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■ 暖炉について ■
ゆらゆらとした火の前で
お父さんはソファーで読書
お母さんは小椅子で編み物
子供たちは床でペットと戯れる
そんなゆとりの空間を
楽しんでみませんか?

■暖房を楽しむ

 毎日寒い日が続きますが、やはり部屋は暖かくしたいものです。最近はエアコンや温風暖房機が普及してきまして、スイッチ・ポンで手軽に部屋を暖める事が出来る様になりました。でも、何やら味気ないですね。何でも楽しんでしまうのがデザインの基本。そこで今回は暖房を楽しむ「暖炉」をとりあげてみました。

■暖炉の話

 火は人類とは切っても切れない関係にありますね。ゆらめく炎の輝きは見ていても飽きないものですが、言い換えれば有史以来の友でもあります。その火を住まいに取り込み単なる暖房の手段からインテリア・エレメントに昇華したのが暖炉ですね。いわば日本の床の間的な存在でもあります。

■暖炉の種類

 一口に暖炉と言ってもいくつかのタイプがあります。それを大きく分けますと。
 「埋め込み型」壁の中に埋め込むタイプで古くからあり最も知られたものですね。本格的なものになると石やレンガで煙突まで作るのですが、最近は重要な部分を鉄等で作ってユニット式にし、これを壁に埋め込む事が多くなっています。
 「ファイアープレイス型」暖炉の主要な部分を一体化しておき、(火箱といいます)それを据えつけ、煙突とステージ(暖炉を据え付ける部分)を施工して完成させるタイプです。いわば簡略形式ですね。
 「ファイアーフード型」周囲がオープンになっていて火を燃やす所(火床)の上にフードを吊り下げてあるタイプです。他の形が部屋の隅や壁面につけられるのに対して好んで部屋の中央に設けられます。いわば囲炉裏タイプですね。

■暖炉の注意点

 なかなか優雅な存在である暖炉も据え付けるとなるとけっこう大変なものです。この為に敬遠される方も多いのですが、ポイントさえ押さえておけば大丈夫ですよ。
 1、基礎をしっかりと固める。
 暖炉は総重量が1TON近くになりますから、それを支える為に基礎は頑丈にする必要があります。特に木造では充分な補強が必要ですよ。その為に木造の二階に設置するのは避けた方が無難です。
 2、煙突の処理を適切に。
 暖炉には煙突が不可欠ですね。煙突の支えをしっかりとして、木材等の可燃物から15cm以上離すか10cm以上の不燃物で覆う事が義務付けられています。また、煙突を充分断熱しますと安全ばかりでなく煙の引きも良くなります。
 3、断熱材に注意する事。
 火を扱うわけですから、熱量もけっこう大きくなります。ですから使用する材料も吟味しましょう。造り付けの場合には火箱を耐火煉瓦にしたり鉄板を二重にして空気層を設ける等の対応が必要です。また、石で造る場合には大谷石を使う事、他の石では水分を含んでいるので高温になると小爆発を起こす恐れがありますよ。またタイル張りはタイル自身が大丈夫でも下地のモルタルが熱に弱いので、はげ落ちる事がありますよ。

■その他の注意点

 給気や換気に注意しましょう。
火を燃やすには空気が必要なのはご存じの通りです。暖炉を使うのには多くの空気を給気してやらなくてはなりません。火床には外部より新鮮な空気を供給してやりましょう。また、暖炉と同じ部屋に換気扇がありますと空気の流れが乱れますので、別に給気する必要があります。
 内装にも気を付けて。法規では2階建ての2階や平屋建を除いて、火を使う部屋の内装が制限されています。その場合には、壁や天井の材料を準不燃以上の防火性がある材料で造る事が必要ですから注意して下さい。具体的には石膏ボードに準不燃のクロス張りや不燃ボードがそれにあたります。

■おわりに

 日本も昔は囲炉裏(いろり)があり、暖まりながら家族団らんを行う場所となっていました。同じ様に西洋では暖炉の火を囲んで団らんの場所となっていたわけです。ですから、暖炉はインテリアの中心として存在しており、暖炉に近い方が上座的な位置になっています。
 暖炉はぜいたくと言われる方もいますが、生活を豊かにする「ごちそう」としての火を楽しむのも、また楽しいものですよ。
 ※[月刊-住まいの情報館/1997年1月号] (C) 1994-2003 HiroshiKouno.