Terra Lunar 製作
唐突ですが、みんなで何かを一緒に作るのっていいですよね。
なんていうかこれぞ青春!!って感じで。
そして俺は自分でも人力飛行機製作サークルに入っていて、航空・宇宙ネタの物語が大好きだときた。
そんな俺が「皆で作ったロケットで『自作有人ロケット競技会・50マイルズオーヴァー』出場を目指す」なんてストーリーのゲームがあると聞いてやらないわけないじゃないですか。
さて、中身のほどはどうだったのやら?
それではレビュー行ってみましょうか。
そこは、私たちの地球とはほんのちょっとだけ違う歴史をたどった世界。
それは、異星人とのファーストコンタクトによって第二次世界大戦が終わった世界。
かって天空の星と地球を、銀色に輝く恒星間ロケットたちがつないだ世界。
主人公真幌 高志は、自作ロケット打ち上げで天才少年と呼ばれた昔の日々に背を向け、幼馴染の香奈城 歩と平穏で代わり映えのしない日々を送っていた。
「シャットダウン」と呼ばれる鎖国政策によって、地球と宇宙の交流が一切断たれた中で。
幼い頃から抱いていた宇宙への情熱を失い、惰性のように生きる毎日。
だがそれは、彼の前にパラシュートで落ちてきた転校生の少女夏海 千星によって唐突に破られることになる。
「シャットダウン」によって宇宙との交流が断たれた中、一般人にとって唯一の宇宙へ行く手段。
それは自作有人ロケット競技会、通称「50マイルズオーヴァー」に出場すること。
彼女は主人公たちの通う学園にロケット部を設立し、「50マイルズオーヴァー」出場を目指すのだと言う。
不本意ながらも千星を手伝ううち、主人公は以前のロケットに対する情熱を取り戻していく。
サヴォア星から亡命してきた王家の姫君セレン、その護衛兼メイドベルチアもひょんなことから主人公たちのロケット作りに加わる事に。
そしてそれを見守る主人公の担任はるひ。
目指すは大会最大級ロケット・アルバトロス級での50マイルズオーヴァーへの出場!!
「ロケットの夏」がいま始まる・・・
うーん、ライトSFですねぇ。大好きですこの雰囲気。
みんなで50マイルズオーヴァー出場に向けてロケット製作を頑張る序盤ストーリーは、まさに青春グラフティーといったノリで
目新しさは無いのですがテンポ良くまとまっていました。
各ヒロインごとの個別ルートに入るとそれが一変。
ロケット製作にまい進するルートあり、主人公をロケットと決別させた過去のトラウマをめぐる話あり、サヴォア星の王位継承権争いの話あり。
「皆でロケット作り」だけに縛られること無くいろんな展開があって飽きさせません。
千星シナリオのロケット打ち上げ、セレンシナリオラストの「ロケットの歌」、ベルチアシナリオの戦闘シーン、はるひシナリオの主人公の行動、そして歩シナリオの「帰ってきたロケットの夏」
全部燃えます。泣けます。
ロケット作りという話の発端からよくあれだけのバリエーションが出たものです・・・
ちなみにこの「ロケットの夏」というタイトルは、レイ・ブラッドベリの「火星年代記」中の同名のSF作品からの引用です。
元ネタ知ってると結構ニヤリと出来ます。知らなくても全く支障は無いですが。
欠点としては、いかんせんストーリーが短いということですね。(歩シナリオ以外)
「起承転結」の「転」の部分が少々物足りない気がします。
ちなみに歩シナリオだけはほかと比べてやけに長く、こういった問題点が感じられないのはやっぱり
メインヒロインだから優遇されてるんでしょうか?
主人公。
真性ロケット馬鹿。なんだかんだ言ってこいつの情熱は本物だと思います。行動力あるし。
ありがちな「自分が宇宙に行きたい」というタイプではなく「自分の作ったロケットを宇宙まで飛ばしてみたい」という
ある意味最高に潔いやつ。
やたらと鈍感で朴念仁なのはまぁエロゲの主人公だからってことで。
以下ヒロインズ。
ロケット大好き純情娘。ヒロイン中唯一の生粋の地球人。
ちなみに名前は「なつみ ちせ」と読みます。姓名ともに名前みたいです。
道でぶつかった女の子は転校生、というのはよくあるパターンですがこいつの場合
パラシュートで空から降って来て主人公とぶつかります。
初めて見たときはびっくりでした。
彼女のおかげでいったんはロケットから遠ざかっていた主人公はロケット作りを再開することに。
なんといっても千星シナリオはロケット打ち上げシーンでしょう。
あれは燃えます。本気で燃えます。こんな感じに↓
50マイルズオーヴァーキタ━━━(・∀・)━━━!!
サヴォア帝国連邦第3位王位継承者。
ロリロリな異星のお姫様。そして猫しっぽ付き。
猫から進化した猫人間(主人公談)らしいです。
猫缶好きだし。
セレンシナリオでは主人公がロリの道に目覚めますw
セレン同様サヴォア星人。ていうことでやっぱり猫しっぽつき。
亡命してきたサヴォアの姫様であるセレンの護衛兼メイドです。
剣一筋に生きてきて男性に免疫がないお姉さん。後半の照れっぷりは見ているこっちが恥ずかしくなってきそうです。
あと戦闘シーンは燃え。
そしてこいつらサヴォア星人二人となぜ意思疎通が可能なのかとか突っ込んじゃいけません。
サヴォアの科学力に不可能はないのですよ、きっと。
異星からもたらされた技術で作られたアンドロイド教師。主人公の担任の先生。
「シャットダウン」によって地球と宇宙の交流が絶たれた現在、地球の技術レベルを超えているアンドロイドを保守することは難しくなっており現存するアンドロイド教師は全国で彼女一人。
すでに稼動20年を数えるベテラン。
はるひ先生はあまり萌えませんが、はるひシナリオでは主人公とサブキャラのチャックの行動がかなり格好いいです。
ダルメイア星人とのハーフ。エルフ耳。
栗色の髪も、緑の瞳も、エルフ耳も、やたらと幼児体型なのも、全てはその半身を流れるダルメイアの血の為せるわざって事で。
こういう事言ってるとなんとなく歩ママ(ダルメイア星人)の想像がついてきますね。出てこないけど。
主人公を「おにいちゃん」と慕う幼馴染。当然同じ学校に通っています。
あまりに虚弱体質で朝に弱いため毎朝(でもないけど)主人公が起こしに行ってます。
そして文句なしのメインヒロイン。歩シナリオの気合の入り方は尋常じゃないと思いました。
プレイするときは歩シナリオはぜひとも最後に持ってきましょう。
ロケットのジャンクヤードを経営する男チャック、航空宇宙開発協会のおっさん(名前不詳)など男性キャラが非常にいい味出してます。
とくに航空宇宙開発協会のおっさんは台詞が数えるほどしかなく、出てくるのもたった一回なのですがそれでも記憶に残ってしまうくらいでした。
特に目立って下手なわけでもなく、かといって強烈な萌え絵でもなく普通の絵柄ですね。
穏やかな作品の雰囲気に良く合っていると思います。
背景も「閉鎖された宇宙港を抱える一地方都市」という設定をいい感じに表現していると思いました。
悪く言えば派手さが足りないともいえますが。
音楽も同様。
「ロケット作りにかけたひと夏の思い出」といった感じの非常にいい雰囲気をかもし出す曲たちでした。
ED曲のボーカルがもっと上手なら良かったんですがね・・・
特に特筆すべきことはない普通のシステムですね。セーブ数がちょっと少ない気もします。
それ以外に不満は感じませんでした。
あと、これはシステムの項に入れるべきなのかちょっと迷いましたが、歩シナリオは千星シナリオクリア後でないと入れません。
(選択肢が消滅する)
これがいったい何人のプレイヤーを泣かせたことでしょう。
俺はプレイ当時人力飛行機製作サークルに属し、毎年夏の鳥人間コンテスト出場を目指すという見ようによってはかなりこのゲームと似た境遇にいたため、かなり感情移入してプレイする事が出来ました。
そういった贔屓目を引いてみても「ロケット作りにかけたひと夏」の雰囲気を十分に描ききった良作だと思います。
確かにストーリーはご都合主義かもしれません。ありきたりなハッピーエンドばかりかもしれません。
が、それだけでは終わらない何かを感じさせてくれることも確かでした。