Alfa System 製作
2000年秋。ふと手に取ったゲーム雑誌のガンパレードマーチ紹介記事。そのとき俺はこう思いました。
「なになに、幻獣とかいうモンスターに満ちた世界で高校生達が人型機動兵器に乗って戦う?
なんてヲタク臭い話だ」
キャラ紹介も前にどこかで見たようなキャラばかり。人型機動兵器も、スタイリッシュなデザインとも、兵器としての
無骨さとも無縁な野暮なデザイン。
唯一心に残ったのは、登場キャラの中に「スカウト(戦車随伴歩兵)」という職業の奴がいたこと。
Ring of Redのときと同じですが、しかしこの時は他のマイナス要因に目が向いて買おうという気にはなりませんでした。
これがその2年後、俺の生活を完全に変えそして未だに影響を及ぼすゲームとの出会いでした・・・
とまぁそんなわけでガンパレードマーチレビューです。
いきなりクソゲーっぽい始まりですね。実際当時の俺はそう思っていました。
が、発売後ほぼ全てのゲーム雑誌がガンパレを黙殺するなか電撃プレイステーションだけが
狂ったように攻略記事を連載し、絶賛していたのですよ。
(小説やアニメ、マンガなど他メディアにも進出してそれなりに人気が出た今(2003年9月)からは
考えられない状況ですね、これ)
それらの記事を読んでこのゲームが既存の「自由度が高い」なんてのを遥かに超えたレベルでの自由度を
実現している事を知り、相変わらずヲタク臭い設定は鼻につきましたが購入してみることに。
(開始30分経過)
ごめんなさい、私は間違っていました
プロローグ。
なんかいきなり地球上の7割くらいは幻獣支配地域だし。
大陸がやられて幻獣の日本上陸を防ぐ最後の砦が熊本だし。
大人の軍隊が損害を回復するまでの数ヶ月の時間稼ぎ(全滅前提)の学兵(高校生兵士達)
なんてハードすぎだし。
そして戦車学校に入学する主人公。
チュートリアルで教官がこんな事言うんですよ。
「(前略)
自分達は勇敢で、自分達こそ、この国を守る最後の盾、この国の剣のその切っ先。
自分達の後には、もう何もないと。
血の池に足を突っ込んで、砲弾の嵐を潜り抜け、戦友の死体を踏みつけて行くとき、弱っちいが
いつもそれが最後の頼りになる。
(略)
困ったときに最終的に助けに来るのは、心だ。心だけは、良い思い出は裏切らない。
これは個人でも、国でもおんなじだ。
土壇場の土壇場で軍が頼るのは、お前達一人一人の、この国の良い思い出だ。
それが良くないなら、この国は滅ぶだろう。
良い思い出がいくつかあれば、サムライは集まる。この国を守る若いサムライがな。」
「あなた方は、人類の天敵、幻獣と戦わなければならない。
…だが、それは戦って死ねと、言っているわけではありません。
もっと酷いことを、私は考えています。
それはね、戦争が終った後、疲弊したこの国を建て直すそのことも、あなた達に任せようと
思っているんですよ。
そのためには、死なれては、死んで英雄になられてはこまります。遺族年金も馬鹿にならない。
戦え、壊せと言っておいて、今度は立て直せという。ひどい話です。…ですが、まあ、
戦えとか死ねとかよりはいいでしょう。
サムライは武器を置いた後、国を復興させるために働き始めました。めでたしめでたし。
それがいい。」
・・・正直、こんな台詞をこのゲームで聞けるとは思っていなかったので仰天しました。
そうです。見かけのオタク臭さのなかには、やたらとハードなミリタリー魂が入っていたのでした。
後の直属上官の
「そうだ。新兵ばかりで何が出来る。
国がどうだか知らんが、俺は兵の無駄遣いは好まん。人間はもっと効率よく死ぬべきだ」
なんていう台詞を読んで
俺は佐藤大輔の小説でも読んでるんですか?!
と思うことに。明らかに影響受けてますね。「皇国の守護者」の実仁親王かよ。
他にもここでは紹介しきれないくらい台詞がかっこいいです。本気で感動します。
自分達の部隊も、「ポテンシャルは物凄いのだが恐ろしく扱いづらい試作人型戦車を運用する
独立駆逐戦車小隊」ですからもうこの時点で俺のようなミリタリーな人は感涙ものです。
システムも凄いです。
いわゆるアドベンチャー、PCキャラを操作して他の人と仲良くなったりしてそれによってイベントが起こったりするというおなじみの奴。
しかし、このゲームにおいては、全登場キャラにAIが搭載されており、ライターの描いたシナリオに
沿ってではなく、PC以外のキャラクターは自らの意思で行動します。
おかげで他人の行動を見ているだけで面白いです。時折NPC同士で恋人関係になってたりするのもびっくり。
そういった他者との人間関係のシステム化も秀逸です。
これはこの程度の文章では説明しきれないので、とにかくやってみてとしか言えないのですが単純な選択肢で
「好感度」を上下させるだけではない人間関係システムにも感心しました。
しかしPC以外の男のほとんどがロリっ娘「東原 ののみ」(9歳)に心奪われていたときは
「こいつらAIのくせしてロリコンかよ・・・」とちょっと嫌になりましたね。
そしてキャラ。
メインの奴ら(つまりAI搭載)が25人もいます。ここ参照。
女はお姉さんからロリ、眼鏡っ娘から冷たい系まで。
男は色男からスポーツ少年、耽美系から肉体派まで。
キャラの立った奴らが25人。
正直言って、これだけいれば誰かしらお気に入りが見つかりそうですね。
(俺のお気に入り 1 2 男じゃないよ)
皆なかなか深い台詞を言ってくれていいです。
そして自由度。
ゲームをしていて、ゲーム内でお金が必要になったとします。
アイテムを売る?いいかもしれません。
アルバイトをする?いいかもしれません。 普通はこのくらいですか。
誰か仲のいい人からお金を借りる? 金目の物を持っている奴を殴り倒してそれを奪う?
仲のいい人とアイテムを交換してそれを売る?むしろ自分でアイテムを作ってしまう?
とりあえず現実でできそうなことは大体できます。
お姉さん系キャラの「原 素子」さんでプレイしていたとき、背に腹は変えられず
お金のために自分の体操服を売った時は正直悲しくなりましたね。
俺としては見逃せない戦闘システムも良かったです
独特の行動入力システムを持つ戦術シミュレーションです。
上手くなると、
数十体の敵幻獣を一発も被弾しないで全滅させたり、
ドット単位で敵の射線をよけて反撃したり、
ていうか人型戦車乗らないで人間として出撃してみたりといろいろ遊べます。
先読みと戦術が要求されるなかなかいいシステムだと思います。
この時も味方の戦闘参加キャラクター達はAIで動くため、彼らの働きに一喜一憂しつつの戦闘です。
それもこれもこのゲーム、戦闘で撃破されるとそのキャラが
本当に死んでしまう(マップから撤退などではなく)ので
殺させたくない場合守ってあげなきゃいけいんですね。(殺したい場合はほっとけw)
とある戦闘で、プライベート(学園編)で仲のよくなかったキャラの機体が撃破され、マップから脱出しようとする
そいつに敵の攻撃が集中したときに「お前のことは嫌いだがな、死なれる訳にはいかねぇんだ!!」
なんて脳内で台詞を作り出して敵射線のど真ん中に自分の機体を持っていって射撃をひきつけ、
脱出までの時間を稼いだときはちょっと自分で感動しました。
別にイベントでそうなった訳ではなくて俺がそう操作したのですが。
そうです。これもまた魅力。
AI制御のため基本的性格付け以外は毎回のプレイごとに違った行動を見せてくれるため、
へたなSSよりもSS風味なプレイ日記の方が面白い、というのもこれの特徴ですね。
とまぁ、普通にゲームとしての魅力はこんなものでしょうか。
はっきり言ってまだまだ語り足りないのですが、長すぎてもいけないので。
とりあえずこんな口で言って全てを表現できるようなちんけなゲームじゃないんだよ!!てことで。
でも、あのバグの多さだけは何とかしてほしかったなぁ・・・
では、エロゲーレビューなんてやってる俺にふさわしく(?)このゲームのもう一つの顔を。
といってもそんなに凄いものではないですが。
このゲームには前述の人間関係のシステム化の一環として「雰囲気システム」というのがあります。
隊司令や教官がマップにいれば「真面目な雰囲気」になって喧嘩を仕掛けられなくなり、
泣いている人がいれば「暗い雰囲気」になってデートに誘えなくなるといったものです。
ここである程度以上仲良くなったキャラ(同性・異性問わず)とPCがマップで二人きりだと
Hな雰囲気に突入することに。
ここで相手に話しかけたときの台詞がもうそれはそれは凄いんです。
どのくらい凄いかというと
「何でこれでソニーチェック通ったんだ?」と首を傾げたくなるほど。
いくつか抜粋してみますか?
「…へ…変な、…変なことをする…。か髪なんか触っても面白くないだろう…
う…いや…そ、そこなら…まあ嫌ではない。」
「…驚いた?
ふふっ、案外うぶなんだね。耳に息吹きかけられたぐらいで。次はどこがいい?」
「綺麗だよ。本当に綺麗だ。
…君を隅々まで冒険したい。」
「…うち悪い男にだまされてるとちゃうか。
お前やお・ま・え。この、ここで、こうやって遊んでるお前や。…え…バカ…だいぶ上手。」
「どーもうち、だまされてるような気がするんやけど…手ばっかり動かさんと…もっとウチの顔…
そ…それや…それがうさんくさ…ふぁ。」
「…ん。あー、誰かが見ているような気がするが…
まあ、いいか。
…そこは、こうやるんだ。こう…うまいぞ。」
「へえ。こうなってるんだ。
…ふぅん。
…なによぉ、もっと嬉しそうな声出してよね。」
「…俺の手、中々いいだろ? 歴戦の勇者ってところさ。
今のところ君にしか使う予定はないがね。」
・・・あなた達はなにをしてるんですか(´Д`)
もちろんCGなんてありません。全年齢対象ですから。
画面に写るのは照れ顔のバストアップだけです。
しかし、これ、
下手なエロゲーよりもエロいと思うんですけど?
(想像が・・・想像が・・・あぁぁぁぁぁぁぁ!!)
初めて見たときは悶絶でしたね。
場合によっては男同士や女同士でもこういう台詞聞けるし。
男同士でHな雰囲気になり
「目を開けたまま、聞いてください。
…僕を、軽蔑してください。僕は、僕が一番嫌いな父と、同じことをしている…。」
というのを見たときは
お前は親父に何をされたんだね、遠坂君?
そして何で俺はそういう状況になってるのかね?
もう突っ込みどころ満載でした。
まぁとにかくこのゲームは(趣味にあうあわないは別として)間違いなく良作だと思います。
ほぼ宣伝なしで累計10万本以上の売り上げを出し、発売後約三年(2003年9月現在)が経過する
今になっても中古がほとんど出回っておらず中古価格が4000円程、というのがそれを証明しています。
ぜひともプレイしてみてください。
そこには、彼らの生きる世界があるのです。