大好きな脇役


 私は脇役が大好きである。それも主役を食ってしまうほどのクセ者がいい。彼らはストーリーの中に強烈な記号を作り上げ、そのスト
ーリーを長く私たちの記憶に焼き付けてしまう。そのせいか、役者の名前よりもその役名で呼んでしまうほどだ。だから私にとって佐藤
隆太は「マスター」だし、岡田義徳は「ウッチー」であり、北村 一輝は「聖也」なのである。

 彼らは役作りのために方言を駆使したり、体重を増やしたり、減らしたり、すごい人になると役作りのために歯を抜いてしまったりす
る。

 才能や運に恵まれる主役と違い、たゆまぬ努力で「個性」を作りあげる脇役たちに、私は「プロ」を見る。ゆえに、彼らに憧れ、日夜
ブラウン管の前でエールを送るのである。

筧利夫
 劇団☆新感線、劇団第三舞台に所属し、後者ではほとんどの作品に参加。1992年のTBSドラマ「ホームワーク」で、福山雅治の上司
役を演じ注目され始め、「踊る大捜査線」「やまとなでしこ」あたりから広く知られるようになる。

 彼はコンテクストからはみ出してしまう、ハチャメチャさがいい。それは「踊る大捜査線」では<陰>な意味で、「やまとなでしこ」では<明
>な意味で、強烈な記号を残す。それが主役とのコントラストを演出し、ストーリーにメリハリをつける。出自のせいだろうか、古田とか
渡辺にも似たものを感じる。

阿部サダヲ
 芸名の阿部サダヲは戦前の阿部定事件の阿部定からきている。当初はその顔色の悪さから松尾に「死体写真」なる芸名をつけられ
るところであったという。 

 大好きになったのは木更津キャッツアイの猫田役。うるさい、うざい、せこい。このノイジーな記号は彼のものだろう。筧がノイジーで
も阿部のうざさにはかなわない。そのうざさつながりで、「ぼくの魔法使い」のマモルン、「タイガー&ドラゴ」ンのどん太はよかった。「ア
ンフェア」とか「医龍」の陰湿さもうまいが、私はうざい阿部の方が好きだ。

大倉孝二
 舞台芸術学院卒業後、劇団ナイロン100℃のオーディションで合格し、役者の道に入る。 俳優の八嶋智人と親しく、売れない頃には
居候し、小遣いまでもらったこともあるそう。 舞台の直前はいつも逃げ出したい心境になると言う。また 何かしていないと物事を暗く考
えてしまう性質があるとも言う。

 大倉孝二はキワモノだと思う。いちばん忘れられないのは、「ぼくの魔法使い」の小松ちゃん役。でっかい色眼鏡をかけて、大きな口
をあけて驚嘆のポーズをとる。これがシーンの切れ目づくりにものすごく効果的だった。他にも「富豪刑事」とか「西遊記」とか、キワモノ
キャラがシーンにコントラスを作る。こういう役者さんがひとりいるとシーンがしまるよね。余談だけど、「未来講師めぐる」のエロビデオ
はゼッタイこの人の方がいいよね。

渡辺いっけい
 大阪芸術大学の時、劇団☆新感線に参加。卒業後上京し、状況劇場に入団し、1988年退団。

 最近は俳優だけでなく、格闘技番組の司会や、K-1のリングアナウンサーも務めている。学生時代は漫画家志望だった時期があり、
雑誌『ビックリハウス』の常連投稿者。芸名の由来は、当時のペンネーム「渡辺いっけい(名前を音読みしたもの)」からきている。

 渡辺いっけいは、「美女か野獣」の報道記者や「LIAR GAME」の巡査、「ガリレオ」の万年講師のように、中年で、せこく、うだつのあ
がらないダメキャラで、主人公を引き立たせる役どころが多い。が、私がいちばん好きだったのは、救命病棟24時パート2の、小田切
医局長役であった。

 小心だが、正義感まるだしで突っ走り、最後は過労死してしまうその姿は涙なしでは見られなかった。とにかく演技がうまいので、誰
もができる訳ではないダメキャラを拝命しているのだろうが、私は小市民×正義感の渡辺いっけいがもう一度みたい。

北村 一輝
19歳で上京し、事務所やオーディョンを受けまくり、自力で仕事を取るものの、なかなか芽が出なかった。「ひと夏のパパへ」へのパパ
役で知られるようになり、「あなたの隣に誰かいる」「タイガー&ドラゴン」などを経て、「夜王」の敵役が当たり、広く名前が知られるよう
になった。

 とにかくどんな役でも完全になりきるのが彼の魅力。「あなたの隣に誰かいる」では謎に包まれた殺人鬼、「夜王」では1ホスト、「バ
ンビ〜ノ!」では陽気で、イタリアチックな給仕長役を演じた。

 なんでもできるというのは、実は周到な役作りにあるようで、おかまバーのママ役を演じた映画「鬼火」では、何週間も新宿二丁目の
通りに立って声をかけられるのを待ったそう。また映画「JOKER 厄病神」では台本を読み、自身がイメージするチンピラの役作りのた
めに、前歯を9本抜いて作りをしたそう。

 彼の場合は、変幻自在に作り手が望む脇役に徹してくれるところが魅力なのだろう。だからこれという記号を強く形成してはいない
が、主人公を引き立たせるために重要な役どころは彼に任せられるのだと思う。こういう役者はなかなかいない。



トップへ
トップへ
戻る
戻る