フリーミアム戦略

無料サービスでお客を呼んで、有料サービスに導く戦略、これをフリーミアム戦略というそうですが、それで成功する企業がいろいろと
出てきています。

例えばグリー。うちの子供から教わってずいぶん前からやっていますが、無料の釣りゲームがおもしろいです(釣り★スタ)。

これは携帯電話から接続すると、池や海が出てきて、そこで釣りを楽しむというものです。

ゲームは簡単で、えさを投げ込むと、当たりがきます。その当たりにうまく合わせると、魚とのファイトがはじまり、ダーツ上の画面の、
真ん中に近いところで何度かクリックできると釣り上げることができます。

一方、逃げる魚のせいで、ダーツのはじとか、ダーツ以外のところでクリックすると逃げられてしまいます。

これを何度か繰り返すと、釣るのが難しくてイライラしてきます。あるいは、全く釣れなくてどうしたらいいのだろうと考えてしまいます。

そうしていると、もっと高級な道具やルアーを買えば釣れることが分かります。

しかしそれらはゴールドと呼ばれる専用通貨がなければ買えないので、それをもらうために有料コースを選んでしまうのです。

また育てゲーの「クリノッペ」も同じです。無料で育てることはできます。ごはんをあげたり、お風呂に入れたり、運動させたり、ゲームを
させたり。

しかしこんなことを毎日やっていると飽きてきて、もっと違う服を着せてやりたくなったり、おいしいものを食べさせてやりたくなったり、イ
ベントに参加したくなります。

定期的にやるイベントは、もちろん無料で参加できるのですが、勝とうと思うと、ドリンクやエネルギーなどいろいろなものが欲しくなりま
す。

そうなると、やはり有料コースに入り、ゴールドをもらうようになってしまうのです。

このように、無料という言葉につられてはじめたのに、結果的にお金を払わされてしまう。これがフリーミアム戦略なのです。

6月4日(金)日経MJの7面に、「フリー」という著書を監修した小林氏がフリーミアム戦略について、次のように言っているのですが、今
述べたような体験をしている私にはとても合点が行きます。

「人々はモノやサービスの向こう側にあるストーリーにお金を払うのだろう」

釣り★スタもクリノッペも無料でやるゲームが楽しいのではなく(もちろんそれも楽しいですが)、その後に続く釣りや育てのストーリーが
楽しい。

もっと言えば、そのストーリーをSNSに参加する人同士で共有するのが楽しいのです。

これは、全く知らない人を集めてイベントをやったり、他人のクリノッペをかわいがったり、自分のクリノッペを自慢したりするようなこと
で、確かに、どうってことないことなのですが、緩いコミュニケーションを楽しむことができるのです。

これは、流行のツイッターにも共通することで、「緩いつながり」という言葉が時代を象徴しているのだと思います。

このモデルが奏功して、グリーは、2009年6月決算で売り上げは139億円、営業利益は59%の83億円という驚くべき数字になっていま
す。この数字をみると、フリーミアム戦略をもう少し詳しく知っておいた方がいいと思えてきますね。

そこで次回は、このビジネスモデルがどういう経緯で生まれたのかをお話して行こうと思います。


A
「ビジネスモデル革命(生産性出版)寺本義也、岩崎尚人、近藤正浩著」によると、ビジネスモデルは第五世代まできていて、この第五
世代がフリーミアムなのだそうです。

第一世代はハードウェアの単品売り、第二世代は、ハードウェアにソフトウェアを組み合わせたものです。

前者は例えば、洗濯機や冷蔵庫、後者はパーソナルコンピューターがあたります。

第三世代は、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、それをサービスとしてパッケージ化するもの。いわゆるソリューションと言われ
るものです。

これで成功した代表的な企業にIBMがあります。

IBMは、社内のネットワーク環境を整えたいという顧客の要望に対して、パーソナルコンピューターからサーバー、ルーター、ソフトに至
るまでを総合的にパッケージ化しました。

言い換えれば、顧客の要望を解決=ソリューションすることによって、単品よりも大きなビジネスとしたのです。

これが90年代後半のインターネットの登場により、このようなソリューションをインターネット上で展開するモデルが生まれました。

これが第四世代で、このモデルの代表がデルになります。

顧客はインターネット上のサイトで、自分の意中のパーソナルコンピューターにまつわる全てを、自分の好む形で注文でき、そこで決
済できます。

そうしてしばらく待っていれば、宅配業者によって直接、商品が運ばれてきます。

顧客にはこれら全てをデルがやっているように見えますが、実際は、部品は供給会社が、課金や配送は金融業者や宅配業者が受け
持っています。

つまり、インターネットの裏で、様々な会社が協力し合っている訳です。

さらに。

21世紀となって、グーグルを代表とする新しいモデルが生まれました。

これは、最初は収益をあげていないように見えますが、その後、莫大な収益をあげることができます。これが第五世代、フリーミアムな
のです。

グーグルは当初、検索サービスとして、その速度や正確性によって支持されました。

これが後発でありながら、またヤフーという存在がありながら、すみやかに浸透していった理由でした。

その後、検索して得られた情報に連動する広告を開発し、これが収益を生むこととなるのです。

この広告は検索した情報と連動して提示されますから、クリック率が高く、また商品購買と連動しているため、販売促進効果が高い。

ゆえに、瞬く間に支持され、これがグーグルを高収益企業に導いたのでした。

このように時系列でビジネスモデルの変遷を見ていくと、インターネットの登場と相まって、デルが出てきて、グーグルが出てきて、フリ
ーミアムという考え方が出てきたのがよく分かると思います。

また同時に、フリーミアムにとって、収益モデルがとても重要で、それが画期的で、ユニークでないと成立しないということもお分かりい
ただけたかと思います。

ですので、次回は、フリーミアムで成功している企業がどのような、ユニークな収益モデルを持っているかを明らかにしていきましょう。


B
フリーミアムの収益モデルについて、「フリー(日本放送教育出版)」の著者であるクリス・アンダーソンは、95%を無料にして、5%を有料
にするモデルだと言っています。

この5%に、画期的な収益モデルを考えることが成功への鍵と言えるでしょう。以下に、主な収益モデルをまとめましたので、参照くださ
い。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page004.html

前回もお話しましたが、まずグーグルがこれを成し遂げました。

グーグルは、消費者の検索に連動する形の広告を開発して、消費者と買いたい商品との間の距離を縮めました。

これにより、広告の効果が確認しやすくなりましたので、この広告が支持されるようになり、グーグルは莫大な収益をあげることになり
ました。

続いて成功したのがアットコスメです。アットコスメはご存知でしょうから詳述はしませんが、化粧品のポータルサイトを作って、そこに
消費者が自由に意見を書き込めるようにしました。

そうすると別の消費者は、その意見を参考に化粧品を買うようになります。これが善循環して、たくさんの消費者の意見=CGMが蓄積
されました。

アットコスメはこのCGMを分析したり、企画化したりして、データを売ったり、雑誌や本で収益化を図りました。つまり、利益増殖モデル
を確立したのです。

続いてあげたいのは、これも前回ご説明したグリーです。

グリーが賢かったのは、いい道具やルアーなどをその都度販売する、従量制ではなく、会員となることで、定期的にゴールド(専用通
貨)がもらえるようにする、定額制にしたことです。

前者だと購入が1回で終わってしまう危険性がありますが、後者だと顧客はお金を払い続ける可能性が高くなります。これはインストー
ル・ベースモデルという訳です。

言い換えれば、例えば無料の釣りゲーは撒き餌で、そのインストール・ベースに、会員となってお金を払い続けるのです。うまい収益モ
デルですよね。

さらに。日経MJ 6月28日(月)3面、7月5日(月)3面に、クックパッドとニコニコ動画の話が紹介されています。

いずれも有料会員化に成功しています。グリーと似ていますが、異なるのは、両者ともに、有料顧客を<優遇>する点です。

クックパッドは、料理のレシピを無料で閲覧できるサイトですが、レシピの数が多すぎて、どれを選んだらいいのかよく分かりません。

一方有料会員になると、人気料理のランキング情報が分かり、自分専用のフォルダーもくれるので、気に入ったレシピを保存すること
ができます。

そうすれば、みんなが支持しているレシピが分かりますので、選ぶ手間が省けますし、それを保存することもできるので、好きな時に
使うことができます。

またニコニコ動画は、普通に見ていると、回線が混雑して画質が悪くなりますが、有料会員になると別の回線が与えられます。

これは映画や演劇の指定席のようなもので、自分は<優遇>されますので、いつでも高画質の専用回線で見ることができます。

クックパッドもニコニコ動画も、誰でも普通に見ることができるのですが、より快適な閲覧をすることに収益モデルを当てはめました。こ
れもインストール・ベースモデルと言えるでしょう。

これらの流れを一言でいうと、

新しい広告モデル

CGMの活用

有料会員化

と言えます。ただし共通しているのはそれらがリアルで収益化されるのではなく、バーチャルで収益化される点です。

ですから、原価があまりかかりませんので、先に紹介したグリーのように、とんでもない収益があがるのです。

この次にはどんな画期的な収益モデルが続くのでしょうか。ここはしばらくウォッチを続けていこうと思います。




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