CROSS † CHANNEL

FlyingShine 製作


いつものように定期巡回先サイトを巡っていると、いくつかのサイトで「CROSS † CHANNEL」というゲームが妙に好評でした。

俺はこれを全く知らなかったわけではなく、前にメーカーOHPに行ってストーリーやキャラクターを見たこともありました。
その時はどこにでもあるような、明るく切ない青春群像グラフティーだと思ったのですよ。


発売から1週間で忘れ去られてしまうようなどこにでもある学園もの。そんな印象。


その時点でプレイしていたゲームのあまりのクソさに辟易した俺は、「みんながそんなに褒めるなら」と軽い気持ちでCROSS † CHANNELを手に取ることに。



・・・そこには完膚なきまでの良作、いや名作がありました。
それではCROSS † CHANNELレビューです。

<ストーリー>

夏休み明け。

主人公の所属する群青学園放送部。
そこにはかって存在した結束は無かった。ばらばらの部員達。

学園の屋上では、部長の宮澄 見里がアンテナを組み立てている。

それは放送部の部活であり、かつては皆で行なっていた作業。

今では、彼女一人。

そんな彼女を冷ややかに見つめる放送部の仲間達。
そして沸き起こる対立と和解。

全ての決着がつくとき、アンテナもまた完成する。

そして放送は世界へと━━━━━





なんだかすごくあいまいですね。すいません。
しかし、このゲーム少しでもストーリーに深く言及すると即ネタバレ(しかもネタバレは作品の魅力を下げる事甚だしい)なので
このくらいしか書けないんですよ。

というかこれだけ見ると部活をがんばる少年少女たちの青春グラフティーって感じですが実際は全く違います。
(別に上で嘘を書いているわけではありません)

序盤から中盤にかけての世界の語り方が秀逸過ぎ。
プレーヤーを全く情報の遮断された状態において、そこからじわじわと小出しにされる情報によって世界観が構築されていくのは
俺好みで非常に良かったです。

物語の一番最初にこう、どどんと世界設定の説明が入り、それから日常シーンというのではなく、日常の何気ない事が世界観の説明になっている。
なにげにこれを大きな物語の破綻なしに実現しているのは凄いと思います。
俺はこういう「世界の語り方」が大好きなのでこれはツボにクリーンヒットでした。

だってそうですよ。そこに生きる人々にとってそれは当然のことなのですから。それがプレイヤーたる我々には未知の物でも。


そしてそれと関連して伏線の張り方も素晴らしい。
前述のように始めはプレイヤーは全く情報を持っていないところからスタートするので「??」というシーンもあるのですが
後に「あれはこういう事だったのか!!」と納得する事しきり。

次第に謎が解けていくストーリ全体の構成は良かったです。久しぶりに出会った先を読みたいシナリオでした。

内容的にも結構重めの話で、かなり考えさせられました。エロゲやってこんな事いってるのはかなり痛いと自覚していますが
某所で「生きる喜びを教えてくれる物語」とあったのは間違いじゃないと俺は思っています。

いや、ほんと。





そしてこのゲームを語る上で外せないのが怒涛のギャグ
序盤は本当ギャグばっかです。ツボにはまれば悶絶間違いなし。

ていうか開始数分で主人公が半裸で走りながら「乳首と風のコラボレーション」
とか言っている時点で超アホです。

他にも「跪け!!命乞いをしろ!!小僧から石を取り戻せ!!」(ラ○ュタネタ)とか、パワーパフガールズネタとか。
ヒロインの一人である山辺 美希の髪型を説明するときにハー○イオニーみたいなんていってみたりと
版権系のぎりぎりなネタ満載。


主人公が探偵の真似事をしてヒロインに質問をするときのくだりも爆笑。
年齢は」「言えません」
「20歳以下か」「はい」
「18歳以上か」「言えません」
「女子高生と女子校生、どっちがいいと思う?」「そんな言葉はこの世に存在しません」

「もう一度聞こう。年齢は?」「10万15歳です」

まさかソフ倫自主規制をネタにするゲームがあるとは思いませんでしたよ。


また、学院内のどこの教室に行っても背景グラフィックが同じことまでネタにされたときは大爆笑でした。
このライターさんすげぇよ・・・


・・・ええと、上で考えさせられる重い話とか言ってるのにこのギャグはどういうことだ、と思うかもしれませんがシリアスな部分とギャグ部分が
高いレベルでバランスが取ているので不自然さは無いです。
中盤を過ぎるにつれシリアス一色になりますし。

正直このギャグあってのこの作品だと思います。このおかげで沈みがちなストーリーにメリハリがついていると思いました。


まぁぶっちゃけて言えばシリアス&ギャグ共に最高ですと。
言いたいのはそういうことです。

<キャラクター>

このゲーム、登場人物はどこかしら痛い人々ばかりです。どう痛いかって言うのはネタバレなので言えませんが。
とりあえず、マニュアルの人物紹介を読んでの印象はきっと裏切られる事でしょう。

黒須 太一

キャラクター紹介では「人並みにエロ大王でセクハラ大王」とありますが、どこが人並みだよ。
ストーリーの項で前半は怒涛のギャグといいましたが、そのおよそ8割(推定)はこいつの下ネタギャグです。

もはや性犯罪の域にまで達しているセクハラもお見事としか言いようがありません。
「お前エロ過ぎだYO!!」
と何度画面に突っ込んだ事でしょうか。

そしてその性格付けにすら深い理由があるのです。ある意味伏線。正直あまりにも突飛過ぎて理解不能な彼の序盤の行動が
訳あってのものだったと知ったときは驚きでした。
ではヒロインたちを。

宮澄 見里

ボケボケな人です。そして眼鏡。通称みみ先輩。
ストーリー的には重要な人のはずなのになんだか印象薄いです。
きっと行動がアレなのがそうさせるのでしょう。どうアレなのかは伏せておきます。

桐原 冬子

罵り系お嬢様、なのですが仲良くなったあとのとろけぶりが凄いですこの人。
なんつうかもう。
どの位かって言うととろけ冬子を初めて見た瞬間「誰お前?」と思わず突っ込んでしまったくらい。
恐らくこのゲームで一番甘い展開なんじゃないでしょうか。

冬子ルートのラストは衝撃です。初めて見たラストだったし。

佐倉 霧

罵り系後輩。主人公に対してかなりの敵意を抱いています。場合によってはむしろそれは殺意
可愛い顔してかなり怖い人です。
何でそこまで仲悪いのか最初はさっぱりわかりませんが話が進むにつれて次第に明らかになる真相には誰もが驚く事でしょう。

まさかあんな事とは。

山辺 美希

主人公のセクハラ攻撃に動じないのはこの人だけ(笑)
主人公とは良い友人といった感じですね。良くも悪くも普通のエロゲーヒロインっぽい(普通の女の子っぽいというわけではない)人。

とりあえず、正体(というかなんと言うか)が明かされる美希ルートラストは俺的に1番の出来だと思っています。

あと、「美希の部屋だからミキハウス」(伏字なし)は版権的に大丈夫なんでしょうか?とちょっと心配。

支倉 曜子

主人公の姉的存在(自称)で婚約者(自称)で一心同体(自称)な幼馴染。
ストーリーの根幹に一番関わってくる重要な人です。
メインヒロイン、なのかなぁ・・・

とにかく万能。本気で万能。完全無欠の超人間。そして主人公に心の底からぞっこん。

他のヒロインと仲良くしているときに焼きもち焼いてるのがいろんな意味で最高です。
まぁ、あと結構怖い人でもあり。
超無表情&ボソボソ声なお方なのですが、終盤見せる笑顔が正直怖かったのは俺だけでしょうか?


とまあこんなところですね。
あと男キャラとして放送部の男子部員島 友貴&桜庭 浩 がいます。
友貴はまぁただシスコンなだけの男なんですがもう一人の男子部員の桜庭

こいつは最高です。ギャグが。

いわゆる天然系の人なんですが、その天然っぷりは半端じゃないです。
とにかくこいつが出てくるだけで笑えます。

下手すると一部のヒロイン食ってるんじゃないかと思うくらいのキャラ立ちっぷり。声優も異常に上手いし。

ちなみに桜庭ルート(801な訳ではありません)が存在するのですが、どうせギャグで進むんだろうと思っていたら
「送還」シーンで不覚にもかなり感動してしまいました。



当たり障りなく書けばこんなとこですかね。
みなそれぞれかなり重い事情を抱えた人たちです。序盤のバカな展開からは全く想像がつきませんけど。

<グラフィック・音楽>

まあ普通の絵でしょう。一部ちょっとデッサン崩れてるかな、というのもありましたが。
個人的にみんな現実的な髪型&年相応の体型なのはポイント高いです。
ま、これは好みですが俺は蛍光色の髪や無茶苦茶なリボンや触覚髪があまり好きではないので。

音楽は鳴っていたということしか頭に残っていません。雰囲気を崩す事はないですが、自己主張の少ない記憶に残らない音楽でした。

<システム>

十分なセーブ数、1個前の選択肢に戻る機能、クイックセーブ&ロード完備と水準以上かと。
バックログがもっと戻れればなお良かったですね。
伏線等で読み返したいことが多いのですが現状ではあまり戻れずちょっと不満です。

あとかなり致命的なバグがあるようなのでパッチは必須です。

<総括>

事前に抱いていた印象を(いい意味で)完全に裏切ってくれました。

幾重にも張られた伏線、次第に明らかになる謎、主人公の過去。
巧みなストーリーテリング。キャラクター達の抱く狂気。そして終幕の美しさ。


冷静に考えてみればある意味単なるお説教に過ぎないテーマをそうと感じさせずに語る終盤の展開はやってて鳥肌が立ちました。

いろいろなサイトで2003年最高のゲーム言われているのは嘘じゃないです。

ていうかこんなの読んでる場合じゃないですよ。損はさせない、やってみな。