「よーい」
パーン!
  運動会当日、最後の種目でありメインイベント
であるリレーが始まった。僕は第2走者でバトンを
受け取った。そう、僕はリレーの代表として思い切り
校庭を駆けていたんだ。
  この日中田君の姿はどこにもなかった。
あまりに突然のことだった。
昨日の夜、連絡網がまわってきて、中田君が
交通事故にあったと知ったんだ。横断歩道を
渡っていたら居眠り運転の車が信号無視して
突っ込んできたって。だから中田君は学校にも
この世にももういない…
僕は懸命に駆けたんだ。あれだけなりたかった
リレーの代表になれたっていうのにちっともうれしく
ないよ。今にも涙が溢れ出しそうだよ。
それでも僕は懸命に駆けたんだ。
だって中田君の僕の分までがんばってという
声がずっと胸に響いていたから。だから僕は
懸命に駆けることができたんだ。中田君が
応援してくれたから、中田君が一緒に走って
くれたから! この日のことを、中田君のことを
僕は決して忘れないだろう。

おわり

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