歌月十夜

TYPE-MOON 製作


「月姫」で琥珀さんに腑抜けにされた俺が次のターゲットに定めたのはこの「歌月十夜」。


お祭りディスクということで本編ではあまり見ることの出来なかった皆の明るいシーンを期待してはじめたのですが
果たしてその実態は・・・


てなわけで「歌月十夜」レビューです。

・・・余談ですが俺はこれをはじめ「うたつきじゅうや」と読んでいました。
本当は「かげつとおや」だったんですね。 馬鹿だ俺。

<ストーリー>

夏。
・・・「月姫」の出来事から数ヶ月。
「月姫」の頃には想像でしかなかったヒロインたちとの穏やかな日々。

満たされた、何の不安もない毎日。



・・・の、はずだった。
ただひとつ、前日の記憶が全くないということを除けば。
不安を抱えつつも、それを解消するすべはない。なんたって、翌日の朝には全てを忘れてしまうのだから。

そんな中、主人公は無口な少女、レンと出会う。
それは、幸せな時間の終わりを意味していた・・・






ここだけ見るとえらいシリアスなストーリーっぽいですね。

実際はギャグ半分シリアス半分といったところでしょうか。

ネタばれになるので詳しくは書けませんが、とあるトリックを使うことにより月姫のように各ヒロインのエンドの内容が著しく異なる
マルチエンド型ADVでは難しい「どのヒロインともそれなりに仲のいい状態での本編の後日談」を実現しているのは
良いと思いました。


これら本編のヒロインたちとの後日談がギャグ半分(シリアスなシーンも多少はあります)だとすると、残りの新ヒロインレンを軸に
「前日の記憶が全くない」という謎を解くべく動くのがシリアス半分でしょう。

こちらも本編月姫に勝るとも劣らないクオリティ。
相変わらず素晴らしい文章力だと思います。
トリック自体はすぐに読めますが、それでも終盤の展開は目が離せませんでした。



欠点としては、攻略が異常に難しいことがあげられます。
特定の条件を満たすことによって選択肢が増える→その新しい選択肢を選んだ先のストーリーでまた条件を満たす→・・・
という風にストーリーが進むため、気が付かないと無限ループ地獄。

「月姫」同様ヒントモードが充実しているのが救いでしょう。


俺は根性を振り絞ってノーヒントでクリアしましたがCGがかなり回収できませんでした。
素直に攻略サイトのお世話になればよかった・・・



また、「夢十夜」というSS集もあり、メインのストーリー中で条件を満たすと読める話が増えていきます。
これもなかなか良かったです。ちなみにこちらは分岐といったゲーム的要素を一切廃した純粋なサイドストーリーでした。

<キャラクター>

「月姫」から継続して登場する人達が主です。一部名前のみだった人達に絵がついたりしています。

「月姫」のキャラクターたちは本編とは打って変わってかなりはっちゃけてます。

アルクェイドは猫のコスプレとかしてるし、琥珀さんは本編とはうってかわって単なるおちゃらけキャラだし。
ほかの人もそれなりに。

皆いろいろと重いものを背負っているため「月姫」においては出来なかった明るく楽しくはしゃぐ姿を存分に見ることが出来ます。

薄幸っぷりでは群を抜いていた琥珀さんが本作においてははっちゃけっぷりで群を抜いているのは笑えました。


あとは本作のヒロインであるレン
超無口です。

キャラクタープロフィール自動生成の3属性モデルで説明するなら、


「あなたの生み出したキャラクターはこんな娘」

「レン」

レンたんハァハァ

無口
コクコク系
ロリ系



・・・こんな感じですか。
彼女も「月姫」ヒロインズのご多分に漏れずなかなか重い事情持ちでした。

なかなかいい味出していたと思います。

ていうか、
・・・うん、萌えたよ。なんたって人外ロリだし。

<グラフィック・音楽>

グラフィックは相変わらずの「月姫」の絵柄。
ですが一部新キャラクターたちは原画さんが違うのか少々タッチが違います。違和感を感じるほどでは有りませんが。

「月姫」から継続して登場しているキャラクターたちは立ち絵が大幅に追加されています。
浴衣姿やらコスプレやらもうそれはたくさん。

たった一回しか表示されない立ち絵なんかも有って努力がしのばれました。おかげでギャグをより楽しめるというものです。


音楽は、「月姫」で使われていたもの以外に3曲?ほど追加。
この追加曲が結構いい感じでした。

<システム>

これも「月姫」とほぼ同じ。
今回はかなりの回数の繰り返しプレイを強いられるため、ヒントモードとシーンスキップの搭載はまさにこのためにあったのでは、という感じです。

ほかには特にコメントはないです。

<総括>

ストーリーの項でも書きましたが、「どのヒロインともそれなりに仲のいい幸せ一杯の後日談」を実現したことだけですごいかと。
本編では一部かなりの鬱展開がありましたからね。

そしてそれを実現しているトリックそのものをストーリーに取り込み、それだけで一本ゲームが作れそうな上質のシナリオを
構築してくれるのだからさすがです。

「月姫」を面白く感じられたのならやって損はないかと。

ていうか「月姫」やってない人がこれプレイするわけありませんね。