ミステリーはいかが


 毎年、暮れからお正月にかけて話題になるのが「このミステリーがすごい」と「本格ミステリ・ベスト10」という雑誌。皆さんも書店で目
にする機会が多いと思います。

 この時期、書店のメインコーナーに平積みされる本の多くが、この雑誌にランクインしたものです。この2つの人気雑誌の年間ランキ
ング1位作品はここ数年違っていたのですが、今回はどちらも「葉桜の季節に君を想うということ」歌野 晶午  
文芸春秋社 1900円  でした。

 歌野 晶午(うたの しょうご)という作家。1961年千葉生まれ。東京農工大学農学部卒。88年「長い家の殺人」でデビュー。著書は
「死体を買う男」「さらわれたい女」「ROMMY」「正月十一日、鏡殺し」「安達ヶ原の鬼密室」「生存者、一名」「世界の終わり、あるいは始
まり」「葉桜の季節に君を想うということ」など。

 数年前に「死体を買う男」というのがちょっとだけ話題になりました。

 乱歩の未発表作品が発見された!?「白骨記」というタイトルで雑誌に掲載されるや大反響を呼ぶ――南紀・白浜で女装の学生が
首吊り自殺を遂げる。男は、毎夜月を見て泣いていたという。乱歩と詩人萩原朔太郎が事件の謎に挑むというもので、ふ〜ん、なかな
かじゃん という印象だったのですが、この方、私と同世代で、ルーツはやはりポプラ社の江戸川乱歩シリーズだな というのがよく分
かります。

 さて「葉桜の季節に君を想うということ」ですが、私、少々天邪鬼なもので、1位になったから読むというのが嫌いな性質。近年「このミ
ス」のランクイン作品は、ほとんど話題になる前に読んでいましたし、今さら という気持ちでしたが、ちょうど貰った図書券もあるし と
思わず手を伸ばしたらへぇ〜、やるじゃん。最近のミステリーは、ほとんど半ばに筋が読めるものが多いですが、これはなかなか。私
も最後まで結末を読みきれませんでした。

 物語の展開は、元探偵の主人公、成瀬将虎が、蓬莱倶楽部という悪徳商法会社の調査をする話を中心に進んでいきます。 その本
筋に、地下鉄に飛び込もうとして成瀬に助けられ、やがて彼と恋に落ちる麻宮さくら、蓬莱倶楽部に弱みをを握られ、その手先として
悪の道に手を染める古屋節子、離れて暮らす娘のことを一途に想い続ける老人 安藤士郎、そして、昔探偵だった頃の成瀬のエピソ
ード、などなど複数のエピソードが絡み合っていきます。この絡み具合が絶妙、歌野なかなかやるぞ と引っ張られるうちに・・・。この
冬、読んで後悔しない一冊でしょう。

 「このミス」がらみでは、横山秀夫「半落ち」が話題ですが、個人的には結末が今ひとつ。お勧めは福井晴敏「終戦のローレライ」で
す。私、今年の直木賞候補と思ってました。日本人なら読むべし。

 直木賞といえば、馳星周の「生誕祭」が今年の候補になりました。なかなかの長編ですが、馳ファンからするとへぇ〜 という印象。あ
と今回は京極さんが入ってますし、朱川湊人「都市伝説 セピア」というホラー短編が候補になっています。直木賞についての薀蓄は
次回。選考会は1月15日、楽しみです。


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