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エッセイで賞を獲得するのにはどうしたらいいのだろう。投稿生活6/1号で秋元康氏が興味深いことを言っている。
ひとつは誰もが書きそうなものはやめるということ。審査では、同じようなパターンのものから落としていくのだから、わざと目先の違う切り口で目立とうという訳だ。
二つ目は、審査員の好みそうなものは書かないということ。これは秋元氏らしい指摘なのだが、自分でも書けそうなものだと自分の方がウマイと思ってはずしてしま
うと言う。むしろヘタでも、自分が絶対書かなそうなものの方が印象に残るそうだ。
三つ目はすぐ浮かんでくるような切り口を10個ほど出して、それを捨てるというもの。
プロほど質を重視するために量をこなす。たくさんのアイデアを出して、それを削ぎ落としていきながら質を追求するのである。この意味で、すぐ思いつく10個ほどの切
り口を捨てるという秋元氏のやり方はとても効率的だと思う。
また成美文庫の「めざせ!投稿生活」では、エッセイのキモともいうべき大切な指摘がされている。それは「自分にしか書けないものを書く」というものだ。破滅的な生
活を自ら選んだからこそ、太宰治のエッセイには堕落していくもののリアリティがある。若い頃の林真理子氏のエッセイは、鬱屈した女性ならではのコンプレックスが とてもうまく描かれていておもしろい。彼らしか体験できなかったことが書かれているからおもしろいのだ。つまり、自分しか経験したことのないことを書けばおもしろい ものになるという訳だ。
さてそれでは、今まで述べてきた指摘を踏まえてエッセイを書くとしたらどうなるか、実験をしてみよう。本稿を「エッセイを企画しよう」というタイトルのエッセイと考
え、読者のみなさまを審査員とした場合を想定して考えていく。 ![]()
まず検討するのは出題者の意図である。投稿の場合は賞の主催者が出題者であるが、本稿の場合は投稿生活編集長のK氏である。K氏はあたりまえの切り口を
提示しても喜んでくれるような人ではない。また難しい内容にして逃げようとしてもダメである。きっと「誰でもエッセイが書けるような気になる、画期的な方法なんて切 り口だと喜んでくれるんだろうな」と思いつく。
次はオリジナリティである。エッセイ指南のセオリーだと「美文・麗文を書きなさい」「題材はこう見つけなさい」「とにかくいい本を読むことだ」となるのだろうが、それ
よりも大切なのは「おもしろいこと」を言うことだと思う。そのためには、エッセイを「書く」という発想をしないで、エッセイを「企画」し、エッセイを「語る」という発想をして みたい。大切なのは、文字を埋めることではなく、十分に考えられた、おもしろいことを言うことである。ならば、事前に十分考える習慣をつける方法と、書く前に、まず 書きたい内容を明らかにする方法を考えたいと思う。
とすると、私の本職であるプランナーという仕事が役に立つ。エッセイを企画するという、その方法論を考えればいいからだ。エッセイのキモは「自分にしか書けない
ものを書く」だから、エッセイの書き方をエッセイの企画の仕方という視点から書けば、きっと私らしい個性的なものになるはずだ。
こうした思考を経て、本稿のコンセプトは「エッセイを企画し、エッセイを語りからはじめて文章化する」に決まった。そしてそれを具体的にするために、「勝ちのシナリ
オ」検討シートとアウトフレームという二つのシートを用意した。この二つで事前に十分考える習慣をつけるのが目的である。 ![]()
アウトフレームは、文章全体の構造をイメージさせることと、そのうえで章を構成し、さらに具体的に見出しをつけていくことを目的とするシートである。
文章が書けないという人はよく、全体のイメージがつかめないと言う。エッセイの投稿でよくある2000字という条件を見ただけで、とても自分にはクリアできる文字数
ではないと決めつけてしまう。こういう人は全体を大づかみで捉えるからいけないのであって、
そうではなく、全体をいくつかの集団として考えていけばいいのだ。
まず第一の集団は「章」である。話す内容にもよるが、私の場合はだいたい4つ程度の章を立てることが多い。今回も「書き出し」「勝ちのシナリオ検討シート」「アウ
トフレーム」「語り式表現法」の4章立てにして、各々を800字程度で書いている。全体というひとつの枠組みが、章という単位に分割され、4等分されたことになる。
次に各章毎に小見出しをつけていく。書き出し部分を例にとってみると、「1.秋元氏の成功鉄則」「2.エッセイのキモ」「3.自分にしか書けないものを書く」という小見出
しをつけておいて、それに従って書いている。それ以外の章も同様に、事前に立てた小見出しに従って書いている。こうしておけば、800字をさらに細かくイメージする ことができ、ひとつの小見出しについて、200字程度を述べればいいことになる。
さてここまで準備すればもう書けるという気になっているだろうが、さらに書きやすくする秘訣をお教えしよう。題して「語り式表現法」。
まずビデオカメラを用意して欲しい。それをテレビのうえにセットしてテレビとつなぐ。これでテレビの前に座った人間を撮ることができ、その映像がテレビにモニター
されることになる。そして自分でそこに座って欲しい。何がやりたいかというと、自分を相手に自分の書きたいことを語って欲しいのだ。
太宰治は語りの名人で、口述筆記をすればほとんど一字の間違いもなく、語ることができたそうだ。だからこそ、読者ひとりひとりに語りかけてくるような、すばらし
いエッセイが書けたのだと思う。これを作家の井上ひさし氏は「語り物の呼吸で語る」と言っている。これを、ビテオカメラを使って意識的にやってしまおうという訳だ。
この方法を採ると、思っていることをすぐに表現できて(なにしろ語ればいいのだから)、かつそれを保存することができる。また自分自身とはいえ、「相手」を意識して
表現することができる。実際に文章にする時には、そのビデオを何回も見直してから書けばいい。
こうして書きたいことが決まったら、パソコンかワープロを使って、キーボードで打ち込んで欲しい。ペンは使わないことをお勧めしたい。
書くことへの初心者の挫折の原因は、潔癖さにあると思う。せっかく書き出したはいいが、すぐに書き直したくなる。鉛筆で書いたとしても消しゴムで消すには労力
も時間もかかる。あるいは、今まで書いた分を捨てて、また書き直すということもある。これを繰り返すうちに、だんだんと面倒になってやめてしまうのである。
しかしワープロなら、ある程度書いては読み直して文字を削ったり、言葉足らずのところは文字を加えることが簡単にできる。文字を消すのも、加えるのもアッという間
である。
作家の高村薫氏はワープロ党であり、もしワープロがなかったら自分の創作は成立しなかったと言っている。ワープロは高村氏のような優れた作家にも重宝され
る、文明の利器なのである。これを使わない手はない。
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