか、これはもうだめだろという状況から
気合のみで立ち上がる主人公とか。
ラストバトルなんて、ヒロイン三者三様ですがどれも共通しているのは愛の力でピンチから大逆転(w
いや、本気で。
こんなのベタベタのお約束ですが、お約束もあそこまで極められるとある意味感動的でもあります。
間の取り方、逆転のタイミング、伏線の明かし方とかのレベルがかなり高いのがお約束を単なるお約束で終わらなくしているのでしょうね。
正直言って、ラブストーリーとしてはちょっとどうかと思われる点もありますが、スーパーロボット物のヒーローアニメを見ていると思えば問題なし。
醒めた視点で見たりせず、手に汗を握って主人公の戦いをはらはらしながら見つめるのが正しい楽しみ方なのではないでしょうか。
あとこのゲームはストーリーの一番根幹となる部分がクトゥルー神話であり、ありとあらゆるところクトゥルーネタが使われているため
好きな人にはたまらないのではないかと思われます。
まずもって舞台となるのが”アーカムシティ”という時点でもうクトゥルーですよ。他にも人名、地名などにたくさん引用されています。
別にわからなくともストーリーが理解できない訳ではありませんが、わかっていると事有るごとにニヤリと出来る事は確かですね。
主人公。アーカムシティの片隅で探偵事務所を開業する売れない探偵。
アルに魔術師としての才能を見出されたことによりいやおう無しにブラックロッジとの戦いに巻き込まれていくことに。
その生き様はまさに正義の味方。格好いいです。
アルと”契約”したことにより魔術師としての力を得て、時にはデモンベインに乗り込み、時にはその身一つでブラックロッジと渡り合うことに。
アルシナリオ終盤「俺、幼女じゃなきゃダメなんだ(意訳)」といって真の敵に止めを差すのはちょっと笑いました。
(実際の台詞は違いますよ)
声優さんの熱演も凄いです。「来い!!マスターテリオン!!」(ラストバトル) 「レムリア・インパクトォォォ!!!」(必殺技使用時)などなど。
男性キャラに声が入っているのをこれほどいいと思ったのは初めてです。
以下ヒロインズ。
正式名称は「アル・アジフ」。アブドゥル・アルハザードによって記された最強の魔道書の精霊。齢1000歳を数えるが見た目はロリ。
主人公に魔術の才を見出し”契約”を結ぶ。
主人公と共にデモンベインに搭乗してブラックロッジと戦います。やっぱ複座っていいよね。
EDでは物語の全てに決着がつきますし、文句なしのメインヒロインといえるでしょう。人外ロリ万歳。
ラストバトルでの愛の力で大逆転(笑) が一番凄いのもこの人。そりゃまぁ主人公と2人で同じロボットに乗ってるのですから。
あれはもういろんな意味で素晴らしすぎて笑うしかなかったです。
うら若き身で世界有数の財閥 ”覇道財閥”の総帥を務める少女。財閥の創始者である祖父から託された対ブラックロッジ用巨大ロボット
”デモンベイン”のオーナー。
勝手にデモンベインを乗り回すアルと主人公に反感を抱くのですが・・・
常にドレスの下に戦闘服を着込む戦うお姫様。暑くないんでしょうか(笑
瑠璃ノーマルエンドの切なさはヤバイです。というか普通のゲームだったらバッドエンド扱いになってそうですあれ。
そして一度ノーマルエンドに到達したあと行けるトゥルーエンドは、それに至る選択肢「いや、まだだ!!」を選んだあとの
まだ戦いは終わっていない!!まだ戦える!!って感じのヒーロー物としてはいかにもな展開は素晴らしく燃えました。
主人公の古くからの友人にして教会のシスター。食うや食わずの生活を送る主人公の生活保護をし、その生活力のなさを見かねて
事有るごとにお説教をしてくるあらゆる意味で面倒見のいい女性。
朗らかな外面とは裏腹に重い過去を持つ人。
こういう「顔は笑って心は泣いて」なキャラクターは俺はかなり好みなのですが、なんかいまいちでした。
が、それよりも。
ライカシナリオでは変身ヒーロー”メタトロン”がその真価を遺憾なく発揮してくれます。
まさにヒーローたるべくここぞという場面で颯爽と登場するメタトロンの格好よさに俺はもうめろめろ。
サブキャラとか、悪役とか。
サブキャラたちがかなりたくさん居るので一人一人紹介していたら間に合わないのですが主だった人たちで言うと、素手でブラックロッジの巨大ロボットと渡り合う覇道家の筆頭執事ウィンフィールド、その頭のネジが数本足りない行動がおいしすぎるブラックロッジのマッドサイエンティストのドクターウェスト、ウェストに作られただけあって同じく頭のネジが足りない戦闘アンドロイドエルザ、悪役振りが素晴らしいブラックロッジの首領にして最強最悪の魔術師マスターテリオン、マスターテリオンに影のごとく付き従う魔道書「ナコト写本」の精霊である少女エセルドレーダ、などなど。
誰も彼もキャラが立っていてなかなか良いです。
また悪役として主人公の前に立ちふさがるブラックロッジの魔人たちも憎たらしさ満点。やっぱりこういうヒーロー物の悪役としてはあのくらい悪くないと。
グラフィックは人物に多少癖がありますが、背景をフル3Dで表現(しかも2Dの立ち絵と全く違和感なし)、戦闘シーンの巨大ロボットの絵だけで
300枚(差分含む)ものイベントCGを用意、という努力には正直脱帽せざるをえません。
ヒロイン3人合わせても201枚(アル90枚 瑠璃67枚 ライカ44枚 差分含む)ですからね。
あの豊富なイベントCGが燃える戦闘シーンの演出に一役買っていることは間違いありません。
そして音楽。
文句なしに上質です。そして単体の質がいいこと以上に、曲が始まるタイミングがかなり上手いので相乗効果でさらに良くなるという。
例えば逆転シーンの曲なら、「ここから逆転だ!!」というまさにそのタイミングにぴったりあわせて音楽が流れ出すのでもう気分はノリノリ(死語?)
気が付いたらサントラを買っていました。もちろん今聞きながらこの文章を書いています。
Vo曲が3曲あるのですが(オープニング1、エンディング2)、もっと聞く機会があっても良かった気がしますね・・・
「shine」なんて瑠璃ノーマルエンドでしか流れませんからね。もったいない。
最期に声優さんのボイス。
ええと、残念なことにこのゲームパートボイスです。つまり重要なシーンしか声がないです。本当に残念です。
フルボイスならどんなに良かったことか。
演技は概してうまいです、というか俺は疎いのでよく分かりませんが男女共にかなり有名な人たちが出演しているようで。
ラストバトルでの「大十字九朗ッッ!!!!」「来い!! マスターテリオン!!!」とか、ドクターウェストの
キ○ガイな台詞たちとか男性キャラ役の声優さんたちのの熱演振りが素晴らしかったですね。
既読スキップ、強制スキップ完備、セーブはコメント付きで60個、キーボードショートカットも充実とまあ水準以上です。
でもホイールでバックログにいけない・・・
そしてバックログを表示する際背景を暗くしないので明るめのCGの画面で表示するとかなり読みづらいです。
そして一番の難点は、「Hシーンで主人公の声なんて聞きたくねーよ(;´Д`)」と思ってボイスの再生設定画面で
「大十字九朗」からチェックを外しても再生されてしまうことでしょう。
初めは「これはこういう仕様なのか?」と疑ったのですが、実はHシーンで主人公ボイスを再生しないようにするには設定画面で
キャラクター名「???」というずっと謎だった項目のチェックを外せばよいのだと後で判明。
まぁ、プログラム上そうなってしまったというのなら許しましょう。
が、それをマニュアルに書かないってのはどういうことかな?
中途半端に「???」なんてしないで潔く「大十字九朗(通常)」「大十字九朗(エロ)」といった感じに設定画面をしてくれれば迷うことも
なかったでしょうに。
ヒーロー物としてのお約束を存分に盛り込みながらも巧みなプロットとでもって単なるお約束の羅列に終わらないただひたすらに熱いシナリオはいったん感情移入ができてしまえばかなり楽しめます。「深み」とか「重さ」とかを期待しちゃダメですが。
気が付くと手に汗を握って主人公とヒロインたちの戦いの行方をドキドキしながら見守っている俺がそこに。
こういったヒーロー物のノリが苦にならなければ、十分に水準以上だと思うのでぜひプレイを。
個人的には物凄く好きですしお勧めですので。