沙耶の唄

Nitroplus 製作


皆さんはホラーというと、何を連想するでしょうか。

それは、登場人物の狂気が世界を蝕むサイコホラーでしょうか?
それとも、血と臓物が乱れ飛ぶスプラッタホラーでしょうか?
または、手に汗握るサスペンスホラーでしょうか?


なんにせよ、ホラーという物語ジャンルはエロゲーの世界においてあまり使われることの無い舞台装置だと思われます。


そんななか、サスペンスホラーADVと銘打って発売されたこの「沙耶の唄」

さて、どれだけ俺を震えさせてくれたのでしょうか?

そんな訳で沙耶の唄レビューです。

<ストーリー>

主人公、匂坂 郁紀は不幸な事故により両親を失い、天涯孤独の身となった。
不幸、そう、それだけでも十分な不幸だ。

だが、そんなものはその後の彼を待ち受ける事態に比べればどれほどのものでもなかったのだ。

”それ”の影響で次第に周囲との隔絶を深め、孤独に沈む主人公。

周囲を拒絶する彼を気遣う主人公の親友の戸尾 耕司、耕司の恋人であり郁紀の友人でもある高畠 青海
そして郁紀にひそかに思いを寄せる少女、津久葉 瑶


そんな彼らの気遣いも今の主人公にはただ迷惑なものでしかない。


だが、全く救いが無い訳ではなかったのだ。
”それ”に侵された世界の中で、主人公にとって唯一の救いとなる謎の少女沙耶

成り行きで彼女と共同生活を始める事になる主人公。



主人公と沙耶の”世界を侵す恋”の行方は果たしてどこへ向かうのか・・・


・・・とまぁこんな感じで。
ネタバレしないように書くのがこんなに辛いとは。

上では伏せてますが主人公の周りとかかなり大変な事になってまして。
プレイヤーはそれを知らないで開始するといきなりとんでもないことになっていてびっくり、という訳ですよ。


ホラーホラーと散々発売前から煽っていましたが、俺は大して怖さを感じませんでした。
どちらかというと、気持ち悪いという感じが強かったですね。ホラーというよりはスプラッターといった方がいいと思います。

攻略可能(?)キャラは沙耶のみ。エンドは3種類。

選択肢2つしかないですけどね (しかも片方は選んだ直後にエンディング)

内容は、ある意味究極の純愛ストーリーというかなんと言うか・・・。
「2人が幸せなら世界なんてどうだっていい!!」という思考の極致だと思いました。

世の中一般的に見ればかなりどうしようもない状況だったりするのですが、それでも救いが無いとは感じられない終わり方は個人的にかなり好みでしたね。

逆にそこら辺を覚めた目で見てしまう人にとっては「ハァ?なにこいつら?」といった風に
感じられてしまうかもしれません。

こういったところでだいぶ人を選ぶ話ではないかと。


テキストは3人称的、小説的な文体でちょっと癖はありますがかなり上手い方だと思います。


あと、このゲーム、
無茶苦茶短いです。

声優さんのボイスを全部聞いて文章をゆっくり読む俺でも5〜6時間でフルコンプ。
速い人は3時間くらいでフルコンプできてしまうこの短さははちょっとどうかと。

別に語り足りないというわけではないのですが、それでもやっぱり何か薄く感じるのは否めませんね。
登場人物の描写等で特にそれを感じました。
話が駆け足で進むものですからあまり深く書くキャラが描写されず、少々薄っぺらい印象を受けることも。


ていうか、
ほとんど登場の機会が無くて、しかも出てきたと思ったら○○(ネタバレのため伏字)されちゃう青海さんに救いの手を。

<キャラクター>

匂坂 郁紀

主人公。ひょんなことから謎の少女沙耶と共同生活を送る事に。
序盤こそちょっと愛想が悪いだけのそこら辺のあんちゃんなんですが、中盤以降の吹っ切れてしまった彼
正直怖いです。
なかなか彼に感情移入できる人はいないでしょうね・・・
あと様々な事情から勘案する限り普通にロリコンだと思われますw。

あと名前難しすぎです。「さきさか ふみのり」なんて読める人いるんですかねこの名前。

沙耶

本作のメインヒロイン。ていうか攻略可能(?)なのはこの人だけ。
父親を探しているなかで主人公と出会い、ひょんなことから同居することに。
ロリロリです。もう本当にロリロリ。 ちょっと萌えた。

でも、この人もまた中盤以降、”無垢な狂気”っていう感じにいろいろと踏み外してしまうので沙耶たん萌え〜
とか素直に言ってられないのですがね。

戸尾 耕司

主人公の親友。友情に篤く、悪を見逃さぬ正しい心を持つ(笑)主人公よりもよっぽど主人公らしい男
もっとも、その性格が災いして貧乏くじ引きまくりですが
かなり格好いいです。

高畠 青海

耕司の恋人にして主人公の友人。津久葉 瑶とは親友同士。
いやぁ、この人なんで出てきたのかわからないって言うかなんていうか。
速攻で○○されちゃいますし。

ていうか登場の機会が無さ過ぎてコメントのしようが無いです。

津久葉 瑶

主人公に密かに想いを寄せる少女。高畠 青海とは親友同士。
一途に健気に主人公を想い続ける人なんですが、口にするにもはばかられるひどい目に
ちょっとアレはプレイしてて辛かったです。

普通のエロゲーなら、沙耶と主人公の争奪戦とか起こしてそうな役割付けの人ですがそこはホラーですから、ね?


主要登場人物はこんなものでしょうか。て言うかこれ以外にほとんど出てきませんが。
存在自体がネタバレっぽい主人公の主治医丹保 凉子とかもいますが。

<グラフィック・音楽>

結構癖のある絵だと思います。特に立ち絵はラフ画にそのまま色を塗ったような感じでした。
沙耶のワンピースの裾なんかがそういった感じが顕著かと。

あと、ホラーという事で結構グロテスクなCGがあるのですが、
グロCGソフトフォーカスモードなんてものを

搭載しているため心臓の弱い貴方も安心です
これ使うとやたらをスキップが遅くなりますが、なんたって選択肢2個、既読スキップなんてはっきり言って必要ない
長さの話なんで問題はないかと。


音楽は文句なしに上質。
とくにVo曲の「沙耶の唄」「ガラスのくつ」の2曲は街角で流れていたとしても何の違和感も感じないのではないかと
思ったくらいのクオリティの高さでした。

また、画面に台詞が出ていないのに何か喋るとか、効果音の使い方とか、音関係の演出が結構凝っていました。

<システム>

右クリックメニューから昨日呼び出しの標準的なシステム。

バックログが見にくいのがちょっと難点です。それ以外は特に不満はなかったです。


あと、長くて5〜6時間でフルコンプなのにセーブ箇所が60個もあるのははっきり言って意味ないんじゃないでしょうかw

<総括>

サスペンスホラーADVと大々的に銘打って発売された割にはホラーとしては失敗だった思います。
(すごく怖かった、という方もおられるようですが)

が、ラブストーリーとしては上出来かと。少々短い事と内容的にちょっと人を選びがちであるという欠点はありますが標準以上の出来だといえるのではないでしょうか。