何を隠そう「ツツイスト」



 

 私は何を隠そう「ツツイスト」です。
 日本SFの初期を知る人がよくたとえ話をします。まだ、SFという言葉もジャンルもなく、ミステリーは探偵小説といわれていた黎明
期、星新一が「SF」という星を発見し着陸した。その星を小松左京がブルドーザーで地ならしをし街を作り、高速道路を造った。そこに
スポーツカーで颯爽と乗り込んできたのが筒井康隆だと。

 中学生の私は、氏の思わずニヤリとしてしまうブラックさと、とても映像にはできないドタバタスラップスティックにたちまち引き込ま
れ、寝食も忘れてばりぼりとむさぼり読んだものです。

 あれから30有余年、全集は予約して初版の配本から手に入れ、ほぼすべての作品を読み続けてきた紛れもないツツイストの私が、
久しぶりに文句なしでお勧めする
エンターティメント。最新刊『銀齢の果て』 新潮社刊 1500円です。

 和菓子屋の隠居 宇谷九一郎が住む宮脇町でも「老人相互処刑制度」俗称シルバー・バトルが始まった。町内には、もと自衛官、神
父、プロレスラー、正体不明のもと大学教授、幼なじみなど、「強敵」五十九人が犇めいている。

 いまや爆発的に増大した老人人口調節のため、厚生労働省は70歳以上の国民に殺戮合戦を命じた。管理するのは中央人口調節
機構CJCK。老人であることは悪なのか? 

 もうお分かりのように、「バトル・ロワイヤル」のパロディですが、昔の「俗物図鑑」を彷彿させる超ドタバタスラプスティックスのマシン
ガン攻撃です。筒井御大の弁によれば、老人差別になるので、自分が70になるまで書くのを控えていたそうな。

 登場人物は80人にものぼり、実に150人も殺しまくります。がははは。しかも、この本には「章立て」や「行替え」が一切なく、便所に行
く暇を読者に与えません。私は、75分で一気読みしました。

 本文中には筒井康隆作詞、盟友山下洋輔作曲の「葬いのボサ・ノバ」の楽譜まで収録され、(これは30年以上前に作られたボサ・ノ
バそのもののパロディだそうで、氏曰くメタ・ノバだそうな) ジャズ大名ばりにBGMにするもよし。装丁、挿絵はこれまた盟友山藤章二。
登場人物41人が挿絵で楽しめます。

 筒井作品で老人をテーマにしたものには「敵」(新潮社 1998年刊 年をとって人が壊れていく様がとっても怖い本です)や、近年映画
化された「私のグランパ」などがありますが、この本は『虚航船団』や『俗物図鑑』などに連なる、登場人物全員滅亡の系譜といえるでし
ょう。氏はいいます。「同じテーマを抱え込んだ連中の滅亡というのはロマンでもあるし、人類最後のテーマでしょう。近く人類が滅亡す
るということはもう確実なんだから、もしかするとこれは最後の文学的テーマかもしれませんよ」


【蛇足】この本のもう一つの楽しみ方。これを映画化した場合の登場人部の配役を考えながら読むとリアリティが増して更にぎひひひ
ひ。筒井氏はやはり津幡教授でしょう。

(2006年2月 トラボルタのBeCoolを観ながら)




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