愛するお店【神楽坂】


 私は神楽坂が大好きだ。神楽坂は街の佇まいがいいというのはもちろんだが、酒も肴もうまい店が多く、かつその店の人の態度も
絶品である。おまけにリーズナブル。高いというイメージがあると思うが、それはほんの一握りの店で大半はとてもリーズナブルであ
る。

 今回は、特に私が愛してきたお店を紹介したいと思う。

 トップバッターはおそらくいちばん通っているであろう「河庄(かわしょう)」。私がまだK社にいた時、お世話になった編集者に紹介して
いただいた。それからかれこれ20年通っている。

 ここは店の佇まいがいい。店先にはでかい提灯がさがり、昔の飲み屋の風情がある。中は右がカウンター、左が小上がり。右のカ
ウンターは昔、この店のご主人がいつもお酒を飲んでいて、いろいろな話を聞かせてくれた。若い頃はこれが楽しみで通っていた。

 最近はもっぱらここの肴にひかれて行くことが多い。つき出しで出てくるイモの煮っころがしは柚子の香りに溢れ、絶品。これだけで
酒が進む。刺身も常時3、4品、旬のものが用意してあり、これもうまい。特にしめさばのような仕事がしてある刺身がいい。おいしいと
ころをほんの少しだけ酢で絞めてある。これが本当の職人技である。

 また、お焼きの煮付けも京都風でおいしい。薄い出汁でお焼き(焼き豆腐)が煮つけてある。私はこのお汁を肴に日本酒を嗜むのが
好きだ。音楽もない。うるさくもない。割烹着を来た「お母さん」が、「これもどうぞ」とサービスでいろんなものを出してくれる。こんな店、
神楽坂以外にはない。

 二番目は理清蘭。韓国料理店と私は思っている。が人によっては焼肉屋と認識している人もいるであろう。某有名野球選手が愛す
る店として、マスコミ筋では有名である。

 この店は客の注文があってから、火を起こし、肉を切り、仕込みをする。だから料理が出てくるのは遅い。が、とにかく肉はサイコー
である。こんなうまい焼肉は食ったことがない。

 スペシャルカルビという刺身で食えるような肉を、少し炙って食べるメニューがあるのだが、これを食すと「これが焼肉か」、と感動す
る。

 とはいえ最近は油が多い肉はつらくなってきたので、タン塩、塩ミノなどを楽しんでいる。

 料理も格別にうまく、お勧めは餃子、から揚げ、ポテトサラダ。特に餃子は使った肉の切り落としを材料にしているので、ものすごくお
いしい。

 最近の注文の仕方は、ポテトサラダや餃子をお願いして、塩ものを焼いて、カルビで〆るというもの。ジンロのレモン&水割りもいい
し、マッコリもいいし、最近はワインも豊富なので、それを合わせてもいい。

 次は牛丸。和の肉屋である。私は昔から魚党で、肉にはさほど食指が動かない方であった。が、ここだけは違う。肉の食べさせ方が
絶妙で、この店だけはついつい行きたくなるのだ。

 店の前には小さな行灯があり、その先に入り口があるのだが、この入り口が小さくて入りにくい。そのせいか、この店の敷居は高
い。きっとこの入り口がイヤで入るのをあきらめた人は多いのではないか。とはいえ、いつも混んでいる。当然だよね、なにしろうまい
んだもん。

 最初は刺身で出てくる。それもほんの三切れ程度。それが絶品なのである。ほんのちょっとタレがついているのだが、それを一切れ
ツルンと食べる。好みの日本酒をツーと飲み込む。この感動は言葉にできない。ぜひ行って体験して欲しい。

 続いて焼き物が出てくる。串にさされたタンがほんの少し出るのだが、食べてしまうのが本当に惜しい。とはいえ、アツアツのうちが
絶品だから食べないわけにはいかない。パクッ。日本酒をツー。ああ、私はなんて文才がないんだろう。このうまさが文章では表現で
きない。

 そしてメインイベントである。牛丸では最後にステーキが出る。といってもほんの少しである。ヒレとロースがほんのちょびっとづつ出
る。腹が減っていれば、一口でいってしまえる量である。しかし一気にいってはダメである。一口食べて、日本酒をツー。感動。また一
口食べて、日本酒をツー。感動。これを繰り返して、ありがたみをかみしめるのである。


トップへ
トップへ
戻る
戻る