家族計画 〜絆箱〜

D.O 製作


家族。
「夫婦とその血縁関係にある者を中心として構成される集団。」(goo国語辞典)


・・・血縁でなければ家族にはなれないのか?
・・・そもそも家族の絆とは何なのか?

社会不適合者たちが集まって構成する擬似家族に果たして未来はあるのか?


そんな訳で「家族計画 〜絆箱〜」レビューです。

ちなみにこれ、2001年に発売された「家族計画」のフルボイス版です。
いろいろ変更があったようですが「家族計画」の方は俺はプレイしていないので関知しません。ごめんね。

<ストーリー>

家族の温もりを知らずに育ったため少しばかり排他的な性格の主人公沢村 司
新宿・歌舞伎町の中華料理店でバイトをする日々を送る彼が、路地裏で謎の少女を拾った事が全ての発端だった。

彼女の名前は王 春花(ウォン・チュンファ)。
母親を探して日本へ密航してきたのだという。

なし崩し的に彼女との共同生活を始める彼を襲うトラブル、そして彼の周りに集う様々な問題を抱える人々。

それは、

過去の思い出にすがり生きる元社長令嬢 高屋敷 青葉
売春から麻薬密売まで、金のためなら全てを厭わない街の便利屋、大河原 準
孤独にホームレス生活を送る少女 河原 茉莉
結婚詐欺に会い自殺志願の女 板倉 真純

そして事業に失敗し債権者から逃げ回る日々を送る元企業戦士 広田 寛
様々な事情あって、主人公含むこの7人は共に行動することに。

そんな中の発案した相互扶助計画「家族計画」
それはモラルも考えも嗜好も異なる赤の他人が、生きるために擬似家族を構成するというもの。

仕方無しに、必要に迫られて、積極的に、無関心に、情熱を持って、懇願を受けて「家族計画」にそれぞれ参加する7人。

擬似家族を構成する彼らの行く末に、果たして幸福はあるのだろうか?






とまぁこんな感じで。

このゲーム、「勘当された社長令嬢」「麻薬密売人」「中国からの密航者」「家出ホームレス少女」「自殺志願者」「債権者に追われるサラリーマン」と、キャラクターがダメな人ばっかりです。

ある意味主人公が一番まともかもしれません。ちょっと排他的なだけですから。


そんなダメ人間ども(笑)が擬似家族として共同生活を送ろうというのですから、結果は見えています。

アレですよ、最初は皆よそよそしいが、次第に打ち解けていく→そんな中で擬似家族を襲う危機→皆で一致団結して解決→ああよかったね といった感じのシナリオを予想しがちですが、ちょっと違います。
そりゃあれだけの社会不適合&性格破綻者たちが集まっている訳ですから。

なんていうか痛々しさ満点。ちょっとしたすれ違いから傷つけあうキャラクターたち、そして様々な「家族計画」を襲う危機。
決してほのぼのホームドラマだけが展開される訳ではありません。


だからこそ、それだからこそ時折訪れる団欒や、ぎこちない彼らの触れ合いの尊さが身にしみるのではないかと。
ここら辺は本当に上手いと感じました。


かといって痛々しいだけではありません。
やサブキャラクターのといったボケ担当VSツッコミ担当の主人公という展開で繰り広げられるギャグシーンが面白すぎ
俺は爆笑しっぱなしでした。





欠点としては、一部シナリオで他のヒロインのシナリオの伏線が壮絶にネタバレしてるのはプロット的にどうかと思いますね。(特に青葉)
また、上に書いた怒涛のギャグシーンは肌に合わない人にとっては苦痛以外の何でもないようです。
俺は最高にツボにはまったので良かったですけど。

あと、皆何かしら不幸を抱えたキャラクターたちなので全員に幸せになって欲しいという気持ちもありますが、一部無理やり全員が幸せになるエピローグに持っていった感のあるところは個人的に気に入りませんでした。(特に真純)

個人的には不幸の淵から救えるのは主人公の選んだヒロイン一人のみというのが救いの無い話の大好きな俺としては良かったのですがまぁいいでしょう。

<キャラクター>

高屋敷 司

主人公。本名沢村 司。「家族計画」では長男役を務める。20歳。
家族の温もりを知らないまま育ったために少々排他的な性格、と自分では思っているらしいですが 中盤以降のあの熱すぎる行動を見ていると優しくお人よしで困っている人を放っておけないこっちが本当の性格なんじゃないかと思えてきます。

あと、茉莉シナリオで
俺はロリコンじゃない!!(否定)→
もしや俺はロリコンなのか(疑問)
俺はロリコンと呼ばれようがそれでもいい(覚醒)
とロリの道に目覚めていくのには本気で笑いました。

あと、ギャグシーンではツッコミ担当と掛け合い漫才してくれます。




以下ヒロインズ。

高屋敷 青葉

本名同じ。「家族計画」では長女役を務める。22歳。
ゆえあって家を飛び出し、勘当された社長令嬢。現在は公園で似顔絵書きをして生活している。
周りの全てを拒絶し、過去の思い出にのみすがって生きている女性。

この人、超毒舌です。
「うるさい黙れ」「この下郎が!!」
「脳にランブルべん毛虫でも湧いてるんじゃないの?」
「バカな男。くも膜下出血で死ねばいいのよ!!」
等々のオリジナリティあふれる罵声で主人公を罵ってくれます。

そして次第に罵られるのが快感になっていく俺がそこに。なんか新しい世界が見えそうでした。

青葉シナリオは伏線の明かされ方、終盤のどんでん返し、エピローグと話の持って行き方がこのゲーム中一番秀逸だと思いました。

高屋敷 準

本名大河原 準。「家族計画」では次女役を務める。20歳。
主人公とは昔同級生であり、恋人のような関係だった。人の作った食事が食べられないというトラウマを持ち、常にブロック栄養食ばかり食べている。

極端な守銭奴。金のためなら売春から麻薬の密売まで何でもござれの街の便利屋さん。
「家族計画」にも主人公との契約という形で参加。

この人ありえないくらいに守銭奴です。もう本当に。
まあきちんと理由あってのことなのですが。

あと、人の作った食事が食べられないというトラウマの原因を知ったときは愕然としましたね。

高屋敷 春花

本名王 春花(ウォン・チュンファ)。「家族計画」では三女役を務める。年齢不詳。
中国から母親を探して密航してきた少女。主人公に拾われ、「家族計画」の全ての発端となる。

一言で言うならミス脳天気。「ツカサ〜ツカサ〜」と無邪気に主人公にまとわり付いてきます。

が、こういう人には裏がある、というのが定番でして。まぁ笑顔の裏にはいろいろと。
近くて遠い母親との再会シーンはちょっと泣けました。

また、物語の裏を流れるチャイニーズマフィアの陰謀(というほどたいそれたものではないですが)と一番密接に関わってくるキャラでもあります。

あとなにげに茉莉と双璧をなすエロ担当。
「机の下の情事」はエロかった。

高屋敷 茉莉

本名河原 茉莉。「家族計画」では四女役を務める。年齢は・・・げほっごふっ。まぁいろいろと大人の事情で不詳としておきましょう。
虐待同然に扱われてきた家を飛び出し、ホームレス生活を送っていた少女。彼女の懇願により主人公は「家族計画」に参加することに。
7人の中で最も「家族」に対する憧れが強いのは彼女でしょう。
「家族計画」の皆を打ち解けさせようと努力するのですが・・・



ロリです。それはもうひたすらに。上でも書きましたが主人公をロリコンの道に覚醒させてしまうくらい。
でもやっぱ、「お赤飯」な人を抱くのはどうかと思うよ?>主人公

そして春花と双璧をなすエロ担当。
俺も危うく覚醒しそうになりました。

高屋敷 真純

本名板倉 真純。「家族計画」では母親役を務める。30歳。
結婚詐欺に会って自殺しようとしていたところを主人公に救われ「家族計画」に参加することに。

・・・なんか微妙な人です。微妙とか言うとかなり失礼な気もしますが。


やはり無理やりハッピーエンドにもって行ったようなあのエピローグが(逆の意味で)印象深すぎたのが原因かと。
キャラ立てはしっかりしていると思うのですが、あまり魅力を感じませんでしたね・・・




ヒロインじゃないんだけど。

高屋敷 寛

本名広田 寛。相互扶助計画「家族計画」の提唱者にして「家族計画」では父親役を務める中年男性。
怒涛のボケでギャグシーンを彩る元敏腕企業戦士。

声優さんの熱演もあいまって面白すぎですこの人もう存在感ありすぎ。

劉 家輝

主人公のバイト先の中華料理店の店長代理。ボケ担当その2。
主人公とのやり取りで爆笑しっぱなしでした。この人も声優さんの熱演が光ってます。




主だった人々はこれくらいで。
なんていうか、ゲームとはいえ異常にエキセントリックな人たちばっかりなのですが、それを不自然に感じないキャラ立ての巧みさは凄いです。
特に、「キツイ女」と一言で言えてしまいそうな青葉、「守銭奴」とこちらも一言でばっさりやられてしまいそうなの二人のキャラクター造形はかなり上手いと個人的に思いました。


残念なのは、「悪役」な人たち(春花シナリオのチャイニーズマフィア達、青葉の両親、茉莉の親戚達など)が本当にただ悪いだけの存在である事でしょうか。感情移入ができないとここはちょっと首をひねってしまうところかもしれません。

俺は感情移入度抜群でプレイしていたのでこういう考えを持ったのはコンプ後しばらくしてからですがね。
特に茉莉シナリオなど、プレイ中は親戚達のあまりの凶悪さに殺意すら覚えましたが何か?

・・・なんかまんまとシナリオライターに踊らされてる気もします。

<グラフィック・音楽>

グラフィック、音楽ともに高評価はあげづらいですね・・・

まずグラフィックですが、長いプレイ時間(初回約15時間くらい、その後も一周につき5〜7時間)のわりにはCGが少ないんじゃないかと。
ここはイベントCG入るだろ、というところで無い事がままありました。

あとキャラグラフィックも顔のアップの時崩れすぎかと。立ち絵はいいんですけどね・・・
一部サブキャラが原画さんが違うのかメインキャラと激しく絵にギャップがあるのも萎えました。



音楽も曲単体では平凡なもの。
ですが、曲が挿入されるタイミングがむやみやたらに上手いせいでそんな曲でもプレイ中はじ〜んとしてました。
単体でどうこうというよりは総合力の勝利ですね。


あと項目が無いのでここに書きますが、声優さん達の演技はいいです。かなり。
寛のボケ、青葉の罵りなんかはテキストと音声の相乗効果であれほど印象深いものになったのではないかと。

<システム>

右クリックメニューから項目選択。
オート進行、キャラごとのボイス再生選択、など。
スキップも既読判定ありと強制スキップを両方搭載。

まぁ水準以上ではないでしょうか。個人的にはスキップのキーボードショートカットがほしかったなぁ・・・


あと、ボイステストモードで上記のボケ担当2人が案の定ボケてくれるのは初めてやったときは笑いましたね。
ボイステストとしては失格ですけど。

<総括>

「家族の絆」がテーマのシナリオは、一部微妙な点もありますがそれでもその長さを苦にしない”読ませる”シナリオでした。
言い換えれば感情移入させるシナリオですね。

擬似家族が紆余曲折を経て本物の家族へ、というのをよく描いているのではないでしょうか。


また、上でも書きましたが極端にエキセントリックな人物ばかりなのにそれを不自然に感じさせないキャラクター造形は本当に凄かったです。

とりあえず、寛のギャグにさえ耐えられるならおすすめでしょう。