グリーンコーラのマーケティング


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アサヒから出たグリーンコーラを知っていますか?5月の終わりの頃、氷室京介氏を起用したTVCMや交通広告がバンバン出ていて、1
度は試してみた方も多いと思います。

かくいう私も、あまりTVCMに出ない氷室氏とグリーンコーラというネーミング、「コーラが素材にこだわって何が悪い?」という挑発的なコ
ピーにそそられて、さっそく試してみました。

その時、家族もどんな感想を持つのか興味がありましたので、妻と子供ふたりの分も買って、全員で飲んでみました。

すると、全員「おいしい」ということになり、これからはグリーンコーラにしようと買い置きするようになりました。

なんでおいしいのだろうか?TVCMや商品パッケージでメッセージされていることを列挙すると、

■CMから
・大人炭酸
・コーラが素材にこだわって何が悪い?
・果実とモルトの素材派コーラ
・着色料ゼロ・カフェインゼロ・保存料ゼロ
・大人、はじける

■パッケージから
・果実とモルトの素材派コーラ
・着色料ゼロ・カフェインゼロ・保存料ゼロ
・OTONATANSAN 力強い刺激と爽快感、果実など植物由来の原料で作った大
人素材派コーラ
・For your natural life
・フレッシュクオリティ製法 素材本来の香りにこだわりました

これらのメッセージから、アサヒが独自の製法により、素材、味、香りに優れたコーラに仕立てたこと、大人炭酸という新しいカテゴリー
を作ろうとしていることが分かりました。

またこれは第一弾とあったので、グリーンコーラに続く第二弾もあるということが予想できました。

いずれにせよ、家族全員で飲んでいたのですが、7月も過ぎる頃、どこを探しても見つからなくなりました。

それと相まって、有志でやっている研究会のテーマにグリーンコーラを選んだこともあって、みんなにもグリーンコーラを探してもらいま
した。

しかし、やはりどこを探しても見つからず、スーパーに少量あったとか、コンビニに1本だけあったとか、100均ショップに積みあがってい
たとの報告を受けました。

この状況からみて、私の家族の評価とは反対に、あまりリピートがかからず、棚落ちしてしまったり、在庫が100均ショップに流れてしま
い、市場から消えてしまったということが予想されました。

こうして残念ながら、我が家の冷蔵庫からもグリーンコーラは消えてしまいました。

いったい、何が悪かったのでしょう?あるいはなんらかの施策があって消えたのでしょうか?

そこを判断するために、グリーンコーラのプレスリリースやTVCM、競合や顧客に関してのデータを、研究会の有志とともに集めてみま
した。

それをアウトフレームに記入したのが、以下です。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page007.html

2010年・2009年の清涼飲料のマーケティング要覧(富士経済)を見てみると、清涼飲料市場は横ばいで、2010年の見込みは4兆8094億
円(前年比98.5%)となっています。

その中で、炭酸飲料市場だけは増加傾向にあり、4897億円(2010年見込み、前年比101.2%)となっています。

さらにコーラフレーバー飲料を見てみると、2318億円とありますので、炭酸飲料市場の半分近くを占めています。また前年比も103.9%
と増加していることも分かります。

ここから、アサヒが炭酸飲料市場、それもコーラで参入しようとしたことは、理にかなっていることが分かります。

ただし、先発者はコカ・コーラとペプシの2大ブランドなので、よっぽどしっかりとした差別化をしないと太刀打ちできないことが分かりま
す。

どんな差別化をしたのか?それは次回で明らかにしたいと思います。

A
さてグリーンコーラは既存商品に対してどんな差別化をしたのでしょうか。

まずは競合を明らかにしたいと思います。

1.レギュラーコーラ コーラと名乗るからには、コカ・コーラとペプシとは競合します。

2.ゼロ系コーラ コカ・コーラゼロ、ペプシネックスなど。コーラであること、健康を打ち出すのですから、こことも競合します。

3.その他の炭酸飲料 サイダーやファンタなど。大人炭酸というカテゴリーを打ち出すのですから、これらの炭酸飲料とも競合します。

4.ゼロ系その他炭酸飲料 三ツ矢サイダーオールゼロ、ファンタゼロサイダーなど。これらとはターゲットを大人にしていることで競合し
ます。

5.ノンアルコールビール 炭酸つながりということになれば、カテゴリーは違いますが、消費者ベネフィットの視点からは競合します。

さらに、これらのターゲットを明らかにしたいと思います。

1.レギュラーコーラは、10代の若い層とのこと(2009年コブス横丁「広報インタビュー」)。

2.ゼロ系コーラは、20代後半から30代男性、残業が多く、偏食や運動不足を自覚している層(2008年 TRIBAL MARKTING LAB)。また
ゼロフリーは、自身の健康のために具体的な運動を行っている40代以上(2010年コカ・コーラプレスリリース)。

3.その他炭酸飲料は、10〜20代前半の若い層(2010年@niftyビジネス「三ツ矢サイダーゼロ」の開発)。

4.ゼロ系その他炭酸飲料は、20代後半から40代男性(同上)。

5.ノンアルコールビールは、ビールの味や雰囲気を好むビールユーザー。

これらをまとめて、競合構造を図化すると、以下のようになります。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page007.html

1.レギュラーコーラに対しては、健康軸で差別化。また大人と打ち出して(ターゲットは20から30代。アサヒグリーンコーラのプレスリリー
スより)いますので、10代がメインのレギュラーコーラとは差別化できることになります。

2.ゼロ系コーラとは、自然対人工という軸で差別化。アサヒのプレスリリースに、「人工ではない自然な素材のコーラが飲みたいという
欲求に基づいて開発された」とあります。

3.その他炭酸飲料とは、大人軸で差別化。ターゲットが違うので競合しないという考え方です。

4.ゼロ系その他炭酸飲料とは、コーラと名乗ることで差別化。コーラは市場の半数近くを占めていますので、コーラであること自体が差
別化となります。

5.ノンアルコールビールとは、コーラ味であることで差別化。スカっとするベネフィットは同じでも、それを醸成する味の違いは大きい。こ
こで差別化されます。

というように考えていくと、大人炭酸というカテゴリーを創出して、コーラという物性で勝負すれば、カテゴリー価値戦略となり、全競合と
差別化できることになります。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page007.html

おそらくサプライヤの思惑は、こういうところにあったのでしょう。

市場性がある。競合との差別化もできている。ターゲットもゼロ系コーラとはバッティングするが、価値=自然素材のコーラというところ
で差別化できている。

加えて、夏商戦という、コーラがいちばんはえるところへの投入。こうなれば、成功しないはずがないと思えてきます。

しかしグリーンコーラは消えてしまいました。

もちろん、大人炭酸シリーズですから、第二弾(ドライスパークリング)とスイッチしたのかも知れません。

次回は、今日述べたことを消費者視点で考えてみることにします。そうすると、謎が解けるかも知れません。

B
前回グリーンコーラを、

『市場性がある。競合との差別化もできている。ターゲットもゼロ系コーラとはバッティングするが、価値=自然素材のコーラというところ
で差別化できている。

加えて、夏商戦という、コーラがいちばんはえるところへの投入。こうなれば、成功しないはずがないと思えてきます』。

と述べました。今回は、これが消費者から見たらどのように見えたのかを考えて行こうと思います。

まずターゲットは、プレスリリースから、20〜30代の、嗜好品として炭酸飲料を楽しむ層となります。

この層に大人炭酸というカテゴリーを訴求し、その記号として氷室京介氏を起用して、「大人」「自然」「素材」という要素を認知、理解さ
せたかったのだと思います。

しかし、

@大人炭酸とグリーンコーラという、カテゴリーと商品名にうまく折り合いがつかず、コーラというカテゴリーが強すぎて、そちらが立って
しまった。

Aグリーンという形容詞から「自然」を想起させたかったのだが、単に色としてのグリーンとして認知され、緑色のコーラという変わった
ものとして誤認されるケースがあった。

B「大人」「自然」「素材」という要素の記号としての氷室氏が、ターゲットと乖離してしまった。

BOOWYの解散コンサートは1988年であり、仮にその時18才だった人は、40才になっています(2010年現在)。

設定ターゲットから考えれば、30代後半には届いたかもしれませんが、20代の人たちに氷室氏が出てきて、そのキャラクターがすぐに
理解できたかというと、難しかったように思います。

このようなことから、新カテゴリーがうまく認知されず、カテゴリー価値戦略がうまく機能しなかったように思います。それゆえに戦略は、
経験価値戦略にスライドしてしまったのでしょう。http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page007.html  C

しかしカテゴリーや商品の品質を訴求する戦略でしたから、経験価値は訴求されず、商品としての存在感をうまく主張できませんでし
た。

その結果、流通や消費者には、「コーラ×カロリーなし」象限、つまり、レギュラーコーラの競合とみなされ、変わったコーラとして認識さ
れたのではないでしょうか。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page007.html  D

それゆえに消費者にとっては、

・ベネフィット→よく分からないコーラ、あるいは中途半端な健康コーラ
・USP→曖昧
・内容物→ゼロ系コーラに劣る、あるいは緑色のコーラという誤認
・見た目→地味、あるいは渋く、目立たないパッケージ
・カテゴリー→単なるコーラ

と見えてしまったのだと思います。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page007.html  E

その結果、

力強い炭酸や濃いコーラ味が好きな10代男性は、もちろんターゲットではありませんが、中途半端なコーラとして、グリーンコーラを選
びません。

またコーラの味と健康を求める20〜40代男性は、健康感が中途半端ということでやはり選びません。

また嗜好品×自然を求める炭酸を嗜好品として楽しむ20〜30代男性は、これが本来のグリーンコーラのターゲットですが、コーラ=人
工物というイメージをグリーンコーラでは払拭できず、やはり選びません。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page007.html  F

ということになり、グリーンコーラは、一部ユーザーのトライアルにとどまってしまったのではないでしょうか。

もちろん、グリーンコーラは短期商品で、第二弾商品までつなげばいいという戦略だったのかも知れません。

しかしファンになった自分としては、やはりロングセラーとして売れ続けて欲しかったと思うのです。実際、とてもおいしいコーラでした。

どうすればよかったのでしょうか?

ひとつには、カテゴリー名で展開するという手はあったのかも知れません。第二弾のネーミングは「ドライスパークリング」ですが、こち
らの方が大人炭酸というカテゴリーとしっくり行きます。

ドライスパークリング-コーラ、ドライスパークリング-ジンジャーという展開です。

もうひとつは、コーラショックのヒットにあやかるとすれば、グリーンコーラではなく、コーラグリーンという表記にして、レギュラーコーラと
は違うものと認識させる手があったかも知れません。もろちんカロリーゼロを実現しての話だと思いますが。


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