11月12日(金)

私と浪馬クンがまた話すようになってから、3日が過ぎた。
あの告白で何か変わったかっていえば、全然変わってない。
ハッキリ好き、って言ったわけじゃないから、
当たり前っちゃ当たり前なんだけど。

休み時間は2人で喋って。
教室移動のときは2人で一緒に行って。
昼休みは2人でご飯食べて。
授業が終わったら同好会の活動をして。
帰りは2人で一緒に帰って。
ハタから見れば、前と全く変わらない生活。


変わったのは、私の心。
今までは「なんとなく」一緒にいたのが
意識して浪馬クンのそばへ行くようになった。
「そばにいたい」と、心から思うようになった。



部屋に入ると、1人でいることが少し寂しくなる。
寂しくなるたびに、昨日よりもっと、
浪馬クンのことを好きになっている自分に気づく。
最近緩みっぱなしだと友達に言われた顔が、もっと緩む。
だってだって、楽しいんだもん。


明日は土曜日か・・・バイトだから一緒には帰れないな。
デート・・・誘ってくれないかな。
誘ってくれなかったら、私から誘ってみようかな。

逢いたいもん。
逢って、話して、一緒にいたいんだもん。
こうやってるときだって、電話したいんだもん。
わかってんのか、浪馬クン?
女の子から電話するのって、恥ずかしいんだよ?

こんなことを考えている間も、すごく楽しくて。
あっという間に時間がたって。
バカみたいに微笑みながら、布団に入る。

「浪馬クンの夢、見られるといいな」

ここんとこ、寝る前に必ず唱える、呪文のようになった言葉。
やっぱりそうそううまくはいかなくて、まともに見られたためしはないんだけど。

あーあ、浪馬クン、出てきてくれないかなあ。
浪馬クンも、同じこと考えたりしてないかなあ・・・・・・





11月13日(土)

キーンコーンカーンコーン・・・・・・

あれ?あれあれ?
授業終わっちゃった。

明日のお誘いはなしか・・・・・・
休み時間もそんな話題でなかったしな・・・・・・
しょんぼり。
明日は一人か・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヤダ。
ヤダヤダヤダ!!


浪馬クンの都合もわかってないのに、勝手にダダをこねる私。

「逢えないと・・・寂しいよ・・・・・」

たかが1日なのに、そんな感情が湧き上がる。
今までだって誘われない日はあって、でも友達と遊んだりすればよかった。
だけど、告白してからは全然ダメ。
そばに浪馬クンがいないと落ち着かなくて、不安になって。

浪馬クンにだって都合はある。それはわかってる。
でも、その都合が何なのかわからないと、不安でたまらなくなる。

もしかして・・・夕璃ちゃんとか・・・高遠さんとかと・・・・・・

もしそんな理由だったとしても、私に止めることなんてできない。
浪馬クンのこと、私はすっごく好きだけど、恋人になったわけじゃないし。

それに、私だって・・・・・・・

自分がかつてしたことを思い出しちゃうと、とても聞くことなんてできない。
それが、私の心の影となって、締め付けてくる。
きっと、一生、取れない呪縛。

それでも、逢いたいという想いは、誰よりも強いから。
好きだという気持ちは、誰にも負けないから。
そう信じたいから。


「もう、部室かな・・・・・・」


捜して、自分から誘ってみよう。
そう思って、カバンを持って立ち上がった。


ガラッ


「あっ、浪馬クンっ!」


教室に入ってきた浪馬クンを見つけたとき、私は思わず叫んでしまった。

「よう、タマ吉」

「ちょ、ちょっと、タマ吉はやめてよ・・・・・・」


そんな私に怯むことなく、カウンター。
タマ吉とかいうなよぉ・・・

なのに、浪馬クンの声を聞いただけで、
さっきまでの暗い気持ちが吹き飛んでしまっていた。


よし、誘って・・・みよう。


「ねえ、浪馬クン」

「うわっ!」

「な、なによ・・・・・・」

「い、いや。ちょっと考えごとしててな」

「ふーん。珍しいこともあるもんだね」

「あのなあ」

「あははっ」

「んで?」

「え?」

「お前、さっきなんか言いかけただろ?」


どくん。

いつもの弱気な私が顔を出す。
浪馬クンを好きだってわかってから気づいた、私の弱いこころ。
つい「なんでもない」って言っちゃいそうになる。

でも、今の私は。
いつもキミのそばにいたいから。
迷惑だって言われない限り、ずっとそばで笑っていたいから。


「あ、うん、あのね」

お願い、浪馬クン。

「明日ヒマだからさ」


「うん」って言って。

「どこか遊びに連れてってくれないかなーって」

私と一緒に、いて。


「・・・」


・・・・・・・・・・え・・・・・・

その沈黙・・・・・予定あるの?
それとも、もう、私と一緒には・・・・・・


「ダメなの?」


つい、口に出してしまっていた。
浪馬クンの都合だってあるのに。
でも、もし、私以外の人と・・・だったら・・・・・・


すると、浪馬クンの顔が、明るくなった。
とっても嬉しそうに、こう言ってくれた。


「よーしっ。それじゃ、明日は一緒に遊びに行くか」


あ・・・・・・・・・・・・・


「うん!」


やったー!やったー!やったー!
思わず叫びたくなった。


「それで、明日はどこに行くの?」

「そうだな・・・・・・」


いろいろ話して、遊園地に行くことに決めた。


「あははっ。さすが、いい場所選ぶね」

「よーし。じゃあ、それで決定な」

「うん」



別れた後も、私は嬉しさが止まらなかった。
気を抜くと「やったー×3」と叫びそうになるくらい。

浮かれっぷりはとどまることを知らず、
カバンを教室に忘れたまま帰ろうとしてたり、
戻った教室で再び浪馬クンを見つけ、

「あっ、浪馬クンっ!」

思わず駆け寄り、


「ねえ、浪馬クン」

「ん?」

「明日って何か予定ある?」

「へ?予定って、お前と約束しなかったっけ?」

「あははっ。うんうん。ちゃんと覚えてるみたいだね」

「あ、あのなあ・・・・・・」

「それじゃ、またね」

「お、おう」



こんな具合。
浪馬クンがツッコむスキもあたえないくらいの浮かれっぷり。
だって嬉しいんだもーんっ♪
もー踊り出したいくらいだよっ。


バイト先でも

「ありがとうございましたー♪」

「柴門さん、今日はご機嫌だね」

「そうですかオーナー?へっへっへ〜」

「彼氏とは仲直りできたのかい?」

「か・・・!?浪馬クンは・・・かかか彼氏じゃありませんっ!」

「はっはっは。誰も幼なじみ君のことだとは言ってないよ?」

「・・・あうう・・・・・・」

「何にせよ。元気になってよかったよ」

「あ・・・ご迷惑をおかけして・・・・・・」

「気にすることはない。今度は2人で、お客様としておいで」

「・・・・・・・・・・・はい!」



こんな調子で、すっかり浪馬クン絡みで浮かれているのがバレてるし。
こんなに顔に出やすかったかなあ・・・


帰ってからも、疲れているはずなのに、なかなか寝付けなかった。
もう何回も遊んでるのに、明日はとっても特別な気がして。

なんか・・・はじめてのデートみたい・・・・きゃー☆

ガバアッと布団を被って一人悶える。
知らない人が見たら、バカみたいじゃないかって思える。
知ってる人だったら余計か・・・

それでも止まらなくて、しばらくこの気分に酔っていた。
どうしようもなく幸せな気分に。


初デート・・・・・だよね。


私が浪馬クンを好きだとわかってから、初めてのデート。
だから、初デートで、いいよね?

勝手にそう思いながら、眠れない夜を過ごした。
浪馬クンも、少しは特別に感じてくれたらいいな。





11月14日(日)

よし・・・
このペースだったら、ちょうど時間くらいだよね。

ほとんど寝られなかったから、早起きといえば早起きだったんだけど、
シャワー浴びたり、念入りにブローしていたりしたら、
いつのまにか、待ち合わせの時間に近づいてしまっていた。

駅に着くと、いつもの雑踏の中に、見慣れた人影。
既に浪馬クンは来ていて、何をするでもなく、
ボーっと突っ立っていた。
早く来てるのにちょっと驚きつつ、彼に声をかけた。


「あれ?浪馬クン?」

「ん?おお、タマ」

「どうしたの?待ち合わせ時間って今だよね?」

「はっはは。オレだってたまには早く来るのだ。タマとの待ち合わせだけにな」



・・・・・・・!!
私・・・・・・・・・だけ?


「だけ」の一言で、私は固まってしまった。

それって・・・それって、浪馬クンも今日を楽しみにしてくれたってこと?
私のこと、少しは意識して・・・・って違うよ!
きっといつもの軽口なだけだよ!
だって、前から私と遊ぶときは早く来てるし!
・・・・・・じゃあ、前から私と逢うの楽しみに・・・・・・
いやいや!浪馬クンは私のこと何とも思ってなかったハズだし!
じゃあ、今は・・・・・・?

フリーズしたまま、私の頭の中がぐるぐる回って止まらない。
たった一言で、いいように翻弄される私。
心臓がドキドキして、聞こえたらどうしようとかありえない事まで考えちゃって、
それがまた、ドキドキを増幅させる。


気づくと、朝イチから無限赤面ループに入った私を
あっけに取られた顔の、浪馬クンが見ていた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」



うわー!やっちゃった!やっちゃったよ!


更にパニクり、顔を真っ赤にして俯く。
その空気を払おうと、浪馬クンはワザと大きな声で言った。


「それじゃあ行こうぜ、タマ」


すごく恥ずかしかったけど、それでもデートが始まるのが嬉しくて、


「うん」


そう言って、浪馬クンの横に並んだ。



久しぶりの遊園地はすごく楽しかった。
浪馬クンとは何回もここに来ている。
小さい頃に刃君、望君たちと来たこともある。
あの人・・・とも。

だけど、今日の遊園地は今までと全然違って。
新しいアトラクションが増えたり、改装したりしたわけじゃないのに、
何もかもが新鮮。

きっと、それは私の気持ちが変わったから。
いちばん一緒にいたい人と来ているから。
私の中では、浪馬クンと初デートだもん。
浪馬クンがどう思ってくれてるかは相変わらずわかんないけど、
それでも一緒にいられることが、すごく嬉しい。


周りからみたら、私達、カップルに見えるかな?


ふと、そんな考えがよぎった。
うんっ。大丈夫だ・・・と思いたかったけど、
なぜか、そんな気がしなかった。

なんでだろう・・・
幼なじみに慣れちゃってるから?
でも、私はオーラ全開なのになあ。
両方とも好きじゃないと、カップルに見えないのかなあ・・・


「おーい、こっち並ぶんだろー?」

「あっ。ごめーん」



不思議な違和感を感じながら、浪馬クンを追いかけていった。



その理由の答えは、唐突に訪れた。


「・・・・・・でさ、あ・・・・・・・・」

「どうした?」

「・・・・・・・・・」



浮かれてて気づかなかった。
カップルってわかる、とっても大切なこと。
好きだからできる、こと。


「手・・・・・・つないでるんだ・・・・・・・」


辺りを見回す。
私と同じように並んでいる人たち。
次のアトラクションに向かって、楽しそうに歩く人たち。


みんなみんな、手を繋いでいた。


「・・・おーい、タマさんやー」

「!!な、なに?」

「何じゃねーよ。急にキョロキョロして、知り合いでもいたか?」

「あっ、ううん。違うの。そんなんじゃなくて・・・」

「?」

「あ、あはははは・・・・・・」



笑うしかないよ、こりゃ。


その後は楽しい時間に戻ったけど、
気がつくと、私は浪馬クンの手を見ていた。
待ち時間のちょっとした間。
一緒に歩いていている間。
浪馬クンの視線が前を向いているときは、
ずっと手を見ていたと思う。


手・・・・・・繋ぎたいな・・・・・・


うーうーうー、私から握っちゃえばいいのかなあ・・・
でも、私、浪馬クンの彼女ってワケじゃないし・・・
それでも、手ぐらいならいいのかなあ・・・・
私が手、繋ぎたい相手なんて、浪馬クンしかいないし・・・
うー、でも恥ずかしいしなあ・・・・・


「?どうした?」

「え?」

「や、下のほうばっか見てるから?なんか落としたか?」

「う・・・ううん!なんでもないよっ」

「?そうか」



うー・・・
浪馬クンも少しは気づきなさいよ!
このばか!ばか!超鈍感!ぶーぶー!
周りにいっぱい手繋いでるカップルがいるでしょーが!
男の人からさりげなく繋いでくれたっていーじゃない!

・・・・・・やっぱり彼女だとは思ってくれないのかなあ・・・
今更だけど、壁、厚いのかなあ・・・・・


軽く落ち込んでみたりもする。
でも、浪馬クンと話していると、また楽しくなってきちゃう私。
単純なのか、子供なのか・・・・両方か。



じー・・・・・・←手を見つめている

「タマ」

じー・・・・・・・・・・・・←気づかずに手を見つめている

「タマータマータマ吉ー」

「!な、なに?」

「や、何回呼んでも返事しねえし。お前、今日ヘンだぞ?」

「な、なんでもないってば」

「そうか?・・・・まあいいや。そろそろ帰ろうぜ」

「あ・・・・うん」




結局、遊園地では手は繋げずじまいだった。
すっごく楽しかったけど、それだけが心残りで。



「今日は楽しめたか?タマ」

「うん。すごく、楽しかったよ」

「はっはは。そうかそうか」



でも・・・・・・・・・・・・

再び、私は浪馬クンの手を見つめる。
このまま家に帰っちゃうの?
今度のデートまでチャンスはないの?

それが言葉には出せなくて、私の視線は
浪馬クンの瞳にスイッチした。


「・・・・・・」


そんなの・・・・・・・ヤダ。

少しでも、私の方を見て欲しい。
もし、浪馬クンが気づいてくれないんなら・・・・・

もう、どうしようもなくなっていた。


「よしタマ。それじゃ、うちまで送ってってやる」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えーいっ!


「うん」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぎゅ。


「ん?」

「いいよね別に。手、つないでも」

「あ、ああ・・・・・・」



浪馬クンはちょっとビックリしていた。
本当に手を繋ぐことなんか、考えてもいなかったみたい。
まったくこの鈍感男は・・・・
それでも、浪馬クンの手に触れられたことが嬉しくて、
私の顔は、緩みまくっていた。



浪馬クンの手は、大きくて、ゴツゴツしていた。
同好会はキックボクシングだし、
叔父さんの手伝いだって力仕事だもんね。

でも・・・あったかいな・・・・・・

嬉しさがこみあげてきて、
寒いフリをして、さっきよりももっと身を寄せた。
浪馬クンはビックリしてたけど、そのまま離さないでいてくれた。
このままずーっといたいな・・・と思いながら、
家までの短い距離を、2人で歩いていった。



「着いたぞ」

・・・・へ?もう?

あまりにも早く感じてしまい、本当に自分の家なのかすら疑ってしまった。
でも、そこは間違いなく私の家。
この手を離すのがすごくイヤで、ついつい

「もうちょっとだけこうしてていい?」

おねだりしてしまった。

「ああ。別に構わないぞ」

「ありがと」



手を繋いで寄り添ったまま、私はしばらく動かないでいた。
浪馬クンに明日まで逢えない分を充電するように。
そして、「大好きだよ」という想いが
浪馬クンの心に直接流れていくように。


「・・・・・」

やがて、私は、ゆっくりと手を離した。

「よし」

「もういいのか?」

「うん」

「そうか」


でも、離した瞬間から、寂しさが募ってきた。
いっぱい充電したと思ったのに。
私の心の充電池は、浪馬クンが壊しちゃったみたい。


「・・・・・・」


寄せた身体を離すことができなくて、私はまた固まってしまう。
浪馬クンも、固まっている。

街灯の明かりが、2人の姿を浮かび上がらせている。
まるで、私たち2人に浴びせられたスポットライトみたい。



浪馬クン・・・・・・



どちらからともなく、吸い込まれるようにお互いの唇が吸い込まれていく。


「んっ!?」



あ・・・私・・・・・・・・



浪馬クンと・・・・キスしてる・・・・・・・・



「浪馬・・・クン・・・・・・」


私の身体から、力が抜ける。
浪馬クンに、私を持っていかれてるみたい。

浪馬クンの唇・・・やわらかい・・・・・・・


「ん、ん・・・ふぅ・・・ん」

「・・・・・・」



キス・・・・・・浪馬クンと・・・・・・・

浪馬クンの舌が、私の舌と重なる。
優しく、舌先を撫でてくる。

浪馬クン・・・・・浪馬クン・・・・・・

夢中で、浪馬クンの動きについていく。

頭の中が痺れちゃって、白くなっていく。
今、私の身体はどこにあるの?
腕は?浪馬クンに触れているの?
抱きしめられているの?抱きしめているの?

唇の感触以外、何もわからなくなっていた。


「んっ。ふあっ・・・ん、ん、ん・・・・・・」


やがて、唇が離れていった。
どっちが離したのか、考えることができなかった。
唇に、浪馬クンだけが残っている。

浪馬クンを見ると、少し目が潤んでいた。
きっと、私も同じだろう。


「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・」


お互い荒い息を吐きながら、見つめあった。

何か言いたい。
でも何て言ったらいいのかわからない。
きっと、浪馬クンも同じだろう。
そんな気がした。



「タマ・・・」


「浪馬クン・・・・・・」



ようやく絞り出せたのは、お互いの名前だけ。
それだけで、十分だった。



それ以上は何も言わず、再び、私たちは唇を重ねた。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


部屋に帰ってから、しばらく放心状態だった。
ベッドに座って呆けながら、人差し指で唇をなぞっていた。


「キス・・・・・・しちゃった・・・・・・・」


最初は手を繋ぐだけでよかったのに。
繋いだら、手を離したくなくなって。
浪馬クンを見たら、彼も私を見ていて。
そのまま顔が近づいていって・・・・・・


「・・・・・・・・・・・!」


声にならない奇声を発しながら、枕を抱きしめ
ベッドの上をゴロゴロと転がる。

なぞっては転がり、なぞっては転がり。
しばらく、その反復運動を繰り返していた。


「だ・・・・ダメだ。もう寝なきゃ。倒れる」


そうだよ!たかがキスじゃん!
まだ恋人になったワケじゃないんだし!

だいたい、浪馬クンとキスしたのだって初めてじゃないじゃん!
子供の頃に、とっくにしてるワケだし!
2回目だって、公園で・・・・・・!


ゴロゴロゴロゴロ。


「はー、はー、はー・・・・・・」


・・・・・・・やっぱり違うよね、今日のは。
あの時は、自分の気持ちに気づいていなくて。
今は、「浪馬クンが大好き」というのがハッキリわかっていて。

こんな気持ちでキスしたの、初めてだもん。
あの人とは・・・こんな感じにならなかった・・・・・・
この気持ちは、浪馬クンとしか味わえないよ・・・・・


明日、浪馬クンの顔見れるかなあ。
なんて話しかければいいんだろう。
いつもどおりに・・・いつもってどんなだっけ?
ああもう!錯乱しちゃってなんだかわかんないよ!

とりあえず話題だけでも確保しておこう。
何の話がいいかなあ・・・やっぱり今日の話か。
遊園地で・・・とっても楽しくて・・・・・・



・・・・・・・・・・キス・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・!」

ゴロゴロゴロゴロ。


進歩ない・・・・・・私、全然進歩してないよ・・・・・・・・・





11月19日(金)

あのキスから、5日がたった。
月曜日は恥ずかしくって、浪馬クンと話すのに苦労した。
浪馬クンの方からいっぱい話しかけてくれたから、
昼休みには元に戻ったけど。

キスのこと・・・気にしてないのかな?
と思ったけど、少し赤くなっている顔を見て安心。
もー素直じゃないなあっ。

それ以外は何の変化もなかった。
相変わらず一緒にいて、時間のある限り話して。


でも、変わったこともある。
一緒に帰るとき、手を繋いでくれるようになったこと。

そして、


「じゃ、また」

「ああ」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・はあ」

「・・・・・・・・・じゃあ、また明日な」

「・・・・・うんっ。また明日ねっ」



1日の最後が、キスで終わるようになったこと。


月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日。
1日が終わるたびに、別れるのが惜しくなって。
「またねっ」て言うのがイヤになっていって。
私の家の前で立ち止まる時間が、日に日に増えていって。
やがて、吸い込まれるように唇が吸い込まれていって。


ずっと、キスしていたい。
そう思いながら、名残惜しく唇を離す。
浪馬クンの顔は、いつも少し赤くなっている。
少しは特別に思ってくれてるのかな。
そうだったら、嬉しいな。





11月21日(日)

今日も浪馬クンが誘ってくれた。
やっぱり、浪馬クンから誘ってくれるとすごく嬉しい。
私が抱えている、一番の大きな不安。
浪馬クンから誘ってくれることで、それが少しだけなくなるから。

電車の中、駅から水族館まで、水族館の中、帰り道。
ずっとずっと、手を繋いでいた。
ジャマかな?と少し思ったりもしたけど、
浪馬クンがイヤがったりしないのをいいことに、離すことはなかった。


朝から閉館時間までいたっていうのに、
あっと言う間に時間が過ぎて、
私の周りだけ、1分1秒が早く流れているんじゃないかと
知らない誰かに文句が言いたくなる。
それくらい、私にとっては充実した時間で。

浪馬クンが楽しく思っていてくれてるかは、正直わからない。
今までは私が勝手に「浪馬クンは私が一番わかっている」とか
思い込んでいたけど、そうじゃなかったから。

でも、

「今日は楽しめたか?タマ」

と笑顔で聞いてきてくれて、

「うんっ、楽しかったよ」

と正直な気持ちを言うと、もっと笑顔になってくれる。

だから、浪馬クンも楽しかったと思ってくれてるよね?
そう思って大丈夫だよね?

浪馬クンの指に、私の指を絡めつつ、お互いの家へと歩き出す。
少しでも、恋人同士に見られるように。



「着いたぞ」

「うん」


名残惜しさ炸裂で、私は手を繋いだまま、感謝の言葉を告げる。

「ありがと」

「なーに、いいってことよ。なんてったって、
オレの家はすぐそこだからな」

「あははっ、それもそうだね」

「オレたちは昔っからの腐れ縁だからな」


腐れ縁・・・・・・か。
まだ浪馬クンにとっては・・・それだけなのか・・・な。

「切っても切れない仲・・・だね」

ちょっと抵抗してこう言った。切ってほしくないんだよ。
そう言う意味を込めて。

「うむ」

浪馬クンは、力強く頷いてくれた。
そのまま、お互いの瞳を見つめあう。


「・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・」


そして、キス。
回数を重ねるたびに、お互いに舌を求めるようになっていた。
家の前でキスするのは恥ずかしいけど、
こうしないと明日を迎えられなくなっちゃっている私がいる。



でも、今日は、キスで終わりじゃなかった。



「あっ・・・」



え・・・・・・・・・・・・・・?


私の胸に・・・・・・浪馬クンの手が触れてる・・・・・・?


!!!!!!!!!!!


私は、パニックになった。
浪馬クンが、キスしたまま胸に触れてくる。
え?え?え?
何?何やってるの?浪馬クン?


「ちょ、ちょっと。こんな場所でふざけるのはやめて」


ここ、私の家の前なんだよ?
お母さんとか来たらどうすんのよ?

そんな考えをよそに、浪馬クンの手に、軽く力が入る。


「あっ!ちょ、ちょっと・・・・・・」


浪馬クンが、私の胸に触っている。
そのことに戸惑っている私。
浪馬クン・・・・・ダメ・・・・・・!!


「こんなところで・・・そ、そんな・・・・・・あんっ」


私の上の手が、全体を撫でてくる。
やあっ・・・そんな・・・・・・・優しくしちゃ・・・・・・


「んっ・・・そ、そんな・・・・・・あっ」


やあっ・・・声・・・・・・出ちゃって・・・・・・る・・・・・・・
聞かれちゃう・・・・お母さんとか・・・弟とか・・・・きちゃ・・・・・う・・・・!!


「だ、ダメだってば、こんな場所でこんなこと・・・や、やんっ」


必死で抵抗する。
でも、腕に力が入らない。
浪馬クンの腕を、引き剥がすことができない。
ほとんど浪馬クンの腕を握っているだけの状態で、
私は漏れる声を必死にガマンしていた。

そんな私を、浪馬クンが見つめてくる。


「タマ・・・・・・」

「も、もう、いじわるなんだから・・・・・・」



街灯の明かりで、浪馬クンの目が光って見える。
少し潤んでいるようにも思える。
吸い込まれそうになって、顔を背けることができなかった。

浪馬・・・・・・クン・・・・・・・・



「きゃっ!」



ろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!

浪馬クンのもう片方の手が・・・・ゆっくりと・・・・・・
し・・・・・下の・・・・・・方に・・・・・・・・!!


「ちょ、ちょっと。そこは・・・・・・」


浪馬クンは何も言わず、太ももの内側をなでてくる。
そんなことしたら・・・・そんなことしたら・・・・・・・!!


「や、やんっ。ダメよ。こんな場所でそんなところ・・・あっ、あっ、あっ」


だんだんと声が大きくなってしまい、口を塞いで耐える。
ダメ・・・浪馬クン・・・・・・
気づかれちゃう・・・・・・気づかれちゃうよぉ・・・・・・・!!


「だ、ダメって言ってるのに・・・・・・あっ!」


!!!
そこは・・・・・・そこは・・・・・・・私の・・・・・・・・!!


「そ、そこは・・・・・・」


浪馬クンが・・・・・私の・・・・・・触ってる・・・・・・・
やあ、熱い・・・・・熱いよぉ・・・・・・


「お、お願い。もうこれ以上は・・・ひっ!」


そ・・・・!!そこは・・・・・・・・中・・・・・・・・
いれちゃ・・・ゆび・・・・・いれちゃダメぇ・・・・・・・・・・
うもれ・・・・うもれちゃ・・・・・・



とろっ・・・・・・・・・・



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!


やあ・・・・ぬれ・・・・・・
ろうまクン・・・・・・・やめ・・・・・
バレちゃ・・・・・・・・・ろうまクン・・・・・・・バレ・・・・よぉ・・・・・・・


もう、抵抗なんかできなかった。
ただ、浪馬クンにバレないように。
これ以上外に流れてこないように、必死にガマンするしかなかった。


でも、


「あっ、や・・・そ、そんな・・・・・・」


浪馬クンの指が・・・・上下する。
ふわ・・・・・はあああ・・・・・・・!!


「んっ。はっ、はあ・・・・・・いやぁ・・・・・・」


バレちゃう・・・・・・・・バレちゃう・・・・・・!!


「タマ・・・お前のここ、すごく熱くなってるぞ・・・・・・」


!!!!
やあ・・・・ことば・・・・で・・・・・いわれたら・・・・・・・・
もう・・・・・・・もう・・・・・・・・ダメに・・・・・・なっちゃ・・・・・・・・・・・!!


死ぬほど・・・・・死ぬほど恥ずかしいのに、その手を振り払うことができない。
もう、私にできることは、浪馬クンにお願いすることだけ。
浪馬クンに、気づかれないように。
もうすぐ浪馬クンの指を濡らしちゃいそうなことに、気づかれないように。


「や、いやあ。お願い・・・お願いだから、もうこれ以上は、
これ以上そこに触るのは・・・や、やめ・・・・て」



多分、私は涙目になっていたと思う。
浪馬クンが我に返ったように、手を離した。


「・・・・・・」


「・・・・・・」



とっても複雑な表情をしていた。
私もどうしたらいいのかわからなくて、ただ浪馬クンの顔を見るだけだった。
しばらく、お互い動けなかった。


やがて、二人同時に口を開く。


「そ−−−」


「あ、あのね」


「え?」


「わ、私・・・・・・別に、怒ってないから」


「あ、ああ」


「じゃ、じゃあね」


「・・・」



浪馬クンの言葉を聞く余裕なんかなかった。
まくしたてるようにそう言うと、逃げるように家へと入っていった。
家族に挨拶もせず、部屋へと走る。
とにかく、この混乱した頭をどうにかしたかった。




「・・・・・・・・・・・・・・・ふうっ・・・・・・・・・・・」


ベッドに腰掛けたまま、ずっと固まっていた。
今日の出来事がぐるぐる回って、その度に顔が熱くなって。
すごく楽しいデートをして・・・キスをして・・・・・そしたら・・・・・・・

浪馬クンは、どうしてあんなことしたんだろう。
ずっとベタベタしていたから?
でも、先週もこんな感じだったし・・・・・・
キスするようになったから?


もしかして・・・・
私のこと、意識してくれるようになったのかな・・・・・・


どうしても、その点には自信が持てない。
浪馬クンのことを、私は全然わかっていないから。
浪馬クンが私をどう思ってくれているかなんて、
私がどう考えても、思い込みに過ぎないから。


だけど、これだけは、ハッキリしていた。


家の前で触られて、すっごく恥ずかしくて。

でも。



私、イヤじゃなかった。



「浪馬クンに・・・・触られちゃった・・・・・・・」



そう呟くと、胸を見つめた。
浪馬クンが・・・・・・触れた・・・・・・・私の、胸。
そんなわけないのに、触った跡が見えるような気がした。


浪馬・・・・・クン・・・・・


浪馬クンが触ったのと同じ場所に、そっと手を乗せる。


ビクンッ!!


「ふわああああっ!?」


身体に、電流が走った。

な、何これ・・・・・?
ちょっと触っただけなのに・・・・・・・・


「確か・・・・・・こんな風に・・・・・・・・」


ハッキリ覚えている、浪馬クンの動き。
それを思い出しながら、手に力を込める。


「ふああっ!んあ・・・・あああ!!」


形を変えるたびに、次々と身体中に電流が走る。
止められない。手を止めることができない。


「な・・・・・・服の上・・・・な・・・・のに・・・・・っ!!
どうして・・・・・こんな・・・・・・・あああっ!!」



今までのどれとも違う感覚に、とまどう私。
それでも手は動きをやめず、浪馬クンの動きをトレースする。


「ああああ・・・・・・はあ・・・・・・・ええっ!?」


もう一方の手が、私の意志と無関係に・・・・・・
し・・・・下に・・・・・・・・伸びて・・・・・・・・いく。


「ちょ、ちょっと・・・・・ああんっ・・・」


混乱する私には見向きもせず、手は太ももへと伸び、
浪馬クンと同じようにさすっていく。
ゆっくりと、奥へと進んでいく。


「いや・・・・そこは・・・・・・・・・!!」


言葉とは裏腹に、手だけ別の生き物になったみたいに
私の身体に電流を走らせていく。
下の手も、胸の手も、もう自分のものではない。
この手は・・・・・・浪馬クンの・・・・・・・・


「や・・・・触っちゃ・・・・・・・・!!!」



くちゃっ・・・・・・・



「んんんんんうっ!!!!!」



すごくイヤラシイ音とともに、手が・・・私の一番奥へとたどり着いた。


「やあっ・・・・・・わたし・・・・・・・濡れ・・・・・・・・ああんっ!」


既に、布ごしにでもはっきりわかるほど、潤っていた。
思ってたよりもはるかに熱くなっていて、
そこだけマグマみたいになっていた。


「はあ・・・・・・っ・・・・・・もし・・・・・・・あのまま・・・・・・浪馬クンに・・・・・・
触られ・・・・・・て・・・・・・・・ふあああああああんっ!!!」



あのとき、少しでも遅かったら、きっと浪馬クンにバレていた。
もうバレていたかもしれない。
そう思うと、更に手の動きが速くなっていった。


「や・・・・よごれちゃう・・・・・・・・
よごれちゃうよぉ・・・・・・・・・・・・・・!!」



言いながらも決して手は止まらず、私を快感へと誘っていく。
私・・・・思い出して・・・・・気持ちいいんだ・・・・・・・
そう自覚するたび、胸の先が、固く尖っていく。
奥から溢れ出す。
もう吸いきれなくなった下着から、クチュクチュとエッチな音が聞こえてくる。
その音が、私をさらに誘っていく。


「浪馬クン・・・・・ああっ!
中で・・・・指・・・・・・動かしちゃ・・・・・ダメえっ・・・・・・・!!」



浪馬クンの動きと同じように、ゆっくりと指を上下させる。
動かすたびに、指に絡まっていく。
その恥ずかしさが、さらに溢れさせていく。


『タマ・・・お前のここ、すごく熱くなってるぞ・・・・・・』


「!!!!いやあ・・・・・・そんなこと・・・・・言わないで・・・・・・!!」


浪馬クンの言葉が、私の中でリピートされる。
思い出すたびに、奥からとめどなく流れてくる。
下着の上からでもハッキリ見えるくらい、皮が剥けかかって
固くなっている。


「はあ・・・・・っ!浪馬クン!ろうま・・・・・・ク・・・・・・!!」


だんだん頭の中が痺れてくる、
何も考えられなくなっていく。
頭の中に浮かんでいるのは、今日の出来事と、浪馬クンのことだけ。


「ろうまクン・・・・・ろうまクン・・・・・・・ろうま・・・・・クン!!」


浪馬クン、私とそういうことしたいのかな。
私のこと、女の子だと思ってくれてるのかな。
幼なじみなだけだったら、あんなことしないよね?

ねえ・・・
今よりもうちょっとだけ・・・・・期待してもいいのかな?
私のこと・・・・好きって思ってくれるのかな?
もし・・・・もしそうなら・・・・・・

そしたら・・・・・・
私は・・・・・・・・私はね・・・・・・・・・



「ふああああ!!ダメ・・・・・ダメ!もう・・・・・・・・ッ!!」



頭が白くなっていく。
何の感覚もなくなっていく。
心が、浪馬クンで、満たされる。



「もう・・・・・・・イ・・・・・・・・あはあっ!!!
ろうまクン!ろうまクン!!
はあああああああああああああん!!!!」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とさっ。



「はあ・・・・・はあ・・・・・・・私・・・・・さいご・・・・・まで・・・・・・」



服のままベッドに倒れこんだ私は、
荒い息を吐きながら両手を見つめた。
ベタベタになった右手を拭き取りもせず、ただ呆然と眺めていた。


「浪馬クン・・・・・・」


そう呟くと、いきなり意識が遮断され始めた。
夢の世界へと、強制的に引き込まれる。
それに逆らわず、私は目を閉じた。



明日、浪馬クンと喋れるかなあ・・・・・・






11月22日(月)

「よお、タマ」

「!お・・・おはよう、浪馬クン」


うわあ・・・・・気まず・・・・・・・

昨日のことが頭をよぎっちゃって、側に行くことができない。
浪馬クンもなんとなく話しかけづらいのか、こっちに来ないし。

授業中は、ずっと、浪馬クンの顔を、手を眺めていた。
昨日のことを思い出し、顔が赤くなる。
部屋でしちゃったことを続けて思い出して、もっと真っ赤になる。

そんな状態のときに限って、浪馬クンと目が合った。

「〜〜〜〜!!」

そのたびに慌てて目を逸らす。もちろん顔は真っ赤。
でも、浪馬クンが視線を戻すと、また見つめなおした。
再び浪馬クンと目が合うまで。

今日一日ずっと、その繰り返しだった。

「なにやってんの?アンタ」

「!あわわわっ」


休み時間に浪馬クンを眺めているのを見つかり、声にならない私。
そんなことも、何回も続いた。

「ホントに、アンタ見てると飽きないねえ」

「まあいいんじゃない?仲良しなのはいいことだよ」


友達のニタ〜っとした笑顔が、私の顔を一層赤くさせる。
何よぉ。その見透かしたような目は・・・・・
お見通し?喋ってないのにケンカじゃないってバレてる?


結局、今日はずっと話しそびれた。
明日は祭日なのに、デートの約束もできなかった。
はうう・・・・・・





11月23日(火)

「ん・・・・・・・・!!今、何時!?」

跳ね起きた私は、慌てて時計を見る。

11時!!うわあ遅刻だあ!!
浪馬クンに怒られちゃ・・・・・・・・・・・・・・あ」



今日、約束してなかったんだっけ・・・・・・


浪馬クンを好きだと気づいてから、初めての1人の休日。
まだ2週間も立ってないのに、すごく久しぶりに感じる。
何よりも、「休日=浪馬クンとデート」の図式が頭に刷り込まれていることに
ビックリした。

でも、今日はその約束をしていない。
何となく、気分が滅入ってくる。

「だって・・・恥ずかしくて話しかけられなかったんだもん・・・・・・」


自分自身にそう呟くと、のろのろとリビングに下りる。


「あら、珍しく遅いのねえ」

「・・・うん・・・・・・・・」

「具合でも悪いの?」

「・・・・・・・ううん・・・・・・・・」



お母さんの声もあまり耳に入らなかった。


好きなマンガを読んでもお気に入りの音楽を聴いても、
全然テンションが上がらない。

あー・・・・・・ヒマだなあ・・・・・・・・・

布団の上でゴロゴロしながら、その言葉ばっかり連呼する。


浪馬クンといないと、こんなにする事ないんだ・・・・
今まで、日曜って何してたっけ?
去年は1人・・・・だったんだよね。
友達と遊んだり・・・・じゃなくても、こんな風にはならなかったな・・・

今と同じような状況は何回もあったハズなのに、
こうやって音楽聴いたり、マンガ読んだりしてたハズなのに。
浪馬クンがいかに私の生活に侵食しているのかを、
改めて思い出させた。


「浪馬クン・・・・何、してるかな・・・・・・・・」


目を見て離せなくても、電話なら・・・・・・
そう思った私は、携帯に手を伸ばす。


プルルル・・・・・プルルル・・・・・・・ガチャ


「あ、もしもし?浪馬ク・・・・・」


−ただいま、留守にしております。御用の方は・・・・・



・・・・・・・・・・ピッ。


「留守・・・・・・か」


標準設定そのままの無機質なメッセージが流れ、私は通話を切った。
相変わらずめんどくさがりなんだから・・・・・
そう思って少し微笑んだけど、次の瞬間に、ふっと言葉が出た。


「寂しいなあ・・・・・・」



・・・・・・・・・ああ、そっか。
私、浪馬クンがいなくて、寂しいんだ。


そう自覚した途端、その感情が私をすっぽりと覆い始めた。
たった1日顔を見てないだけなのに。
そう思っても、止まらなかった。


「浪馬クン・・・・・寂しいよ・・・・・・」


呟いたら、涙が出そうになった。
ダメだ。部屋にこもってたら、寂しさで押しつぶされちゃう。
そう思った私は、逃げるように部屋を出て行った。



商店街をブラブラと見て回る。
この前友達と遊んでからそんなにたってないけど、
季節の移り変わりが更に感じられた。
でも、目的もなく出てきた私に何かあるわけもなく、
すっかり肌寒くなった街を、ただブラブラ歩くことしかできなかった。
もちろん、気分が晴れるわけもなく。

「はあ・・・・・」

今日何十回目かのため息をつくと、もう日が沈みかけていた。

「帰ろ・・・・・・」

そう言って振り向くと、雑踏の中に人影を見つけた。
あれは・・・・・・・!!


「浪馬クン」

「よっ」



嬉しくて思わず走りながら、浪馬クンに近づいていった。
本人の前に立つと、やっぱり恥ずかしくなっちゃうけど。
でも、せっかく逢えたんだもん、何か喋らなきゃ・・・・・・


「あのさ」

「ん?」

「この間は楽しかったよ。ありがとね」


夜のことには触れず、デートのお礼を言う。

「はっはは。まあ、いつもどおり振舞っただけだけどな」

あ・・・このヘンな笑い方・・・・浪馬クンの機嫌いいときだ・・・・・
私と逢って、機嫌よくなってくれたのかな・・・・・・

また自分勝手にそう思いながら、それでも私の前で
その笑い方を見せてくれて、すごく嬉しくなった。
昔から知ってる私だけがわかる、浪馬クンの笑い方。

「でも、すっごく楽しかった。また誘ってくれるよね?」

「ああ、また今度な」

「うん。期待して待ってる。それじゃあね」



結局それだけ話して、別れた。
それでも、浪馬クンと逢えたことが、すごく嬉しかった。
部屋であれだけ寂しかったのがウソみたいに、
私の身体に気力が戻っていた。
私、単純だ・・・


「いつもどおり・・・・か。
そのいつもどおりが、私には最高に楽しいんだよ」



笑いが止まらないまま歩き続ける。
そう・・・いつもどおりが一番・・・・・・・いつもどおり・・・・・・?

じゃあ・・・・・・


「私の・・・・・触るのも・・・いつもどおりになるって・・・・・・こと?」


ボッ!!


わああ!そんなこと言ったら、また喋れなくなっちゃうじゃん!!
もう!!浪馬クンのバカーーーーーーーーッ!!!





11月27日(土)

まだ、会話が何となくぎこちない。
火曜日に話してからは、だいぶ落ち着いてきたけど。

話をしてても、ふとしたときに先週のことを思い出して
顔が赤くなっちゃう。
意識しすぎだとは思うんだけど、
浪馬クンの顔を、手を見てるだけでどうしようもなくなる。


あの手で・・・・・私の・・・・・・・


ボッ!


「ど、どうした、タマ?

「!?う、ううんっ!なんでもないっ!」



うう・・・・・・私、なんでこんなエッチな事ばっかり・・・・・
浪馬クンのせいだからねっ!


それでも浪馬クンといっしょにいたくて、顔を赤くしながらも
ずっと一緒にいた。
しもやけの話、テレビの話。どーでもいい話なのにすごく楽しい。

明日の日曜日も、デートの約束をした。


「なあなあタマ」

「ん?」

「明日の予定どうなってる?」

「えーっとね、キミと一緒に遊びに行くことになってる」

「そうか、奇遇だな。じつはオレも、タマと一緒に・・・・・・って、オイッ!」

「あははっ」

「ったく・・・・・・」

「それで、明日はどうするつもりなの?」

「そうだな・・・・・・」



どんなに私がヘンなこと言っても、ちゃんと返してくれる。
この辺りは、昔から知ってる、幼なじみの特権だよね。
私の気持ちはそれだけじゃないけど。


「じゃあ私、そろそろ行くね」

「ん。またな。タマ」

「明日の約束、忘れないでね」



念を押して、私はバイトのために先に学校を出た。
浪馬クンが、デートの約束を忘れたことなんかないんだけど、
私が、明日も浪馬クンと一緒ににいられる嬉しさをわかってもらえるように。
浪馬クンが、私と一緒にいるのを楽しみにしてくれるように。




サー・・・・・・・



バイトの疲れをシャワーで洗い流し、ゆっくりと湯船につかる。

「明日はゲーセン・・・・・か」

どうしてもデートの後の事を考え出してしまって、真っ赤になってしまう。


また、この前みたいなことされちゃうのかな。
そしたら、どうしたらいいんだろう。

あんな・・・の、もう1回されたら・・・・・・
正直、耐えられる自信なんかないよ・・・・・・・

それどころか、もっと・・・・もっとすごいことだって・・・・・・

すごい・・・・・・・こと・・・・・・・・?


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


「すごいこと」を想像した私は、思わず湯船に顔をうずめる。
恥ずかしくて、身体が熱くなる。
きっと、私の周りのお湯、温度上がってるよ。
そう思いながらも、想像は止まらない。


浪馬クン・・・・・・・と・・・・・・・?
ずっと一緒にいた、あの浪馬クンと・・・・・?
そんな、関係になったら・・・・・・・


でも・・・・もし・・・・・浪馬クンがその気だったら・・・・・・
その気になってくれるとしたら・・・・・
私は・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・・もう1回・・・・・シャワー浴びよ」



ね・・・念のためだよ!念のため!
デートだもん!エチケットだよそんなの!
別にっ・・・・・他の意味なんか・・・・・・・・・・


「誰に言い訳してるんだか・・・・・・」


顔を真っ赤にして一人でツッコみながら、再びシャワーのスイッチを押す。
念入りに身体を洗う。
今までで一番、長い時間をかけて。


隅々まで身体を洗いながら、明日のことを考えた。

明日は、早起きしよう。
ブローも・・・・時間をかけて・・・・・・
鈍感の浪馬クンでもわかるくらい、キラキラにしてみよう。

少し・・・アイラインとか・・・作ってみようかな・・・
でも、浪馬クンはナチュラルな方が好きかなあ。
普段の私の顔、見慣れてるしなあ。
でも、うーん・・・・・・


考えても考えても、どうしたらいいのかわからない。
浪馬クンの好みなんて、全然考えたことなかったから。
どんな服装が好きなの?
メイクは好きなの?キライなの?
改めて、浪馬クンのことをなんでも知ってると思い込んでいて、
実は何にも知らなかった私に気づく。


「浪馬クン・・・・・どんな女の子が好きなんだろ・・・・・・」


お風呂につかったまま、ため息をつく。
だんだん、気分が暗くなっていく。
ただでさえ浪馬クンがどう思っているか不安なのに、
浪馬クンのことで知らないことが更に増えて、泣きそうになる。


「浪馬クン・・・・・・」


そのとき、頭の中に、浪馬クンの声が響いた。



『オレは、お前の笑顔が好きなんだよ!!』



・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・・・・・・



あの時、公園で言ってくれた、言葉。
私を救ってくれた、言葉。
唯一、私を好きだって言ってくれた、言葉。


わたしの・・・・・・・笑顔・・・・・・・・・・


そっか・・・・・そうだよね。
あんまり気合入れても、浪馬クンビックリしちゃうよね。
うん。普通にしよう。自然がいちばんっ。


そうと決まれば、今日はもう寝ちゃおう。
明日は、朝から忙しくなるんだから。

私は勢いよく湯船から上がった。



眠る前に窓を開けて、浪馬クンの家のほうを見てみた。
電気は消えてて、何にも見えなかったけれど、
浪馬クンも早寝するほど楽しみにしてくれてるのかな、と
勝手に思い込んで、笑顔になった。

浪馬クンの部屋に向かって、静かに囁いた。



「明日も、楽しく遊ぼうねっ」





11月28日(日)

早起きはしたものの、ずっと鏡の前で格闘していた。
だって、髪が思うように流れてくれないんだもん。
ようやくうまくいったときには、待ち合わせの時間にかなり近づいていた。

「やばっ!今日はあんまり走りたくないのにっ!」

せっかくキレイな髪にしたのに、走ったらバラバラになっちゃうもん。
それでもできる限り急いで歩く。

浪馬クン、気づいてくれるかなあ・・・・・・

途中にある鏡やウィンドウに自分の姿が映るたびに、
ついつい立ち止まって髪を確認してしまう。
わわわっ!遅刻しちゃうっ!


何とか待ち合わせ時間に間に合った。
またギリギリか・・・・・


浪馬クンはいつもどおりに先に来て待っていてくれた。
で、これまたいつもどおりボーっと・・・・?

?何かソワソワと落ち着かないような・・・・・・


「浪馬クン」

「よお、タマ」


んー・・・気のせいかな・・・・?

「待ち合わせの時間より早く来れるようになったなんて、
成長したねえ」

「あ、あのなあ・・・・・・」

「あははっ」


軽口を叩いてみると、ちゃんと返してくる。
やっぱりいつもどおりのような・・・・・
でも少しおとなしめのような・・・・・・

考えながらふと浪馬クンを見る。
・・・・・・?


「・・・・・・・・浪馬クン?」

「・・・・・・」



浪馬クンが私を見つめていた。
ど・・・どうしたのかな・・・・・?

あ・・・・・もしかして・・・・・・・・
髪のこと・・・・気づいてくれたのかな?


「ろ・う・ま・クンっ」

「・・・・・・・・あ」


「もしかして、気づいてくれた?」

「・・・・・・・・何がだ?」



え。


「何って・・・・私のこと見てるから・・・・・・」

「な・・・・・何でもねーよ」



そう言うと、浪馬クンは少し慌てて視線を逸らしてしまった。
髪には気づいてませんか・・・そうですか・・・

せっかく時間かけてきたのにな・・・・・
まあ浪馬クンじゃなあ・・・・・


「ん?どうした?」

「なんでもないよーだっ」



まったくこの鈍感男が。
私はクスッと笑いながら、浪馬クンの隣へ並ぶ。


「んじゃ、とっとと行くか」

「うんっ」




こうしていつものように楽しいデート・・・・だったんだけど、
今日はどうもおかしかった。

ふと気づくと、浪馬クンが私を見ている。
最初はやっぱり髪に気づいたのかと思ったけど、そうじゃないみたい。
見ているのは、私の顔だから。


「・・・浪馬クン?」

「・・・あ」



このときに、振り向いたり話しかけると、顔を逸らしちゃう。


「あの・・・」

「よーし、このぬいぐるみ取ってみるか。タマ、手伝え」

「あ・・・・・・うんっ」



しばらくはいつもどおりなんだけど、
ふとしたときに、見つめられているのに気づく。
どうしたんだろ、浪馬クン・・・・・
何か顔についてるのかと思って
鏡で確認してみたけど、何ともなかったし・・・・
ヘンなの。


「よしタマ。次はD○Rで対戦だ」

「・・・・・うん」

「負けたほうがジュース奢りな」

「!よーし、絶対勝つからねっ」

「俺のキックボクシングで鍛えたフットワークを思い知れ!」



・・・・よくわかんないなあ・・・・・・



こうして、ヘンな感じはしたけどたくさん騒いで、笑いあって。
とっても楽しいデートは、終了した。


「どうかした?浪馬クン」

「今日は楽しめたか?タマ」

「うん。すごく楽しかったよ」

「はっはは。そうかそうか」



いつもどおりの浪馬クンの質問。
いつもどおりの私の答え。
そして、いつもどおりの浪馬クンのヘンな笑い方。

うん。機嫌いい浪馬クンだ。よかったよかった。

そう思って、また楽しくなる。


名残惜しいけど、また明日逢えるもんね。
じゃあ、一緒に帰ろっか。浪馬クンっ。



いつものように手を繋ごうとした。



けど、



「・・・」


浪馬クンは手を差し出してこなかった。


「どうかしたの?浪馬クン」


浪馬クンは、じっと私を見つめていた。


その様子に、私は思わず固まってしまった。
心臓が跳ね上がり、そのまま見つめ返してしまった。


浪馬・・・・・クン・・・・・・?


いつものような、おちゃらけた表情ではなかった。
今までに何度かしか見たことがない、浪馬クンの真剣な表情。


昔、私を叱ってくれたときの。

あの人の車に乗った私を、何時間も捜してくれたときの。


本当に私のことを考えてくれているときの、あの顔。


私の顔をひたすらに見つめ、必死に何かを言おうとしている浪馬クン。
真っ赤な顔に、目を背けることができなかった。


長い、沈黙。


大した時間じゃなかったんだろうけど、私にはそう感じられた。
でも、イヤとは感じなかった。

私はじっと、浪馬クンの言葉を待った。
すごくドキドキするけど、浪馬クンの瞳から目が離せない。
今までなら逃げ出したくなるような場面なのに、足は動こうとしない。
それどころか、何分でも、何時間でも、このままでいられると思った。
浪馬クンが次の言葉を出してくれるまで、ずっと。

浪馬クンは、何回も言葉を言いかける。
でも、声にならないで、また口を閉じてしまう。


いいよ。私、ずーっと待ってるから。
浪馬クンが次の言葉を言ってくれるまで、ずーっと待ってるから。

きっと、浪馬クンの言葉は、私の心に届く言葉だから。
私のことを、考えてくれてると思うから。



そうだ。私は・・・浪馬クンの言葉に・・・

期待・・・・してるんだ。




やがて、意を決したように、浪馬クンの口が開いた。



「なあ、タマ」



「ん?」




「オレ・・・・・・お前と二人きりになりたい」




・・・・・・・・・・・・・・・・・!!




「え?」




ああ・・・・・・・

今までの展開や今日の様子からすれば、全く予想できなかったワケじゃない。
それでもいざ言葉にされると、こんなマヌケな返事しかできなかった。

だって・・・・・私と・・・・・・・・私と・・・・・・・・?




「一緒に遊びに行ったりとか、そういうことだけじゃなくって、もっと・・・」




キミを好きな気持ちに気づきもしないで、他の人と付き合って・・・・・
10何年もたって、気づいて・・・・・
こんな・・・・どうしようもない・・・・・私と・・・・・・?




「・・・・・・」




いろいろな気持ちが頭の中をかき回して、声を出すことができなかった。




「分かるだろ?オレの言ってること」




浪馬クンが、まっすぐに私を見つめてくる。
浪馬クンの瞳。
私が大好きな、浪馬クンの瞳。




「う、うん・・・・・・」




そうだ。

どんなに気持ちがぐちゃぐちゃになっても、
私の浪馬クンに対する気持ちは一つ。
ずっと心の底で想っていた、私の気持ち。




「タマ」




私は・・・・・・・・浪馬クンが・・・・・・・好き。




「・・・・・・いいよ」




こんな、キミの後ろをくっついていくことしかできない、
子供で、どうしようもない私でよかったら。

私を、浪馬クンが求めてくれるなら。

私は、浪馬クンの想いに応えたい。




「え?」




違う。

「想いに応えたい」だなんて、そんな可愛らしいことじゃない。

浪馬クンと手を繋いでから。

浪馬クンをキスしてから。

浪馬クンを好きだと気づいてから。

ずっと、ずっと、私が夢見ていたもの。

自分勝手に、求めていたもの。




「二人きりになっても・・・・・・いいよ」





私は、浪馬クンと、したい。





「ほ、ホントか?」




「うん。いつかはこんなことになるんじゃないかなって、最近思ってたし・・・



触られて、恥ずかしくて、それでも逃げなくて・・・・・
一人で、あんなことしちゃったのも・・・・・・
浪馬クンのサインを、心の奥では感じていたから。
私の心の弱さが、気づかないフリをしていたから。




それに、そういう顔をするのって、キミが本当に真剣なときだけだから」




そして何よりも、

私自身が、それを望んでいたから。




「タマ・・・・・・」




浪馬クンの顔が、歪む。
私の目に涙が滲んだからか、浪馬クンが安心したからなのか、
それはわからない。
でも、嬉しくて仕方ないことだけは、確かだった。



「ねえ。それで、どこで二人きりになるの?」



私が一番行きたいところは、とっくに決まっている。
それでも浪馬クンの口から言って欲しくて、ワザと尋ねてみる。



「そうだな・・・」



浪馬クンは、ちょっと考える。
でも、きっと、浪馬クンの答えも決まっている。



「オレの部屋、でいいか?」



浪馬クンが今の部屋に来てからそんなにはたってないけれど、
それでも、2人の思い出がたくさんある場所。
「幼なじみ」としての思い出で、溢れている場所。



「キミの部屋か・・・・・・」



その大事な場所で、私たちは新しい思い出を作る。



「あそこならお前も慣れてるし、離れだから誰にも邪魔されないだろうし、
いいだろ?




「幼なじみ」としてだけじゃない、新しい2人の、新しい思い出。
2人だけがわかる、一番の場所で。



「・・・・・・うん」



私は、赤い顔を隠さないで。
浪馬クンの瞳をしっかりと見つめて、頷いた。



「よし」



ぎゅっ・・・・・・



「あっ・・・・・・」



「手、握っててやるからな。ちゃんとついて来いよ」



初めて、浪馬クンの方から、手を繋いでくれた。
浪馬クンから・・・・・

そのことが、とっても嬉しくて、



「うん」



大きく頷いて、指先を絡めた。

そして、新しい思い出を刻みに、歩き出した。




私と浪馬クン。

2人の一番長い夜が、始まる。




浪馬クンの手は、いつもよりもすごく熱くなっていた。
少し歩くと手に汗が滲んでくる。

「・・・わりぃ」

慌てて汗をふき取って、また繋いでくれる。
何回も、それを繰り返した。

浪馬クンったら・・・・・

普段から飄々としていて、何を考えてるのか
幼なじみの私でもわからないときがある浪馬クン。
その浪馬クンの気持ちが、今は手に取るように伝わってくる。
嬉しくて、ドキドキする。


浪馬クンの歩幅が少しずつ早くなって、
私の手から離れちゃいそうなくらい前に出て行く。
それを軽く引っ張って、隣にそっと引き寄せる。
指先を更に絡ませる。


少し歩くと、今度は私のほうが前に。
2人でテレ笑いを浮かべる。
お互いに先に行かないように、腕を絡ませて身を寄せる。
近所の人が見たら、きっとビックリするくらい、くっつく。


それでも私たちの歩くスピードは、少しずつ早くなる。
お互いに見つめ合って、ムリヤリ歩幅を抑えて進む。


大丈夫、あせらなくていいんだよ・・・・・・


浪馬クンに、自分に、言い聞かせるように呟く。


恥ずかしいのは、自分だけじゃないから。

気持ちが高ぶっているのも、自分だけじゃ・・・ないから。


歩いている間、私も浪馬クンも、ほとんど口を開かなかった。
私は、勝手に早まる歩幅と心臓を抑えるのに必死だったから。
浪馬クンも、きっと大差ないと思う。
チラチラと横目で見た浪馬クンの顔は真っ赤だった。



ゲーセンからここまでの、ほんのちょっとの距離。
それでも浪馬クンの家に着いたときには、身体中汗でいっぱいになっていた。


「ふぅ、ふぅ、ふぅ・・・よ、よし。着いたぞ」


浪馬クンに至っては、肩で息をしていた。
こんなに緊張している浪馬クンはもちろん初めてで、
私までうつっちゃいそうだった。


「も、もう・・・そんなに焦らないでよ」


自分のことをごまかすように、浪馬クンを軽く責める。
私だって、心臓がパンクしちゃいそうなんだから。


「だ、だってよ・・・・・・」


「早く二人きりになりたいのはわかるけど、
もうちょっと落ち着こうよ。ね?」



私だって、早く・・・キミと一緒になりたいんだから・・・


「あ、ああ」


「それじゃあ、深呼吸して。
あんまり興奮して、乱暴にされるのなんてイヤだからね」



自分の興奮を一緒に抑えられるように。
ワザといつものように、軽口っぽく言った。


「お、おう」


す〜〜〜〜〜・・・・・は〜〜〜〜〜〜・・・・・・


二人一緒に、何回も、何回も深呼吸をした。
私の方が興奮してるのバレちゃうかも、と思ったけど、
それでもやっておかないといけないと思った。

少しでも冷静になって、今日のことを。
この夜のことを、全部覚えておきたかったから。



「じゃ、じゃあ、入るぞ」


「・・・・・・・・うん」





私たちは、「幼なじみ」の階段を、上り始めた。




「あれ・・・・・・・?」


浪馬クンの部屋に入った途端、ヘンな感じに襲われた。
ついつい、部屋の中をキョロキョロしてしまう。


「お、おい、どうしたタマ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」




浪馬クンの部屋は、前と変わっていなかった。

結構キレイに見えるけど、
ただ単に物が少ないから、そう見えるだけの部屋。


わりと大きいテレビ。

「使いこなせねえ」とグチってたパソコン。

お気に入りのポスター。

いつもたたまないで、乱暴に放り投げられている布団。


何にも変わってない。
私が遊びに来ていたときと、何にも変わっていない。

ハズなのに。

何かが、違うような気がする。

なんだろ、これ。
まるで、今日初めて来たみたい・・・・・・

しばらく来てない時期があったからかな?
でも、普通は彼氏でもない男の子の家に遊びに行くなんてこと
ないんだよ・・・・・ね。
幼なじみとはいっても、刃君や望君の家には
もう何年もいってないし。

なのに、ちょっと見てなかっただけの浪馬クンの部屋に、違和感がある。
そんなになじんでいたのかなあ、この部屋に。
前はそんなこと全然考えなかったのに。
不思議だなあ・・・・・・


「ふふっ・・・・・・」


なぜか、微笑みがもれてしまう。


「な、なんだよ」


いきなり笑い出した私に
少し心配げな顔をした浪馬クンが、尋ねてきた。


「なんか不思議だなって思ってさ」


「不思議?」


「うん。この部屋には何度も来たことあるのに、
まるで今日が初めてみたいに思えて・・・・・・」



思ったことそのままを、話してみた。
すると浪馬クンは、安心したような、少し呆れたような顔で
こう言った。




「それはそうだろう」




「え?」




なんで?なんで「それはそうだろう」なの?
浪馬クン、理由わかるの?
実は部屋が前と違うとか?
私のわからないところで、インテリアが違うとか?


頭の上に?マークがたくさん点滅する私に、
浪馬クンは更に難しい言葉を投げかけてきた。




「なにしろお前がオレの部屋に来るのは今日が初めてだからな」




え?え?え?
?マーク、倍増。

や、私、ここに来たこといっぱいあるよ?
ご飯だって作りにきたし、洗濯だってしたよ?
初めてじゃないよ?

何を言ってるのか、全然わからなかった。
一瞬、私の耳が壊れたのかと思った。
でも、浪馬クンは間違いなく「初めて」と言っている。
どういうこと?今までのは何?
わかんないよ。わかんないよ、浪馬クン・・・・・・




「えっ、でも・・・・・・」




私が心の底から困った視線を向けると、
浪馬クンはちょっと視線を逸らした。

1回深呼吸をして、落ち着こうとする。
でも、顔は赤いまま。

それでも私の目を見つめなおして、笑顔を見せた。
うわあ・・・・・・
今日一番の笑顔に、心臓が跳ね上がる。

その最高の笑顔で、
この難問の答えを教えてくれた。





「今までお前が来たことがあるのは幼なじみの部屋で、
今お前がいるここは、恋人の部屋だ」






・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・・




今・・・・・聞き違い?
恋人・・・・・・・恋人・・・・・・・・・恋人・・・・・・・?


わたしが・・・・・恋人・・・・・・?
そう・・・・・・言ってくれた・・・・・・・・の・・・・・・?


この部屋・・・・私と浪馬クン以外・・・・誰もいないよ?
私しか・・・キミの言葉を聞いてる人・・・・・いないんだよ?


本当に・・・・私に・・・・言ったの・・・・?
私のこと・・・・・恋人だって・・・・・言ってくれたの・・・・・・?


私・・・・で・・・・・・いいの・・・・・・?


信じられないよ・・・・・私・・・・・なんか・・・・・・



でも・・・・・・・でも・・・・・・・・でも・・・・・・・





嬉しい・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・





「浪馬クン・・・・・・」




私たちは、抱きしめ合っていた。
私が飛び込んでいったのか、浪馬クンが抱きしめてくれたのかは、わからない。
ただ、2人は優しく抱き合った。


がっしりとした浪馬クンの身体を。
服の上から伝わってくる体温を、心の温かさを。
浪馬クンの、ぬくもりを。

私、浪馬クンが、大好きなんだ。

気づいてから、もう数え切れないほど確信したこと。
抱き合っていると、その想いがもっと、もっと大きくなる。



「タマ・・・・・・」



浪馬クンが私を見つめる。
瞳に、私の顔が映る。
それがどうしようもなく嬉しくて、自然と微笑んでいた。



「んっ・・・・・・」



キス。



舌が、お互いの同じものをなぞっていく。



「あっ、ふあ・・・・・んぅ・・・・・・・はふ」



舌がお互いに触れるたび、頭の中がビリビリと痺れる。
痛いくらい。
でも、気持ち・・・・・いい。
今までのキスで一番・・・・・・・気持ちいい。



「んっ、ふぅ・・・・・・はむ、ん、ん、ん・・・・・・・・」



舌先でつっついたり、軽く吸ったり、唇で挟んだり。
お互いの口の中で、お互いの舌を求めた。
キスだけで、身体が溶けそうになる。



「ふあ、んぅぅ・・・・・・・」



2人の息が大きくなっていく。

浪馬クンが興奮している。

私も・・・・・・・・興奮・・・・・・・・・している。




「あっ・・・・・・」




浪馬クンの手が・・・・・・胸に・・・・・・・触れてきた。



「タマ・・・・・・」



あの時のことを思い出して、真っ赤になる。
死ぬほど恥ずかしくなる。
でも・・・・・・



「んっ、浪馬クン・・・・・・・」



私・・・・・・期待・・・・・している・・・・・



浪馬クンの手に、ゆっくりと力が入る。
あの時と同じ・・・・優しく・・・・・・優しく・・・・・・・


ふあああああっ・・・・・
あの時より・・・・・ずっと・・・・・・・気持ち・・・・・・



「あっ、や・・・・・・そ、そんな・・・・・・」



浪馬クンの手に合わせて、私の胸が形を変えていく。
まるで、浪馬クンの動きを覚えていくみたいに。
手のひらが、指の1本1本が、気持ちよさを引き出していく。
やあっ・・・・・そんな風にされても・・・・・感じ・・・・・



「タマの胸、すごく柔らかい」



おもちゃのゴムマリで遊ぶ子供みたいににぎにぎしながら、
浪馬クンが耳元で囁く。
そ・・・そんなに揉んだら・・・・・・先・・・・・尖っちゃ・・・・よぉ・・・・・



「あ、当たり前じゃない。固かったら・・・・・んっ。へ、変・・・・・・でしょ?」



息も絶え絶えになりながら、何とか言葉にする。
ちゃんと浪馬クンに聞こえているかどうか、自分ではわからない。
もしかしたら、吐息しか聞こえてないかもしれない。
そう思うと、更に胸の先が熱くなっていった。



「ああ」



聞こえたのか聞こえていないのか、浪馬クンはイタズラっぽく笑った。
一瞬、手が胸から離れる。

はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・・


呼吸を整えようとした瞬間、



くにっ



〜〜〜〜〜〜〜〜!!



「きゃっ。そ、そこは・・・・・・」



ふわ・・・・ああああっ・・・・・・・!
その・・・・・その場所は・・・・・・・・・!

異常なほど敏感になった場所を刺激されて、
呼吸を整えるどころかまともに息も吸えない。

服の上からでもわかっちゃうんじゃないかと思うくらい固くなった場所を、
浪馬クンの指がくにくにを動かしてくる。



「あれ?何か固いところがあるぞ?タマの胸、変なのか?」



な・・・・・何・・・・・言ってるのよ・・・・・・・
そこは・・・・・弄られたら・・・・・・・
しかも・・・・大好きな人に・・・・・・そんな風に・・・・・されたら・・・・・っ!



「ば、バカ・・・・・そ、そこは固くて・・・・・・ああんっ。
あ、当たり前じゃない」




話してる最中にも刺激されて、そのたびに声が上がる。
自分でも聞いたことがないくらいのエッチな声。
なんで・・・・こんな・・・・・に・・・・・・・・



「なんでだ?」



やあ・・・・浪馬クン・・・・・・言わそうとしてる・・・・・・
エッチな・・・・・こと・・・・・言わそうと・・・・・・してるよぉ・・・・・・・



「だ、だって・・・・・・」



やだやだやだぁ・・・・・恥ずかしいよぉ・・・・・・
そんな・・・・エッチなこと・・・・・・言えないよぉ・・・・・・・
感じ・・・て・・・・こんなに固くしてるの・・・・・バレ・・・・ちゃ・・・・よぉ・・・・・



「だって?だって、なんなんだ?」



意地悪く質問を続けながら、なおも答えの部分を刺激し続ける。
ふわああっ・・・・そんな・・・・・こねないでぇっ・・・・・・

や・・・・・言っちゃう・・・・・・・
エッチな答え・・・・・・・・言っちゃうよ・・・・・・・っ・・・・・・・

もう・・・・・もう・・・・・・・・!



「ち、乳首、だから・・・・・・」



い・・・・・・言っちゃっ・・・・・・・た・・・・・・・・
浪馬クンに・・・エッチなセリフ・・・・・言っちゃったよ・・・・・・


あまりの恥ずかしさに、顔から火が出そうになる。
頬が染まっていくのが、ハッキリとわかる。

浪馬クンをチラっと見ると、とっても満足げな顔をしていた。
こ・・・・この・・・・・スケベぇ・・・・・あんんっ・・・・・・・



「きゃっ」



気づかないうちに、手の片方が・・・・・下の・・・・・・
その・・・・・・下着へ・・・・・・



「そ、そんな急に・・・・・やんっ」



胸に意識が集中してる中の攻撃に、思わず膝が折れてしまう。
甘い刺激に、立つ力がなくなっていく。
ふああっ・・・気持ち・・・・・・気持ち・・・・・・よぉ・・・・・・・



「タマのここ、もう熱くなってないか?」



!!!!



「そ、そんなこと、ないってば・・・・・・」



そんなこと、ある。

もう私・・・・・・実際は・・・・・・・下・・・・・・・
さ・・・・・触られる・・・・・・前・・・・から・・・・・・熱っ・・・・・・・ああんっ・・・・・・



「でもよ、なんか熱っぽいぞ?」



イタズラっ子の顔のまま、手の動きを下に集中させていく。
強く、弱く。
私の線に沿って、指が這っていく。
自分の知らなかったところが、初めての場所となって
どんどん声を大きくさせていく。

楽しんでる・・・・・浪馬クン・・・・・楽しんでるよぉ・・・・
イジワル・・・・・・イジワルっ・・・・・

ああ・・・・も、もう・・・・・・
もう・・・・・これ以上・・・・・染み・・・・・・・たら・・・・っ・・・・・・!



「そ、それは・・・・・あっ、いやっ」



浪馬クンの指が、私の線の中へ、軽く侵入してきた。
もう・・・・ビックリする・・・力も・・・・・・ない・・・・・・・
ふあああ・・・・・あん・・・・・ああん・・・・・っ



「ほれ、やっぱり他の部分より熱い」



な・・・・中の線に沿って・・・・指・・・・・・・
やああ・・・・・激しい・・・・・・よ・・・・・ぉ・・・・・・・



「あっ、はぁ、はぁ・・・・・ち、違う。
別にそういうわけじゃ・・・・・はぁ、はぁ・・・・・あっ、やっ!」




もう、何を否定してるのかわからない。
指の感触と、浪馬クンと。
そして、恥ずかしさしか、感じられなかった。

ダメ・・・・ダメ・・・・・・っ!
もう・・・・・ついちゃう・・・・・・・・

私の・・・・・・浪馬クンの・・・・・指に・・・・・ついちゃうよぉ・・・・・・っ!



「あっ、あっ、あっ、あっ・・・・・あぁ。お、お願い。
もうこれ以上は・・・・・・・・」




あまりの恥ずかしさに哀願すると、浪馬クンの動きが止まった。
足の力がガックリと抜けて、浪馬クンに身体を預けてしまう。

立って・・・・られない・・・・・・・



「はあ、はあ、はあ。し、下着が汚れちゃうよ・・・・・・」



そんなのは、とっくに通り越してる。
浪馬クンだって、きっとわかってる。
でも、こうでも言わないと・・・・・
このままされたら・・・・・・・指・・・・・・だけで・・・・・・



浪馬クンと、見つめあう。
わたしの、幼なじみ。
わたしの、恋人。

これから・・・・・私は、大好きな浪馬クンと・・・・・・・



「タマ・・・・」



浪馬クンが、私の肩に手をかける。
ゆっくりと、私の服を・・・・・・


・・・・って、このまま脱がされちゃったら・・・・・・!



「あっ。ちょ、ちょっと待って」



ムリヤリ平静を装いつつ、浪馬クンの手をそっと握って止める。



「ん?どうした?」



「その前に、シャワー借りていいかな?」



脱いだ服を見られるのが、すごく恥ずかしかった。
正確には・・・・・・その・・・・・・下着が・・・・・・その・・・・・・



「シャワー?」



「うん。ちょっと汗かいてるから」



家に入るまでに汗だくだったのに今さらって気もするけど、
こう言うしかなかった。

それに、ちゃんと洗った身体で・・・・浪馬クンに・・・・・
抱かれ・・・・・・のも、間違いじゃないから。



「別にそのままでもいいのに」



・・・・・・・・察しろよ。



「そっちがよくても私はイヤなの」



・・・・浪馬クンじゃムリか・・・・・・

どんなに真剣でも、やっぱり浪馬クンは変わらない。
この緊張しきった状況の中で少しだけ見られた、いつもの浪馬クン。
私の好きになった、浪馬クン。
その言葉で、私もほんの少しだけ、自分を取り戻せた。



「ったく、しょうがねえな。んじゃ、パパっと頼むぜ。パパっとよ」



・・・・・まあ、デリカシーなさすぎだけど。



「待ちきれなくて一人でしちゃダメだよ?」



お返しの一言。
なんか、すごくエッチなこと言ってるような気がするけど。



「するかっ!」



「あははっ。じゃ、待っててね」


微笑んで、私はシャワールームへと向かった。


あんまり待たせないように、いそいそと服を脱ぐ。


「うわ・・・・汗でべったり・・・・・・」


デートから今まで、汗かきっぱなしだったからなあ・・・
自分がいかに緊張していたのかを思い知る。

やっぱ、こんな汗だくのときに脱がされたくないよ・・・・・
そう思いながら下着を脱・・・・・・



・・・・・・・・・・!!!



ダメ!こんなの絶対に見せらんないっ!

どうしよ・・・こんなになっちゃってたんだ・・・・・・
浪馬クン、さすがに気づいてるかなあ・・・・・

こんなの見られちゃったら、恥ずかしくて死んじゃうよ・・・・・
だって・・・・透け・・・・・・

もしかして・・・さっきの抵抗・・・・既に手遅れ・・・・・・?
〜〜〜〜〜〜〜〜!!


音がしそうなくらい重くなってる下着を乱暴に放り投げる。
少しでも熱くなった顔を冷やそうと、
シャワーの温度を低めにして、栓をひねった。



・・・・・・ふうっ・・・・・・・・



ぬるめのシャワーを浴び、少しだけ落ち着く。


「まさか、自分が使うことになるなんて・・・・・な・・・・・・」


今まで、部屋の掃除は何回もしたことがある。
ここも、ぶーぶー言いながらやってあげたことがある。
でも、まさか自分が使うなんて。
しかも、こういう目的で使うことになるなんて。



『今お前がいるここは、恋人の部屋だ』



さっきのセリフを思い出し、顔が緩む。
浪馬クン・・・・・

自分の気持ちに気づいてからそんなに時間はたっていない。
それなのに、ずーっと前から聞きたかった言葉。

幼なじみとして、一緒に過ごしてきた浪馬クン。
これからは、幼なじみで「恋人」として、一緒になる浪馬クン。


私はこれから、初めて浪馬クンに胸を見せる。

初めて、大事なところを見せる。

初めて、生まれたままの姿を・・・・・・見せる。


どっくん・・・・・・どっくん・・・・・・・どっくん・・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし」



意識すると、心臓が飛び出しちゃいそうになるけど。
これからどうなっちゃうのか、とっても不安だけど。


それでも、私は・・・・・浪馬クンと・・・・・・重なりたい。


意を決した私は、シャワーを止める。
服をたたみ直して、元の場所に戻す。
バスタオルを1枚だけまいて、
私は・・・・・・・浪馬クンの前に、姿を現した。



「お、おまたせ・・・・・・」


「あ、ああ・・・・・・・・」



さっきまでのちょっとくだけた雰囲気はすっかりなくなっていて、
2人の間に、沈黙が訪れる。
服を脱いでいた浪馬クンが、立ち上がる。



「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」




お互いに言葉を出せないまま、ただ見つめあう。
心の中で思っていることが、喉で止まってしまう。
2人とも、きっと同じ事を思っているというのに。


すっ・・・・・・


やがて、浪馬クンの足が、ほんの少しだけ前に出る。


すっ・・・・・・


それにつられるように、私の足もちょっとだけ動く。



少しずつ、少しずつ、お互いの身体が、心が近づいていく。


もう少し・・・・もう少しで・・・・・・・



「タマ・・・・・・」


「浪馬クン・・・・・・・」




お互いの名前を呼ぶ。
それだけで、よかった。



私たちは、抱き合った。



私を覆っていたバスタオルが外れる。

床に落ちると同時に、自分の最後のリミッターが・・・・・外れる。

きっと、浪馬クンも・・・・・一緒。



「浪馬クン・・・・・浪馬クン・・・・・・・・!」


「タマ・・・・・・・・!!」



夢中になって、お互いの舌をむさぼりあう。
今までで一番、エッチなキス。


「あ・・・・・んん・・・・・・・ぷはあっ・・・・・・」


一瞬だけ口を離して息を吸うと、また塞ぎあう。
唇、舌、奥の奥まで。

お互いを密着させたまま、ベッドに倒れこむ。



もう、遠慮する必要なんて、ない。



「ふああああああっ!」



初めて浪馬クンに見せた、私の胸。
その先を丹念に撫でられ、私のどこにこんな声が隠れていたのかと
思うくらいの、甘い喘ぎ声をあげる。

服の上からでもあんなに気持ちよかったのに・・・・
直接・・・・・・そんな・・・・・・・・ああんっ!



「タマ・・・・こんなに固くして・・・・・・」



「やああっ・・・・・言わなくて・・・・・・いいよ・・・・・ぉ・・・・・・!」



「でも・・・気持ちいいんだろ・・・・・・?」



「・・・・・・うん・・・・・・・うん・・・・・・・っ!!」




浪馬クンは、言葉でもいやらしく私を責めてくる。
なんか・・・セクハラみたい・・・

でも・・・・・答えて・・・・・・しまう。
答えると、浪馬クンが嬉しそうに笑って・・・・・
動きが・・・ますます激しくなって・・・・・

顔が、声が、指が・・・ますます私を・・・・・・

やあ・・・・・これ以上・・・・・これ以上エッチになったら・・・・・・!



「!!ふああああんっ!」



さ・・・・先を・・・・・・・舌で・・・・・・・
敏感に・・・・・なってる・・・・・の・・・・に・・・・・・・っ!


舌が動くたびに、私の身体に電流が走る。
びっくん、びっくんと跳ね上がる。
胸だけで・・・・・・・こんな・・・・・・・・・・



「はあっ・・・・はあっ・・・・・・はあ・・・・・・・・」



「タマ・・・・・・」




舌の動きを止めた浪馬クンが、じっと私を見つめてくる。
いやあ・・・・恥ずかしいよぉ・・・・・



「はあ・・・・・・浪馬クン・・・・・・・」



「見て・・・・・・いいか?」



「・・・・・・え?」



「お前の・・・・・・見て・・・・・・・いいか?」



「!!!!!!!」




そ・・・・それって・・・・・・私の・・・・・・・
いちばん・・・・・・恥ずかしい・・・・・・・ところ・・・・・・・・



「ろ・・・・・・浪馬クン・・・・・・・」



「いいだろ?」



「・・・・・・・・・・・・・・」




私・・・・・・・・私・・・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・」



浪馬クン・・・・・・



「タマ・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」



心臓が爆発しそうなほど高鳴りながら、私は頷いた。



体勢を替え、浪馬クンと向かい合う。
だけど、私の足はギュッと閉じていた。

早く先に進みたいって思っても、いざ目の前にしてみると
恥ずかしくて火が出そうで、足をピクリとも動かすことができない。


「ろ・・・・・浪馬クン・・・・・・・・」


情けなく、名前を呼ぶ私。

そんな私に優しく微笑むと、浪馬クンは私の膝に両手をかけた。



「タマ・・・・・・・」



「・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・」



「いくぞ・・・・・・・・」



「・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・・」




浪馬クンの手は、少し震えていた。
その手に少しずつ、力が込められていく。
ゆっくりと、ゆっくりと、足が左右に開かれていく。



「あ・・・・・・ああ・・・・・・・・・・・」



ふあっ・・・・・・もう少しで・・・・・・・

もう・・・・・すこし・・・・・・で・・・・・・・わたしが・・・・・・・ぜんぶ・・・・・っ




「あああ・・・・・・・っ・・・・・・」




私の足は、完全に開かれた。

私の一番、恥ずかしい部分。

浪馬クンに・・・・恋人に・・・・・・見られちゃ・・・・・・った・・・・・・・・・




「こ・・・・これが・・・・・・タマの・・・・・・・・」



「やあっ・・・・言っちゃ・・・・・・・・ダ・・・・・・」





とろぉっ・・・・・・




「!!!!!!!!!!!」



や・・・・・やああっ!!!



「お、お前・・・・・今・・・・・・」



「い・・・言わないで!!言っちゃダメえっ!!!」




見られるだけで恥ずかしいのに・・・・・
こんな・・・・・・流れるところ・・・・・・・まで・・・・・・・

恥ずかしい・・・・・・死ぬほど恥ずかしい・・・・・・・・



「タマ・・・・・お前・・・・・・・」



浪馬クンの顔が、近づいてくる。



「・・・・やああんっ・・・・・・・・」




「ここ・・・・・・もうこんなに・・・・・・」



や・・・・言っちゃダメえ・・・・・・



「やだあっ・・・・・やだあっ・・・・・・」



私は、ただ顔を手で覆って、首を左右に振るだけ。
近づいてくる浪馬クンを、止めることができなかった。


恥ずかしい・・・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・」



恥ずかしい・・・・・・・・けど・・・・・・・



「ろ・・・・・浪馬クン・・・・・・・」



浪馬クンが近づいてくるたびに、溢れてくる。
いやあ・・・・見られてる・・・・・・よぉ・・・・・



「ふああっ・・・・・・」



浪馬クンの顔が・・・・・私の・・・・・寸前に・・・・・





「・・・・・・・・・・どうしてほしい?」



「・・・・・・・・・・・・え?」



「どうしてほしいか・・・・・・聞かせてくれよ」



「・・・・・・・・!!!!」




そ・・・・・そんな・・・・・・・・・
そんなこと・・・・・・聞かないで・・・・・・よぉ・・・・・・
恥ずかしい・・・・・死んじゃいそう・・・・・・なの・・・・・・・に・・・・・



「そ・・・・・そんな・・・・の・・・・・・」



「・・・・・・・タマ」



「〜〜〜〜〜!!!」




そんな・・・・・エッチなこと・・・・・・言えな・・・・・よぉ・・・・・
言っちゃったら・・・・・・言っちゃったら・・・・・・・



「あ・・・・あああ・・・・・・」



「タマ」




浪馬クンが、私の名前を呼ぶたび、身体が反応する。
こんなに・・・・・溢れて・・・・・・見られて・・・・・・・
恥ずかしい・・・・・・・恥ずかしい・・・・・・のに・・・・・・・



恥ずかしい・・・・・・のに・・・・・・・・っ・・・・・・・!!




「・・・・・・・めて




「・・・・・え?」




自分でも聞こえないくらい、か細い声。



「いやあ・・・・・もう・・・・・・」



「タマ・・・・・・・」




そんな・・・・・そんなに優しく・・・・・名前を呼ばれたら・・・・・・!




「・・・・・・・なめて・・・・・・」




もう・・・・・・ダ・・・・・・・メ・・・・・・・・・!!





「なめて・・・・!浪馬クン・・・・・なめて・・・・・ぇ・・・・・っ!!」





もう、止まらない。





「あっ、あん・・・うん、そう・・・・・・もっと・・・・・・・」



恥ずかしさも理性も、何もかも吹き飛んでしまった私は、
ひたすらに浪馬クンを求めていた。
舌が私の中を転がるたびに、欲望のままに声をあげる。
感じるままを素直に、浪馬クンに伝えるように。



「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・い、いいよ。すごく感じる・・・・・あ、あんっ」



今までに味わったことのない快感が、頭の先まで突き抜ける。
浪馬クンが、私の・・・・・を・・・・・・舐めている。
そう思うだけで、気持ちが、快感が膨れ上がる。

舌の動き。手の動き。聞こえてくる音。
視覚、聴覚、感覚。
全てが私とシンクロして、更に高まっていく。



・・・・・・・・ふあああっ!!



舌が、私の敏感な突起に触れた。
すっかり皮を剥かれた突起が、激しく自己主張する。
もっと・・・・・もっと・・・・・・・

浪馬クンがそれに応えるように、唇で挟み込む。


はうっ!!!


柔らかくて、でもちょっと荒れた感触が刺激になって、
甘い快感を瞬時に伝えてくる。
それ・・・・・それ・・・・・・気持ち・・・・・・い・・・・・・・



「あ、あ、あ・・・・・そ、そう。そこ・・・・・もっと吸って」



もっと、もっと浪馬クンを感じたくて、おねだりする。

ああ、私、こんなにエッチな娘だったんだ・・・・・

その思いすら快感になって、もっとエッチな言葉を吐き出させる。

これが、浪馬クンの前でだけ見せる、私の本当の姿だから。
あの人にも見せたことのない、私のありのままの姿だから。



「ひぁぁ・・・・・す、すごい・・・・・・・・」



軽く吸われるだけで、先が、身体が持っていかれちゃいそうになる。
これ以上のこと・・・・・されたら、私はどうなっちゃうんだろう。
ちょっと怖くなってくる。

でも、浪馬クンと一緒なら、大丈夫。
きっと、どこまで行っても一緒にいてくれる。


あん・・・・あああ・・・・・・っ

だから・・・・・だから・・・・・・・っ!!

もう・・・・・もう・・・・・・・浪馬クン・・・・・・・・!!





「なあ、タマ」





突然、浪馬クンの言葉が、私を引き戻した。





「え?」





どう・・・・・したの?
動きを止めた浪馬クンに、慌てて視線を合わせる。

浪馬クンの顔は、真剣で。
でもどこか、寂しそうな、悲しそうな顔で。
今まで全てを預けてきた私を、不安にさせる。



「ひとつ・・・・・聞いてもいいか?」



「う、うん・・・・・・・」




漠然と、すごく悲しい予感が、私を襲った。



「イヤなら答えなくてもいいんだ。ただちょっと確認したいだけだから」



「・・・・・・」



不安が、どんどん大きくなる。
私の心にしまってある部分。
誰にも見せちゃいけない部分。
そしてきっと、浪馬クンが、一番見たい部分。

この質問で、それを聞かれる。
そんな気がした。


それでも、私はこの質問を遮ることはできない。
遮っちゃ、いけない・・・・・・



長い沈黙の後、浪馬クンが口を開いた。





「お前さ、やっぱりアイツと・・・・・その、したのか?」





・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・



やっぱり・・・・・・予感・・・・当たっちゃった・・・・・・

私は、黙り込んでしまった。



答えは決まっている。
浪馬クンにごまかしなんて、したくない。
ごまかしたら、私が耐えられなくなるから。


でも・・・・・・怖い。


傷つくとか、そういうのが怖いんじゃない。
傷つけるとかが怖いんじゃない。

そんなかっこいいことじゃ・・・・・・・ない。





「・・・・・・・」





正直に言うことで、浪馬クンが少しでも離れてしまうこと。
今よりほんの少しでも、後退してしまうこと。


今の2人じゃ、なくなってしまうこと。


ただそれだけが、怖い。

現実になったらなんて、考えられない。
浪馬クンがそばにいない人生なんて、私の人生じゃない。



そんなみっともなくて、自分勝手な理由が、私を黙らせる。
時間だけが過ぎていく。





「・・・・・・・」





浪馬クンは、じっと待っている。

もし、このまま答えなければ、「もういいよ」と言って、
愛してくれるのかもしれない。




でも・・・・・・・・・




それでも、私は・・・・・・・

一生好きでい続ける人に・・・・・・

嘘なんて・・・・・・・つけない・・・・・・・・・っ・・・・・・・





「・・・・・・・・・・うん」





・・・・・・・・言っちゃった・・・・・・・


体中の力が抜ける。脱力?焦燥?
いろんなものが、私に覆いかぶさってくる。





「そうか・・・・・・」





浪馬クンが、予想通りというような、あきらめにも似た表情で呟く。
その顔に、胸が張り裂けそうになる。





「ごめんね。はじめてじゃなくって・・・・・・」





「いや、別にオレは・・・・・・」





浪馬クンの言葉を止める。
きっと優しい言葉をかけてくれるであろう浪馬クンを制する。
私が言葉を遮ってまで口に出したこと。
それは・・・・・・





「でもね。わかってほしいの。
私、ホントに、あの人のことが好きだったから・・・・・・」






・・・・・・・・言い訳、だった。





あの人を好きだったことは、忘れちゃいけないこと。
あの人を好きにならなければ、私は本当の気持ちを知らないままだったから。


あの人に・・・抱かれなかったら・・・・
「恋」を知ることが・・・・・・できなかったから・・・・・・


後悔はしちゃいけない。
そしたら、私の浪馬クンへの気持ちまで、全部壊れてしまう。



でも、浪馬クンにそんな奇麗事を言っても、
言い訳でしかないことはわかっている。

例え上辺だけだったとしても、自分の気持ちが見えていなかったとしても、
私のはじめては、あの人だった。
それは逃れられない事実。

それでも、言わずにはいられなかった。
バカで、子供で、ワガママな言い訳を。



私の思っていることは、本当にどうしようもない。



『決して軽い気持ちで抱かれたんじゃないって、わかってほしい』



そんなことなんだから。



その上で、



『私は浪馬クンと一緒にいたい。恋人で、いたい』



そう思っているんだから。





「タマ・・・・・・」





私は、本当に子供で、ワガママで、。
そのうえみっともなく言い訳して。
浪馬クンを好きな資格なんて、ないんだと思う。



それでも、それでも。

私は、浪馬クンが好きだから。

もう、浪馬クンしか見えないから。


離れてなんていかないで。

浪馬クンのそばに、いさせて。

私のことを恋人だって、言って。



このみっともない気持ちを伝えようと、俯いた顔を上げようとする。
わかってなんてもらえないかもしれないけど、
それでもわかってほしくて。





ぎゅっ・・・・・・





・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・



私が顔を上げるよりも早く、身体が浪馬クンに包まれた。
優しく、優しく、抱きしめてくれた。
なんで・・・・・こんなに・・・・・・優しく・・・・・・・




「別に気にしちゃいないよ。一応確認しただけだ」




「え?」




そんな・・・・・気にしてないなんて・・・・・・そんなわけ・・・・・
私だったら・・・・・そんなこと・・・・・

それでも浪馬クンは、優しく言葉を続けてくる。




「ほれ。初めてだと色々大変だろ?
だから先に聞いておこうと思ってよ」





「浪馬クン・・・・・・・」




抱きしめられている私には、浪馬クンの顔は見えない。
だけど、私にはなんとなくわかる。


浪馬クン・・・・・ムリしてる・・・・・・・


本当は、すごく動揺してる。
聞いた事自体、後悔してるかもしれない。
私から離れようって思ったかもしれない。



でも、それでも。



気にしちゃいないって、言ってくれた。




浪馬クンが身体を動かし、私の正面に腰を移動させる。


!!!


押し付けられた私の肌に、浪馬クンの肌と明らかに違う部分が当たる。




「わかるか?」




「え?も、もしかして、これって・・・・・・」





固くって・・・・・熱くって・・・・・・・

これが・・・・・・浪馬クン・・・・・・の・・・・・・・・・




「お前のせいだぞ」




「私の?」





「お前があまりにもいやらしい声を出すから
こんなになっちまったんだ」




いやらしい顔で、でも暖かい笑顔で。




「も、もう・・・・・・バカ」



私と続けることを、選んでくれた。



私・・・・・・・泣きそうだ・・・・・・・




「いいか?そろそろ入れても」




「うん」




何の躊躇もせず、頷いていた。





私の足の間に、浪馬クンが入ってくる。
イヤでも、アレ・・・・・が、目に映る。


どっくん、どっくん、どっくん。


あんなのが・・・・私の・・・・・・・中に・・・・・
どうしよう・・・・・ドキドキ・・・・・・おさまんない・・・・・・




「・・・・・・」




浪馬クンの顔も、真っ赤になっていた。
お互いのドキドキが、聞こえそうな気がした。




「な、なんだかすごくドキドキする」




「ああ・・・オレもだ・・・・・・」





顔を見合わせて、苦笑する。
同じ思いを持ってくれることが、すごく嬉しい。




「こ、こんなにドキドキするの、はじめてかも」




心に出てきたことを、そのまま口に出す。




「前はそうじゃなかったのか?」




「う、うん。こんなにドキドキはしなかった」




ちょっとチクッとしたけど、正直な気持ちを話した。
だって・・・こんなにドキドキして・・・・・
なのにリラックスできて・・・・・・・安心して・・・・・・
こんなの・・・・初めてだから・・・・・・




「そうか」




浪馬クンが、無邪気に笑う。
ドキドキとリラックスが、更に上昇する。
お互い裸なのに、なんでこんな気持ちになるんだろう・・・・・・




「相手がキミ、だからかな?」




余裕なんかないのに、こんな軽口が出てくる。
改めて、浪馬クンは特別なんだって、感じる。




「さあな。でも、そうだったら嬉しいかも」




絶対、そうだよ。
浪馬クンじゃなきゃ、こんな風にならないもん。
そして、これからも、こんな風になるのは・・・・
キミだけ・・・・・だもん。




「ふふ・・・・・あっ!」




いきなり熱いものが、私に当たった。
ドキドキのゲージが、急上昇する。
やあ・・・・当たっただけなの・・・・・・にっ・・・・・・




「ん?わかるのか?」




「う、うん。熱いのが、私のあそこに当たってる」





触れただけなのに、それだけで私の中から溢れてくる。
言葉に出したら、もっと熱くなってきた。




「初遭遇だな」




小さい頃から、ずっと一緒だった浪馬クン。
お互いそばにいることが、当然のように育ってきた私たち。




「うん」




そのせいで気持ちが見えなくなって。
いっぱい、いっぱい回り道しちゃって。




「・・・・・・行くぞ?」




傷ついて、大事なものを失って。




「う、うん」




ようやく浪馬クンへの想いに気づいて。
子供で、バカで、昔から何にも変わっていない私を。
受け入れてくれて。
恋人って、言ってくれて。




「んっ・・・・」




そんな私の大切なひとが、私の中にはいってくる。




「あっ、あああ・・・・・・」




な・・・・・・・・!?
先・・・・・だけ・・・・・・・なのに・・・・・・・・

こんな・・・・・・・こんなに・・・・・・・・・・




「た、タマ・・・・・・」




恋人の階段を、一歩ずつ上っていく。
浪馬クンと、2人で。




「き、来て・・・・・・」




今、私たちは――――――――――




「くっ」




――――――――――――つながる。





「ああーーーーっ!!」





な・・・・こんな・・・・・の・・・・・・・
すご・・・・・・・おっき・・・・・・・・・・・・・


あんまりのものすごい抵抗に、思わず下を見つめる。
浪馬クンの・・・・根元が、見える・・・・・・





「は、入ってる。私の中に・・・・・全部入ってるよ」





つい、言葉に出して言ってしまう。
浪馬クンがピクッと震える。
抵抗が、もっと大きくなる。




「あ、ああ・・・・・・」




そう答えた浪馬クンは、とっても辛そうな、苦しそうな顔をしている。
もしかして・・・・・よく・・・・・ない?
そんな・・・・・・私は・・・・・・・私は・・・・・・・・・




「ね、ねえ?」




「な、なんだ?」





私は・・・・・・こんなに・・・・・・・・のに・・・・・・




「私の中、気持ちイイ?」




聞いてしまう。




「あ、ああ」




浪馬クンが、顔を歪めながら答える。
ハッとして、もう一つの可能性を思いつく。


もしかして・・・・・・気持ちいいから・・・・・あんなに・・・・歪めて・・・・・・


瞬間、ゴポッと音がしそうなくらい、私の中から溢れるのを感じる。
浪馬クンに絡みつき、私を更に高めていく。





「わ、私も・・・・・私もすごく、気持ちイイよ」





いつもは絶対ありえない、エッチなセリフを言ってしまう。
他の誰にも聞かせない。言うなんて、ありえない。
浪馬クンにだけ、言えるセリフ。


言っちゃったら、ガマンできなくなってきちゃった。


浪馬クン・・・・・もう・・・・・・・ダメ・・・・・・・
早く・・・・・・早く・・・・・・
う・・・・・・うご・・・・・・・かし・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





動かない。
同じ体勢のまま、動いてくれない。



浪馬・・・・・・・クン・・・・・・・・・?



浪馬クンの顔を見る。
苦しそうな顔をしている。

でも、さっきとは違う。本当に苦しそうな。
・・・・・・・・・悔しそうな、顔。





「・・・・・・・・アイツよりもか?」





「え?」





突然の言葉に、私は呆けた返事しかできない。





「アイツより、オレの方がいいか?」




この状態での質問に思考が追いつかない。




「え?な、なにを・・・・・・」





少しでも考えたくて、聞き返そうとした、その時。






ぐちゅうっ!






!!!!!!!!!!





突然、浪馬クンが、動いた。
奥の奥まで届きそうなくらい、激しく。





「きゃふっ!そ、そんな急に・・・・・・あっ、あっ、あっ、あっ・・・・・・」





その激しさのまま、何度も、何度も突いてくる。
マシンガンみたいに、激しく、激しく。





「ど、どうなんだ?アイツの方がいいのか?」





動きを止めないで、質問をしてくる。





「そ、そんな・・・・・・あ、やっ・・・・・・・・」





戸惑い。
そんな・・・・・答えられるわけ・・・・・・ない・・・・・・・
なんで・・・・・そんなこと・・・・・・


さっきのやり取りが、頭に引き戻される。




やっぱり・・・・・・・浪馬クン・・・・・・気に・・・・して・・・・・・・





ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ!!





あああああああっ!!!





いやらしい音が、私の思考を奪っていく。
浪馬クン・・・・・・こんなに・・・・大きな・・・・音・・・・・・
ふわあああああっ・・・・・・・





「あっ・・・あんっ!」





どんどん、目の前が見えなくなっていく。
わかるのは、2人の声と、音と、激しい動き。
やあっ・・・・・・ああああああっ・・・・・・





「やぁ・・・・・そんなにされたら私・・・・・・うぅ・・・・・・・・」





こんなにされたら・・・・・・・私・・・・・・だけ・・・・・・・





「はぁはぁ・・・・消してやる・・・・・・アイツの痕跡。
全部オレが消してやる」






ろうまク・・・・・・・ああっ!!
そんな・・・・・・そんなこと・・・・・・・しなくたって・・・・・・!!



ぐちゅぐちゅが、どんどん大きくなっていく。
私の声より、ずっと、ずっと大きく。



うああ・・・・・・考え・・・・・・られないっ・・・・・・!!





「あっ、あっ、あっ・・・・・あぁぁぁぁ・・・・・・」





ダメぇ・・・・・・・ダメぇ・・・・・・・・

このままじゃ・・・・・・私だけ・・・・・
・・・・・・さ・・・・・・先に・・・・・・・・・・・・・・





「はあ、はあ、ふう、ふう・・・・・・」





それでも構わず、浪馬クンの動きは激しいまま。
やあっ・・・・・やあっ・・・・・・・もう・・・・・・





「お、お願い。お願いだから、もうちょっと優しく・・・・・・」





ほんのちょっとしか残っていない理性で、必死にお願いする。
だって・・・・・・・だって・・・・・・・わたし・・・・・・は・・・・・・・・





「だ、ダメだ。アイツの痕跡を消すんだ。
アイツよりも激しくして、お前の中からアイツを追い出すんだ」






ぐちゅっ!ぐちゅっ!ぐちゅっ!!ぐちゅっ!!ぐちゅっ!!!





吐息混じりに叫ぶと、浪馬クンの動きがもっと激しくなる。
音が、更にいやらしさを増す。

ふああっ・・・・・こんな・・・・・・音・・・・・・きいたらっ・・・・・・・

そんな・・・・・・そんなの・・・・・・しなくても・・・・・・も・・・・・・う・・・・・・





「あっ、あっ、あっ、あっ・・・・・・だ、ダメ。
激し、激しすぎる・・・・・・・・」






答えなくちゃ・・・・・・・ダメ・・・・・・なの・・・・・・・?


答えなくちゃ・・・・・・・ゆるめて・・・・・・くれないの・・・・?


でも・・・・・でも・・・・・・・恥ずかしすぎる・・・・・よぉ・・・・・





ぐちゃあっ!!





ひああああああっ!!



だって・・・・・・だって・・・・・・・・

こんなこと・・・・・・言ったら・・・・・・・・
なんて思われるか・・・・・・わかんないよぉ・・・・・・





「はあ、はあ、ふう、ふう。た、タマ・・・・・・・」





いえない・・・・・・いえな・・・・・・よぉ・・・・・・・・





ぐちゃあ!!ぐちゃあ!!ぐちゃあっ!!!





「ひあああぁ。だ、ダメ」





あの・・・・・・ひと・・・・・・・・・より・・・・・・・・





「そんなにされたら・・・・・・」




あのひと・・・・・・なんか・・・・・・・・・・よ・・・・・・り・・・・・・・





「そんなにされたら私・・・・・・」





あのひと・・・・・なんかより・・・・・・・





ぐちゃあっ!!ぐちゃあっ!!!





きもち・・・・・いい・・・・・・・・





きもち・・・・・・いいよおおおおぉっ・・・・・・・・・・・!!!!!






心で叫んだ瞬間、私の中にものすごい動きを感じる。
浪馬クン以外の視界が全て塞がる。
何かが、身体の中を登ってくる。





「も、もう・・・・・・私、私ぃ・・・・・・・」





浪馬クン・・・・・・わたし・・・・・・・い・・・・・・・・





「た、タマ・・・・・・お、オレももう・・・・・・」





・・・・あ・・・・・・・



浪馬クン・・・・・・・ろうま・・・・・ク・・・・・・・・も・・・・・・?



なら・・・・・・・わたしと・・・・・・・





「ね、ねえ、イケる?一緒に・・・・・私と一緒に、イケる?」




いっしょに・・・・・・・・いっしょに・・・・・・・・・





「あ、ああ」





おねがい・・・・・・おねがい・・・・・だから・・・・・・・




「じゃ、じゃあ、もう少しだから・・・・・・私と一緒に・・・・・・」





いっしょに・・・・・・・イッて・・・・・・・・!





「た、タマ・・・・・・・」





もう、心を隠してなんて、いられない。





「あっ、あっ、あっ、あっ。感じる、すごく感じるっ!」





私の声を・・・・・・聞いて・・・・・・!

浪馬クンにいやらしくされてる私を・・・・・見て・・・・・!

イキそうな私を・・・・感じて・・・・・・・!!





「た、タマっ!」




ふあああっ!!

浪馬・・・クンの・・・・・・ふくらんで・・・・・・!!





「ひあぁぁぁ・・・・・・も、もう・・・・・・私、私・・・・・・・」





もう・・・・・・ホントに・・・・・・ダメっ・・・・・!

ろう・・・ま・・・・・ク・・・・・・はやく・・・・・・・はやく・・・・・・・・っ!!





「い、イクぞ?一緒にイクぞ?」





浪馬クンっ・・・・・・・・・





「う、うん。来て・・・・・熱いのをかけて」





出して・・・・・・・出してっ・・・・・・・・



私を・・・・・・・私を・・・・・・・

浪馬クンのにおいで・・・・・・!

いっぱいにしてえええええっ!!!





「くっ!!!」





浪馬くうんっっっっっ!!!!

あはああああああああああっっっ!!!





「い、イッちゃうぅぅっっっ!!!」





引き抜いた浪馬クンの先から、白い液体がほとばしる。

私たちの、愛の、証。

ドクン、ドクンと、心臓の鼓動のように降り注ぐ。


浪馬クンはそれを手に取ると、私の身体に塗りこんでいく。





「あ、あん・・・・・・・」





微妙な刺激と一緒に、2人の証が、私の身体に刻みこめられていく。

気持ちが、1つになったと感じる。




とほうもなく嬉しくなった私の目の前が、白くなっていく。

薄れゆく意識の中、声になっているかわからないけど、こう呟いた。




「わたし・・・浪馬クンと・・・・・一緒に・・・・・・・」




浪馬クンは、微笑んでいた。


私も、微笑んでいた。





―――――――――――――――――――――――――――――





目が覚めて着替えると、猛烈な恥ずかしさが襲ってきた。

私・・・・・なんて言ってた?

思い出すたびに、「ナシ!やっぱり今のナシ!」と
無効宣言しそうになる。


でも、言っちゃったんだよねえ・・・・・あんなエッチなセリフ・・・・・・



・・・・・そ、それにしてもっ!



私は照れを隠すため、浪馬クンに向かって、ちょっと大き目の声で言った。



「も、もう。いきなり飛ばしすぎだよ」



・・・・・うわ、どもってるよ私・・・・・・



「え?そんなに飛んだか?」



「うん。はじめてなのに飛ばしすぎ」




2人の・・・・・最初なんだから・・・・・・
もう少し・・・・・・その・・・・・・・優しく・・・して・・・・


言ってるうちに顔が赤くなって、声のトーンが小さくなっていく。



「・・・・・・なんだ。そっちのことか」



「え?」



「外出ししたときのことかと思ったよ。
確かに割と飛んでたからな」




・・・・・・・!

体温が一瞬で上昇する。


こ、この男・・・・・・・本気で言ってるの・・・・・?



「・・・・・・・・バカ」



「は?」



浪馬クンを見つめると、キョトンとした顔をしている。
やっぱり本気なのか・・・・・・

・・・・・・・浪馬クン、だもんなあ・・・・・・・・


イヤな納得をしてしまった私は、軽くため息をつく。


でも、そんな浪馬クンが私は好きで・・・・・
さっきまで、2人で・・・・・・・


・・・・・・・・・かあっ。


こんなタイミングで思い出しちゃったのを知られたくなくて、



「もう知らない。じゃあね。浪馬クン」



「・・・・・・」



動きの止まった浪馬クンを置いて、帰ってしまった。





「まったくもう・・・・・・・」



恥ずかしいのをごまかすため、プリプリ怒ったフリをしながら歩く。



「いくら私が浪馬クンのこと好きだからってさ。
少しは私の気持ちも察しろってのよ」




私がそんなに直接的な事言うわけないじゃない!
そりゃ・・・まあ・・・・・さっきはあんな・・・・・・

思い出して、また赤くなる。

うわーうわーうわー!それはいいんだっ!

手をぶんぶん振りながら、目の前に浮かんだことを振り払う。



「だ・・・だいたい、あんなに激しくしたらさ・・・・・」



ふと立ち止まり、呟く。



「私だけ・・・先にイッちゃってたかも・・・・・しれないじゃない・・・・・・・」



わーわーわー!ぶんぶんぶんっ!!



一人で顔を真っ赤にしながら歩く私。
近所の人に見られたら大変だよ・・・・・・



でも・・・・嬉しかったな・・・・・・



今日のことを思い出しながら、にんまりとする私。



一緒に夜を過ごせたこと。
私を抱きしめてくれたこと。
そして・・・・・・・



『今お前がいるここは、恋人の部屋だ』



ハッキリ言ってくれた、あのセリフ・・・・・・



「やったあああああああああ!!」



・・・・・・・・・・はっ!

誰も!誰も見てないよね!?聞こえてないよね!?




だけど、同時に、このセリフも思い起こされた。





『消してやる・・・・・・アイツの痕跡。全部オレが消してやる』





・・・・・・・・・・・そうだよね・・・・・・・・・
気にしない・・・・・・わけ・・・・・・・・ないよね・・・・・・・・





でも・・・・・それでも、最後は笑顔でいてくれたし・・・・・・・
軽口だって叩いてくれたし・・・・・・・
でも・・・・・・・絶対気にしてるし・・・・・・・

でも・・・・・・でも・・・・・・・でも・・・・・・・・・・





浪馬クンと、『恋人』になった、初めての日。

それは、すごく嬉しくて。

楽しくて。

悲しくて。


たくさんの幸せと、たくさんのほろ苦さ。

喜びと、悲しみ。

現在と、未来と、過去。



たくさんの感情が入り混じった、複雑な日になった。




だけど、これは絶対に変わらない。

結局今日も言えなかったけど、いつかは言葉にして、伝えたいな。



「浪馬クン。大好き・・・・・だからね」





11月29日(月)

「おっはよー」

「おはよーたまき」

「おはよ、タマ」

「た・・・タマって言わないでよぉ」



友達との軽い挨拶なのに、タマって言われただけで
浪馬クンのことを、昨日のことを・・・・・・
思い出しちゃって、赤くなっちゃう。


「なるほど。織屋君専用っつーワケですか」

「そ、そーゆーワケじゃないけど・・・・・・」

「あーいいわねぇ、恋する乙女は」

「・・・からかわないで」

「あ、織屋君来た」

「!!」



慌ててドアを見て、浪馬クンの姿を捜す。

あ・・・・・・・・

浪馬クンと目が合った。



ガタッ!!



勢いよく立ち上がり、自然と浪馬クンの方へと向かう。
浪馬クンも自分の席にいかず、私のほうへ歩いてくる。

お互いがくっつきそうなくらいまで近づいて、ようやく止まる。


「お・・・・おはよ、浪馬クンっ」

「よ・・・・・よお、タマ」



それっきり言葉が途切れる2人。
でも、今までみたいなイヤな沈黙じゃない。

私は浪馬クンの瞳を見つめ、浪馬クンは私の瞳を見つめている。
恥ずかしいけれど、とっても幸せな気持ち。


「・・・・タマ」

「え?」

「昨日・・・・・・楽しかったな」

「あ・・・・・・・・」



そう言って、真っ赤な顔で微笑む浪馬クン。


イヤな思いだっていっぱいさせちゃったのに・・・・
それでも・・・・楽しかったって、言ってくれるんだ・・・・・・


「・・・・・・・」

「・・・・・・・・・タマ?」



少しウルッときちゃったのを何とかこらえて、
私ができる最高のレベルでニッコリと笑って、答えた。


「うんっ。私も・・・・すっごく楽しかったよ」

「・・・・・・・・そうか」



それだけ言うと、浪馬クンも微笑んでくれた。
また、見つめ合う。


手・・・・・繋ぎたいな・・・・・・


手を差し出そうとしたその時、


「じ〜〜〜〜〜っ」←ニヤニヤしながら


「じ〜〜〜〜〜っ」←顔を赤くしつつ


・・・・・ここが教室なの忘れてた・・・・・・


てゆーか2人以外も何人か見てるしっ!!
うわーうわーうわー!


「じゃ、じゃあ後でね」

「お、おう」



冷静なフリで自分の席に戻り、できる限りゆっくりと座る。
何事もなかったかのように、教科書を出そうとする・・・


「へ〜〜〜〜〜〜」


・・・・・それで済むワケがなかった。
今日のオモチャは決定ですか・・・・・・


浪馬クンを見ると、刃君にツッコまれていた。
顔を真っ赤にして、それでもどこか嬉しそうに見えた。


私もそう・・・・・なんだろうな・・・・・・・


嬉しくなって、微笑んでしまう。


「な〜〜〜にがそんなに嬉しいのかなあ〜〜〜〜?」


う。


「さあて、たーっぷり聞かせてもらいますかね、『昨日のこと』を」

「や、そんなにおもしろいもんじゃ・・・・・・」

「いいじゃんたまき。幸せのおすそわけってことで」

「そうそう、私たちにも分けてよ、タ・マ♪」

「だからタマって言うなあ!」



今日は授業どころじゃなさそうだ・・・・・・





12月4日(土)

「あっ、浪馬クン」

「よ、よう」



放課後に浪馬クンを見つけ、駆け寄る。
くっつきそうなくらいまで近づく。

友達には思いっきり冷やかされたけど、
これが私たちの距離なんだ・・・・と、勝手に思ってる。
だって、これくらいじゃないと、落ち着かないんだもん・・・・・


浪馬クンを見上げると、顔が赤くなっている。
も、もう・・・・・そろそろ慣れてよ。
私だって、また恥ずかしくなっちゃうじゃない・・・・・

と思ったけど、キョロキョロしている浪馬クンを見て、
理由がわかった。


そっか、今、2人きり・・・なんだ・・・・・・


今週の私たちの接近を、私の友達+刃君にたくさん冷やかされた。
2人で話してると机の影から見られていたり、
遠くで大げさにうんうん頷きながら観察されていたり。
我が子を見守る母親ですか、アンタらは。

そのせいで、2人でいるという感覚があんまりしなかった。
でも、今日は土曜日でみんな帰ってしまってるので
純粋に2人きりっていうのは本当に久しぶり。

そう感じたら、私まで真っ赤になってきた。


2人きりって・・・・・先週・・・・・・「恋人」にしてもらってからだもんね・・・・・
それから・・・・・それから・・・・・・・


かあっ・・・・・・


上目遣いで浪馬クンをチラッと見ると、さっきよりも真っ赤になっている。
浪馬クンも、思い出してるのかなあ・・・・
もう・・・エッチ・・・・・・
私も・・・・・だけど・・・・・・


「ね、ねえ」


「な、なんだ。どうかしたのか?」


「やっぱりさ、ちょっと照れるよね」



なんとか話を切り出す。
2人きりのときにしか、できない話。


「え?」



「ほら、ああいうことした後だからさ」




自分でも何てこと言ってんだろうとは思うけど、
恋人じゃないとできない話だから。
今の私たちなら、私から話しても、いいよね?



「あ、ああ。まあ、な」



更に思い出したのか、浪馬クンがどもりまくりながら頷く。
うわーん、そんなに普通に受け取らないでよー!

何とも言えない雰囲気が漂う。
教室なのに、違う場所・・・・・みたいな。
まるで浪馬クンの部屋・・・・・・・


うわあっ・・・・・更に記憶がハッキリしちゃったよ・・・・!


体温が急上昇した私は、なんとか取り繕おうと、
少しでも普通に聞こえるような調子で、こう言った。



「で、でもさ。変に気を遣ったりしないでよね。
私が惹かれたのは、いつも通りのキミなんだから」




そうだよ。私が好きなのは・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?


・・・・・・・・・・・・・・浪馬クン?


浪馬クンは、口を少し開けて、呆けていた。
ど・・・・・どうしたの?
何かヘンな事言っちゃったのかな・・・・・・


あ・・・・・・


私が、言葉で言ったの、初めてなんだっけ・・・・・
そうだ・・・・・・初めてなんだ・・・・・・



「タマ・・・・・・」




どっくんっ!!



浪馬クンが、何とか口を開く。
今日一番の真っ赤な顔を見て、私もそれ以上に赤くなる。
や・・・・そんな目で・・・・・見られたら・・・・・・・

あ・・・・・足・・・・・・震えてきちゃった・・・・・・



「あ、あはは・・・・・じゃ、じゃあね」



後ずさりながら、その場を離れてしまった。



教室が見えなくなるくらいまで離れて、呼吸を整える。


「はあ・・・・はあ・・・・・言っちゃったんだ・・・・・・」


ちゃんと言えたかどうかは全然わからないけど、
とりあえずは・・・浪馬クンには伝わったみたいだし・・・・・
オッケー・・・・・だよね?

自信は・・・・・・ないけど・・・・・・



それでも、すっごく嬉しくなった。
好きな人に好きって言えるって、いいなあ。



時計を見ると、2時。
バイトまでには、まだ時間がある。
そう思ったら、また浪馬クンに逢いたくなった。
さっき「じゃあね」って言ったばかりなのに。



「部室・・・・・行こ」



ちょっとしか逢えなくても、顔が見られればいい。
ほんの少しでいいから、話したい。
そうしないと、安心してバイトにも行けないような気がした。


時間ギリギリまで、部室の片付けとかやっててあげよう。
少しでも、浪馬クンが「助かった」って思ってくれるように。

マネージャーとしては当然なんだけど、それだけじゃなくて。
幼なじみとして。
そして、恋人として。



「浪馬クン・・・・・早く来てくれるといいな」



腕を回しながら、バイトよりも遥かに気合を入れて。
私はキックボクシング同好会の部室へと向かっていった。





「あっ、浪馬クン」


バイトをあがろうとしていると、浪馬クンが来てくれた。
また、来てくれたんだ・・・・・嬉しいっ。


「よっタマ。様子を見に来てやったぞ・・・・・て、
何でお前学校の制服なんだ?」

「あははっ、だってもう仕事終わりだもん」

「なぬ?あ・・・・・・ホントだ」



いっつも同じ時間に終わるんだから、そろそろ覚えてよぉ。


「普段と違うバイト先の制服姿で萌えたかったんなら、
残念でした。時間切れでーす」



悔しかったので、ちょっと茶化してみる。


「別にそういうつもりできたわけじゃないっつーの」


ふーんだ。ちょっと顔赤いぞ、浪馬クン?


「あははっ。照れない照れない」

「・・・・・・」



でも、せっかく来てくれたんだから、
一緒に・・・・・・帰りたいな・・・・・・


「なあ、タマ」

「ん?」


あ・・・・・・


「よかったらオレが送ってやってもいいぞ」


やったあ。予感的中っ♪

でも、このままじゃなーんかおもしろくないなあ・・・・・

・・・・・・・そうだっ!


「・・・・・・」


確か・・・・・・こんなカンジだったよね・・・・・・


「なんだよ。別に困るようなことじゃないだろ?」


ここで・・・こうかな?



「ごめんなさい」




「へ?」



浪馬クンの顔が、一瞬にして歪む。
あははっ、おもしろーい♪



「一緒に帰って、変な噂とか流れたら困るし・・・・・・」



申し訳なさそうに、だけど迷惑そうな言い方を思い出しつつ
冷静な口調で続ける。



「な、何言ってんだお前。どっかの優等生じゃあるまいし・・・・・・」



あ、やっぱりわかったみたい。
さすがはしばらくハマってただけのことはあるねー。

あんまりの顔におかしくなって、
これ以上やると笑い転げてしまいそうなのでやめることにする。



「あははっ。なーんてね。
じゃ、ありがたく送っていってもらおうかな」



「・・・・・・」




うわー、苦虫を噛み潰した顔ってこーゆーのを言うんだろうなあ。
諺を実際に体験できて、またおかしくなる。
最近からかわれっぱなしだから、一矢報いたってカンジかな?
・・・・・・おもしろい顔・・・・・あははっ。


「ほらほら。変な顔してないで早く行こっ。
それじゃあ、オーナー。お先に失礼しますね」



2人の様子を微笑ましく見てくれていた、オーナーに挨拶する。


「ああ。気をつけて帰りなさい」


私たちを祝福してくれるような笑顔。
そうしてくれるのが嬉しくて


「ハーイ」


子供のような返事をしてしまう。
てゆーか私、子供だし。
浪馬クンと一緒なら、子供でもいいかな・・・・なんて。

ちょっと顔を熱くして、浪馬クンの手を引いてビリヤード場を出た。




家までの短い道のりを、手を繋いで歩く。
浪馬クンの手から伝わってくる、暖かさ。
それはきっと、体温だけじゃなくて。
私に対する、暖かさ・・・・・・・って思っていいよね。

私の手も、暖かいかな?
浪馬クンへの気持ちで、暖かくなってるかな?


「時にタマ」

「ん?」

「さっきの・・・セリフ・・・・・なんだがな、どこで・・・・・覚えた?」

「・・・・・・・・」



・・・・・・・・空気読んでよ・・・・・
もしかして、動揺して暖かくなってるだけ・・・?
むー・・・・・

悔しいから、ちょっとイジワルしてやろっと。


「・・・・・・昔、浪馬クン家に遊びに行ったときにやってたゲーム」

「ぐっ・・・・やっぱそうか・・・・・・」

「必死になってて、私が来たのも気づかなかったよねー」

「・・・・・・忘れてくれ」

「やーだよー」

「・・・・・・」


数少ないチャンスとばかりに、からかい続ける私。


「つーか何でそんな昔のこと覚えてるんだよ」

「え?だって・・・・・・」



・・・浪馬クンへの気持ちに気づいてから、思い出がいっぱい
浮かんでくるんだもん。
懐かしいことも、新しいことも、たくさん、たくさん。
浪馬クンの思い出は、私の思い出だから。
これからも、そうできたら・・・・・


恥ずかしくなってきた私は、その気持ちを隠すように
からかう口調を強調して、続けた。


「い・・・いやー、浪馬クンってあーゆーのが趣味なのかなあって」

「そ、そんなことはないぞ」

「ロングのストレートでさ、優等生でさ、
ちょっと高嶺の花ってカンジで・・・・・さ・・・・・・・・・」



・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・


「だから、そうじゃねえって・・・・・・って、タマ・・・・・?」


言葉とともに、私の頭の中に、そのキャラではない
1人の女の子の姿が浮かんだ。


・・・・・・・・・・高遠さん・・・・・・・・・


高遠さんとあのゲームが、私の中で交差する。
全然性格は違うのに。

いや、今の高遠さんは・・・・・・
浪馬クンと話すときの、あの高遠さんの笑顔は・・・・・・


「タマ・・・・・タマ・・・・・・」

「・・・・・・・」

「タマ!」

「・・・・・はっ!」

「どうしたんだよ?急に止まっちまって・・・・・・」

「あ・・・・・・・・」



自分の想像が怖くなって、動けなくなってしまった。
もし・・・もし、浪馬クンの好みが・・・・その・・・・・・
彼女・・・・・・・だったら・・・・・・・
私・・・・・・・・・私・・・・・・・・・・・・


「タマ?大丈夫か?」


浪馬クンが、心配そうに顔を覗き込んでくる。


「な・・・・・なんでもない!なんでもないですよ?」

「なんでもないって、お前・・・・・」

「いいの!いいのです!」

「誰だよお前・・・・・・」



自分で言い出して勝手にヘコんだなんて、言えないよ・・・
それに、「高遠さんが好みなの?」なんて聞けるわけもないし・・・

もし・・・もし聞いて、「ああ」とか言われちゃったら・・・・


「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」



歩幅が小さくなっていって、浪馬クンとの距離が離れていく。
浪馬クンが合わせてくれようとするけど、私はさらにとぼとぼと歩く。
聞きたい・・・・・・でも聞けない・・・・・

どうしよ・・・悲しくなってきた・・・・・・・
浪馬クン・・・・・・・・



「・・・・・・・あーーーー、もう!」



「・・・・・・・え?」




急に大声を出した浪馬クンに、少し驚く。
きょとんとした私の腕を、少し乱暴に掴む。


「え・・・・・・浪馬・・・・・・・クン・・・・・・?」


浪馬クンは何も言わずに、掴んだ手を引っ張る。
そのまま、自分の腕に絡ませる。

そして、絡めた腕ごと、私の身体をぐっと引き寄せた。



「あ・・・・・・・・・・」



私は、腕を組んだ格好になっていた。
街灯に照らされた2人の影は、まるでカップルそのものだった。



「ろ、浪馬クン・・・・・・・・」



初めて・・・・浪馬クンから・・・・・・



「ったく・・・何があったかさっぱりわかんねえ」


「・・・・・・・・・・・」




浪馬クンを見ると、真っ赤になっていた。
私のほうではなく、まっすぐに前を向いている。
そのまま、言葉を続けた。



「けど・・・・・・元気出せ」



「・・・・・・」



「・・・・・オレがいるから」



「え・・・・・・・?」



「オレがお前の側にいるから・・・・聞いてやるから・・・・・・」




浪馬クン・・・・・・

悲しかった気持ちが、一気に晴れていくのがわかった。


そうだ。
今は私が・・・・浪馬クンの・・・・・恋人・・・・・なんだ。
そう・・・・・言ってくれたんだ。



「だから・・・・・その・・・・・・」


「・・・・・・・ありがと」


「へ?」


「もう、大丈夫だから」


「オレはまだ何も・・・・・・」


「いいのっ」




そう言うと、私は浪馬クンに、更に身を寄せた。

もう、何も言わなくっても、私の悲しさなんて吹き飛んじゃったから。
心配よりも、浪馬クンの暖かさが、私を包んでくれたから。
だから、もう大丈夫だよ。



「変なヤツ・・・・・・」


「それはお互い様」


「そうかあ?」


「いいじゃん、似たものどうしってことで」


「なーんか納得いかねえ」


「あははっ」


「・・・・・はっはは」


「・・・・・・・・・・・浪馬クン」


「ん?」


「私も、幼なじみだよ?」


「は?」


「私だって、ストレートなんだよ?」


「だから何・・・・・・・あ」


「そーゆーことっ」


「もうその話はやめようぜ・・・・・・」


「あははっ」



さっきのとぼとぼとは全然違うけど、
ゆっくり、ゆっくり、2人で歩いていった。





「ハイッ。とーちゃーく」

「うむ」



超上機嫌の私。
それを見つめる浪馬クン。
それはきっと、ずっと前からの光景。
世話を焼きながら、実は見守られてる、私たちのいつもの光景。


「あははっ。なんかいいね。
制服姿でこうやって一緒に帰ってくるのって」

「そうか?」

「いかにも学生同士のお付き合いって感じで、何とも言えない趣があるよ」

「趣ねえ・・・・・」



後もう少しで、こうして制服で歩くこともなくなる。
その辺、浪馬クンは全然わかってないみたい。
ようやくわかった、2人のとっても貴重な時間。
浪馬クンも少しは感じてくれればいいのになあ。


・・・・・・・あ・・・・・・・・・


そう思っていたら、ちょっとしてみたい事ができた。


浪馬クンがやったことを、私も・・・・・・・


想像したら、心臓がドキドキしてきた。
うわあ・・・・こんなに恥ずかしいんだ・・・・・・
浪馬クンも・・・・・こんな気持ちになってたのかな・・・・・・

手に汗かいてる・・・・・・
やっぱりやめようかな・・・・・・・


「どうした?行かないのか?」


門の前で立ち止まった私を、不思議そうに見つめる。

あ・・・・・その目を見てると・・・・・・・・
やっぱり・・・・・・
私は・・・・・浪馬クンに・・・・・・・



「ねえ。浪馬クン」



「ん?」



「もうちょっとこっち来て」




浪馬クンに・・・・・・触れたい・・・・・・



「え?こうか?」



一旦離れかけた体が、再びいつもの位置まで近づく。
ギリギリまで近い、2人の位置。



「うん」



でも今は、私から。




・・・・・・・・ふわっ・・・・・・・




私は、浪馬クンを抱きしめた。

腕を首の後ろに回して。

横顔をピッタリくっつけて。

正面から、私の全部を預けるように。




「うわっ・・・・・・・」



浪馬クンの顔が、熱くなっていくのがわかる。



「あははっ。あったかい・・・・・・・」



「い、いきなりビックリするじゃねえか」




そう思ってやったんだもん。
私だって、いつもこんな風になってるんだよ?



「そっちだって、たまにするでしょ?急にギュッて」



「それは、まあ・・・・・・」



「だから、いいの」




そう言うと、ほんの少しだけ、腕に力を込めた。
2人の身体が更に密着する。
制服の上からでも、浪馬クンの心臓の動きが伝わる。

あ・・・・どんどん、早くなってる・・・・・・


「・・・・・・」



「ねえ」



「ん?」



「私のドキドキ、伝わってる?」




恥ずかしいけど、もうちょっとだけ胸を押し付けてみる。
私の心臓も、どんどん早くなる。
うわ・・・・・なんか・・・・・ちょっと・・・・・・・・ヘンかも・・・・・・



「ああ。タマの胸、すげえドキドキしてる」



同じくらい胸をドキドキさせながら、浪馬クンが囁く。
恥ずかしくて、それ以上に嬉しくて、暖かい気持ちになって。



「あははっ。心臓がね、破裂しそうなの」



テレ隠しに、微笑んでみる。
浪馬クンには照れてるのバレバレだろうけど。

あ・・・・・・・・・・

どうしよ・・・・・・・・

その・・・・・・・先が・・・・・・・ムズムズって・・・・・・・



「タマ・・・・・・」



!!

私に合わせたかのように、浪馬クンの・・・・・・
あ・・・・・アレも・・・・・・大きく・・・・・・・

や・・・・・その状態で・・・・・・密着してたら・・・・・・・!



浪馬クンが、ピクッ・・・・と、動く。
だ・・・・・ここ・・・・家の前・・・・・・・っ!



「あっ。だ、ダメ。これ以上はダメ」



何とか抵抗をする。
だって、このままじゃ・・・・ここで・・・・・・・



「でもよ・・・・・・」



そんな悲しそうに言わないでよぉ・・・・・・
私だって・・・・・今・・・・・・・・



「私だってホントは・・・・・・」



「・・・・・・・」



・・・・・・やっ!言っちゃった・・・・・・・



二人とも慌てて身体を話すと、しばらく何も言わないでいた。
私は、気分を鎮めるのに必死で。
きっと、浪馬クンも・・・・・・


でも、いつになっても治まりそうになかった。
胸の奥が、すごく熱くなって。
もう1回抱き合いたくなったけど、止まれそうになかったので



「それじゃあね」



何とかそう言った。



「ああ。またな、タマ」



浪馬クンも名残惜しさを隠して、微笑んでくれた。





「ふうっ・・・・・・」





危なかった・・・・・・
自分がどんどんエッチになっていくのがわかって、真っ赤になる。

浪馬クンのせいだ・・・・
浪馬クンが・・・・・その・・・・・・・


2人とも・・・・・・か・・・・・・・


このまま1人でしちゃおうかと思ったけど、ガマンすることにした。
楽しいことを思い返しながら眠りたいし、それに・・・・・・




「続きは・・・・・明日のデートで・・・・・・・・・」




・・・・・・・・私・・・・・・・・エッチすぎ・・・・・・・・・





12月5日(日)

「じゃ、とっとと行くか」

「うんっ」



寄り添って、腕を絡める。

そりゃ恥ずかしいけど、浪馬クンとこうしたいんだもん。
学校帰りにはさすがにできないけど、今は私服だもん。
だから、こうやってくっついちゃうんだ。

周りからはどう見えるかなあ。
もしかして、バカップルかなあ。

・・・・・私はそれでもいいや。
だって、私たちは、恋人なんだもん♪



遊んで、喋って、笑って。
その度に、2人の距離が近づいていく。
今までだって近かったけど、もっと、もっと近づいて。
このままくっついちゃったらいいのになあ。
そうすれば、もっと一緒にいられるのに。




あっという間に時間が過ぎる。
何時間一緒にいても時間が早いのはいつものことだけど、
日が沈むたびに、別のことが頭に浮かんでくる。

すごく恥ずかしいんだけど、気になって仕方がない。



今日は・・・・・誘って・・・・・・くれるかな・・・・・・・



昨日の夜から・・・・・正直、期待してる。
抱き合ってから、ドキドキが止まんなくて。
ガマンできなくなっちゃいそうだったけど、その・・・・一人で・・・も・・・
結局、何とか耐えて・・・・・・

浪馬クンに負けないくらい、私・・・エッチな娘になっちゃったよ・・・


「今日は楽しかったか?」

「あ、うん。すごく楽しかった」



お決まりのセリフの後も、ソワソワして止まらない。
浪馬クン・・・・・・今日は・・・・・・・?
ジッと、浪馬クンを見つめる。
もしかしたら、ウルウルしてたかもしれない。


何か・・・・・言ってよぉ・・・・・・


そのまま駅に向かって歩き出す浪馬クンを、恨みがましく追いかけた。



電車の中でもそれらしき話はなくて。
でも、浪馬クンの口数は少なくなっていった。
もしかしたら・・・・と思い、私の心臓がどんどん早くなっていく。
組んでる腕から、わかっちゃうんじゃないかって思うくらい。


誘われたら、どうやってオッケーすればいいのかな。
「うん。もちろんっ♪」ってのは、さすがに軽すぎるよね。
かと言って、儚げに黙って頷くなんてのは、キャラじゃないしなあ・・・


・・・・って、何でそんなことばっかり考えてるの、私!?
誘われるかどうかも決まってないのに!


想像・・・てゆーか妄想ばっかり浮かんで、恥ずかしさに
頭を抱えそうになる。
何とか取り繕おうとするけど、腕から伝わってくる浪馬クンの暖かさを
感じると、またエッチな考えが浮かんでくる。
うわーん、止まんないよおっ。

浪馬クンをチラっと見ると、私を見つめていた。
2人して、慌てて目を逸らす。
腕組みながら、何やってんだろう・・・・・
でも、腕を離すなんてもちろんできなくて、しがみついたまま、
どっちも声を出せずに電車に揺られていた。




駅についてからも、うまく会話できなくて、モジモジしていた。
浪馬クンも、喋ってくれないし・・・・・


でも、もしかしたら・・・・浪馬クンだって・・・・・・


そう思うと、腕を離すことができない。
かと言って、さすがに自分からは言い出せない・・・・
浪馬クン・・・・・・・


あ・・・・・・・・


浪馬クンが、私を見つめていた。
いつも私に見せてくれる、あの真剣な表情で。


・・・・・浪馬クン・・・・やっと・・・・・・


ホッとして、一瞬全身の力が抜ける。
でも・・・・・2人はこれから・・・・・だから。



「なあタマ」


「ん?」




浪馬クンの目をしっかり見つめて、
一言一言を逃さないように、耳を傾ける。



「オレ、またお前と二人きりになりたいんだ」


浪馬クン、ありがとう。


「・・・・・・それって、オレの部屋に来ないかってこと?」


やっぱり、私と同じ気持ち・・・だったんだよね。


「ああ」


私も・・・・・・浪馬クンの部屋で・・・・・・


「・・・・実は、ね」


キミと・・・・・・


「え?」


浪馬クンと・・・・・・


「私も、その・・・・・・」


浪馬クンと、一つに・・・・・・・


「・・・・・・」


・・・・・うう・・・・・やっぱり・・・・これ以上ハッキリとは・・・・・・


「い、言わなくてもわかる・・・・・・よね?」


さすがに大丈夫だよね?
私の・・・エッチな気持ち・・・・・・伝わってるよ・・・・・ね?


「あ、ああ。それじゃあ、早速・・・・・・」


浪馬クンは頷くと、私をぎゅっと引き寄せてくれた。


「うん」



腕を組んだまま、私たちは浪馬クンの家へ向かった。
早く一緒になりたいと、早足になるのを何とか抑えながら。





部屋に入ると、やっぱり今までとは違う感じ。
何回も遊びに来ていた部屋ではなく、「2回目」に来た部屋。
やっぱり・・・今までとは違うんだ・・・・・・な。
それが、私の心をますます高ぶらせていく。

キョロキョロしている私を、浪馬クンが不思議そうな目で見ている。



「今日で2回目、だね」


「え?」


思ったことを、そのまま伝える。
この部屋の中では、何も隠さなくていい。
そう思うようになってくる。


「幼馴染としてじゃなく、一人の女の子としてこの部屋に来るのが」


「そういえばそうだな」



「一人の女の子」という表現に、当たり前のように頷いてくれる浪馬クン。
それだけで、嬉しくなってくる。
ドキドキと、興奮が、上がっていく。


「やっぱり何か不思議。
何度も来たことのある部屋のはずなのにどこか新鮮で・・・・・・」



「タマ・・・・・・」



お互いが抑えきれなくなって、私たちは抱き合った。
唇、胸、下も・・・・・・
浪馬クンの舌が、指が、待ち望んでいたものが。
私の身体に触れてくる。舐めて、擦ってくる。
もう、このまま溺れちゃいそうになる。



浪馬クン・・・・・・



でもやっぱり、汗で汚れた身体を見られちゃうのは恥ずかしくて、


「あっ、ちょっと待って」


「なんだよ」


「その前にシャワー、いいでしょ?」



それに、準備だって・・・・・あるんだから・・・・・・


「またか?ふぅ・・・・しょうがねえな」


ため息つかないでよぉ・・・
早くしたいのは・・・・わかるけど・・・・・・さ。
私だって・・・・・だけど・・・・・・わかれっ!ドンカンっ!



「あっ、それから」



そうだ・・・今日は言っておかなきゃ。



「ん?」


「この前みたいに乱暴なのはヤダからね」


「へ?オレ、乱暴だったか?」



・・・・・・忘れたのかよぉ・・・・・・



「乱暴だったじゃない。あんなに激しくして・・・・・・」



いろいろ・・・・・あって・・・・・・ビックリして・・・・・・・
どうなっちゃうかと・・・・・・思ったんだぞ?



「でも良かっただろ?」


「それはまあそうだけど・・・・って、そういうことじゃないのっ!」




毎回あんなに激しくしたら・・・・・
耐えられるかどうかわかんないでしょ!!

この前だって・・・・・ギリギリだったんだから、もう・・・・・・



「ハイハイ。じゃあ、今日はイヤっていうほど優しくしてやるよ」



それは・・・・ちょっと違うんだなあ、浪馬クン。


今日・・・・・もしできたら・・・・・・・・決めてたんだから。
この前のお返しに・・・・・・・♪



「だーめ。今日は私が責める番」



私が浪馬クンに、いろいろしちゃうんだからっ。



「へ?」



「あははっ、覚悟しておいてね」






目を点にしている浪馬クンを見た私は、ちょっとした満足感を抱えながら
シャワーに入っていった。



――――――――――――――――――――――――――――――



シャワールームから出た私は、浪馬クンと向かい合う。
先週とは、ちょっと違ったドキドキ。

だって、私が今からやろうとしてることは・・・・・・



「タマ・・・・・」


「浪馬クン・・・・・・」




抱き合う。強く、強く。
もう、2人が離れることがないように。
私が、もう二度と浪馬クンへの気持ちを閉じ込めることがないように。

そのままベッドに倒れこむ。


「・・・・・」


浪馬クンの手が、私の手に伸びていく。



「あっ・・・・今日は違うのっ」



その手を、そっと掴んで止める。



「な、なんだよ」


「言ったでしょ?今日は・・・私が責める番、って・・・・・・」




さっきよりも、声が震えるのがわかる。
やっぱり、恥ずかしいな・・・でも・・・・・・



「・・・・・さ、今日は浪馬クンがこっちね」


「た、タマ?なにを・・・・・」


「・・・・・・・いいからいいから。で・・・・・私が・・・・・・・・」




ワケがわかんない浪馬クンをよそに、体勢を入れ替える。
もうちょっと・・・・・・近くに・・・・・・・



「お・・・・・・おい・・・・・・・・タマ」



私の身体は、浪馬クンの足の間にすっぽりと入っていた。
先週の体勢と、お互いが逆のポジション。


これが、今日してあげたかったこと。
私はゆっくりと顔を上げる。



「えへへ・・・・じゃあ、浪馬クン・・・・・・・・・・!!??」



!?!?!?!?!?!?!?
な・・・・・・・なに・・・・・・・・・コレ!?なにコレ!?



顔を上げた瞬間、目に映ったものに仰天する。



ウソ・・・・・・・こんなに・・・・・・・

おっきい・・・・・・・・の?

熱くって・・・・・ここまで熱が伝わってくるよ・・・・・・・

こ・・・・・こんなのが・・・・・私の・・・・・なか・・・・・・は、入って・・・・・・・


ぴくんっ!


うわあっ!

や・・・・・やだ・・・・・・うご・・・いてる・・・・・・

私を見て・・・・・・動いてる・・・・・の?

すごい・・・・・すごいよ・・・・・・・・



声を出すことができずに、固まってしまう。
そのまま、見入ってしまう。
これが・・・・・・浪馬クンの・・・・・・・・



「お、おい、タマ」


「・・・・・あっ」




心配そうに私を呼ぶ声に、ようやく我に返る。
あ、あはは・・・・・・



「・・・・・そんなにジロジロ見るなよ」


「・・・・・・だって・・・・・・」


「な・・・なんだよ」


「浪馬クンだって・・・・・私の・・・・・見たもん」


「・・・・う」


「じっくりと・・・・・エッチな目で・・・・・・さ」


「あ、あれは・・・・・・・・」




顔を真っ赤にする浪馬クンを見て、少しずつ緊張が解けていく。
そうだよね。浪馬クンだって・・・・・



「・・・・・だからね」


「え?」


「今日は・・・・・私の番・・・・・だよ」




そう言うと、おずおずと手を伸ばす。
手が、どんどん熱くなってくる。
私の熱と・・・・・・浪馬クンの・・・・・・・・・




・・・・・・・・そっ・・・・・・・・




「・・・・・うっ」



浪馬クンが、短いうめき声をあげる。
私のほうは・・・・・声も出なかった。



あ・・・・・・・・あっつい・・・・・・・・・



これが、第1印象。



こ・・・・・・・・こんなに熱いんだ・・・・・・・・・

それに・・・・・こ・・・・・・・こんなに・・・・・・・・固い・・・・・・・

ホントに・・・・・こんなの・・・・・入ったの・・・・・・・?

・・・・・ひえ・・・・・・脈・・・・・・打って・・・・・・


でも・・・・・不思議・・・・・・

こんなに・・・・・固いのに・・・・・・・やわらかい・・・・・・・

こんなに熱いのに・・・・・・心地いい・・・・・・



触る場所を変えるたびに、ピクッ、ピクッと、敏感に反応する。
ほんのちょっと動かしただけで、浪馬クンが震える。



ぴとっ


「・・・・うっ」


・・・・ぴととっ


「うううっ」



情けないくらいのか弱い声で、浪馬クンが呻く。
顔が歪む。



・・・・・・・浪馬クン・・・・・・・気持ち・・・・・・いいんだ・・・・・・・・



そう思うと、私の心に少しずつ余裕が生まれてくる。
恐いくらいだったのに、愛しくなってくる。

きっと、浪馬クンのだから。
大好きな浪馬クンの、身体の一部だから。



もっと・・・・・もっと浪馬クンを・・・・・・・気持ち・・・・よく・・・・・・



そう思った私は、手の動きを変える。
触っていただけの手を、そっと握る。



「た、タマ・・・・・うあっ」



その声に嬉しくなった私は、その手をゆっくりと上下に動かし始めた。



「!!うあああ・・・・・・・」



びくんっ!と身体が跳ねたと同時に、今日いちばんの声を漏らす浪馬クン。
エッチな気持ちと、浪馬クンへの気持ちが高まっていく。



「ふふっ。どう?気持ちイイ?」



自分でも信じられないに、エッチなことを言っている。
でも、止まらない。



「あ、ああ・・・・・・」



「だよね。すごく気持ちよさそうな顔してるもん」




上下に動かしながら、浪馬クンと一緒に私もぴくん、ってなる。
・・・・・さっきから・・・・・溢れてきている。


ホントは・・・・私も・・・・・・・・触って欲しい。
剥いて・・・・・・つまんで・・・・・・なめ・・・・・・て・・・・・・ほしい。


でも、今は・・・・・浪馬クンを・・・・・・
大好きな・・・・・・・恋人を・・・・・・・・
気持ちよくして・・・・・・あげたい。



力の入れ方を変えると、浪馬クンの声も変わる。
ちょっと・・・・・女の子みたいな声。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・可愛いっ♪



「でもさ、不思議だよね」



「な、なにがだ?」




おもしろいように反応する浪馬クンにちょっとイジワルに質問してみる。



「どうして男の人って、こうやってこするだけで気持ちよくなるのかな?」



本でも、ネットでも、聞いた話でも。
同じ肌なのに、どうしてこんなになるんだろう。
女の子は・・・・・その・・・・・普段は隠れてるし・・・・・・

一瞬だけ、あの人のことが浮かんで悲しくなったけど、
今のどうしようもなく幸せな気持ちがカンタンに追いやってしまった。



「し、知らねえよそんなの」



私のちょっと勝ち誇った言い方が気に入らなかったのか、
それとも他に原因があったのか、
浪馬クンはぶっきらぼうに言うと、そっぽを向いてしまった。


むー・・・・・・顔背けたー。
ここは・・・・・全然そっぽ向いてないのに・・・・・・


・・・・・よーしっ。



ピタッと、手の動きを止めてみる。
握った手は離さずに、動きだけ。



「・・・・・・・・・・?」



浪馬クンの顔が、こっちに向き直る。
「どうしたタマ?」と言いたげな表情。


・・・・・・・・えいっ。


その瞬間を狙って、少しだけ、握った手に力を込める。



「・・・・・・・うぐっ」



不意をつかれたように、浪馬クンの顔が歪む。
調子に乗った私は、力を弱めたり、強くしたりする。
その度に、小さな声で浪馬クンが呻く。

・・・・・あははっ・・・・・ガマンしてる・・・・・・・

そう感じると、私からもますます溢れてくる。



「ねえ?」



手を動かさないまま、イタズラっ子っぽく尋ねてみる。
友達に「対織屋君専用」って言われた、顔をしてると思う。
浪馬クンにしか・・・こんな気起こらないもん。



「な、なんだよ」



ちょっと察したのか、少し不安げな顔で聞き返す浪馬クン。



「もしかすると、こうやって握っているだけでも気持ちイイの?」



ホントはわかってるけど、イジワル。
めったに私が優位に立てる機会なんてないもんね。
世話焼きのフリして、超甘えんぼだもんな、私・・・・・・


浪馬クンは、言いにくそうな顔をしている。
へっへっへ〜。わかってるんだぞっ。


なかなか言ってくれないので、ちょっとだけ力を込める。
声をガマンして浪馬クンが反応する。
早く・・・・・・言ってよぉ・・・・・・
・・・・・溢れて・・・・・・止まらないんだから・・・・・・




「・・・・・・ああ」



ほんのちっちゃい声で、浪馬クンが頷く。
えへへ〜やっぱりねっ。
でも、声が小さいぞ?



「え?」



あえて聞き返す。
浪馬クンが、「わかっててやってんだろ?」と言いたげな顔をしている。
私は、ニッコリと微笑む。
ちょっと顔の赤さが増えた浪馬クンは、ヤケ気味に叫んだ。



「き、気持ちいいって言ってんだよっ」



浪馬クンってば・・・・・・・・大好きっ。



「あははっ。やっぱりそうなんだ」



「ったく・・・変なこと聞くんじゃねえよ」



よっぽど恥ずかしかったのか、ブツブツ呟きだす浪馬クン。
もうっ、普段は死ぬほどエッチなこと言ってるくせに・・・
しょうがないなあ・・・・・・


どっくん・・・・・・どっくん・・・・・・・どっくん・・・・・・




「それじゃあ、ちゃんと答えられたご褒美をあげようかな」




やだ・・・・言ったら、止まんなくなってきちゃった・・・・・

あんなに・・・・・おっきい・・・・・の、入る・・・・・かな・・・・・・

でも・・・・きっと喜んでくれるし・・・・・・

私が・・・・・・その・・・・・・・・手だけじゃなくて・・・・・・




「え?」




私は、顔を近づけていく。
恐かったけど、浪馬クンに喜んでもらいたいという気持ちが。
私が、浪馬クンの全部を受け入れたい気持ちが。
顔を、口を、舌を、近づけさせていく。

近づくたび、私から溢れていくのがわかる。
身体が、こころが、望んでいる。



もう・・・・・もう・・・・・・・・とまんない。




そして・・・・・・・・・




「はむっ・・・・・・・・」




「うおっ!!」




さっきよりも、もっともっと大きな声とともに、
浪馬クンと私の大切なところが、
私の口の中に、すっぽりと包まれていった。



んあ・・・・・あつい・・・・・・・あついよ・・・・・・



握っていたときとは比べ物になんないくらいの熱さ。
口の中がこれだけでいっぱいになって、クラクラしそうになる。


・・・・私で、浪馬クンが・・・こんなになってくれてるんだ・・・・・・


そう思うと、嬉しくて、ちょっとジンときちゃう。
熱いのも、固いのも、全部、全部私が。

もっと、もっと浪馬クンに気持ちよくなってほしいから。
その気持ちが、舌を自然と動かす。



「んっんっんっんっ・・・・・・」



咥えたまま、先から真ん中にかけて舐め上げる。
口に隙間が全然できないくらいギリギリの大きさだから、ちょっと息が苦しい。
でも、浪馬クンが反応するのを感じると、止めることができない。


どの部分に触れても、浪馬クンは敏感に反応する。

ぴとっ・・・

ピクンッ!

ぴとっ・・・

ピクンッ!



「た、タマ・・・・・・」



手でしていたときより、もっと情けないような声。
やっぱり、口でした方が気持ちいいのかな・・・・・

なら、いつでも・・・・してあげるからね・・・・・

声に出しては言わないけどね。



今・・・・浪馬クンの・・・・どうなってるのかな・・・・・・・



想像しただけで、音がしそうなくらい流れてくる。
どうしても見たくなっちゃったので、口をいったん離す。


歪めっぱなしだった浪馬クンの顔が、少し元に戻る。
安心したような、残念なような。


まだまだ・・・・・これからだよっ。


そう心で言いながら、口から離したものを見つめる。



うわ・・・・・・すっごい・・・・・エッチ・・・・・・・



それは、私の唾液と、浪馬クン自身から漏れてきた液で
ベタベタになっていた。
部屋の明かりが反射して、キラキラ光っているところがある。
エッチだけど、キレイで、・・・・・・・・愛しい。



こ・・・・・・今度は・・・・・・・・・・



肌の色とはちょっと違う、赤くなった先に顔を近づける。
そのまま、優しくキス。



「うあっ」



短くて大きな声で、浪馬クンの身体が跳ね上がるくらい反応する。


ここ・・・・・・すっごく気持ちよさそう・・・・・・


そのまま舌で、先をくるむようになめていく。
知識なんかあんまりないけど、浪馬クンの気持ちよさそうな顔が見たくて、
一生懸命に舐める。

どこにキスすると感じるのか、知りたい。
どこを舐めると気持ちよくなってくれるのか、知りたい。
いつでも、そこを刺激してあげられるように・・・・・




「ぺろっ・・・・・・ちゅっちゅっちゅっ・・・・・・ん」




ぴくんっ!ピクンッ!ピクンッ!!



浪馬クンの気持ちよさそうな顔を見ていると、幸せになる。
今まで、こんな気持ちになったことなんて・・・・・ない・・・・・・・・



あ・・・・・・・・・




私・・・・・・・自分から舐めるの・・・・・・・初めてなんだ・・・・・・・・




今までは、自分から求めるなんて、なかった。
あの人の言うとおりにしているだけだった。
自分から・・・・・なんて、なかった・・・・・・・・


それなのに、今は、こんなに・・・・・・・・・・


改めて、私にとっての浪馬クンの大きさを思い知った。

同時に、あの人の「元カレ」としての存在がどんどん小さくなっていくことも。

好き「だった」という事実は忘れることはないけれど、
あの人の存在を忘れることはないけれど。
ほんのちょっとしかたってないのに、間違いなく「過去」になっている。

薄情な人間だなあと思う。
自分の気持ちに気づきもしないで、勝手に突き進んで、
浪馬クンの迷惑も考えずに勝手に世話を焼いて、見守ってもらって。
あの人にも、迷惑をかけて。


それでも、浪馬クンは、私を『恋人だ』って言ってくれた。


こんな私にできることだったら、何でもしてあげるから。
浪馬クンからお願いしてくんないなら、
「こうすればキミが喜んでくれる」と勝手に思って
勝手にいろいろやっちゃうからねっ。
こんな子供な私を、好きでいてくれるんなら、何だって。



だから・・・・・今は・・・・・・・これを・・・・・・・



私は、舌と口の動きをますます激しくする。
首みたいになったところを舐めてみたり、横から甘噛みしてみたり。
これでいいのかなんてわかんないけど、



「・・・・・くうっ」



気持ちよさそうな顔してるから、オッケーだよね?
私の舌で、感じてくれてるんだよね?


自分の中も、高まってくるのがわかる。
全然・・・・・・触ってないのに・・・・・・・こんなに・・・・・・



「た、タマ・・・・・・・」



夢中になって舐めている私に、浪馬クンが苦しそうな、
気持ちよさそうな声をかける。



「ん?なに?」



「な、なんか信じられねえよ。
お前がその・・・・・・オレのを口でしてるなんて・・・・・・」




ちょっと情けない表情の浪馬クン。
今までの私たちの関係を思い返してるのかもしれない。

私は想いを閉じ込めちゃっていたんだけど、
浪馬クンは昔っからそんな素振りまったくなかったしなあ。
もしかしたら、女の子としてすら見てなかったんじゃないかな。


それが、今じゃ2人でこんなことをしてる。
今までの時間は何だったんだっていうくらいに、急速に進んでいる。
お互いの身体を全部見せ合っている。
重ねている。

去年までの私が今の私を見たら、絶対ビックリするよね。

そう思ったら、ちょっと笑いがこみあげてきた。
「来年はこうやって、幼なじみにエッチなことしてるんだよ」って
言ってやりたくなって、ますます笑みがこぼれる。
その笑みを相手に、愛しい人に向ける。



「あははっ。どう、気持ちイイ?」



口のかわりに軽く手を添えて、もうわかっちゃってる感想を
あえて聞いてみる。
浪馬クンの口から、ちゃんと聞きたくて。



「あ、ああ・・・・・・」



ちょっと目を逸らしながら頷く。
素直に気持ちイイって言えよぉ。
この反応でわかってるんだからねっ。

浪馬クンのその顔が、ますます好きになっていく。
でも私だって、同じくらい素直じゃないから。
わざとこんな言い方をしちゃう。



「そっか。まあ、そうだろうね」



相手が浪馬クンだから、こんな言い方もできちゃう。
今までの幼なじみという関係が、こんなときでも軽口を叩いちゃう。
直した方がいいのかなあ。



「な、なんだよその自信」



ちょっとアセり気味の浪馬クン。
また、今までみたことない表情。
おかしくって、嬉しい。


もしかして、自分がすっごく反応してるって、わかってないのかな・・・?


そう思った私は、またイジワルしちゃう。
そうカンタンには直んないな、こりゃ。



「当人はヒネくれてるけど、身体の方は正直だよね」



視線を浪馬クンの顔から、正直な身体にシフトさせる。
アセった顔とは裏腹に、はちきれんばかりになっている。
すぐになめたくなるのをガマンして、話を続ける。



「さっきっから気持ちイイ気持ちイイって言いっぱなしだもん」



「なっ!?」




あははっ。浪馬クンアセってる〜。
へっへっへ〜。図星図星〜♪

それでも浪馬クンのは、全然小さくなる気配がない。
大きくて、固いままで・・・・・


・・・・・やっぱり・・・・・・もう1回・・・・・・舐め・・・・・・・


先から漏れ続ける液を見ながら、
できるだけ余裕を見せつけながら話す。
せっかく今は私が優位なんだから・・・少しでも・・・・・ね。




「じゃなきゃ、
こんなに先っちょからネバネバしたのが溢れてこないでしょ?」





更にアセる浪馬クン。
やっ・・・・そんな顔したら・・・・・ガマンできなく・・・・なっちゃ・・・・・


言葉にする前に、浪馬クンの先にキスしていた、
固いのにやわらかい、とっても不思議な部分。

唇に、舌に、浪馬クンの液が染み込んでくる。
それが浪馬クンの代わりに、気持ちイイ気持ちイイって、教えてくれる。


もっと、もっと気持ちよくなって・・・・・・・・


私はたまらず、キスした口を軽く吸い上げた。



・・・・・・・ちゅーっ・・・・・・



「はうっ!」



頭の中に、浪馬クンの声が響き渡る。
わかるよ。すっごく感じてるの、わかるよ。
なら、もっと・・・・・・してあげる・・・・・・



「んー、みんな吸ってあげるね」



宣言して、もう一度吸い上げる。



「ちゅぅぅぅーーっ」



わざと声を上げながら吸い上げる。
浪馬クンが、もっと感じてくれるように。

浪馬クンの身体が、びっくんびっくん跳ね上がる。
や・・・・・・そんなに・・・・・・・気持ちいいんだ・・・・・・・


とろぉっ・・・・・・


浪馬クンが感じるたびに、私もますます溢れてくる。

あ・・・・・・もう・・・・・・・ガマンできない・・・・・・かも・・・・・・・

でも、今日は私がしてあげるって決めたし・・・・・
ふあああ・・・・・・・ダメ・・・・・・・欲し・・・・・・・



制御しきれなくなった私は、ちょっと強めに吸ってしまう。



「くあっ!!」



いっそう大きな声を上げて、浪馬クンが喘ぐ。
その途端、固さと熱さが更に増す。



うああっ・・・・・・すご・・・・・・・・脈・・・・・打って・・・・・・・



手に添えたところから、心臓の鼓動みたいなピクピクが伝わる。
や・・・・早い・・・・・早いよ・・・・・・・



浪馬クンを見ると、ものすごい必死な表情。


・・・・・・も・・・・・もしかして・・・・・・・・ガマン・・・・・してる・・・・・?
出ちゃいそう・・・・・・なの?



そう思ったら、必死な浪馬クンへのおかしさと、
自分の浪馬クンのが欲しいという欲望が一気に昇ってきた。




「あははっ、ビクビクってしてる。ねえ?もしかしてもうイキそう?」




イジワルに聞いてみる。
私も結構ヤバイけど、今日は私が責めるって決めたから。
その思いが、いつもの私というのをなんとか失わなかった。
いいのか悪いのかわかんないけど。



「あ、ああ・・・・・・・」




「じゃあ、このまま口でする?それとも私の中に入れる?」





で・・・・・できれば・・・・・・・私の・・・・・・・・




「た、タマの中でイキたい・・・・・・」




よ・・・・・よかったぁ・・・・・・・・




「ふふっ、わかった。それじゃあ・・・・・来て」





待ちかねていたの、何とか隠せたかなあ。
そう思いながら、やけに素早い動作で、私たちは体制を入れ替えた。




「入れるぞ?」



確認する浪馬クン。その声が、私の心をもっとエッチにする。



「うん・・・・・来て」



もう、ガマンなんてできなかった。
だけど・・・・・・欲しい。



くちゅっ・・・・・



先っぽがちょっと入っただけで、いやらしい音が響く。
それだけ、私は濡れていた。
浪馬クンを舐めているだけで、すっかり準備が整ってしまっていた。

触られても触ってもないのに・・・こんなになっちゃうなんて・・・・・・
口で言ってるよりも欲しがってるって、絶対バレてるよね・・・・・
恥ずかしいけど、それよりも早く・・・・・入れて・・・・・・


浪馬クンと見つめ合う。
きっと、浪馬クンも、進みたがっている。


2人とも、同時に頷いた。




――――――――――ずぶうっ!!




「あ、あぁぁぁーーーーっ!!」




ものすごくいやらしい音がして、私の中に一気に飲み込まれていく。
勢いと大きさに、悲鳴に近い声をあげてしまう。
なのに、脳が痺れちゃいそうな甘い感覚が、頭の中一杯に広がる。
2人の恥骨が、重なり合う。



なあっ・・・・・・・!!
こ・・・・・この前より・・・・・・・おっきくない・・・・・・!?
だけど・・・・・こんな一気に・・・・・・・!

私・・・・・そんなに・・・・濡れてたんだ・・・・・・
待ち焦がれてたんだ・・・・・・・・!
ひああああああっ・・・・・・・
このままじゃ・・・・おかしくなっちゃう・・・・・・・!!
今日は・・・・私から・・・・・・・したいのに・・・・・・・!!



昇りつめそうになっちゃった私は、何とかして落ち着こうと
呼吸を整える。
重なった部分をなんとか視界に入れないようにして、気分を落ち着ける。




「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・やっぱり、大きいよ」



それでも痺れてしまった頭が、正直な感想をもらしてしまう。
もう・・・考えて喋るなんて・・・・・できないよ・・・・・
そのくらいに、私の中はいっぱいで、熱くて。



「そ、そうか?」



「うん。だって、私の中がいっぱいになっちゃうもん。
こんなの・・・こんな風なの、感じたことないから」




もう、自分がちゃんと喋れているかの自信がない。
それでも何とか冷静に喋ろうとする。
とにかく、浪馬クンが聞き取れるように。
頭の中のこと、そのまましか言えないけど。



「・・・・・・・」



浪馬クンが、動かなくなる。
また何か言っちゃったのかと思ったけど、
今の私には、考える余裕なんかなくなっていた。



ろう・・・・ま・・・・・・・クン・・・・・・どうしたの・・・・・?

はやく・・・・・・はやくぅ・・・・・・・・

うごい・・・・・・・うごいてよぉ・・・・・・・・・!!




「あっ、あっ、あっ、あっ・・・・・あぁ〜っ」




気づくと、私は自分から腰を・・・・動かしていた・・・・・・・




浪馬クン・・・・・・浪馬クン・・・・・・・・!!



「って、勝手に動くなよ!」



こんな状況でも、幼なじみならではのツッコミが入る。
だってぇ・・・・・
私は口をとがらせながら答える。



「だ、だって。やっと入れてくれたのに、
ジッとしたままで動いてくれないんだもん」




あ・・・・
やっととか言っちゃった・・・・・・
ホントは・・・・ずっとガマンしてたって・・・・・言っちゃったよ・・・・・


でも・・・・早くして欲しいんだもん・・・・・・
浪馬クンに・・・・・かき・・・・・回して・・・・・・・・ほしいんだもん・・・・・・



子供そのままの言い分でエッチな言い訳をする私に、
浪馬クンはこう言った。



「しょうがねえだろ。今オレはな、男としての喜びに打ち震えてるんだぞ?」



男としての・・・・・喜び?
正直、私にはサッパリわかんない。
今の私の身体は・・・・・考えることなんか・・・・できない。

だって・・・・意識が・・・・・集中しちゃって・・・・・・

そう思ったら、また熱くなってきた。
早く・・・・・早く動いて欲しいのに・・・・・・・・
浪馬・・・・・クン・・・・・・・



「そんな喜びに打ち震えてたって、私は気持ちよくならないよ?」



早く、2人で一緒に気持ちよくなろうよぉ。

一緒に・・・・動こうよぉ・・・・・・・

ガマン・・・・・・できないよぉ・・・・・・・・



余裕のあるときに浪馬クンの言葉を聞けば、理解できるのかもしれない。
でも、今の私には、エッチなことしか考えられない。
浪馬クンとこうしている時の私は、エッチの塊。
他の人には決して見せない、正直な私の顔。
あの人の前でも見せることなんてなかった、正直な・・・・顔。


だから・・・・だから・・・・・・だからぁ・・・・・・・っ


泣きそうになって、浪馬クンを見つめる。



「ったく・・・・・エッチな女に育ちやがって」



育てたのは、間違いなく浪馬クンだっ。



「エッチな女は嫌い?」



そんなわけ・・・・・ないよね?



「・・・・・いーや。どっちかって言うと好きだ」



だよね?だよね?だよね?

だったら・・・・・・だったら・・・・・・・・




ぐちゅうっ!!




「きゃっ!」




「動いて」と言う前に、待ち望んでいたものが思いっきり突き刺さった。


〜〜〜〜〜〜〜!!!!


声にならない気持ちよさが、私を襲う。
私と浪馬クンの根元が当たって、痛いくらい。
そのくらい奥まで、飲み込んでいた。



「ほれほれ。お望みどおり、思いっきり突き刺してやるぞ」



そう言いながら、先から根元までをフルに使って、
激しく、激しく突いてくる。
さっきまでの沈黙がウソみたいに。



「く、くぅぅ・・・・・深い・・・・・深すぎるよぉ・・・・・・」



また、初めての感覚。
痛いくらいに深く刺さってるのに・・・・・・・・
き・・・・・・きもち・・・・・・・い・・・・・・・・・・・・・・・!!



「あっ。す、すまん。もしかして痛かったか?」



違う・・・・・・・・・ちが・・・・・・・・ああんっ



「う、ううん。気持ちいい・・・・・・・」



そういうのが、やっと。



「・・・・ったく」



やあ・・・そんな言い方しないで・・・・・
だって・・・・・・気持ちいいんだも・・・・・・・あああっ!



ひたすら、ひたすらに突き続ける。
奥にきたときも、抜けそうなくらい引かれたときも、
みんなみんな、気持ちよくて。
私はもう、欲望のままに喘ぐしかなかった。



「ひあっ!い、いい。それ、すごくいい」



ぐちゃっ、ぐちゃっといやらしい音が大きくなるたびに、
私の声もどんどん大きくなっていく。

私が感じてるって、浪馬クンに聞いてほしいから。
繋がる音に負けないくらい、私の声でも、感じてほしいから。



「その動かし方、すごく感じるぅ・・・・・・」



私の声に合わせて、浪馬クンが動いてくれる。
私が感じるように、合わせてくれている。
それに、私はますます甘えちゃう。
「今日は私が責める番」ってのは、どこへいったのやら。

浪馬クン・・・・・好き!大好き!!

そう思いながら、浪馬クンの動きにひたすら喘いでいた。



「はっ、はっ、ふっ、ふっ・・・・・・」



浪馬クンが動くたびに、私の液が浪馬クンを包む。
泡が立ちそうなくらいに、溢れている。
そのヌメヌメとした様子を想像しちゃって、ますます感じてくる。

そんなときに、一番奥に当たるから、声がいっぱい出ちゃう。
自然に、いやらしい言葉を浪馬クンに言ってしまう。
浪馬クンが興奮するのがわかるから、ますます声をあげてしまう。



「い、いいよ。奥に当たって・・・・・固いのが、奥に当たって・・・・・・
すごく感じる・・・・・・・」




このまま、いつまでもしていたい。
そんなことすら考えてしまう。
もし・・・・・2人で暮らせたらな・・・・・・・・



「ふっ、ふっ、はっ、はっ・・・・・・」



段々と、浪馬クンの声が止まり、呼吸だけが響くようになってきた。
浪馬クンを見ると、少し苦しそうな顔をしていた。


ピクッ・・・・・ビクッ・・・・・・・


私の中で、浪馬クンが反応する。
握ったときの脈とは、また違う感じ。

ああんっ・・・・・・ビクッてなるたびに・・・・・跳ねて・・・・・ひああ!



「あっ、んっん・・・・・・はぁはぁ・・・・・・・ひあっ・・・・・・・」



浪馬クンの呼吸が、ますます激しくなってくる。

ふああ・・・・も・・・・・・もしかして・・・・・・ッ!はあん!



「な、なんかビクビクいってるよ?」



「はあ、はあ、ふう、ふう・・・・・・」




私の声も聞こえてないみたいに、腰を動かす浪馬クン。
・・・・・・やっぱり・・・・・・・ふああっ・・・・・・



「ね、ねえ?あ、あぁんっ・・・・・・ふあ・・・・・も、もうイキそうなの?」



私の言葉からも、吐息の漏れる量が多くなってくる。

私も・・・・・・だんだん・・・・・・



「あ、ああ・・・・・・わ、悪いがもう・・・・・・・限界だ」



そ・・・・そうだよね。こんなに、激しく・・・・・動いたら・・・・・・・
わたしの・・・ために・・・・・・・激しく・・・・・・・・
この前より・・・・・・はあん・・・・・・は・・・早くて・・・・・・あううんっ!



「そ、そっか・・・・・あんっ。だ、だったら・・・・・・ああん」



だんだん、ろれつが回らなくなってくる。
言葉にするのが、つらくなってくる。



「・・・・す、好きなときに・・・・い、イって・・・・・あっ、ああっ、
イっていいから・・・・・・・ふあっ」




だって・・・・・このままじゃ・・・・ふああんっ・・・・・
き・・・・・気持ち・・・よすぎ・・・・・・て・・・・・
い・・・・っしょ・・・・・・イケ・・・・・か・・・・・わかんない・・・・・ああっ!



「はあ、はあ、ふう、ふう・・・・・・そ、そうか。
それじゃあ、もうちょっとがんばって・・・・・・・・・」




また、浪馬クンの動きが激しくなる。
やあ・・・・激し・・・・・すぎ・・・・・・・
でも・・・・・・・!でも・・・・・・・っ!!



「ひあぁぁぁ。す、すごい・・・・・・」



私も・・・・・・・も・・・・・・もう・・・・・・少し・・・・・・・・・で・・・・はぁんっ



「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」



ピクピク・・・・・どんどん・・・・・大きくな・・・・・・ひうあっ!
こ・・・・・こす・・・・・・・・!



「ね、ねえ・・・すごい、すごい感じるよ。
熱くて固いのが、私の中をゴリゴリって・・・・・ひあっ!」




ぐちゃっ!!ぐちゃあっ!!ぐちゃああっ!!!



今日いちばんの音が上がる。
浪馬クンが、すごい勢いで突き刺してくる。

ああっ・・・・浪馬クン・・・・・・・も・・・もう・・・・・・・・・



「だ、ダメだ・・・・・すまん、タマ。お、オレもう・・・・・・」



わ・・・・・わたし・・・・・・も・・・・・・・・


もう・・・・・・・・ダメェっ!!


ろうま・・・・クン・・・・・・受けたいっ!

浪馬クンの・・・・・・私の中・・・・・・・で・・・・・・・受けたいのぉっ!!



「あっ、あっ、あっ、あっ。い、いいよ・・・・・イって」



浪馬クンの・・・・・・感じたいっ!

きょう・・・・・・だいじょ・・・ぶ・・・・・・だから・・・・・・

浪馬クンのっ・・・・・わたし・・・・の・・・・・中にっ・・・・・!!!



「私の中でイって、いいよっ!」



ろ・・・・・・ろうまクン・・・・・・・・・っ!!!



「くぅ・・・・・た、タマっ!!!」



出し・・・・・てえっ・・・・・・・・・・・!!!




「あ、あぁぁぁーーーーっ!」




「くうっ!!!!」




寸前で抜かれた浪馬クンの先から、白い液が飛んでくる。
それは私の全身に降り注ぎ、白く染め上げていく。
放物線が、すごきキレイに見えた。



「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・・」



荒い息を吐きながら、私は幸せな気分に包まれていた。


えへへっ・・・・・・・・


こんなにエッチなことしたのに、なんか・・・・その・・・・・・
ほわって感じで・・・・・・



「た、タマ・・・・・・」



「ふう、ふう、ふう、ふう・・・・・・ふふっ。いっぱい出たね。
よかった。気持ちよかったんだね・・・・・・」




世界で一番愛しい人に向かって、私は自然と微笑んでいた。

ベッドに座って、私と同じように荒い息を吐く浪馬クンのそばに寄って、
お互いの腕をぴったりとくっつける。
私の頭を、浪馬クンの腕に寄せる。
少しの間何も言わず、2人の幸せな気分を楽しんだ。




「な、なあ」



浪馬クンが、話しかける。



「ん?なあに?」



幸せな気分のまま、浪馬クンの方を見る。



「さっき、中でって言ってたけど・・・・・・」



・・・・・・あははっ。聞こえてたんだ。



「うん。今日は中でも大丈夫な日だったから」



だからお願いしたのに・・・・・・



「そ、そうだったのか・・・・・・
クソ。だったら抜かなけりゃよかったぜ」




浪馬クンったら・・・・・エッチ。

でも、そのセリフが、私のイジワルな心とエッチな心を再び運んでくる。
・・・私も同じくらいエッチだから。



「ふふっ。だったら次は中にすればいいじゃない」



「え?」




私の提案に、ちょっと目を丸くする浪馬クン。
もう・・・・私もエッチだって・・・・わかってるでしょ?



「それとも今日はもうできない?」



「そ、そんなことはないぞ」




だよねっ。浪馬クンなら、まだまだ平気だよねっ♪



「じゃあ、今度は私もちゃんとイカせてね」



せっかく・・・・2人なんだから・・・・・・
その・・・・・・できれば・・・・・・・いっしょに・・・・・・・



「お、おうっ」



一気に興奮した浪馬クンが、私に覆いかぶさってくる。



「も・・・もー・・・・・いきなりすぎだよっ」



「だ、だってよ」



「ホントにエッチなんだから・・・・・・ひあっ!」



「人のこと言えないじゃねーか。喋ってるだけでこんなにしやがって・・・・・」



「・・・・・・あははっ」



「ごまかすなっつーの。今度はイカせてやるからな」



「・・・・・違うよ」



「え?」



「2人一緒に・・・・・・だよ」



「・・・・・・そうだな」




微笑みあった私たちは、再び抱き合った。
汗とか、液とかがついていたけど、そんなのはもう関係なかった。




―――――――――――――――――――――――――――




「あいたたた・・・・・・も〜、頑張りすぎだよ」


浪馬クンの家を出た私は、腰を押さえていた。
うう・・・・座って靴が履けないくらい痛い・・・・・・


「そうか?」


「そうよ。いったい何回したと思ってるの?」


「えーと・・・3回?」


「4回よっ!」



近所の人が聞いたら言い逃れできないくらいの大声。
てゆーか外でする話じゃないけど・・・・・


「ふむ、ずいぶん頑張ったな・・・・・・」


「んもう・・・・・・お陰で腰がパキパキよ。
これじゃあ明日、筋肉痛になっちゃうかも」



そりゃ・・・・全部オッケーしたのは私だけどさ・・・・・・


「腰痛はクセになるからな。ちゃんとケアしておけよ」


「他人事みたいに言って、誰のせいだと思ってるのよ」


「オレのせいか?」


「当たり前でしょっ!あいたたたた・・・・・・」



くう・・・・・部室のメガホンで引っぱたいてやりたい・・・・・・


「はっはは。気をつけろよ」


う・・・・・・・そんな機嫌のいい笑い方されたら、
何も言えなくなっちゃうじゃない・・・・・・
そんな、私の大好きな笑顔されたら・・・・・・


「んもう・・・・・・じゃあね、浪馬クン」


「おう」




ちょっと恥ずかしくなったので、玄関を離れる・・・・・って、
送ってくれるくらいしてもバチあたんないでしょ浪馬クン!?


・・・まあ、腰をかばいながら歩く私と
支える浪馬クンを見られたら、それはそれで困るけど・・・・

何より、歩きながらでもさっきの会話をしちゃいそう・・・・・・

むー・・・仕方ないか。
携帯で呼ぼうかと思ったけどやめておいてあげよう。
感謝しなさいよー?




一人でヨタヨタと歩きながら、ちょっと考えてみる。


さっきの私・・・・・ちょっと・・・・・恥知らずだったかな・・・・・
確かに・・・女の子が・・・・腰パキパキとか言わないよね・・・・

でも・・・相手は浪馬クンだし。

もともと、私がこんなに楽しく話せるのって、浪馬クンだけなんだよね・・・
幼なじみに刃君や望君もいるけど、こんなに親しくは話せない。


そっか・・・・・私、男の子とほとんど話、したことないんだ・・・・・


いつもそばに浪馬クンがいたから、他の男の子と話す必要なんてなかったし・・・
浪馬クンがいれば、楽しくて、退屈なんて縁がなくて・・・・・・


浪馬クンがいれば・・・・それだけで、よかったから・・・・・・


男の子も女の子も関係なくて、浪馬クンがいればよかったから。
女の子だけの話も男の子だけの話も、私たちの間では関係なかったから。
2人が共通する話。
ボケたり、ツッコんだり、2人で笑いあったり、悩んだり考えたり。
それがあれば、よかったから。


何でも言えるってのは、その延長線なのかもしれない。
もともと浪馬クンがするエッチな話にも付き合わされてたし(ムリヤリだけど)
それが・・・こういうことに・・・・恋人に・・・・なって。
そのエッチな話題が、私たち自身のこととして話せるようになって。


だから、浪馬クンが相手だとあんな話もできちゃうんだろうな・・・
他の人には、未だに「浪馬クンとつきあってるんだよー」なんて
顔から火が出ちゃって言えないんだから。


・・・・単に無神経でガサツだって言われたらそれまでなんだけどさ。


いいんだ。浪馬クンにさえ嫌われなければ。
元はといえば、こんなに腰痛くなるまでしたのは浪馬クンだしっ!
うんっ。そうだそうだっ。

私は浪馬クンが大好き。
浪馬クンは私が好きだと・・・・・・思う・・・・・・・
・・・・・・・きっと・・・・・・たぶん・・・・・・・・


・・・・ちょっと自信ないけど、それでいい!それでいいんだっ!



とムリヤリ納得したとき、




とろっ・・・・・・




〜〜〜〜〜〜!!!



んああ・・・・・・浪馬クンのが・・・・・・流れてきちゃった・・・・・・


わ・・・今日ミニスカなのに・・・・・
は・・・・早く帰らないと・・・・・・・うあああ!!
腰・・・・・腰痛い・・・・・・・


私はヘンな格好で、家路を急いだ。
腰は痛かったけど、なぜか、笑いがこみ上げてくる。



「浪馬クン・・・・・・こんなに・・・・・・・・中に・・・・・・・」



ヤバイっ!さすがに1人でエッチな回想はヤバイっ!
頭をブンブン振ってなんとか打ち消しながら、ヨタヨタと歩き続ける。
家近くてよかった・・・・・・



「それにしても・・・・・この下着・・・・・・別に洗わないとなあ・・・・・・」



ブンブンブン!回想は後だって!



ズキーン!



「はううっ!」






12月6日(月)


「あれ?」


腰を押さえながら家を出た私は、人影を見つけた。
その人影は、玄関の近くの電柱に寄りかかっている。
ソワソワして、落ち着きがないみたいに見える。

私に気づくと、声をかけてきた。


「よ、よう、タマ」


「浪馬クン?どうしたの?こんなに早く」



いつもの時間だと間に合わないかもしれないから、
早めに出たっていうのに・・・


「ああ、何だか目が覚めちまってな。
ヤリすぎで痛がってるお前の顔を見に来た」


「な・・・何おう!」



こんなにしたのはキミでしょキミ!


「はっはは。その調子じゃ今日は大変そうだな」


「当たり前でしょ!あたたっ・・・・・・」


「ふむ・・・・・その腰には重そうだな」


「へ?」


「もらいっ」


「あっ!」



浪馬クンは私のカバンを奪い取ると、ダッシュ。


「ち、ちょっと!」


「はっはははははは」



あんの・・・・・・バカっ!


そう思ってる間にも、浪馬クンは先へと進んでいく。

せっかくだから・・・一緒に行きたいのに・・・・・
こんな時に限って・・・・・・
カバンまで持ってっちゃうし・・・・・


あ・・・・


もしかして・・・・・心配して早起きしてくれたのかな・・・・・
カバンも・・・・持ってくれたとか・・・・・・?
意外と・・・・・テレ屋なとこあるし・・・・・・・


「・・・・・えへへへ・・・・・・・」


幸せな想像でいっぱいになりながら、学園へと向かっていった。



浪馬クンは、校門のところで待っていてくれた。
まったく、心配なら心配って言ってくれればいいのにっ。


「浪馬クン・・・・・・・え?」



ぽーんっ。ぽーんっ。



浪馬クンは、私のカバンを高々と投げ上げる。
そしてキャッチ。また投げる。キャッチ。


もしかして・・・・・ずーっとそれやってた?


それには・・・・・・そのカバンの中には・・・・・・・・



「私のおべんとおおおおおおおおおっ!!!」



「へ?」




叫びながら異様なカッコで迫ってくる私に、浪馬クンは目を丸くする。
通学中の人たちも同じく。



「その中!私の!今日の!お弁当!!」


「え?お前、普段は学食じゃ・・・・・・」


「こんなに痛くちゃ学食まで歩いてらんないから!
今日は作ってもらったのっ!」


「・・・・そういえば、タマのカバンにしては重かったような・・・・・・」


「気づいてよ!後、私はちゃんと毎日教科書準備してるっ!
全教科学校に置きっぱなしの浪馬クンと一緒にしないっ!!」


「おー、偉いぞタマ吉」


ぽーんっ。


「投げるなあっ!!」


「・・・・・・あ」


「・・・・・・・なに!?」


「何か・・・・・外れた音がした」


「外れた?・・・・・・・それって・・・・・・タッパーの・・・・・ちょっと貸して!」



カバンを受け取った私は、みるみる顔面が蒼白になっていく。


「あ・・・・・あ・・・・・・・」


「ど・・・・・どうした?」


「重心が・・・・・・ありえないところに・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・ぷるぷる」


「じゃ・・・じゃあ、俺はお先に行ってるぞ」




・・・・・・がしっ



きびすを返す浪馬クンの肩を、ありったけの力を込めて掴む。


「浪馬クン」


「た、たまきさん?」


「お願いがあるの」


「な・・・・・なんでしょうか」


「部室へ行って、メガホン持ってきて」


「い・・・・・いかように使うのでしょうか」


「・・・・・・・殴る」


「・・・・え?」


「殴る。力の限り。キミを」


「た、たまきさん・・・・・・・?」


「早く。ダッシュ。Right now!!」



留学を推薦されるほどの流暢な発音で、指示。
てゆーか命令。


「・・・・・・・・・・御意」



肩を落としつつ、部室へと向かう浪馬クン。
・・・・・浪馬クンに期待した私がバカでした・・・・バカでしたよ・・・・・・



数分後、校門周辺に高らかな音が響き渡った。




「おはよー、たまき・・・・・ってどうしたのその落ち込んだ顔?」

「お弁当・・・・・私のお弁当・・・・・・」

「た・・・・たまき?」

「やられた・・・・・浪馬クンに・・・・・・・」

「食べられた?」

「ならまだマシ・・・・・・・カバン開けるの怖い・・・・・・」

「なによソレ・・・・・・うあ」

「何よ、持っただけでその顔・・・・・・うあ」



カバンを持った順番に、友達から笑みが消えた。


「ど・・・・どうすんのよ、それ」

「・・・・・アイツに食べさせる」

「織屋君?さすがにかわいそうじゃ・・・・・・」

「いい。元は浪馬クンのせいだ。責任は全てあ奴にある」

「たまきの分はどうするの?」

「当然、浪馬クンに買ってこさせる。今日は私の奴隷だから」

「そ・・・そうなんだ・・・・・」

「ねー、たまきぃ」

「なに?」

「最近、織屋君に言動が似てきたよね」


「なあっ!!??」



ガタンっ!!


思わず思いっきり立ち上がってしまう。


「はうううっ!!」


こ・・・・腰が・・・・・・・・


「た、たまき・・・・・・どうしたの?」

「腰が痛くて・・・・・・」

「なんでまた」

「・・・・・ちょっとがんばりすぎまして・・・・・・・」

「がんばる?」

「!!」



しまった!!


「がんばるって・・・・・」

「な!なんでもない!何でもないからっ!気にしない!Don't mind!!」

「何をそんなに慌ててぇ・・・・・・・あ〜?」



ニンマリと、不気味な笑みを浮かべる1人。
ワケがわからないもう1人。


「な・・・何その顔!」

「そーかそーか、そーゆーことか」

「え?何?どーゆーこと?」

「たまきはね?また一つ遠いところへ行ってしまったのよ。
織屋君といっしょにね」

「?織屋君と?どこへ?」

「うわーうわーうわー!!」

「あ、漢字じゃなくてカタカナかなぁ?」

「漢字?カタカナ?」

「いいっ!そんな訂正はいらないっ!!」

「たまきぃ」

「もうやめてぇっ!」


「よかったねっ」


「あ・・・うん・・・・・・・ありがとう・・・・・」



で・・・・いいのかなあ・・・・・?


「ねー、なによー訂正とかってさー?」

「あ・・・う・・・・・その・・・・・・」



困っていると、理解できてない1人に腰をツンツンとつつかれる。


「いたあああい!!」

「白状しないとやめてあげないぞー?」



つんつんっ。


「あーん、助けて浪馬クーン!!」


たまらず浪馬クンに助けを求める。
恋人のピンチ(?)に、浪馬くんは颯爽と席を・・・・・
立たずに。



「♪〜〜〜〜〜」



浪馬ああああああっ!!
口笛吹いてごまかすなあああああああっ!!



「びびびび♪びびびび♪やんやんややんやん♪」


「ふー♪」


しかもその歌っ!?私も続いてる場合じゃないよ!


殴る・・・・休み時間になったら殴り倒す・・・・・・・





「・・・・・・たまき様。不肖織屋浪馬、ただいまパンをお持ちいたしました」


「うんっ。よろしい♪」



昼休み開始直後の戦場の購買。
その中に、今日一日ドレイになった浪馬クンを走らせる。

これまでにも浪馬クンには働いてもらった。
もっとも、基本的には浪馬クンからやってくれたんだけど。


「たまき様、理科室までお荷物をお持ちいたします」

「あ、よろしくー」


「たまき様、階段でございます。お気をつけくださいませ」(手を取りながら)

「あ・・・ありがとう・・・・・・」


「たまき様、厠でございますか?お供いたします」

スパーーーーーーン!!






「で、私めの昼食はいかがすればよろしいのでしょうか」


ボッコボコの顔の浪馬クンが尋ねる。


「あははっ。もうその口調はいいってば」


「では、お許しくださるのですか?」


「うむ。許して遣わす」


「ありがたき幸せ」



一息つくと、浪馬クンは向かい合わせにした席に腰を下ろす。


「ふー・・・・何か疲れた感じがするぜ」


「ありがとね。いろいろやってもらっちゃって」


「気にすんなよ。弁当やっちゃったのはオレのせいだしな」


「それは確かだね〜」


「それに・・・・やっぱ、あの場に出て行くのは恥ずかしくてな・・・・」


「あ・・・・・」



朝のことを思い出して、2人して顔を赤くする。


「そ・・・・それはそうと、カバンは大丈夫だったのか?」


「う・・・うん。こぼれたのはおにぎりだけだったし、アルミに包んであったから。
おかずはなんとかタッパーの中に踏みとどまってたし」


「なんだ。じゃあおにぎりは食えんじゃねーか」


「そーゆーことになるね〜」


「知っててパシらせたのかよ・・・・・」


「これくらいはね〜」


「ったく」


「あははっ」



屈託なく笑う私。浪馬クンも、声とは裏腹に笑ってくれた。


「どれ、じゃあその弁当よこせ、タッパーごと」


「え?でもかなり偏っちゃってるし・・・・・結構ヒドイよ・・・・・?」


「そんなのオレが気にするかよ、勿体無いじゃねーか」


「でも・・・・浪馬クンだってパン買って・・・・・」


「そんなに金持ってねーよ。持ってるといろいろ使っちまうからな。
最初っからタマの分しか買ってねえ」


「・・・・・じゃあ・・・どうするつもりだったのよ」


「お前が朝言ってたじゃねーか。オレに食わせるって」


「そっから聞いてたの?あれは、流れで・・・・・・」


「なーに、よっぽどのことがなきゃ食う気だったからな。
カバンだけはどうしようかと思ってたがな」


「浪馬クン・・・・・」


「お前のお袋さんが作ったんだろ?料理うまいんだよな」


「う・・・・うん」


「ホレ、よこせ」



ハンカチに包みなおしておいたお弁当を渡す。


「どれどれ・・・・おっ、充分いけんじゃねーか」


「そ・・・・そう?」


「手料理なんて久しぶりだからな。どれ、いっただっきまーす」



そういえば・・・最近ご飯作りに行ってなかったもんな・・・・・
まともにつくってあげたのって・・・・ゴールデンウィークくらいかな・・・
その後は・・・いろいろあったし・・・・・

今は・・・・その・・・・・・あの時にしか・・・・・行ってないし・・・・・


「うん、やっぱうまいわ・・・て、何顔赤くしてんだ?」


「!・・・・なんでもないよっ」


「なんだ、またエロい事でも考えてたのか?」


スパーーーーーーン!!


「いってえ」


「バカ!!」


「何怒ってんだよ・・・・・まあいいや。メシメシ」


「もう・・・・・」


「うん・・・こうしてお袋さんの料理食ってみると、
タマの料理のうまさは、やっぱり遺伝だよな」


「・・・・・・え?」


「ゴールデンウィーク明けに作ってもらったろ?
そん時もうまいって言ったじゃねーか」


「・・・・覚えてたんだ・・・・・」



あの頃はただの幼なじみだったハズなのに、
浪馬クンは覚えていた。私も覚えていた。
やっぱり、お互いにかけがえのない存在だったのかな。
気づかなかっただけで、私にとっては、ずっとそうだったんだけど。


「ああ、まともなメシ食った記憶なんて、ほとんどねーからな」


「・・・・・そんな理由なのか・・・・・・・」


「へ?」


「なんでもないよっ。てゆーか、ちゃんと野菜とか食べなさいっ」


「ジュースじゃダメか?作るのめんどくせえ」


「おいおい・・・・・・」



浪馬クン・・・・・本当においしそうに食べてるなあ・・・・
私のでも、こんな風に食べてくれるかな・・・・・・



「・・・・・・・・・じゃあさ」



「ん?」



「明日からさ・・・・・私がお弁当作ってきてあげようか?」



「え?だってお前、いつもは学食・・・・・」



「いいからっ」




少しでも、浪馬クンが喜んでくれるんなら、私は何でもしてあげるよ。
早起きは実は苦手だけど。デートもなかなか先に到着できないくらい。
それでも、できるだけがんばってみるから。



「んー・・・・・・いいや、それは」



「な・・・・何でよぉ」



「ほ・・・・ホラ、毎日はさすがにキツイだろ?」



「・・・・・・だけど」



「お前も朝けっこう弱いんだから、ムリすんなって」



「それでも・・・・・」



「それに・・・・・・バッティングはキツイしな・・・・・・



「え?」



「い、いーや、何でもねえ」



「・・・・・・・・・?」




なんだろう・・・・・今の・・・・・ちょっと不安だ・・・・・・・



「と、とにかく、毎日はいいよ。そのかわり・・・・・・」



「・・・・・・」



「今度のデートの時、弁当作ってくれよ。遊園地ででも食おうぜ」



「・・・・・・そんなんでいいの?」



「そんなんって・・・・恋人みたいでいいじゃねーか」



「みたいじゃないもん・・・・・・」



「タマ・・・・・・・」



「恋人・・・・・・・・だもん」




不安なこと言うから、悲しくなってきちゃったじゃない・・・・・・



「・・・・・ったく、真に受けすぎんなよな」



ふわっ・・・・・・



「・・・・わっ」




浪馬クンの大きな手が、私の頭に伸びる。
そのまま、優しく撫でてくれた。


・・・・・あったかい・・・・・・


浪馬クンの顔が近づいてくる。
ビックリする私に、こう言ってくれた。



「ちゃんと、オレ達は、恋人だ」



「浪馬クン・・・・・・」



「な?」



「・・・・・・うんっ」




仕方ないなあ・・・・・・これで許してあげるよっ。



「それに・・・・・ちゃんと食っとけば、最後に体力使えるだろ?」



「体力?」



「今度は腰も痛くなんねーかもよ?」



「・・・・・・!!」



スパンスパンスパーーーーーーン!!



「こ、コンボはやめろ!コンボは!!」



「浪馬クンが悪いんでしょーが!」




せっかくちゃんと言ってくれたのに・・・・少しはひたらせろっ!



どんなにいいことを言っても、最後まではきまったためしがない。
浪馬クンがやっちゃう場合もあるし、私の場合もある。
ほとんどは浪馬クンだけどっ!

きっと、それが、私たちなんだと思う。
お互いこんな調子で、過ごしていくんだろうな。
5年たっても10年たっても、ずーっとこのままでいったら・・・・・

・・・・・・・・・・・・それも、いいな。

すっごく先のことかもしれないけど、もう10年以上一緒なんだもん。
今更、夢物語じゃ・・・・ないよね?





帰りも当然のように、私の横についてくれる。
友達にはニヤニヤした目で見られるし(昼休みもずっと見てたらしい)
クラスメートの何人かもちょっと気づき始めたっぽいけど、
それならそれでいいや。
自分からは言えないけど・・・・・私たちは恋人だもん♪


「クツ履けるか?」


「うん、何とか大丈夫」


「校門出たら支えてやるからな。こっからだとどうしても教頭がうるせーから」


「浪馬クン、目つけられっぱなしだもんね」


「ホントだぜ。全く何をやったってんだ」


「・・・去年だけで相当な伝説作ったと思うけど・・・・・心当たりないの?」


「・・・・・・・ありすぎ」


「でしょ〜?」




くすくすくす。

校門を出た途端、私は浪馬くんの腕に絡みついた。



「お、おい。それは早くねーか?」


「支えてくれるって言ったもん」


「これは支えてるっていうのか?」


「体勢崩れたら支えてね」


「引っぱりあげるだけになると思うが・・・・」


「♪」


「・・・・ま、いいか」



ゆっくりゆっくり、道を歩いていく。
家に近づくに連れて、段々、生徒の数が減ってくる。


「なあ」


「ん?なに?」


「おんぶしてやろうか?」


「・・・・え〜〜〜?」


「な・・・・なんだよ、イヤなのか?」


い・・・イヤじゃないけど・・・・・でも・・・・・さすがに恥ずかしいし・・・・


「・・・・・腰に負担かかると思うよ?」


「そうか?」


「そうだよ。足ならともかく」


「・・・・・チッ、残念」


「チッって何よ・・・・・どうして急に?」


「胸が当たるから」


「はい?」


「お前の胸を背中で受けたくなったから」


「サラっととんでもないこと言うな!!」


「正直だろ?」


「・・・・カバンの角で殴っていい?グーパンチは今の私じゃ威力ないし、
メガホンは置いてきたから」


「・・・・・・・スイマセンデシタ」


「よろしい」




ボケとツッコミのポジションを話によって入れ替えながら、
絡めた腕を放すことなく歩き続ける。



「・・・・・・・・・もし・・・・・・」


「へ?」


「もし・・・・・・したかったら・・・・・さ。
デートのとき・・・・・・・してあげる・・・・・・から」


「た・・・・タマ?」


「裸なら・・・・・その・・・・・・直接・・・・・・当たるから・・・・・・
そのほうが・・・・・・いいんじゃ・・・・ないかな・・・・って・・・・・・・」


「・・・・・・タマ・・・・・」


「それで・・・・・いいかな・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エロ娘」


「何だとぉ!!!」




ドスッ



「じゅ・・・・充分・・・・・威力あるじゃねーか・・・・・
キックボクシングで鍛えたオレのボディを・・・・・・


「フンだっ!!」




浪馬クンから言い出したクセにっ!
そりゃ私も想像したらしたくなっちゃったけどっ!





「・・・・・・タマ。着いたぞ」


「・・・・うん。今日はありがとう」


「気にすんなって。オレにとっては当然だ」


「・・・・・・・うん」



もう・・・・腕・・・・・離さなきゃ・・・・・・
なのに、なかなか離せない。


「タマ?どうした?」


「・・・・・・・」


「もしかして、オレと離れたくないとかか?」


「・・・・・・・・うん」


「おいおい・・・・・」


「もっと・・・・・一緒にいたいもん・・・・・・」


「タマ・・・・・・」




浪馬クンと私の顔が、近づいていく。



「ん・・・・・んんっ・・・・・・・・はあっ・・・・・・・」



そのまま、キス。
お互いの舌を、お互いの舌に絡ませる。

浪馬クンが好きなところを私の舌が。
私の好きなところを浪馬クンの舌が。
これまでのキスでわかった部分を、ふんだんに使う。

キスだけなのに、意識がフワフワしてくる。

昨日・・・・・あんなにしたのに・・・・・・

そう意識すると、ますます舌が動いちゃう。



「はあ・・・・・ん・・・・・・・・ろうま・・・・・・く・・・・・・・んふうっ・・・・・」



舌を通して、頭の後ろに電流が走る。
そのビリビリが、身体全部に通っていく。


私たち・・・・・どんどん・・・・・うまくなってる・・・・・・・

ふああっ・・・・・・ダメ・・・・・・だ・・・・・め・・・・・・



にゅるん・・・・・



意識が遠のきそうになったとき、舌が離れていった。



「ふあ・・・・・?」


「今日は・・・ここでおわりだ」


「え・・・・」


「え、じゃねーよ。タマが腰痛いのにこのまま続けられるわけねーだろ」


「・・・・・そうでした・・・・・・」


「それとも、玄関で挿れちまっていいのか?」


「い・・・・いいわけないでしょ・・・・・」



考えられなかったけど・・・・・・


「続きは今度だ。とりあえず、早く腰直せ」


「・・・・・うん・・・・・って浪馬クンのせいじゃないのよ」


「それもそうか。はっはは」


「・・・・・・・」


「タマ・・・・・もしかして、結構感じまってるか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」



恥ずかしいけど・・・・・ちょっと・・・・・頭が白くなってた・・・・・・


「・・・・・・・オレもだ」


「え?」



そう言うと、浪馬クンは姿勢を正す。


「!!!」


あ・・・・あんなに・・・・・はっきり・・・・・キスだけ・・・・・・で・・・・・


「参った。前かがみじゃねえと帰れねえ」


「・・・・・・バカ・・・・・・・」


「だからこのまま続けたらヤバイんだって、わかったろ?」


「すごく・・・・・・」


「だから、今日はここで帰るな」


「う・・・・うん」


「あ、そうそう」


「ん?」


「思い出して、1人でするなよ?」


「なっ・・・・・!!何言い出すのよ!!」


「はっはは。この前の仕返しだ」


「バカ!女の子に言うな!」


「そんなもんか」


「そうよ!そんなこと言うなら、浪馬クンだってしちゃダメだからね!?」


「それはわからん」


「開きなおるなあ!!」


「はっはは、じゃあな」


「大バカ!さっさと行っちゃえ!」




肩をすくめながら去っていく浪馬クン。



「バカ・・・・・・ホントにエッチなんだから・・・・・・・」



そう言いながら、浪馬クンの姿から目を離すことができない。
名残惜しくもあり、何か忘れてもいるようで。

背中を見つめていると、いきなり浪馬クンが振り向いた。



「あ、そうだ、タマ」


「な、何よ」


「明日も同じ時間か?」


「え?」


「明日も・・・・・待っててやるよ」


「・・・・・・浪馬クン・・・・・・・」



そっか、明日の約束を・・・・待っていたんだ。


「・・・・あんなとこで待ってないで、チャイム鳴らしてくれればいいのに」


「・・・呼ぶのは恥ずかしいんだぜ?」


「昔はよくそうやって学校行ったじゃない」


「今はさすがになあ・・・状況も違うし・・・・・・」


「ぶー・・・・仕方ないなあ・・・・・・」


「おっと、引き止めちまったな。じゃあな」


「待って、浪馬クン!」


「どうした?」


「明日は・・・・・一緒に行こうね」


「だから、そう言ってるじゃねーか」


「隣に並んで・・・・・・一緒に行こうね」


「あ・・・・・そういうことか・・・・・・」




浪馬クンが、私に向かってサムズアップ。



「了解」


「うんっ」





そのまま見えなくなるまで見送って、家に入った。

デートでもないのに、明日の約束ができたことが、すごく嬉しかった。



「は〜あ、早く治さないとな〜〜〜」



ため息をつきながら、寝っ転がる。



「早く治さないとデートが・・・・・お弁当が・・・・・・・
そして・・・・・・そして・・・・・・・・」




考えた途端、さっきの余韻がまた戻ってきた。



「あ・・・・・ヤバイ・・・・・・」



気持ちが高ぶってくる。



「どうしよ・・・・あんだけ大見得切っちゃったしなあ・・・・・・
でも・・・・・・今のままだと中途半端だし・・・・・・」




うーうー唸りながら考える。



「浪馬クン・・・・・・どうするのかな・・・・・・」



それから、私は腰の痛みも忘れ、
エッチな誘惑と、しばらく格闘することになっちゃうのだった。





12月9日(木)


「おっはよ、浪馬クンっ」


今日もいつもと同じ場所で待っていてくれた浪馬クンに、
元気いっぱいの挨拶。



「よっ、タマ。今日は元気だなあ」


「へっへっへ〜。痛くなくなったよー」


「おっ、そいつはよかった」


「うんっ♪」



これで、浪馬クンに気をつかわせないで済むと思うと、
嬉しくてしょうがないよっ。


「これで早起きしなくてすむよ」


だから、浪馬クンも明日からはもう少し遅くて大丈夫・・・・・・


「そっか。じゃあオレも御役御免だな」


「え?」


「もう一人で歩けるだろ?だったらオレがついてなくても大丈夫だよな?」


「・・・・・・・・・・」



そ・・・そうだよね・・・・・浪馬クン・・・がんばって起きてくれてたんだもんね・・・・・・
ムリに・・・来てもらう必要も・・・・・


「・・・・・・・・」


「お、おい・・・・・・タマ?」


「・・・・・・・・」



でも・・・・・・でも・・・・・・・


「どうした?止まってると間に合わなく・・・・」


「・・・・・・・・・・ヤダ」


「へ?」


「一緒に・・・・・・行こうよぉ」


「タマ・・・・・・?」


「一緒に・・・・・歩きたい・・・・・・よ」



さっきまでの元気が一転、涙が出そうになる。
なんだろ・・・・ほんのちょっとの間だったのに・・・・・
なくなっちゃったら・・・・すっごく・・・・・寂しい・・・・・・


「タマ・・・・・・・」


「・・・・・・ぐす・・・・・・・」




ぺしっ



「・・・・・ふえっ?」


おでこを軽く叩かれた私は、きょとんとして浪馬クンを見る。
すごく優しい顔をしていた。


「バーカ、んなことくらいで泣きそうな顔すんな」


「・・・・・・・だって・・・・・・・・・」


「ったく、相変わらずワガママなヤツだな」


「・・・・・・・・ぶー・・・・・・・・」


「そんな顔見せられたら、言うこと聞くしかねえじゃねーか」


「!じゃあ・・・・・・・」


「ああ、明日も同じ場所だ」



ぱああああっ・・・・・・・
太陽が背中に降り注いだような気持ち。



「うんっ!!!」



飛び上がりたいのを何とか押さえて、頷いた。


「じゃあじゃあ、明日から10分遅く来てね」


「なに?そんなもんなのか?」


「私はいつもそうだよ」


「もう5分だけなんとかなんねーか?」


「ダメー」


「ぐぬう・・・・・・」


「あははっ」



嬉しくて嬉しくて、どんどんテンションが上がってくる。


「なあ」


「ん?」


「万が一間に合わなかったらスマン」


「そしたらお昼おごりねっ」


「ひでえっ!」


「あははっ。ウソだよ。そん時は私が呼びに行ってあげるよ」


「う・・・そいつも恥ずかしいな・・・おっちゃんとかに聞こえるし・・・・」


「ならちゃんと来てね?」


「オレはハメられたのか?」


「人聞き悪いなあ。いいのっ、恋人だからそーゆーことやりたいのっ」


「そっか、ヤりたいのか。じゃあご希望通り次のデートでハメてやろう」


「・・・エロ浪馬クン?私はもう腰の入ったパンチ打てるよ?」


「・・・・・・・・・なんでもないです」


「ならよしっ」



まったく朝から・・・・・


「・・・・・いいよ」


「へ?」


「次の・・・・デートも・・・・・・楽しみに・・・・・・してる・・・・・から」


「・・・・・・・・うわっ、どっちがエロだよ」


「い、いいじゃないっ!合わせてあげたのっ!」


「まあそういうことにしといてやろう」


「何よー!ぶーぶー!!」


「はっはは。・・・・・ホレ」



右手を、私の前に差し出す。


「・・・・・・・・?」


「・・・・・・いつも自分からしてくるだろーが・・・・ったく」



ワケがわからない私の左手を掴み取る。


「・・・・・あ・・・・・・・・」


「今はまだ・・・・人通りが少ないからな」


「・・・・・・ありがと・・・・・・」


「れ・・・・礼なんて言われるこっちゃねえ。行くぞっ」


「うんっ」



顔を見せないようにして、手を繋いだまま歩き出す浪馬クン。
嬉しくて、何とか顔を見ようとする。


「じーっ」


「ば・・・バカ、顔見んな」


「あれ〜?テレてるの〜?」


「て・・・テレてねえっ」


「あははっ」




短い学校までの距離を、ちょっと人目を気にしながら歩いた。
冬の冷たい風が、お互いのほてった顔に心地いい。


うんっ。今日もいい日になるぞっ♪





12月11日(土)

やった、授業終わりっ♪
浪馬クンは部活かなー。手伝い手伝いっ・・・・・


「・・・・・というわけで、月曜からの期末試験ですが・・・・・」


担任の先生の一言に、思考が一瞬停止。


「し・・・・・けん・・・・・・・・?」


月曜って・・・・あさって?
慌ててノートを見る。
うわ・・・・・範囲バッチリ書いてあるよ・・・・・・・


「たまき、帰らないの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたの?フリーズしてるよぉ」

「・・・・・・・・しけん・・・・・・・」

「あ〜、憂鬱だあ。帰って勉強しなきゃ」

「たまきはいいよね。勉強できるから」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・忘れてた・・・・・・・・・・・」


「は?」

「あさって・・・・・しけん・・・・・・・」

「ちょっと・・・・・・・マジ?」

「うん・・・・・・」



・・・・・最近あんまりにも楽しくて、そんなこと記憶の片隅にもなかったよ・・・
今週から浪馬クンと学校行くのも一緒になれて・・・・・
1日中一緒なのが、毎日とっても幸せで・・・・・


まあ、たまきなら赤点はないでしょ。
推薦ももらってるし、試験忘れてても問題ないんじゃない?」

「浪馬クン・・・・・」

「はい?」

「浪馬クン、大丈夫かなあ・・・・・・」

「や、自分のこと心配しろよ」

「しょーがないよ。たまきには織屋君のことしか頭にないんだから」

「そ・・・・そうじゃない・・・・・けど・・・・・」



そうじゃ・・・・なくない・・・・・か・・・・・・


「まーた顔赤くしてぇ」

「そ、そんなんじゃないよっ」

「そういえば織屋君って、成績はどうなの?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「あ、たまきがまた凍った」

「大体補習受けてるよ。あたしよく見るもん」

「・・・・・常習か・・・・ってアンタもじゃないのよ。
勉強しなさいよぉ」

「卒業さえできりゃいーのよ」

「できるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・うぐぅ」

「あ、凍った」



浪馬クン・・・・・・大丈夫なのかなぁ・・・・・・


「たまきぃ、私たちは先に帰るよぉ」

「あ、うん・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・あと2教科・・・赤点取ったら・・・・・・・」

「ハイハイ、私が教えたげるから、死ぬ気でがんばんなさい」



凍ったままの1人を引きずって帰る友人を見送る。


「私も・・・・教えてあげられる・・・・かな」


浪馬クンは勉強してるのだろうか。
大学はあきらめてるみたいだけど、進路はどうするんだろうか。
まだまだ知らない、浪馬クンのこと。
もっともっと、知りたいなあ・・・・・


ガラッ


「あっ・・・・・・・」


浪馬クンが教室に戻ってきた。
ってことは、トレーニングやる気なのかな?


「よっ、また会ったな」


「うん」



鼻歌交じりで、ゴキゲンな様子。けっこう余裕なのかな?
いや、あの浪馬クンに限って・・・・・

まさか・・・・・・


「ね、ねえ浪馬クン」


ものすごくイヤな予感がするけど、聞いてみる。


「ん?」


「そろそろアレの季節だけど・・・準備は平気?」


「アレ?」


「そう。毎年恒例の」



浪馬クンの顔が、ニヤっと不適な笑みを浮かべる。


「毎年恒例の・・・おおっ!アレのことか。
はっはは。大丈夫大丈夫。まかせておけ」


「うわあ、すごい自信じゃない・・・・・・」



・・・・浮かれて忘れてたなんて・・・私だけ?
それはそれで・・・・ちょっと寂しいな・・・・
もちろん、私が舞い上がってるだけなんだけど・・・


「はっはは。土鍋もコンロもシンクの下にしまってあるはずだからな。
すぐに準備できるぜ」


「え?土鍋?」



・・・・・家庭科の試験の話?
でも期末は実習じゃない・・・・てゆーか
浪馬クンそんなの選択してないじゃないっ!


「あとは材料を用意するだけなんだが・・・もちろんそれは、
お前のほうに任せちゃっていいんだよな?」


「あ、あのさ・・・なんか話が食い違ってるみたいなんだけど」



イヤな予感が再び甦る。


「へ?」


「浪馬クン、いったい何の話をしてるの?」



違う・・・少なくとも今する話はそれじゃないよ、浪馬クン・・・・・・


「なにってお前、鍋パーティの話だよ。やるんだろ?今年も」


な・・・・・鍋っ?


「ち、違うよう・・・・・・」


・・・・さすが織屋浪馬。私の予想の斜め上を行ってくれるよ・・・・・・
楽しみにしててくれたのは嬉しいけど・・・


「へ?」


「私が聞いたのは、期末試験の準備のこと」


「期末・・・・・・試験?」


「そう」


「・・・・・・」


「・・・・・・」



この顔は・・・・・本気で考えてるよ・・・・・・・


「おおっ!」


ようやく思い出したのか・・・・・


「はあ・・・・・・その様子じゃ準備なんて全くしてないんでしょうね」


「はっはは。まあ、いつもどおりっちゅうやつだ」



いつもどおりって・・・・それじゃダメ確定じゃない・・・・・


「なにか、手伝ったほうがいい?」


私も今回は自信ないけど・・・・・
英語ならきっと・・・・教えられるよ・・・・・?


「んにゃ。お前はお前の準備をしとけ。オレは自分で何とかするから」


「ホントに?」



・・・・・いらない・・・・の?


「ああ」


自分で勉強するって言ってるのに、ムリヤリ教えるのもよくない・・・よね。


「何かあったら遠慮しないで言ってね」


「サンキュ」


「・・・・・・」


「どうした?」


「あ・・・・何でもない・・・・・・」


「そっか。お前は今日もバイトか?」


「うん・・・・」


「なら、今日はここまでだな。オレはトレーニングしてく」


「わかった・・・・・」



・・・・いらないのかな・・・・・私が教えるの・・・・・・


「タマ、元気ねーぞ?試験ヤバイのか?」


「・・・どうかな・・・・・ちょっと不安かも・・・・・・」


「お前なら心配ないって。オレを見習って堂々としてろ」


「・・・浪馬クンを見習ったら赤点になっちゃうよ・・・・」


「・・・・・ぐっ・・・・・み、見てろ。今回でオレの実力を思い知らせてやるぜ」


「・・・・あははっ・・・・楽しみにしてるよ」


「じゃあ、また月曜な」


・・・・・・月曜・・・・・・


「・・・・・あ・・・・・・うん」




そう言うと、浪馬クンは教室を出て行った。
試験勉強のためか、ほとんどのクラスメートは帰っていて、
周りには私しかいない。



「はあ・・・・・・」


大きなため息をつく。


「月曜・・・・・・か」


やっぱり・・・・明日のデートはナシ・・・か。

そりゃそうだよね・・・・試験前・・・・だもんね。
もし誘われたら・・・・即答だったんだけどな・・・・・


「せっかく、腰治ったのにな・・・・・・」


!!
べ、別にエッチなこと考えてるワケじゃないからねっ!


「・・・・・・はあ・・・・・・・」


またため息。


「浪馬クン・・・・1人で勉強できるのかな・・・・・」


もしかしたら・・・私よりも勉強できる人に教えてもらえるのかも・・・・・・
・・・・・例えば・・・・・高と・・・・・・・


・・・・・・・・・どくん。


激しい動悸が襲ってくる。
別に話したり、勉強教わったっていいはずなのに、暗い気持ちになってくる。

恋人になっても、全然消えない不安。


「明日は・・・・逢えないのかあ・・・・・」


呟くと、さらにどんよりしてくる。


「バイト・・・・行こ・・・・・・」


しょんぼり。そんな擬音がふさわしい姿で、私は学校を出た。




「はあ・・・・・・」


バイトでも、ため息ばっかりついている。
お客さんいるのに、ダメだなあ・・・・・
わかっていても、心がついていってくれない。


「たまきちゃん、元気ないね」


「あ、オーナー・・・ごめんなさいっ」


「今はお客さんがいないからいいよ。今日は試験前で、
学生が少ないからね」


「・・・すいません」


「たまきちゃんは大丈夫なのかい?私がこう言うのもなんだが、
今日バイトなんかしてて」


「・・・推薦はもらえてますし・・・・勉強は明日・・・やりますから・・・」



うん・・・・明日は・・・・・1日ヒマ・・・・・だから・・・・・


「そうか・・・その割には元気がないね。・・・・彼氏のことかい?」


「!!・・・・・そんなこと・・・・・・!!」


「彼のことになるとすぐ顔に出るから、たまきちゃんは」


「あううう・・・・・・」


「喧嘩でもしたかい?」


「ううん。それはないです。毎日とっても幸せで・・・・・」


「・・・・ごちそうさま」


「あっ・・・・・・」



や・・・やだ、人前でそんな・・・・・・


「・・・・・ま、若いうちはいろいろあるからね」


「・・・・・・・・」


「自分を素直に出して、ありのままに接するのが一番だ」


「・・・・・はい・・・・・」


「彼は、君のそんなところを昔から見てて、好きになったんだろうからね」


「・・・・・・・」


「よしっ。今日はもうあがっていいよ」


「え?でもまだ時間あります・・・・・」


「残り時間のバイト代はサービスだ。早く帰って勉強しなさい」


「・・・・すいません・・・・・・」


「たまきちゃん」


「はい」


「私から見ても・・・君と彼はお似合いだ」


「え・・・・・・」


「大丈夫だよ、2人なら」


「・・・・・・はいっ。ありがとうございます。じゃあ、お先に失礼します」




微笑むオーナーに見送られ、店を出る。


とぼとぼとした足取りは変わらない。
周りを見られなかったせいか、私の後ろから息を切らせてお店に入る
人影にも気づかなかった。




「とはいえ・・・・・・」


少し歩くと、またため息。


「さすがに・・・明日逢えないからヘコんでます、とは言えないよね・・・」


恋人になる前も逢えない日はあったけど、ハッキリ言って、
今の方がはるかに気分が重い。


「それに・・・・・」


不安が消えたわけじゃないし・・・・・・


「勉強かあ・・・・・・」


オーナーには悪いけど・・・・・明日で・・・・・いいかなあ・・・・・


浪馬クン・・・・家にいるかな・・・・・
電話してみようかな・・・・・・
でも・・・・必死に勉強してたら悪いな・・・・・

そしたら教えに行ってあげようかな・・・・・
でも・・・・自分でなんとかするって言われちゃったしな・・・・・・



「そこまで・・・・束縛できないもんね・・・・・・」



結局、頭の中が浪馬クンの中でいっぱいになって、勉強どころではなかった。



「明日・・・・どうしよ・・・・・・」



気になって、少なくとも机に向かう気力はなさそうだ・・・・・・





12月12日(日)


「はあ・・・・・・」


机に向かってはいるものの、ノートはまっさら。
開きっぱなしの問題集。

一日たっても、テンションは大暴落状態のまま。
それどころか、昨日よりひどい。


「いつもなら・・・・・楽しくてしょうがないのにな・・・・・・」


デート時間はいつもバラバラだけど、朝からニヤニヤが止まらなくて。
浪馬クンが褒めてくれた服の中から、今日はどれにしようかなって選んで。
今度こそ気づいてもらおうと、一生懸命髪をセットして。
1回も気づいてくれたことはないんだけど。


「いつもこれで時間ギリギリまでかかってるんだから、気づいてよね・・・・・・」


盛大にため息をつく。
でも、それも今日は必要ない。


「たった1日なのに・・・・・・」


時計を見ると、まだお昼にもなっていない。
浪馬クンといないと、こんなに時間過ぎるの遅いんだ・・・・・・

昨日はオーナーが気を遣ってくれたのに、結局勉強なんかしていない。
やっていたのは、携帯の着信を見ては、ため息をついて。
電話しようかと手にとっては、やっぱりやめてまたため息をつく。
それしかしていなかった。


「さすがに、少しは勉強しないとマズイよね・・・・」


そう思って再び問題集に目を通すけど、シャーペンがどうしても動かない。
30分くらいがんばったけど、


「ダメだあ・・・・・・」


そりゃ早すぎねえか、タマ・・・・・・
と浪馬クンの口調をマネして自分にツッコんでみたら、余計にヘコんだ。


「・・・・・・逢いたいなあ・・・・・・・」


ダメダメダメ!
浪馬クンだって、がんばってるんだもん!
自分でなんとかするって言ったんだもん!

自力で・・・・・・自力で・・・・・・・?


「う・・・・・・・」


考えるほど、暗い感情が浮かんでくる。


もし・・・・他に・・・・・誰か・・・・・隣にいたら・・・・・・


どうしても、ロングの女の子のことが頭に浮かんでしまう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あーーっ!ダメダメダメ!!」


昼間っから部屋にいるから、気分が重くなるんだ。
うん。気分転換しよう。気分転換。

自分の考えに耐え切れなくなった私は、試験前だということを
ムリヤリ封じ込め、外に出て行った。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


クリスマス前だけあって、町並みもお店もそんな雰囲気で溢れていた。
私とは反対に、浮かれた雰囲気に満ちている。
それに誘われたかのように、日曜の街を歩いてるのは
カップル、カップル、またカップル。


「ううう・・・・こんな気分のときに限って・・・・・・」


みんな、楽しそうに手を繋いだり、肩を組んだり。
2人のときは気づかなかったけど、こんなに多かったんだ・・・・・

自分の腕に、ほっぺに、ぬくもりを感じないのが悲しくなってくる。
最近はずーっとそうしてたからなあ・・・・・


「私も、あんな風に幸せな顔してるんだろうな・・・・・・」


自分でも、頬が緩んでいるのがハッキリわかるんだもん。
人から見たらもっと・・・・・

そう思うと、今、1人なのが、なおさら悲しくなってくる。
ここにいるのに、絶えられなくなってくる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


いたたまれなくなって、人目を避けるようにして離れていった。



とぼとぼと歩いていると、宝石店ネフェルティティの前を通りがかった。


「あ・・・・・・・・」


あの日。
あの人との最後の電話の次の日。
友達とここへ来て、浪馬クンとの昔の出来事を思い出したあの日。

もう1回、あのリングが見たくなって、フラフラと店内に入っていった。


他の商品には目もくれず、まっすぐにリングのコーナーに足を運ぶ。


「あ・・・あった・・・・・・」


まだ同じデザインのリングがあって、少し嬉しくなる。
それに魅入られながら、私は思い出を反復する。
あのやんちゃな笑顔を。
泣いていた私を笑顔にしてくれる、今と変わらない浪馬クンを。



「・・・・・・・・覚えてるわけ・・・・・・ないよね・・・・・・・」



嬉しさから一転、ため息をつく。

私だって・・・・・忘れてたんだもん。
子供の頃の、ちょっとした思い出にすぎないわけだし・・・・・・
浪馬クンにしたら、それこそたいしたことじゃないだろうし・・・・・

もし、私が浪馬クンへの気持ちを思い出さないままで、
浪馬クンが指輪を差し出したら、私はどうしたんだろう。
そのまま返したんだろうか。
冷たく、突き放したんだろうか。

「もし」を思うだけで、心臓が激しく鼓動する。
そうしてたら・・・・と思うと、ものすごく怖くなる。

浪馬クンが幼なじみじゃなくなったら・・・・・・・

・・・・・・やば、涙出そう。


本当に、今のような関係になれて、よかった。
よかったよ、浪馬クン・・・・・・



泣いたり笑ったりを繰り返す私。
その様子に店員がマンツーマンでついてるのにも気づかず、
ひたすら眺め続けていた。



コツ・・・・・



ん?


音のした方を見ると、見覚えのあるクツが見える。
あれ・・・・・・?

顔を上げる。



「あっ、浪馬クン」



「よ、よう」


浪馬クンだあ・・・・・・
なぜか驚いたような顔をした浪馬クンが、そばにいる。
それだけで、今まで考えていたうちの暗い部分だけが、
消えてなくなっていく。


「どうしたの?なんか変な顔してるよ?」


気持ちが弾んできた私は、いつもどおり軽口を叩く。


「い、いや。ちょうど声をかけようとしてたもんだから、
出鼻を挫かれたっちゅうかなんちゅうか・・・・・・」


「あははっ。ヘンなの」



心からの笑い声が、自然に出る。


「む、むぅ・・・そんなことよりタマ」


「なに?」


「いったい何を見てたんだ?お前にしてはかなり真剣な顔してたけど」


「私にしてはって何よ」



キミのこと考えてたんだぞ?
キミのこと考えてるときは、いつだって真剣なんだからね?


「まあまあ。細かいことは気にすんな。
で、いったい何を見てたんだ?」


「あ、うん。あのね、リングを見てたの」



懐かしくて、大切な思い出を思い出させてくれたリングを指差す。


「リング?ほほう。やっぱタマも女の子なんだな。
そういうのに興味があるなんて」



な、何よう。
浪馬クンが昔、くれるって言ったんだからねっ?


「もう。さっきから憎まれ口ばっかり・・・・・・
私のこと何だと思ってるの?」


「なんだって、タマはタマだろ。
で、誰かにプレゼントされたこととかあるのか?」


「え?」


「リングだよ」



むー・・・やっぱ覚えてないのかなあ・・・・・・


「リング?えーっとね、くれるって約束してくれた人はいるけど・・・・・・」


もしかしたら・・・と思って、ちょっとカマをかけてみたりする。


「あ゛・・・・・・」


え?


浪馬クンは絶句すると、みるみるうちに悲しげな顔になっていく。
あれ?あれ?何でそんなになっちゃうの?


「そ、そうか。悪かったな、イヤなこと聞いちまって」


「え?イヤなことって」



なにもイヤなことじゃないよ?
私が試すような言い方したから、イヤなことなの?

頭が混乱してワケがわからなくなる中、
浪馬クンは心底つらそうに、こう言った。



「だってほら、約束してくれたのってアイツなんだろ?」



・・・・・・・・・・・・・・・へ?



「アイツって元カレのこと?違うよ」



自分でも驚くほど、スムーズに「元カレ」という言葉が出ていた。
もう自分の中で、あの人は完全に過去の存在。
感謝、恩人、そういった感情はあるけれど、
好き「だった」、過去の存在。

もう、この人に、恋愛に対する未練なんて、まったくないんだなあ。

薄情だけど、そう思った。


今は、そして、これからも。

私にはもう、目の前にいる、このドンカンで、口が悪くて、
でもいつも見守っていてくれる、この人しか見えないから。


・・・・・・・・・・・・・・・・ね、浪馬クン?



「なぬっ!?別のヤツなのか?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オイ。



ああ、こりゃ全然覚えてないわ・・・・・・


「うん・・・あっ。でもね、ずいぶん昔のことだから
きっと本人も忘れちゃってるんじゃないかな」



覚えてたらその顔はないよね・・・・・


「忘れてるだと?そんな大事なことをか?」


大げさなくらいの反応。
キミのこと!キーミーのーこーとー!


「うん。たぶんね」


「うーん・・・そいつはずいぶんひどいヤツだな」



腕を組んで唸っている。
きっと、「オレなら絶対そんなことしない」とか思ってるんだろうな。
その手に取るような様子に、私は思わずおかしくなる。
昔っから抜けてるからなあ。


「あははっ。そんなことないよ。すごくいいヤツだよ」


「でもよ・・・・・・」



・・・・・私を心配してくれてる目。
見ていると、吸い込まれそうになる。
何でも、言っちゃいそうになる。


・・・・・・・・・でも。
思い出して欲しいけど、そんな事言えるワケないし。
私だって・・・忘れてたんだから。



「いいからいいから。それ以上言うと、思い出したとき辛くなるよ?」



ヒントだけ出して、これ以上は言わないことにした。

多分、思い出すことはないだろう。
きっと、あのときの言葉は、泣きわめいていた私を慰めるための
幼なじみとしての、言葉に違いないから。
今と同じで、優しかった・・・・だけだから。

今も、あの時と変わらない、
ううん、もっともっといっぱい優しさをもらっているから。

だから、いいんだ。



「へ?」


「じゃ、あんまり長話してるとお店の人に迷惑だから、私はもう行くね」



ずっと話してたいけど、結構長く話し込んじゃったしね。
それに、逢えないと思っていた、浪馬クンに逢えた。
服や髪型を見ても、心配していたことはないみたい。
だから、今日はもう充分っ。


「おう。またな、タマ」


「うん」



店に入ったときとは雲泥の差の、晴れ晴れとした気持ち。
まるで、今日の青空みたい。
そんなハタから見たら赤面モノのセリフも自然に言えちゃうくらい、
浮かれ気分で家までの道を歩いていった。

うん、テスト勉強もがんばれそうだっ♪





戻ってから、テスト勉強が思い通りに進んでいく。
これも・・・・・愛の力?きゃー☆
テンションが高すぎるのはどうかと思うけど、いいんだっ。
よーし、これなら明日も大丈夫そうだぞー!


「となると・・・後は浪馬クン・・・・・・か」


ほんっっっっっとうに大丈夫なのかなあ・・・・・・

やっぱり、せめて電話でもしてみようかなあ・・・
でもなあ・・・・・・



♪〜〜〜



あれ?この着メロ・・・・・ろ、浪馬クンっ!?
うわっ!うわわっ!早く取らなきゃ!
まさか向こうからくるなんて・・・・
あわわっ、アセって携帯が開けないよー!!



「も、もしもし?」


ようやく開いたあせりと浪馬クンの声を聞ける嬉しさで、
私はいきなり舞い上がってしまう。


「はっはは。なにつっかえてんだよ」


「う、うるさいわね。用があるならさっさと話しなさいよ」



まさか浪馬クンからかかってくるなんて思ってなかったんだもん!
人の気も知らないでさ・・・


「お、おう」


電話だって二人きりなんだから、察してよバカっ。


「もう・・・・・・」


「ところで、勉強の調子はどうだ?」


「んー・・・・まあまあね。浪馬クンは?」


「はっはは。・・・・・・・裏切り者」


「ダメじゃん!」


「う・・・・・・」


「雨堂も雨堂で、『たまきちゃんに大見得切ったんなら自分でやれ』とよ。
ったく幼なじみ甲斐のねえやつだぜ」


「だから私が教えてあげるって言ったじゃない」


「いつもお前にばっかり頼ってるからな」


「・・・・・・頼ってよ」


「へ?」


「な、なんでもないっ」



普段頼りっぱなしなんだから・・・・こんなときくらい、頼ってよ・・・・・・


「そ、それにしてもよ。なんでこんな大変な時にテストなんだろうな」


「卒業試験も兼ねてるからじゃない?」


「ったく、全員卒業させてくれりゃいいのによ。
そしたら教頭の血圧も元に戻るってもんだ」


「それ、ほとんどは浪馬クンのせいだよ・・・・・・」


「ば、バカ、そんなこたねえよ。昨日だってタマが帰ったあと・・・・・・」



いつのまにか、テストの話から離れていた。
普段話しているような、どーでもいい話。
それでも、今日1日分の寂しさを取り戻そうと、私は一生懸命聞いて、話した。
浪馬クンも、いつもよりも更にテンションが高かった。

浪馬クンも・・・少しは寂しがってくれてたのかな・・・・・・

そう思うと、勝手に笑い声が漏れてしまって、
「そこはまだ笑うところじゃねーぞ、タマ」と何回かダメ出しされてしまった。
漫談やってるわけじゃないよぉ・・・・・・


「・・・・・・げっ!もうこんな時間か」


「え?・・・・・・・ウソ」


「やべえ・・・・・まだ全然終わってねえ」


「私も・・・・・・」


「こうなったら逃げるか、二人で。愛の逃避行ってヤツだ」


「えっ・・・・・・」



浪馬クンと・・・・・・2人で?それって・・・・・・
一緒に・・・・・暮らす・・・・・・・・?
冗談だよね?・・・・・でも・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・私は・・・・・・・・いいよ・・・・・・」


「へ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「ば・・・・・・・バカ。そこはツッコむところだろ」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・タマ?」


あ・・・何かしょんぼりしちゃった・・・・・


「わ・・・わかってるわよ!バカぁ!」


「お・・・怒るなよ」


「怒ってないもん!フンっだ!」


「タマ・・・・・・」



ブーたれる私。


「・・・・・・・・・もう少し・・・・・・待ってくれよ・・・・・・・」


「・・・・・・え?」


「な、何でもねえよ。はっはは・・・・・・」



とっても嬉しいことかもしれないけど・・・・・・
そんなに小さい声じゃ聞こえないよ・・・・


「な・・・・なんだあ?そんなにオレと離れたくねーのかよ」


「う・・・・・そ、そんなことないもん!」


「そっかそっか」


「な、何よぉ」



すっかり見透かされちゃってるよ・・・
・・・・・結構言っちゃってるもんなあ・・・・・・



「なあなあ、タマ」


「な、なに?」



「お前、オレのことどう思ってる?」




!!!!!



いきなりストレートな質問をされ、吐く息がのどに詰まるような感覚。
そ・・・・そんなこと・・・・・決まってるじゃない・・・・・


私と・・・・・浪馬クンは・・・・・・・私たちは・・・・・・



「ど、どうって、ただの幼馴染・・・・・・」



「へ!?」




話の途中なのに、思いっきり驚く浪馬クン。
ち・・・ちょっと待ってよ・・・・・・まだ続き・・・・あるんだから。



「には戻れないよね。もう・・・・・・」



お、おいおい・・・・・・とでも言いたげに、浪馬クンがため息をつく。
てゆーか言ってる。


迷惑じゃ・・・・・・・ないよね?
幼なじみなだけじゃなくて・・・・・・恋人・・・・・だよね?
これからも・・・・・・



「ずっと一緒だからね、浪馬クン」



どんなに憎まれ口を叩いても、これが私の本心だから。
もう、キミしか見えないから。
だから、もし私を、恋人だと思ってくれるんなら。
ずっと、一緒にいてください。



「・・・・・・」



しばらくの間、沈黙が続いた。
浪馬クンはYESもNOも言わず、黙っていた。
でも、私には、浪馬クンが微笑んでくれているように感じた。
昔から一緒だったからわかる、2人の表情。
カン違いじゃ・・・・ないと思う。



「それじゃあ・・・・・・」



この空間にいつまでもいたかったけど、
まだ、お互いにやんなきゃならないことがあるから。



「ん?」



その声はすっごく穏やかで、優しかった。
やっぱり、カン違いじゃないよね。



「いつまでもこうしているわけにもいかないし、
そろそろ電話・・・・・・切るね」




まだまだ話したりないけど・・・・また、明日ね。



「うむ。じゃあ、またな。タマ」



私も、浪馬クンに負けないくらい優しい気持ちで、



「うん」



静かに通話ボタンを押した。



ふう・・・・・


改めて机の上を見てみる。

勉強はまだまだやらなきゃいけないのに、憂鬱な気分が全くしない。
今の私なら、できそうな気がする。
そんな活力を、今の電話がくれた。


浪馬クンも、同じ気持ちになってくれたかな・・・・・・


クスッと笑うと、シャーペンを握る。
さっきよりも、しっくりと手になじむ。



「一緒に・・・・ガンバろーね、浪馬クンっ」



そう窓に向かって囁くと、私は問題集へと手を伸ばした。





12月17日(金)


「浪馬クン浪馬クンっ」


最終教科の試験が帰ってくると、私は真っ先に浪馬クンの元へと向かう。

試験中も、休み時間のたびに浪馬クンの席に行って、いろいろと話していた。
私がテストの出来に落ち込んだり、
浪馬クンが「来年もこの制服か・・・」とあきらめモードで呟いたり。
それでもどこか笑顔で、二人とも話していた。

放課後はさすがにデートしたりはしなかったけど、電話で調子を確認しあったり、
わからないところを教えたり(私が浪馬クンに教えるのみ)。
結局世間話で勉強が進まなかったりしたけど、少なくとも励ましあって、
元気になったから、マイナスにはなっていなかったと思う。


「全部・・・・・帰ってきたね」


「・・・・・・・ああ」


「・・・・・・・・・どう・・・・・・・だった?」



ガンバってたよね。大丈夫・・・・・だよね。


「・・・・・まあ待て。まずはタマから聞かせてもらおうか」


「えー?じらさないでよー」


「お楽しみは最後にってヤツだ。メシと同じだな」


「普段は最初に食べるくせに・・・・・・」



ブツブツ言いながら、私は答案用紙を広げる。


「おおっ!」


「そ、そんなには悪くないでしょっ」



急に、自分の目の前を両腕で覆いだす浪馬クン。


「ど・・・・・どうしたの?」


「ま・・・・・」


「ま?」


「眩しい・・・・今のお前はオレには眩しすぎる・・・・・・・」



スパーーーーーーーン!!



「いいからとっととキミのを見せなさいっ!!」


「ハイ・・・・・・」



まったく・・・こっちはキミが卒業できるのか心配してるっていうのに・・・・・


浪馬クンが、しぶしぶ答案を出す。
なぜか、その手つきが異様に遅い。


「浪馬クン!?なにモタモタ・・・・・・?」


え・・・・・・


浪馬クンの表情は、ものすごく、悲しげだった。
血が出そうなくらい下唇を噛みしめて、何かに耐えているような表情だった。


「浪馬・・・・・・クン・・・・・・・・・?」


「これがオレの・・・・・・実力だってこった・・・・・・」


「・・・・・・ウソ・・・・・・・・」


まさか・・・・・・まさか・・・・・・・・・


足が、手が、身体全体が震えてくる。
ヤダ・・・・・ヤダよ・・・・・・・・・
そんなの・・・・・ヤダよ・・・・・・・・・


「浪馬クン・・・・・・」


「・・・・・・いいぜ、覚悟はできた。見て・・・・・やってくれ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」




意を決した私は、答案を手に取る。

1教科1教科、丹念に確認していく。
平均点と、赤点とを、照らし合わせていく。
もし、間違って×がついていたときのために、解答も確認していく。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とん。



全てが終わった私は、浪馬クンの瞳を見つめる。


「浪馬クン・・・・・・・・・?」


「くっ・・・・・・・・・・・・・・・・」



顔を伏せ、一声を上げる。


「ね・・・・・・・・ねえ・・・・・・・・?これって・・・・・・・・・・」


「見ての通りだ・・・・・・・くっ・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「くっくっくっ・・・・・・・」




浪馬クンの声のトーンが変わっていく。



「ろ・・・・浪馬クン・・・・・・・・・・・」



顔を上げると、ニヤアっと、口の端を吊り上げた。



「見ての通りだ。全教科平均点。当然赤点ナシ。
そして、めでたく単位取得、だ」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「喜べタマ吉・・・・・・・タマ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



下を向いて、両手をギュっと握り締めて、震えだす私。


「あ・・・・・・あれ?やりすぎちまったか?」


「・・・・・・・・・・・・」


「ビックリさせてやろうと思っただけなんだが・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・タマさん?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



わなわなわな・・・・・・・


「う・・・・・・」


ガタッ・・・・・・


立ち上がった私は、浪馬クンのそばに近づく。



「・・・・ま、まあ・・・・・・タマが怒るかもとは予測していたんだが・・・・
どうしてもやりたくなってな・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・よし、さっきも言ったとおり、覚悟は出来てる。
さあ、そのいつのまにか常備したメガホンで、力の限りオレを・・・・・・」




「やったあああああああああああああああ!!!!」





私は、浪馬クンに思いっきり抱きついた。



「タマっ!?」


「赤点ナシなんだよねっ!?補習もないんだよねっ!?」


「あ、ああ」


「このままいけば、一緒に卒業できるんだよねっ!!」


「あ、ああ」



「よかった・・・・・よかったよぉ・・・・・・・」




涙が出ていたけど、拭く余裕なんてなかった。
浪馬クンと一緒に、卒業できる。
それが、嬉しくて。



「タマ・・・・・・」



浪馬クンも、そっと腕をまわしてくれた。

もっと嬉しくなって、さらに腕に力がこもった。



しばらくの間、私たちは抱き合っていた。
お互いを想いながら、強く、強く。





まだ授業の時間が終わっていない、クラス全員が勢揃いした教室で。





「ねえ・・・あの二人、すごくない?」

「でも、柴門さんって織屋君に対してはああじゃない?
体育祭のリレーで1位になったときも抱きついてたし」

「そうだけど、今回は長すぎない?腕、まわってるし」


「・・・・・やっぱりあの二人、つきあってんのかな?」

「私、春に柴門さんに聞いてみたけど、爆笑の末に一蹴されたわよ」

「・・・・今のあれを見てもそう思う?」

「・・・・・・・思わない・・・・・・」


「オイ、なんだよアレ!どうなってんだよ!」

「俺に聞くなよ!雨堂!お前織屋の友達だろ!
あの2人どうなってんだよ!つきあってんのか!?」

「くっくっく・・・・・さあ、な」


「わー、たまきだいたーん」

「相変わらず、織屋君が絡むと周りが見えなくなるね」

「織屋君が留年したら、私も残る!とか言いそうだったしねぇ」

「あー、今のたまきならありえる」

「週末はまた盛り上がりそうだなぁ。そろそろ腰も慣れてくるころかなぁ」

「盛り上がる?腰?」

「いーや、こっちの話だよぉ」

「?」



「あのー・・・大変申し訳ないが・・・抱擁は授業が終わるまで待ってくれんか?」




「「!!!???」」



気づくと、クラスメイトのすべての視線が、私たちに釘付けだった。


「・・・・・・俺たちは渦中の芸能人か?」


「バカっ」



軽く頭をはたくと、2人で何事もなかったかのように席に着く。
・・・・・・・・が、それで済むわけもなく。



「織屋・・・・成長したなあ・・・先生はうらやま・・・嬉しいぞ」


「し、志藤っ!何気にグチるなっ!」


「まあ熱くなるな。お前らはその・・・・・そうなんだろ?」



「「 違 い ま す っ !!」」




2人同時にハモる。



「・・・・・」



「「あ・・・・・・・」」




また完璧に同時発声してしまい、顔を真っ赤にして俯く。



「・・・・・・幼なじみでそのうえ・・・・・・か。くうっ・・・なんて・・・・・」


「泣くなっ!本当に生徒指導かアンタっ!?」



浪馬クン・・・・これ以上の注目は・・・・・・・


「うう・・・・ま、まあ俺からは何も言わん。ただ、覚悟しとくんだな」


と、先生が周りを見回す。

そこには、クラスの皆の好奇に満ちた視線が・・・・・・



「授業が終わったら・・・・逃げたほうがよさそう・・・・・・だね」



浪馬クンを見ると、深く頷いていた。

私はちょっと嬉しくなって、大きく頷いた。





12月19日(日)

今日は冬休みの初日。
待ちに待った、浪馬クンとのデート。
いつもだけど、ドキドキしちゃう。

それにしても、おとといの事は・・・・・・

あの後2人で即逃げ帰った私たち。
その分昨日の学校でなんて言われるか不安だったけど、
浪馬クンってば


「よう、タマ」


いきなり普通だもんなあ・・・・・
私はうまく話せなくてモジモジしてたっていうのに。

学校でデートに誘ってくるし。
誰か聞いてたらどうすんのよ・・・・・・


「なあ、タマ」

「ん?な、何?」

「お前、明日予定空いてるか?」

「明日?あ、うん。全然空いてる」

「じゃあ、どっか遊びに行こうぜって行ったら・・・・・・」

「もちろん、OKだよ」



私も即OKだったけど。
しかも、声大きかったような気もするけど・・・・・・

あれも、「気にするな」っていう浪馬クンのメッセージなのかなあ。
・・・・・ただの天然だよね・・・・・
浪馬クンらしいけど・・・・・あははっ。


「・・・・・久々だなあ・・・・・・」


1週間空いただけなのに、すっごく長かった気がする。
その分、とっても楽しいデートになるだろうな。
約束どおり、ちゃんとお弁当も作ったし。


「お弁当・・・喜んでくれるかなあ・・・・・・」


浪馬クンって何でも食べるから、好みがわかんないんだよね。
試験中の電話のときに1回聞いてみたけど、



「浪馬クン、食べ物は何が好き?」


「なんでも」


「や、何でもって言われても。それじゃお弁当作りにくい・・・・・・」


「ああ、あの約束か」


「そ。だから、何入れればいいかなーって」


「んー・・・っつっても、とにかくまともなもんであれば」


「むっ。ちゃんとしたの作れるもん!」


「そりゃ知ってる。お前が作ったんであれば、何でもうまいから任せるぜ」


「・・・・・・・・さりげなくそんな嬉しいことを・・・・・」


「ん?」


「何でもないよっ。じゃ、適当に選んじゃうからね?」


「ああ、そうしてくれ・・・・・あ、そうだ」


「何?リクエスト?」


「デザートはお前で決まりな」


「は?」


「だから、食後はお前をおいしくいただくと・・・・・」


「・・・・・・!!」


「これだけは決定事項だ」


「バカーーーーーーーーーッ!!さっさと勉強しろっ!!」


「お前からかけてきたんじゃねえか・・・・・・」




・・・・・思い出したら頭痛くなってきた・・・・・・

でも、おいしいって言ってくれるといいなあ・・・・・
それだけで、頑張って作った甲斐があるもんね。
どれがよかったか教えてくれれば、次からの参考になるし。


で、その後は・・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



・・・・・やだ、まだ逢ってもいないのに違うドキドキがっ。
もー!浪馬クンがあんなこと言うからだよ!

ただでさえ・・今日から冬休みだし・・・・
クリスマスとか・・・・お正月とか・・・・・
イベントがたくさんあるっていうのに・・・・・・

そしたら・・・・・そしたら・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・ぽーっ・・・・・・」



わーわーっ!何顔真っ赤にしてんの私!
ダメ!エッチな想像は今はまだナシっ!
って今だけじゃなくてっ!



「静まれ静まれ・・・・・ってうわあっ!」



また待ち合わせギリギリ!
あーん、何でいつもこうなんだろ!





遊園地のデートは、相変わらず話しまくり。
順番待ちの間も、次の乗り物を選んでいるときも、
ひたすら喋り続ける、いつもどおりの私たち。
この前ここに来たときもそうだったなあ・・・・・・

違うのは、この前は手を繋ぐのに必死だったのに、
今は腕を組んでいること。

アトラクションに乗ってるとき以外は、ずーっと絡めていた。
今日は荷物を持っていたので、片手しかできなかったけど。
ホントは両手でしたかったけど、今日ばっかりは・・・ね。



「なあ、その弁当、持ってやろうか?」


「だめー」


「何でだよ?そうすりゃいつもどおりに腕組めるだろ?」


「う・・・・で、でもダメっ」


「だから何でだよ?」


「・・・・・浪馬クン、いつ投げるかわかんないから」


「あ・・・・・」


「前科あるもんねー」


「あ、あれは知んなかったからよ・・・・・」


「知らなくっても、人のカバンは投げるもんじゃないの!」


「・・・・・・・へいへい」




せっかくちゃんと作ったんだから、今回は偏っちゃダメなのっ。
苦労してるんだから・・・・・





そして、更にいくつか乗った後、念願のお昼。



「じゃーん!やってきましたお弁当ターイム!」


「テンション高いなタマ・・・・」


「普段の浪馬クンが伝染ってるだけ!さあ、私のお弁当、とくとご覧あれ!」


「あ、ああ・・・・・・」


私のテンションに多少ヒキながら、お弁当箱を開ける。
ちょっと不安だから、ごまかしてるだけなんだけど・・・・・・


「・・・・・・・おおっ」


「へっへっへ〜。どうだっ」


「すげえ・・・・・」


「さ、食べてみて食べてみてっ」


「うむ。パクリ」



どきどき・・・・・・・・・


「うっ、これは・・・・・!!」


「な・・・・・・なにかまずかった?」


失敗・・・・しちゃった?そんなあ・・・・・・


「汁が・・・・・」


「え?」


「おいしいお汁がピュピュって出てくる!」


「・・・・・・・・は?」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「スマン・・・・・・もう打ち切られたからな・・・・・」


「さっぱりわかんないよ・・・・で、どう・・・・・かな?」


「決まってるじゃねーか、うまいぞ」


「ホント?」


「ああ、前より腕上がったかもな」



よかったあ・・・・・・
まずいって言われたらどうしようかと思ったよ・・・・・・


「ふうううううう・・・・・力抜けた〜〜〜」


「大丈夫か?」


「うん。でもよかった。おいしいって言ってくれて」



にっこり。


「そ・・・・・そうか」


「あれ?何か顔赤くない?辛かった?」


「い、いや、そうじゃない。気にすんな」



どうしたのかなあ・・・・・・


「・・・・それにしても、人に料理作んのって大変だよな」


「そ?」


「だってよ。味付けの好みとかあるじゃねーか」


「そうかな?私は手料理って浪馬クンにしか作ったことないから、
あんまり気にしたこともないけどな」


「・・・・・・・へ?」



いきなり言葉が止まり、プチトマトを落とす浪馬クン。


「あー、もったいないなあ」


「・・・・・オレだけなのか?」


「ん?」


「メシ・・・つくったの・・・・・・」


「そうだけど・・・・・なんで?」



プチトマトを拾い上げながら、普通に答える私。
?何かおかしいかな?


「・・・・・・・アイツには?」


「え?」


「あ・・・・・・な、なんでもねえ。なんでもねーから」


「・・・?」


アイツって・・・・・・・・・・・・・



「・・・・・・あ」



2人して、沈黙してしまった。
私はもう・・・・だけど、浪馬クンは・・・・まだ・・・・・・



「・・・・・・・・・・・キミだけだよ」



「・・・・」


「こんなことするの・・・・・・浪馬クン・・・・・・だけだから」


「タマ・・・・・」


「これからも・・・・・ずっと・・・・ずーっと・・・・・・ね」




悲しさと、浪馬クンの心がちょっと見えた嬉しさとが混ざって、
不思議な気分になった。
やっぱり、影はいつまでも消えないのかな・・・・
浪馬クンっていう、光がある限り・・・・・・


浪馬クンを見ると、やっぱり複雑な顔で。
でも、私が見つめると、赤い顔をしてにっこりと笑った。



「さー。メシも食ったし、また乗りまくりますか」


「ち、ちょっと・・・・話の続きは?」


「あ?何の話だ?」


「何の話って・・・・・・」


「ホラホラ、早く片付けようぜ」


「もう・・・・・・」



思いっきりはぐらかされたけど、しぶしぶ片付ける。


「忘れ物ないか?」


「うん」


「じゃあ、荷物はオレが持ってやる」


そう言うと、ムリヤリに荷物をひったくった。


「いいって。私が持つから・・・」


「そのかわりに、いつもどおりに・・・・してくれ」


「え?」


「腕・・・・・・」


「・・・・・・あ・・・・・・・」



気づいた私は、さっきまで荷物を持っていたもう一方の腕を、
一緒に浪馬クンの腕に絡みつける。


「これで・・・・・いい?」


「ああ」



いつもの、私たちの体勢。
改めて意識すると、ドキドキしてくる。


「・・・・・・行くか」


「・・・・・・うん」



今の私たち・・・・周りから見ても・・・・・カップルだよね。
友達じゃ・・・・・ないよね。



「・・・・・タマ」


「・・・・・ん?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとな」



「浪馬クン・・・・・・」




お弁当のことなのか、さっきの話のことなのかは、わからない。
でも、その言葉で、浪馬クンの優しい顔で、
さっきの悲しさなんかとっくに吹き飛んで、どうでもよくなっちゃった。

今は、浪馬クンのそばにいる。
浪馬クンに、触れている。
それで、幸せだから。



そう思ったら、ドキドキがどんどん大きくなっていく。
浪馬クンの腕に、伝わったりしてないかな。
考えると、ますます大きくなってくる。


浪馬クンも同じなのか、少しずつ口数が減ってくる。
アトラクションも、段々と乗る気がなくなってくる。
乗りまくると言ってたのに、座ってる時間の方が多くなっていく。


日が沈んでいくたびに、触れている意識がどんどん高まってくる。
そして、幸せな気分をもっと味わいたくなっていく。



浪馬クンに・・・・・もっと・・・・・・触れたい・・・・・・・・・・



浪馬クンの腕も、背中も、胸も、そして・・・・・
浪馬クンの、全部に触れたい。
お昼の出来事がスイッチになってしまったのかもしれない。
先週、デートできなかったのもあるかもしれない。


浪馬クン・・・・・好き・・・・・・大好き・・・・・・・・


そう心の中で呟くと、触れたいという気持ちがもっと強くなる。
絡めた腕に、力が入る。


「タマ・・・・・」


「・・・・・・ん?」


「そろそろ・・・・・出るか」


「うん」



即答で頷く。
今日はこの後パレードがあったハズだけど、とてもそれまで待てなかった。
早く・・・・早く、浪馬クンに・・・・・
浪馬クンも、きっと同じだよね?
私だけがエッチなんじゃ、ないよね?





帰りの電車の中では、この前と同じように口を開かなかった。
口を開くと、何を言っちゃうかわからなかったから。
できれば、このセリフは浪馬クンだけに聞いてほしいから。
私がこの先も浪馬クンにしか言わない、心と身体が望んでいる言葉を。

浪馬クンも、何も言おうとしない。
きっと、私と同じ。


電車が揺れるたびに、ワザと強めにしがみつく。
浪馬クンも、ギュッと抱きしめてくれる。

浪馬クンの手が、服の上からの感触が、
昔から慣れ親しんだ、浪馬クンのにおいが。
私を高めていく。
一刻も早く駅に着くことを、願って。



駅に着くと、私は浪馬クンの言葉を待ちわびる。
早く、浪馬クンに、私に・・・・・・
目がウルウルして、止まらない。


浪馬クンはこっちを向くと、私を見つめる。
この前と同じ・・・いや、もっと熱い目。

もう、わかっているけれど。
浪馬クンが言ってくれるのが聞きたくて、私も見つめ返してしまう。



早く・・・・私は、もう・・・・・・・



そんな気持ちを察してくれたのか、
浪馬クンは、この前より見つめあう時間を短くして、
私が今、一番聞きたかった言葉を、ハッキリと言ってくれた。





「オレ、またお前と二人きりになりたいんだ」





――――――――――――――――――――――――――――――――





「今日で3回目、だね」


私と浪馬クンの、新しい道のりを確認するように、そう言った。
恋人になってからの、まだほんのちょっとの道。
これからも、ずっと一緒に歩き続けていきたい、そんな道。


「そういえばそうだな」


浪馬クンはそう返してくれたけど、さっきまでの勢いはどこへやら。
自分の部屋なのにキョロキョロとして、落ち着きがない。
きっと、これからを想像して、興奮してるんだろうな。


だったら、私と同じだね。


「ふふっ・・・・・・」


思わず笑ってしまった。


「え?」


過剰なほど、ビックリする浪馬クン。


「浪馬クン、興奮してるでしょ」


「・・・・・・分かるのか?」



わかるよ。



「だってほら、私もそうだから」



私は、浪馬クンの手を取る。
普段よりも、熱くなっている、大きな手。
私の手も熱くなっているの、伝わるかな。


私だって、こんなになってるんだよ。
私も、キミと同じ気持ちなんだよ。


想いを込めて、その大きな手をそっと、私の胸に当てる。
驚く浪馬クンの手を逃がさないように、両手でそっと抱きしめて、押さえる。



どっくん・・・どっくん・・・・・・どっくん・・・・・・・



今まで浪馬クンのことを考えているときに、何回も聞いたこの音。
家の前で抱き合ったときも聞こえたと思うけど、それよりもずっと大きい。

今は、二人っきりだから。
他の誰にも、自分にも遠慮することのない、二人だけの空間だから。



「すごくドキドキ、してるでしょ?」



キミのことを考えると、私はいつもこうなっちゃうんだよ。
今まで、こんな風になったことはないんだよ。
あの人の前でも・・・・・



「あ、ああ」



お願いだから。
私は、もうこの気持ちを忘れることなんて、ないから。
だから。



「私のこと、離さないでね」



手を、首の後ろに回す。
浪馬クンも、私の胸から手を離して、受け止めてくれる。
同時に、抱き合った。



どっくん・・・どっくん・・・・・・どっくん・・・・・・・



浪馬クンのおっきな心臓の音が、ハッキリ聞こえてきた。





「あっあっ。い、いい・・・・・・いいよ」



浪馬クンが、私の一番エッチな所を舐めている。



「こうか?ここが、いいか?」



わざとらしい口調で、舌先で、真ん中で、刺激される。
初めてよりこの前、この前より今の方が・・・・・・感じる。
回数を重ねるごとに、私の新しいポイントが知らされていく。
自分でもわからなかった場所が、浪馬クンによって、
開発・・・・・されていく。



「う、うん。そこを舌でされると・・・・・ひゃうっ!い、いいっ。すごく感じる」



恥ずかしさも忘れて、浪馬クンの愛撫に答える。
今までの感じるところも、新しいところも、全部・・・・ぜんぶ、
舐めて・・・・・・ほしい・・・・・・・



「あむっ。ん、れろっ・・・・・」



やぁ・・・・わざと、声に、出さないでよぉ・・・・・・っ
こんなに・・・・気持ちいいのに・・・・・・・
声まで・・・・・・浪馬クンのエッチな声まで・・・・聞こえちゃったら・・・・・!



「あ、あ、あ、あ、あ」



連続で刺激され、それに合わせて声を上げてしまう。
もう、私の気持ちいいところが、全部わかっちゃってるみたいに。

ふあっ!ふああ・・・・・・・

それでも浪馬クンの舌は、新しい場所を見つけ出す。
浪馬クンは、いったいどれだけ私をエッチにしたら気が済むんだろう。
どれだけ・・・・乱れたら・・・・・・

そう思うと、もっと、刺激に敏感になっていく。



もっと・・・・・もっとぉ・・・・・・・



「ふぅ。それにしてもお前、相変わらずよく濡れるよな」



呼吸が続かなくなったのか、一旦口を離した浪馬クンが
いきなりヘンなことを言い出した。



「そ、そうかな?」



比べたことなんてないから・・・わかんないよ・・・・・・
そんなに多いのかな・・・・・・
でも・・・一人の・・・・ときは・・・・こんなには・・・・・
やっぱり、それは相手がキミだから・・・・・・



「ああ、まるでションベン漏らしたみたいだぜ」



!!何言い出すのよ!
そんなに勢いよくないもん!!



「ちょ、ちょっと変なこと――――」



びっくんっ!!



!!!!!



最後まで言う前に浪馬クンが、私の・・・・・に吸い付いた。
そのまま、強めに吸い上げていく。


ひあああっ!!そんな・・・・・ひっぱられる・・・・・っ!
あそこも・・・・・ク・・・・リ・・・・も・・・・・・・!
剥けちゃって・・・・・・・ひああああ!!



「じゅるるるる〜」



わ・・・・私の・・・・・・飲んでる・・・・・・!
音・・・・・たてて・・・・・・のんで・・・・・・るっ!!
やあ・・・・刺激・・・・・・・つよ・・・・・・・はうう・・・・・・・



「あうぅぅぅっ。きゅ、急にそんな・・・・・・はぁうぅぅ」



息ができなくなるくらいの快楽に襲われながら、なんとか声を絞り出す。



やだ・・・・やだ・・・・・もう・・・・・・・っ!
止まんない・・・・・・止まんないよぉ・・・・・っ!
そんなにされたら・・・・・・もう・・・・・・・欲しく・・・・・・・
まだ・・・・浪馬クンに・・・・・なんにも・・・・してない・・・・・のに・・・・・・・・!!



私の感じように満足したのか、浪馬クンは口を離した。
肌と口との間に引いた糸が、愛撫の強さと感じすぎた私を証明している。
それが恥ずかしくて、嬉しくて。



「・・・・・・・・ふぅ。なかなかの美味」



そ、そんな感想はいいよぅ・・・・・・
私だって・・・キミのしてあげたとき・・・何にも言わなかったのに・・・
うう・・・なんか・・・・・



「も、もう・・・・・・」




そう言うのが精一杯で、頭の中が・・・・・・
あ・・・・・また・・・・・・垂れて・・・・・・


浪馬クン・・・・・何にもしてあげてないけど・・・・・
私・・・・・私・・・・・・・


自分から・・・・・言った方が・・・・・いいかなあ・・・・・・
もう・・・・ガマンが・・・・・・



「なあ、タマ」



「え?」




いきなり呼ばれて、ヘンな声を上げてしまう。



「オレそろそろ入れたいんだけど・・・・・いいか?」



あ・・・・・・


私と同じこと・・・・・・・
やっぱり、私と・・・・・・つながってるんだね・・・・・・



「う、うん。私もそろそろかなって思ってた」



お互いの気持ちが同じだとわかって、嬉しくなる。
エッチの最中なのに、浪馬クンとだとこんな風にもなれちゃうんだ・・・・



「はっはは。やっぱオレたち、身体の相性もバッチリみたいだな」



「そうなのかな?」




「も」っていう言葉を当然のように言う浪馬クン。
心の相性も、バッチリだって思ってくれてるのかな。
そうだったら・・・私と同じように思ってくれるんだったら・・・・・
本当に、通じ合ってるって・・・・・
そう思っていいの?信じちゃうよ・・・・浪馬クン・・・・・・



「多分な。じゃ、今日は違う体位で・・・・・・」



そう言うと、いきなり浪馬クンは私の隣に寝転んだ。
足を開く準備をしてた私は、その行動にビックリ。
浪馬クンの手が、私の身体に伸びてくる。



「え?ちょ、ちょっといったい何を――きゃっ!」



私を横にした浪馬クンは、背後にぴったりとくっつく。
浪馬クンの心臓の音が、私の背中に伝わってくる。


こんなに・・・・ドキドキして・・・・・・それに・・・・・
あ・・・・・熱い・・・・・・・


横にした私の左足を支え、大きく持ち上げる。
・・・・・やあっ・・・・・・何・・・・するつもり・・・・・・?


ちょっとした不安と、それを大きく上回る期待。
だって、浪馬クンなら・・・絶対大丈夫だから。
私の全部を・・・・任せられる・・・・・から・・・・・・・・



「こうやって横にしてから・・・ぐいっと」



ずっ・・・・・



え・・・・・?そんな・・・・・ところから・・・・・・・





ずにゅうっ!!





「あっ、あぁぁっ!」





私の背後から、浪馬クンが一気に挿ってくる。


や・・・・そんな・・・・・・・後ろから・・・・・・なのに・・・・・・・!
こんなに・・・・・ふか・・・・・く・・・・・・・・・・あはあっ!
違う・・・・・違うよ・・・・・・・・・!
いつもと・・・・・・・・全然・・・・・・・・・っ!!



また、今まで私が知らなかったところを刺激される。
頭の中が白くなっていくのが、いつもより早い。
身体の中全部の神経が、繋がっているところに集中していく。


まだ・・・・挿っただけなのに・・・・・・・
このままでも・・・・・・すぐ・・・・・・・イッ・・・・・・ちゃ・・・・・!!



「ど、どうだタマ?」



「う、うん。なんかいつもと当たる角度が違う」




もう、頭に出てきた言葉をそのまま言うことしかできない。



「そうか・・・・じゃあ、動くぞ?」



動いて・・・・・・怖いけど・・・・・・動いて・・・・・・!
どうなっちゃうのか・・・・・私に・・・・・・・おしえ・・・て・・・・・・!!




「うん・・・・・・あっあっ、あっ、ああぁぁ」




ふわあああっ・・・・・・ああっ・・・・・・
逆が・・・・・普段と逆が・・・・・・・・こすれる・・・・・・・・・っ!!

やああっ・・・・・・今度は・・・・・・・こっちがっ・・・・・・・・!!




不安定な体勢からか、突かれるたびに、違うところに当たってくる。
あそこも、ここも、浪馬クンが触れたどの場所も、
全部が気持ちいい場所になって、私を痺れさせていく。

浪馬クンが触れたところは、全部、気持ちいい。
浪馬クンが触れたところは、全部、浪馬クンのもの。





私は、浪馬クンの、もの。





「ふあっ・・・・・・?」



浪馬クンに力が入り、より深く背中を密着させる。
挿ったままの位置がまた変わり、ゾクッ・・・・・と震える。

浪馬クンの顔が、私に近づいてくる。
普段よりも荒い息が、私の首筋に当たって・・・・・



「・・・・・・・ふあああんっ!」



や・・・・・首まで・・・・・・こんなにっ・・・・・・!
動いてる・・・・から?挿って・・・・・る・・・・・からっ?

ううん・・・・きっと・・・・・・何にもしてなくても・・・・・・
次からきっと・・・・・キスのとき・・・・・息が・・・・・・かかっただけで・・・・





ぺろっ





はあああんっ!!




な・・・・・・首すじ・・・・・舐められたら・・・・・・・電気が・・・・・・!!
お風呂で・・・・・洗うとき・・・・・・触ったって・・・・・何ともないのに・・・・・!
なんで・・・・こんなに・・・・・・


びくっ!びくっ!!


ふあああっ!!




首に、アソコに、意識が集中していく。
全部の神経が、その2箇所に集まったみたい。
そのくらい、息で、舌で、動きで、当たる感触で。
私は、大きくて、いやらしい声をあげていた。





かりっ・・・・・





「ひあああっ!





軽く首筋を噛まれ、また声をあげてしまう。



ふああ・・・・・あ・・・・・あ・・・・・・・・
や・・・・・・何・・・・・・・これぇ・・・・・・・・



動揺する私に構わず、浪馬クンは、噛んだり、舐めたり、



ちゅうう・・・・・・



吸ってきたり。


や・・・・・あ・・・・・・・
そんなに・・・・・吸われたら・・・・・・赤く・・・・・なっちゃう・・・・・
キス・・・・・マークに・・・・・・なっちゃうよぉ・・・・・・




「ちょ、ちょっと。あんまり痕がつくようなのは・・・・・・」




意識をなんとか声にして、言葉にする。


そこに・・・・・キスマーク・・・・ついたら・・・・・見られちゃうよぉ・・・・・・
冬休み・・・・・・だから・・・・って・・・・・・・ひああっ・・・・・
バイトとか・・・・・友達と・・・・・あそ・・ん・・・・だり・・・・・とか、
するんだか・・・・ら・・・・・ああああ・・・・・

浪馬・・・・クンは・・・・・・バレて・・・・も・・・・・いいの・・・・?
わたし・・・たち・・・・そこまで・・・・・いってる・・・・・ひあああっ・・・・

もし・・・・・もし・・・・・そうなら・・・・・・
つづけて・・・・・・いいけ・・・・・ど・・・・・・・・ん〜〜〜っ!!





「そうか?じゃあ、こっちを・・・・・・」





かぷっ・・・・・





「きゃふっ!」





浪馬クンは、顔をちょっと上に向け・・・私の・・・・・耳・・・・を・・・・噛んだ。

一瞬驚いたあと、




〜〜〜〜〜〜〜!!!!




さっきまでとは比べ物にならないくらいの、ものすごい衝撃が走る。





「そ、それは・・・・・あ、あぁぁんっ」





あまりの衝撃に、感じているのに声が小さくなっていく。


はああ・・・・・はあああっ・・・・・
なんか・・・・・挿れられた瞬間・・・・・みたいだよぉ・・・・・・

やだ・・・・・耳・・・・・・こんなに・・・・・・・感じるなんて・・・・・・・・・


感じるとわかった途端、とろぉっ・・・・・と、
下から溢れ出てくるのがわかる。
そのせいで、浪馬クンが動く音がますます大きくなっていく。


ふわあっ・・・・・耳・・・・・・は・・・・・・恥ずかしすぎるよぉ・・・・・
すぐに・・・・見えちゃう部分が・・・・こんなに・・・・・・はああああん・・・・・・





「ん?もしかしてお前、耳が弱いのか?」





!!!
やあ・・・・そんなイジワルなこと・・・・・聞かないでぇ・・・・・・
意識して聞かれたら・・・・・・ますます・・・・・・・

やあっ・・・・・・アソコ・・・・・・・勝手に・・・・動いちゃうよぉ・・・・・・





「・・・・・・・・・・」





恥ずかしすぎて、知られたくなくて、キュッと唇を結ぶ。



だけど、





「はっはは。沈黙ってことはそうなんだな。よし。
それじゃあ、今日は耳を集中的に責めてやる」





「え?ちょ、ちょっと・・・・・・ひあっ!!」






ますます、浪馬クンの舌の動きが激しくなる。


だ・・・・だから・・・・・ダメぇ・・・・・・ああああああっ!!
耳たぶ・・・・・なめ・・・・・・ないでぇ・・・・・・・あっ・・・・ああっ・・・・・・


ちゅるっ・・・・・


ひあああっ!!・・・・・中に・・・・・舌・・・・・・・ダメ・・・・・・ダメぇ!!
やああっ・・・・・・気持ち・・・・・・よすぎるよぉ・・・・・・
そんな・・・・・ああああんっ!
みみ・・・・そうじ・・・・するとき・・・・・・・ひうううん・・・・・
おもいだし・・・・ちゃう・・・・・あああんっ!!



びくんっ、びくんっ、びくんっ。



舌が動くたび、奥まで突き刺さるたびに、私の身体は跳ね上がる。
2箇所に集中していたはずの性感帯が、全身に広がっていく。
今なら、どこを触られても、びくんってなっちゃいそう。





「あっ、あっ、あっ。そんな、ひぁぁぁ・・・・・・」





身体が勝手に震えてくる。
感じすぎちゃって、ケイレンに近いくらいに、震えている。



やあああっ・・・・・・気持ち・・・・・よすぎるよぉ・・・・・・!!





「だ、だめ・・・・・・だめだよぉ。そんなにされたら私、私ぃ・・・・・・」





まだ・・・・・ちょっとしか・・・・・たってない・・・・・のに・・・・・・
もう・・・・・・い・・・・・・イッちゃ・・・・・・よぉ・・・・・・



それを促すかのように、私の中が、浪馬クンを勝手に締め付け始める。



や・・・・・やああああ・・・・・まだ・・・・・・まだ・・・・・こうしてたいよぉ・・・・・・
浪馬クンと・・・・・・つながって・・・・・たいよぉ・・・・・



私の願いも届かず、締め付けはどんどん激しくなる。



ふあああっ・・・・・・こんな・・・・・・後ろから・・・・・なのに・・・・・・
奥に・・・・・・おく・・・・・・あたっ・・・・・て・・・・・ふわあああ!!





「くっ、こ、これはオレもちょっとキツイかも・・・・・・」





浪馬クンの、ちょっと苦しそうな喘ぎ声が聞こえてくる。
その息が耳にかかっただけで、快感となって、望まないのに昇りつめてしまう。





「あっ、はっ、うん・・・・・・・はっ、いやっ、も、もう・・・・・・」





やだ・・・・・ヤダっ・・・・・・もっと・・・・・・浪馬クンと・・・・・・こうして・・・・・
私だけ・・・・・・私だけ・・・・・こんなに早く・・・・・・





「こんな、こんな早く・・・・・あぁあぁぁ・・・・・・」





耳からはペチャペチャとしたいやらしい音が聞こえて、
下からもグチュグチュとしたいやらしい音が聞こえて。


私の願いとは正反対に、音がどんどん大きくなっていく。


まだ、浪馬クンとつながっていたいのに。
ずっとずっと、浪馬クンの息遣いを感じていたいのに。
浪馬クンの振動を、味わっていたいのに。




いやぁ・・・・・わたし・・・・・だけ・・・・・・イッ・・・・ちゃう・・・・なんて・・・・・・
やだよぉ・・・・・・あはああああっ!!
わたし・・・・・わたし・・・・・・・





私の、願いは。





浪馬クンと・・・・・いっしょ・・・・・・いっしょに・・・・・・
イキたい・・・・・・イキたいよおおおおおお!!





「た、タマ。オレももう・・・・・」





浪馬クンも?浪馬クンも・・・・・イキそうなの?
私と同じで・・・・・・感じすぎて・・・・・・くれたの?

だったら・・・・・私も・・・・・・もう・・・・・耐えられないから・・・・・ふああっ!

お互い・・・・・耐えられないんなら・・・・・・

せめて・・・・・あああっ・・・・・・せめて・・・・・・・・!!





「い、一緒に・・・・・・・一緒にイこ?」





「あ、ああ。一緒だ」






嬉しい・・・・・・嬉しいよぉ・・・・・・・・



浪馬クンの動きが腰に集中する。
一緒にイッてくれるために、早く、強く動いてくれる。





「あっ、あっ、あっ、あっ・・・・・・・い、いいの。気持ちいい。
すごく気持ちいいのっ!!」






白くなった頭で、叫ぶ。
部屋の風景も、何ももう見えない。
浪馬クンしか、わからない。


浪馬クン・・・・・浪馬クン・・・・・・・・・!!





「た、タマ・・・・・・・・」





や・・・・・も、もぉ・・・・・・ホントに・・・・・・だめっ・・・・・・・・!!!





「い、イッちゃう。私・・・・・・私、イッちゃう・・・・・・」





浪馬クンも・・・・・・・ろうま・・・・・クン・・・・・・も・・・・・・!!





「い、イクぞタマ。イッちゃうぞ?」





いっしょに・・・・・・・イッて・・・・・・・わたし・・・・・・も・・・・・・・!





「う、うん。私も・・・・・・ああんっ。私も・・・・・・・・」





だして・・・・・・・わたしの・・・・・・・からだに・・・・・・だしてええっ・・・・・!!





「くっ・・・・」





浪馬クンのが、私の中が広がるくらい大きくなる。
それを、すごい勢いで引き抜く。




ふあああああああああっ!!!




もう!!もう!!ダメええええぇぇぇぇ!!!!





「あっ、あっ、あっ。あああぁぁぁぁ――――――!」





私が達すると同時に、引き抜かれたモノから、白い液体がほとばしる。




よかった・・・・・・一緒に・・・・・・・イッた・・・・・・んだ・・・・・・




すごく、嬉しかった。







「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・・」





「ふう、ふう・・・・・・・」






しばらくは2人とも声が出せずに、荒い息を繰り返していた。
でも、目はお互いを見つめて、微笑んでいた。
あったかくて、お互いを想いあえて。
私は、この時間も大好きだった。





「す、すごい・・・・・良かったよ」



素直な感想を、私のほうから切り出す。



「あ、ああ。オレもだ」



浪馬クンも、同じ感想を言ってくれる。
お互い本当に気持ちよかったんだ・・・・
そう思って、自然に笑いがこみあげてくる。



「・・・・・・・・ふふっ」



「ん?」




私と同じ、幸せそうな顔の浪馬クンが問いかけてくる。




「安心して身を任せられるからかもしれないけど、
あの人としたときよりも、ずっと気持ちいい」





自然に、名前が出てきてしまっていた。

私が、浪馬クンとエッチなことができて、どんなに気持ちよかったのか。
浪馬クンと一緒になれて、どんなに幸せなのか。

お昼の話で、浪馬クンから名前が出たこともあるのかもしれない。
浪馬クンの中から、あの人の存在を少しでも消して欲しかったのかもしれない。

もう、浪馬クンしかいないんだよ、って。
キミしか、私が大切な人はいないんだよ、って。

ものすごく無神経なことを繰り返してるのかもしれない。

だけど、私の子供の頭では、
浪馬クンに幸せだってわかってもらうために、
あの人を引き合いに出して、今、ここにいることが幸せだって。


キミと一緒にいる今が、一番幸せなんだって。


そう言う風に伝えることしか、思いつかなかった。




「タマ・・・・・・」




ちょっと複雑な顔になったけど、それでも浪馬クンは笑ってくれた。
勝手だけど、わかってくれた、と思った。
少し、甘えすぎ・・・・・かな?

でも、キミと一緒だと・・・・こんなに・・・・気持ちいいんだもん・・・・・





「やっぱり私たちって、身体の相性もバッチリなのかもね」





「も」だからね。
身体だけじゃなくて、心の相性もバッチリなんだからね。
心が繋がってないと、身体だって気持ちよくならないんだからね。
私は、つながっていると、思っているよ。
浪馬クン・・・・・は?





「ああ」





単に私が口にしたことへの答えなんだろうけど、
浪馬クンは、はっきりと、力強く頷いてくれた。

その笑顔が、ちょっと眩しくて。

その笑顔を、自分が離してしまうかもしれなかったことに、
少しの間でも気づかなかったのが悔しくて。





「こんなことなら、最初っから素直になればよかった」





あの人と、あんな風になる前に気づいていれば。

付き合う前に、気づいていれば。

マネージャーに志願した理由に、気づいていれば。

一緒の学園を受験したときのあの嬉しさに、気づいていれば。

幼なじみの中で、浪馬クンだけに世話を焼いていた理由に、気づいていれば。



初めて出会ったときのドキドキに、気づいていれば。



もっと早く、こんな風になれていたのかもしれない。
回り道することなんて、なかったのかもしれない。


もちろん、今までのことがあったから、今こうしていられるのかもしれない。
あんなことにならなければ、もしかして、一生気づかなかったのかもしれない。

それなら尚更、そんなになるまで気づこうとしなかった、
そんな自分が、悔しい。





「・・・・・・」





浪馬クンは、黙って私の顔を見ている。

笑顔が、今は私に向けられている。
それが、たまらなく嬉しい。


浪馬クンは、いつから私のことを好きになってくれたんだろう。
お互いの気持ちが通じ合ったのって、
幼なじみとしてじゃなく、男と女として、気持ちが通じ合ったのは、
いつからなんだろう。


考えてもわからないけれど、今、2人は、こうしてここにいる。


身体全部をさらけ出して、こうやって微笑みあっている。



これからも、こうして、笑いあっていたいな。



だから、





「ふふっ。もう離さないからね」





そう言って、浪馬クンの胸に飛び込んだ。
浪馬クンは、頭を優しく撫でてくれた。






シャワーを浴びなおして、着替えると、途端に恥ずかしくなってくる。
なんで、あんなこと、平気で言えたりできちゃうんだろう・・・
みんな、そうなのかな?
うわあんっ!そう思ったら街の人の顔が見れないよー!


浪馬クンを見ると、満足そうな表情。


う・・・・やっぱりこんなこと考えてるのって、私だけなのかな・・・・
浪馬クンだってあんなに恥ずかしいこと言ってるのに。
私と同じくらい、エッチなくせに・・・・・・
なんか悔しくて、つい、



「今日はわりと満足かな」



なんて、強がったことを言ってしまう。
ホントは、めちゃくちゃ気持ちよかったのに。
そう、直接浪馬クンに言ってたのに。



「へ?じゃあ、今までは不満だったのか?」



え?

ツッコミ返してくるかと思ったら、素で返してきた。
ちょっと、驚いた表情。

う・・・・・そんな顔されたら・・・・・・・・



「不満っていうわけじゃないけど、ちょっと・・・・・・」



とっても気持ちいいんだよ?
私の反応見て、わかるでしょ?

でも・・・・・たまに・・・・・・ちょっとだけ・・・・・・



「なんだよ、言ってみ?改善してやるからよ」



そ・・・・そんな・・・・・改善なんて・・・・・・・
いつも・・・・・感じまくってるじゃない・・・・・・・
ふあ・・・・・感じまくってるだなんて・・・・・今は言えないし・・・・・・



「・・・・・・」



今までだってたくさん・・・・感じさせてもらってるのに・・・・・
更に改善だなんて・・・・・・・

強がって、「わりと」なんて言ってしまったことに大後悔。
でも・・・・でも今さら「ウソですよー、とっても感じてますよー」
なんて言えないよ・・・・・
浪馬クン・・・真剣なんだもん・・・・・・



「ほれ、言ってみろよ。オレとお前の仲だろ?」



やあ・・・そんな言い方されたらっ・・・・・
言わなくちゃ・・・・いけないじゃない・・・・・・
ほんの・・・・・ちょっとした、ことなのにっ・・・・・・・・


真剣な目に、覚悟を決めるしかないと思った私は、一度息を吸う。



「うん。あのね」



あえて・・・・・あえて言えば、だからね?



「ああ」



やああ・・・・言っちゃうよ・・・・・・



「セックスのとき、ちょっとわがまま過ぎ」



い・・・・・言っちゃっ・・・・・た・・・・・・・



「え?そうか?」



こうなったら・・・・・言うしかないよね・・・・・・
隠し事なんて・・・・・・できないもんね・・・・・・・・・



「うん。もうちょっと私のことも考えて欲しいかも」



浪馬クンが、私のことを考えてくれてることは、わかっている。
でも・・・・その・・・・あんまり激しいと・・・・・・
私が・・・・・・先に・・・・・・・イッ・・・・・・ちゃう・・・・・・から・・・・・・



「うーん・・・・・・でもお前、少し乱暴な方が好きじゃねえか?
なんとなくそんな風に思ってたんだけど」



う。


「そ、それは・・・・・・そういうところもあるかもしれないけど・・・・・・」



確かに・・・激しくされると・・・・・すごく・・・・・気持ちいいんだけど・・・・・
その・・・・・私・・・・・・キミと・・・・・・
一緒に・・・・・・一緒に・・・・・・イキ・・・・たい・・・から・・・・・・

できれば・・・・少しでも長い間・・・・・
つながって・・・・・いたいから・・・・・・

いつだって・・・・・最後は・・・・・・キミと・・・・・一緒に・・・・
って・・・・・思ってる・・・・・・から・・・・・・・

だから・・・・・もう少しだけ・・・・・・優しく・・・・・・してくれると・・・・・
長く・・・一緒にいられて・・・・嬉しいかな、って・・・・・



あああ!心で思ってるだけじゃわかんないよね?
ちゃんと、言わなくちゃ・・・・・
うう・・・・でも・・・・・・恥ずかしいよ・・・・・
心の中でさえ・・・こんなにしどろもどろになっちゃってるのに・・・・・・




「・・・・・わかった。お前がそう言うなら、確かにちょっと
お前に甘えてたのかもしれん」





え?



真っ赤な顔のままで浪馬クンを見上げると、
にっこりと微笑んでいた。




「浪馬クン・・・・・・」




もしかして・・・・わかってくれた・・・・の?
かなり・・・・・わがままな・・・ことだよ?




「まあ、すぐにはムリかもしれないけどよ、とりあえず意識はしてみるよ」




わかって・・・・・くれたのかな・・・・・・
だとしたら・・・・・だったら・・・・・




「うん。そうしてくれると嬉しい」




次も、その次も、2人が溶けちゃうくらい、抱き合っていたい。
浪馬クンも、そんな風に思っていてくれるようになったら、
もっともっと、幸せになれる。
今までの私たちの絆が、もっともっと大きくなれる。

だから、私ももっともっと、キミのことを考えるから。
浪馬クンも、私のことを考えてね。

も・・・もちろん、エッチのときだけじゃなくて・・・・・・ね?




「んじゃあ、次はたっぷりサービスしてやるからな」




「え?」




さ・・・・サービス?サービスって・・・・・・
・・・・・ぽっ。




「お前がイヤだって言うまで、たっぷりじっくり感じさせてやるからよ」




ボボボッ!!




「も、もうっ。それがわがままだって言うんだってば。少しは考えてよね」




そんなことを言いたかったんじゃないよぉ!ばかぁっ!!



あまりの恥ずかしさに、浪馬クンの返事も聞かないで、
逃げるように帰ってしまった。





バカ!!浪馬のバカ!!
ズカズカと歩きながら、浪馬クンバカ!と言い続ける。



「別に、サービスしてほしかったわけじゃないもん!
いっぱい、いっぱい感じてるもん!・・・・・・はっ!!」




口に出してしまってることに気づいて、慌てて周りを見る。
幸いにも人の姿が見えなかったので、赤い顔のままで安堵のため息。



「ほおぉ・・・・よかったあ・・・・・」



安心すると、また、考え始める。

浪馬クンが・・・・「改善する」だなんて・・・・・・
やっぱり・・・・私のこと・・・・・考えてくれてるんだよね・・・・・



「わがままなんて・・・ひどいこと言っちゃったよね・・・・・」



でも、浪馬クンは、怒っていなかった。
きっと、謝っても、「何を謝ってるんだ?」って、取り合ってくれないだろう。

ちくん、と、胸に小さな痛みが走る。


私って、やっぱり子供だなあ・・・・・



それにしても・・・・・・



「サービスって・・・・・どんなんだろ・・・・・・」



自然に、顔がニヤけてしまう。


今日は・・・いっぱい開発してもらったから・・・・
次は・・・・・そこを重点的に・・・・・・とか?


今度は・・・・・・キスマーク・・・・・ちゃんとつける・・・・とか?
やだ・・・・・痕になったらマズイって言ったじゃない・・・・・
でも・・・バレてもいいって言うなら・・・・・今度こそ・・・・・


それとも・・・・耳?
今日は左だけだったから・・・・・右も?
右は・・・・・感覚、違うのかな・・・・・
やっぱり・・・噛まれたりしたら・・・・・・・・すごいのかな・・・・・



とろっ・・・・・



!!!!!



「やだっ!さっきしたばっかりなのにっ!!・・・・・・・はっ!!」



また口に出してしまって、再度周りを見る。
聞かれたら言い訳できないもんね・・・・・
もし・・・・近所のあのオバサンに聞かれでもしたら・・・・・

ブルブルと身体を震わせながら、口を閉じて慎重に歩き出す。


それでも、サービスのことを考えてしまって、




「・・・・・うふ・・・・・・・・うふふふふふふふ・・・・・・・・・・」




通報されそうなほどニヤニヤしながら、家までの道を歩いていた。

疲れてるけど、眠れそうにないよ・・・・・・





12月23日(木)


「えー!?じゃあ冬休みなのに織屋君に会ってないの?」


「・・・そんなに驚かなくたって・・・・・・」



いつもの友達からかかってきた電話。
ヒマを持て余していた私は、ついつい長電話になってしまう。

話題になるのは、当然男の子の話。
特にこの娘は私と浪馬クンのことを知ってるから、尚更。
最初は、私たちがどう過ごしてるかを根掘り葉掘り聞きたかったみたいだけど・・・



「で、でもでもっ。日曜日は一緒に遊んだよ?」


「それでも時間空きすぎぃ!なんで?ケンカでもしたの?」


「してないよっ」


「じゃあなんでぇ?」


「浪馬クン・・・・おじさんとこでバイトだから・・・・・・」


「バイト?」


「うん。毎年夏休みと冬休みは、そこの工場でバイトしてるの。
浪馬クン、あそこに居候してるから」


「・・・そういえば、そんな話聞いたことあるような・・・・・・」


「だから、なかなか遊べなくて・・・・・・」


「でも、今日って祭日じゃん」


「年末だから、休みじゃないの。工場動いてた」


「・・・・・・じゃあ、終わってからとかは?」


「毎日朝の9時から夜の8時まで仕事なんだよ?
その後で、デートなんてできる?」


「・・・・・・・その会社、労働基準法って知ってるの?」


「いつもは6時には終わるんだけど・・・年末だから延長してるみたい」


「・・・・・・はあ・・・・・彼氏も大変なんだねえ」


「か、か・・・・・彼氏?」


「織屋君のことに決まってるじゃん。たまき、まだ慣れないのぉ?」


「う・・・・・・」



2人でいるときは恋人って意識してるけど・・・・・・
人から言われると・・・・・
前は笑い飛ばせたけど、今は・・・そのとおりだし・・・・・・


「じゃあ、クリスマスは?」


「わかんない・・・でも多分、ダメだろうね・・・・・・」


「えええ!?せっかくのクリスマスなのにぃ」


「そんなこと言われても・・・・・・それに、もしかしたら浪馬クン、
クリスマスってことすら知らないかも・・・・・・」


「は?何それぇ?」


「去年も、鍋とかやってたから・・・・・・」


「な・・・鍋?」


「うん。イブの日にいきなり電話かかってきて・・・・・・




『おう、タマ。今日鍋やるぞ、鍋』


『は?』


『いや、今日バイト休みになってよ。
土鍋とコンロはオレん家にあるから、材料お前が選んでくれ』


『ちょ、ちょっと。そんないきなり』


『いいじゃねーか。雨堂と望も呼んでおくから、パーッとやろうぜ。どうせヒマだろ?』


『そりゃ・・・ヒマはヒマだけど・・・・・・』


『じゃ、決まりな。金は後でみんなで出し合うってことで。じゃあな』


『ちょ、浪馬クン?』



ガチャ・・・ツーツーツー



・・・・・・で、それなりに盛り上がった去年のイブでした」


「・・・・・大物だ・・・・・・」


「えへへ・・・・そう?」


「褒めてないよぉ」


「・・・・・・・・・・・」



やっぱ変わってるのかなあ、浪馬クンって・・・・・・


「でも・・・・・そっか、その名残かあ・・・・・」


「え?何が?」


「んっとね。明日、雨堂君と砂吹君にお呼ばれしてるの。
あたしらいつもの2人と、彼ら2人で遊ぼうって」


「へえ・・・・って、いつからその2人と仲良くなったの?
そう言えば、刃君と一緒に話してたことあったね」


「雨堂君は・・・たまきがらみでね」


「私がらみ?・・・・・・あ・・・・・・あのときかぁ・・・・・」



私が告白できなくて、ドキドキしてたときか・・・・・
うー、今思うと恥ずかしいなあ・・・・・・


「そ、あのとき。砂吹君は・・・・よくわかんない」


「望君は・・・・・私たちでもよくわかんないからなあ。でも、いい人だよ」


「そーゆーオーラは伝わってくるけど・・・世界が違うっていうか・・・・・」


「あははっ。言えてるね」


「でさぁ。もしヒマなら・・・・・たまきも来ない?」


「え?」


「せっかくのクリスマスだし、1人でいるのってもったいないじゃん。
雨堂君と砂吹君なら気心も知れてるし、織屋君も心配しないでしょ?
だから・・・・さ」




・・・・・・・・やっぱ、いい娘だなあ・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも・・・・・・・・



「ありがとう。でも、やっぱいいや」


「どうしてぇ?遠慮してんのぉ?」


「そうじゃなくて・・・・・」



浪馬クンが仕事してるのに、私だけ遊んでるのは、やっぱり・・・
きっと、「ほーぉ、いい身分じゃねーか」なんて言いながらも、ニッコリ笑って
「よし。俺の分まで楽しんでこい。今年こそは望を酔わせてこい」なんて
送り出してくれるんだろうけど。

でも、もし・・・もし・・・時間が取れるんなら・・・・・・・



「やっぱり・・・・・ギリギリまで、待ってみるよ」


「・・・・・・・・そっか」


「うん。ありがとね」


「いいよぉ。恋する女が男を待ち焦がれる・・・・・なんてシチュエーション、
ジャマするわけにもいかないもんねぇ・・・・」


「う・・・・!そんなんじゃないよっ!
ほ、ほら、いざ休みになったときに私がいなかったら、
浪馬クンかわいそうでしょっ!?」


「ならこっちに呼べばいいじゃん」


「でもっ!浪馬クンだって、私と2人でいたいと思うしっ!」


「それはたまきの方でしょぉ?」


ボッ!!


「今、たまき、顔真っ赤になってるでしょ?」


「そ・・・そんなことないもん!正常!超正常だもんっ!」


「あ、織屋君、今あたしん家にいるよ」



「なんでええええええっ!!?どうしてよおおおっ!!!」



「・・・・・たまき、さっきバイトだって言ったばっかじゃん・・・・・」


「あ・・・・・・・」


「あははははははっ。たまきおもしろーい」


「うう・・・・イジメだ・・・イジメがあるよ・・・・・・・」


「まあまあ、彼氏がいない女のヒガミだと思いなよ」


「ぶーぶー・・・・・・」


「んじゃ、そろそろ切るねぇ」


「うん」


「織屋君・・・誘ってくれるといいね」


「・・・・・・・・・・うん」


「・・・・・・二人、やっぱりいちばんお似合いだよ」


「えっ!?」


「あはは〜♪じゃーねー」




ツー・・・ツー・・・ツー・・・・・・



もう・・・・・



携帯を戻すと、私は窓のそばによった。
ひんやりとした取っ手を掴み、窓を大きく開く。

浪馬クンの家の方を向いて、小さくため息をつく。



「やっぱり・・・2人いっしょがいいよ・・・・・・・・」



去年までの私なら、みんなと遊んでも楽しかったかもしれない。
刃君も、望君も、大切な幼なじみ。

だけど、今の私には浪馬クンが一番大切。
浪馬クンがいないと、どんなに騒いだって、楽しくない。
隣にいる人が浪馬クン以外になるなんて、イヤ。



「あーあ・・・・・・」



呟きながら、開け放った窓のふちをなぞる。

仕事、大変なんだろうな・・・・・
毎日毎日、働きづめだもんね・・・・・・



「イブ・・・・・・か」



本当に好きな人がいる、初めてのクリスマス。
今までは、別になんとも思ってなかった。
私には、関係ないと思っていた。
友達や、幼なじみ。
みんなと笑いあえれば、それでいいと思っていた。


でも今年は、明日は、笑いあいたい相手は、1人しかいない。
キミがいないんなら、笑う必要なんてない。


「仕方ないよね・・・・・・」



明日逢えないなら、家でじっとして、キミのことを考えてるよ。
そして、「メリークリスマス」って、キミの家に向かって言ってあげる。



「あははっ・・・・メルヘンだね。似合わなーい」



最近、女の子チックなことを考えるようになった気がする。
私、こんなキャラだったっけ?

きっと、浪馬クンが変えちゃったんだね。

ま、本人の前じゃ絶対言わないけど。
どーせ「はっはは。オレがタマを女らしくしたってワケか。オレに感謝するんだな」
とか言って、肩をボンボン叩かれるんだろうし。
それも悔しいからなあ。



「それにしても・・・電話くらいしてこいってのよ」



そりゃ、日曜はちょっとだけヘンな終わり方しちゃったけどさ。
私からするわけにもいかないじゃない。
疲れてて迷惑かもしれないし・・・・・

留守電にでもいれとこうかな・・・・・・でも・・・・・・



「声・・・聞きたいなあ・・・・・・」



昔から、毎日毎日飽きるほど聞いてるのに、
ちょっとでも聞いてないと、落ち着かない。
これってやっぱり・・・恋する女、ってやつ?きゃー☆



「・・・・・・バカか私は・・・・・・」



情けなくなりながら、浪馬クンの家のほうをボーっと見続ける。
どんなにごまかしたって、自分の気持ちに嘘をつくことなんてできないのに。


浪馬クンは、私と逢えなくっても平気なの?
話ができなくっても、平気なの?
私を放っておいて、平気なの?


私は・・・・・・私はね・・・・・・・・



「逢いたいよ・・・・・寂しい・・・よぉ・・・・・・」



口に出したら、途端に悲しくなった。
生活のためなんだからしょうがないのに。
それでも、逢いにきてほしい・・・だなんて、ワガママな自分が顔を出す。


涙が出そうになって、窓のふちにつっぷす。
もう寸前なのを、なんとか元に戻そうとする。


あ・・・・・・ダメかも・・・・・・



そう思ったとき、



タッタッタッ・・・・・・



あれ・・・誰かが走ってくる・・・・・もう、結構遅いのに・・・・・・・
しかも、何か私の家のほうに・・・・・・



!!



もしかして・・・・・・もしかしてっ!!



泣きそうだったことなんか、どっかにいってしまった。
慌てて部屋を飛び出す。



ピンポ―――ン・・・・・・



ダッシュで階段を降りると、お母さんが玄関へ向かっていた。
その肩を、背後からガッシリと掴む。


「た、たまき?どうしたの?」


「・・・私が出る」


「別に誰が出たって・・・・・・」


「・・・・・・・ふるふるふる」



静かに、でも何者をも寄せ付けない圧力で首を振る。


その様子に、お母さんは驚いたのと、何かを感じたようで


「わ・・・・わかったわ」


表情を少し強張らせつつ、今へと戻っていった。



ピンポ―――ン・・・・・・



チャイムの音が響く。



「ハーイ・・・・・・」



息が荒くなってきたので、深呼吸。
・・・・・・よし。



ガチャ・・・・・



そこにいたのは・・・・・・やっぱり・・・・・・・



「よう、タマ」



「あっ。い、いらっしゃい。浪馬クン」




予感していたのに、しどろもどろに返事する私。
姿を見た途端に、顔が真っ赤に。
うわあ・・・・すごく嬉しいのに、あの娘がヘンなこと言うから・・・・・・



「ど、どうした、タマ?」



「な・・・何でもないよっ」




うわあん!久しぶりに逢ったのに!って言っても4日ぶりだけどっ!
緊張して何喋っていいのかわかんないよー!
てゆーか、何で浪馬クン相手に緊張する!?
幼なじみでしょ!?


でも・・・・彼氏・・・・・だけど・・・・・・・


わああ!意識したら余計に恥ずかしいのがっ!


思考が暴走する。


何か用なのかな?って用があるからきたんだよね?
じゃあ何かな?もしかして・・・・明日・・・・・・?



「なあ、タマ」



びくんっ!



「な、なあに?」



どきどきどきどき・・・・・・



「明日の予定って空いてるか?」



「う、うん。空いてるよ」



も、もちろんだよっ。
浪馬クンのために、空けたんだからねっ。



「じゃあさ、オレと一緒にどこか行かないか?」



ぱあああああああっ・・・・・・・・



夜も遅いのに、私の頭に光が差し込んでくる。
明日・・・・大切な日に・・・・・・浪馬クンと・・・・・・2人で・・・・・・



「・・・・・・クリスマスデート・・・・・・・だね」



思わず、呟いてしまう。



「え?」



「ううん。なんでもない」



やっぱり、明日のこと、わかってないのかなあ・・・・・・
イブだぞ、イブっ。
恋人たちがデートしたり、その・・・確かめ合ったりする日なんだぞ?



「???」



まあ・・・・・いいか。
本人が全然わかっていなくても、誘ってくれたのは間違いないんだし。



「それで、明日はどうするの?」



いつもの通り、浪馬クンにお任せ。
キミが決めたところならどこだって楽しいけど、
できれば、こう・・・・クリスマスっぽいところがいいなあ・・・
どんなところがそれっぽいのかはわかんないけど。



「そうだな・・・・・・」



しばし考え込む浪馬クン。
むー。明日のこと、わかってんのかわかってないのか・・・
飄々としてボケたりするからなあ・・・



「よし、明日は緑地公園で、まったりと遊ぼう」



緑地・・・・・公園?

確かあそこって・・・・・おっきい木があって、
イルミネーションはつかないけど、夜はとってもキレイなんだよね・・・・・
やっぱり・・・わかってるのかなあ・・・・・



「了解。緑地公園だね」



もしかしたらという期待を込めて、頷く、



「よーし。じゃあ、それで決定な」



「うん」



たぶん、今日一日で最高の笑顔で、返事。



「それで、何時に待ってればいい?」



「そうだな・・・・・・午後4時でいいか?」




4時・・・微妙な時間・・・・・
あ・・・でも、夜に変わる瞬間ってすごくロマンチックかも・・・
やっぱりちゃんと計画してるのかなあ・・・
聞くのもなんか・・・期待しすぎてるみたいだし・・・・


考えるとますますわかんなくなるけど、
それでも、やっぱり浪馬クンと過ごせるのは最高に嬉しいから、



「うん。そっちの好きな時間でいいよ」



浪馬クンに全部お任せしちゃうことにした。
2人なら、ただ歩いて、話してるだけで楽しいから。



時計を見ると、結構遅い時間になっていた。
このままずっと喋っていたいけど、浪馬クンがカゼ引いちゃったらイヤだし。
家に招待したいけど、さすがに時間が時間だから、
お母さんも許してくれないよね・・・・・・



「じゃあ私、そろそろ行くね」



まだまだ話したりないけど、続きはまた、明日ね。



「ん。またな、タマ」



「明日の約束、忘れないでね」




私との約束は忘れないって思ってるけど、長年のつきあいの軽さと、
絶対に逢ってよね、という願いから、つい言ってしまう。

浪馬クンは苦笑しながら、腕を大きく上げつつ歩いていった。
私は、浪馬クンが見えなくなるまで、ずっと背中を見送っていた。





「えへへ・・・・・・・えへへへへへ・・・・・・・・・・・」




バカみたいにニヤニヤしながらお風呂から上がると、メールが一通きていた。
誰だろ・・・・・・


あ。



『愛しい愛しい彼氏からのお誘いきたぁ?』



この娘は・・・心配してるのか茶化してるのか・・・・
クスッと笑いながら、メールを返す。


ピピピピピ・・・ピピッ・・・・・・・ピッ



「これで・・・・・送信・・・・・っと」




『おかげさまで、明日は今までで最高のクリスマスになりそうです♪』




電話の向こうで「ちっ」って舌打ちする音が聞こえてきそうだけど、
まあ、浮かれてるってことで許してもらおっと。



普段みたいに飛び上がるような嬉しさではなく、
身体の心があったかくなるような、静かだけどとても強い嬉しさ。


初めて好きな人と、2人だけで過ごすクリスマス。
大好きな浪馬クンと、一緒に過ごす・・・・クリスマス。


どんな1日になるんだろう。
楽しいのかな。嬉しいのかな。おもしろいのかな。感動するのかな。


どんなに想像を巡らせてみても、悪い予感はまったく浮かんでこない。
当たり前だよね。
だって、浪馬クンと、一緒なんだもん。
浪馬クンと一緒で、悪いことが起こるはずないもん。
サンタがもしいたら、きっと私たち、祝福してくれるよね。


聖なる夜。
きっと、2人の思い出に残る、大切な1日になる。







「・・・・・・・・・ちっ」


メールを見た瞬間、あたしは思わず舌打ちをした。
たまきはそれを見越してやってるのかなぁ。
冷やかしてあげようかと思ったけど、


「・・・・・電話する気も失せた・・・・・・」


まったく、どう見たってラブラブバカップルだよぉ。
学校ではそれなりに隠そうとしてるのがまた面白いんだ。
全然隠れてないってゆーのに。
たまき、自分で気がつかないで織屋君の手、握ってたりするし。

あーあ、幸せっていいなぁ・・・・・・


でも、きっといろいろあったんだよね・・・・・・

あたしは全部知ってるわけじゃないけど、
織屋君と付き合う前のたまきは、あんなに幸せそうじゃなかった。

二学期になってからは、特に沈んでいることが多くなった。
何か悩んでいるみたいで、あたしがそれとなく聞いてもはぐらかしてた。
相変わらず笑ってはいたけど、今と比べると、全然違くて。
悲しげ・・・・っていうのかな。

たまきは気づいていたのかな。
織屋君と話すときだけは、そんな顔しなかったんだよ。
今と同じ、幸せな笑顔で、話してたんだよ。


しばらくして、急に誰とも口を聞かなくなったとき。
きっと、あの時に、織屋君とも何かあったんだろうね。


元気になったあの日、「浪馬クンが好きなんだ」って、言ってたよね。
初めて気がついたみたいに。

あたしはずっとそうだと思ってたけど、近すぎて、気づかなかったんだね。
雨堂君も、そう言ってたしね。


きっかけが何かまではわかんないけど、自分の気持ちに気づいて、
子供みたいにアタフタして、可愛かったなぁ。
「話しかけられないー」って、小学生みたいに・・・・・あははっ。


「・・・・・・本当に、よかったね」


絶対、これからもいい思い出が、たくさん、たくさん作れるよ。
これからも、いつまでも一緒にいられるよ。


「あたしも・・・・・がんばんなきゃ・・・・・ね」


たまきみたいにはできないけど、いい恋・・・・・したいな。



せめて、メールでも送ってあげようかな。
お子ちゃまだから、もう寝てるかもだけど。
今、頭に浮かんだ言葉を。

う・・・・・シンプルだけど、けっこう恥ずかしいもんだなぁ。
でも、勢いにまかせて送っちゃおっと。


ピッ・・・・・・・ピッ。


これでよし・・・・・じゃ、たまきが見る前にあたしも寝ちゃおーっと。
おやすみなさーい。


明日・・・あたしも楽しいと・・・・・いいな・・・・・・




『おめでとう。いつまでも、幸せにね』






12月24日(金)


「・・・・・そわそわそわそわ」


夜明けと同時に目を覚ましてから、何回も、何回も時計を見ている。


「うう・・・・まだこんなに時間あるよ・・・・・・」


世界中の全ての人が1秒は同じ時間のはずなのに、
私の周りだけ1秒が長いような気がする。
浪馬クンといるときはすっごく短いのに。
それでバランスが取れてるのかな。


「そうだとしたら・・・・・なんか、不公平だ」


誰に言ってんだお前?と浪馬クンにツッコまれそうなくらい、
わからないものに対してグチる。
そして、また時計を見つめる。


「・・・・・おそろしく時間のムダだ・・・・・・」


時計見ててもそわそわするだけだし、何かやってよっと。
そう思って、部屋を見回す。


残ってる課題でもやる?
そんな気分じゃないよ・・・余計時間気にしちゃう・・・却下。


少し散歩でもする?
だ・・・ダメダメ!浪馬クン、どこ歩くかわかんないじゃん!
浪馬クンと同じ景色、一緒に見るんだもん!却下却下!


大掃除でもする?
って、一人じゃできないしなあ・・・
自分の部屋は、最近ピカピカにしてるし・・・

・・・・いつ、浪馬クンがこの部屋に入ってもいいように・・・・・・・

もしかして、「今日はタマの部屋で」なんて、言われちゃうかもだし・・・

ダメだよ・・・お母さんに聞こえちゃうよ・・・・・・
吾郎だって・・・冬休みなんだから・・・・・・

・・・・・・・・・・はっ!また暴走してるっ!


「・・・・・・・・・とりあえず、掃除しよ」


何故か、いつも以上に真剣に床を、机を、クローゼットを磨き上げる。
いつか、招待できたら・・・・・と、思いつつ。
べ、別にするためじゃないもんっ!


「ふぅ・・・・終わった・・・・・・シャワー浴びよ・・・・・・」


一生懸命掃除しすぎて、汗だくになっていた。
さすがにこれじゃあ逢いにはいけないよね。
気になっちゃうから・・・・
・・・・・・する前だって、シャワー浴びないと気になっちゃうのに・・・・・

って、またそっち方面にいってるよ・・・・・


相変わらずエッチな思考にいきがちな自分に赤面しつつ、シャワーを浴びる。
朝起きてすぐに浴びたけど、もう1回念入りに洗う。


「今日は・・・クリスマス・・・・・だもんね」


浪馬クンが、貴重な休みを割いて、私を誘ってくれたから。
少しでも、浪馬クンにキレイだと思われたくて。

シャワーから上がると、念入りにブローする。
いつもデートの前は気合入れてるんだけど、今日は更に丁寧に。
特別な日だということを、最大限に意識して。
少しでも納得がいかないと、もう1回やり直す。


「どーせ、浪馬クンは気づかないんだろうけどさ・・・・・・」


それでも、私が浪馬クンに見せたいから。
少しでも、学校でとは違う自分を見せたいから。
いつか、気づいてくれるといいな。そう願って。


何回も何回もチェックして、ちょっとでも気に入らないとやり直す。
ようやく自分の中でオッケーが出た頃には、ちょうどいい時間になっていた。


「よし・・・・・・・・」


最後に鏡の前で全身をチェックして、公園へと向かっていった。




・・・・・どっくん、どっくん、どっくん。



いつも以上に、緊張しながら待ち合わせ場所に近づく。
なんで、デート前ってこんなにドキドキしちゃうんだろう。
恋人になってからもう4回目のデートなのに、一向に慣れない。
それどころか、ますます心臓の音が大きくなってきちゃうような気がする。


浪馬クンのこと、ますます好きになっているから?
どんなデートになるのか楽しみだから?
エッチなこと・・・・・期待・・・・・・してるから?


私の子供なままの頭ではよくわからない。
どれも違うのかもしれない。全部かも知れない。


でも、ハッキリしているのは。



「あ・・・・・・・・・・・・」




待ち合わせ場所で、ボーッと立っている君の姿を見つけると、



「・・・・・・クスッ・・・・・・・」



そのドキドキが、キミへの愛しさに、変わっちゃうことなんだよ。



私は、浪馬クンに近づいていく。
浪馬クンが近づいて、「よっ、タマ」と手を上げる。

私は、浪馬クンにしか見せない笑顔を見せて、



「おまたせ、浪馬クン」



最高の日の、始まり。
数を重ねるごとに楽しさの最高記録を塗り替えちゃう、
いつだって今日が、最高の日。

今日の、始まり。





「メリークリスマス、タマ」



えっ・・・・・・・


いきなり浪馬クンから言われて、ビックリ。



「あ、うん。メリークリスマス」



ちょっとどもりながら、私からもメリークリスマス。

浪馬クン・・・・・ちゃんとわかってて誘ってくれたんだ・・・・・・
この・・・・大切な日に・・・・・・・

ちゃんと、私のことをかんがえていてくれたのが、すごく嬉しい。
今までどっちかわかんなかった分、余計に。


目の前の顔に、笑顔を向ける。
ありがとうと言う言葉を、表情に変えて。
言葉にしても、浪馬クンに「はあ?」って言われちゃいそうだから
言わないけど、その想いを、ありったけ表情に込めて。



「時にタマ」



「なあに?」




自分でも驚くくらい、優しい声がでた。
どんなこと、言ってくれるのかな・・・・・・



「メリーってなんだ?」



「え?」




・・・・・・・・・・・ねえ・・・私の笑顔は?
・・・・・思いっきりスルーですか・・・・・・そうですか・・・・・・



「ジェーンとは関係あるのか?」



「じぇ、ジェーン?」



な、何それ?クリスマスと関係あるの?
メリーは?メリーの話じゃないの?

ああ・・・・・でもなんか聞いたことあるような・・・・・
名前に星のマークがついた人が浮かんできたんだけど・・・・・

えっと・・・・確か・・・・・確かね・・・・・・・
うあああ・・・・あとちょっとなのにぃ・・・・・



「ま、そんなのはどうでもいいんだけどな」



「え?」




え?終了?この話、終わり?



「んじゃ、行こうぜ、タマ」



や、行こうぜじゃなくて・・・・・・・



「ジェーンはいいの?」



「気にすんなって。ただのツカミなんだから」



「ツカミ、だったんだ・・・・・・」




なんのツカミよ・・・・・・
クリスマスネタ?にしてはわかりにくいし・・・・・
てゆーか何でツカミが必要なの?

いつもと変わりない、むしろいつも以上のマイペースぶりに困惑。
誰がこんなのについていけるんだか・・・・・



「ほら、行こうぜ」



さっきの話をすっかり忘れたように、手を差し出して促す浪馬クン。
キミが立ち止まってネタ振ってきたのに・・・・・・



「う、うん」



困惑のまま、手を繋ぐ。



あ・・・・・・・・・・



浪馬クンの手・・・・・・あったかい・・・・・・・・

・・・・・・えへへっ・・・・・・・



「ま、いいかっ」



手の感覚に、すっかり元の上機嫌に戻る単純な私。
そうだよね。こんな浪馬クンについていけるのなんて、私しかいないもんねっ。



「え?何がだ?」



「なんでもなーい♪」




子供みたいに繋いだ手を振り回しながら、公園へと入っていった。




特に何の飾り付けもされていない、いつもどおりの公園。
それでも、全体にクリスマスムードが漂っている。

その理由は、いつも以上のカップルの数。

私たちと同じくらいの年のカップル。
もうお金をかけるデートが必要ないくらい、お互いを知り尽くしていそうな年上のカップル。
私から見ても初々しさが伝わってくる、年下同士のカップル。


様々な想いを秘めた2人が、今日という大切な日を大切に過ごそうと
ここに集まっている。
同じなのは、みんな笑顔なこと。
今日を一緒に過ごせて本当に嬉しそうな、心からの笑顔。


私たちは、みんなからどんな風に見えるのかな?

仲のいい友達?
お互いをよく知っている幼なじみ?
それとも・・・・・・恋人?


浪馬クンは、どう思ってもらえると嬉しいかな。
私は、もちろん・・・・・・・



「ねえ、浪馬クン・・・・・・・・」



私の手を握っている、大好きな人の顔をじっと見る。



ずずーっ。



「へ?」



「うー・・・・寒いな、オイ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オイはこっちだよ・・・・・・
何鼻水すすってんのよ・・・・・・・



「ところで、何だ?今、オレの名前呼んだろ」」



「・・・・・なんでもないよーだっ」



「何ふくれてんだよ」



「ふくれてませんー」



「・・・・・・・・・・・」




まったくもう・・・せっかくのいい雰囲気なのにさ・・・・・・
ちょっと寒いからって・・・・・



ぶるるっ・・・・・・



そのとき、浪馬クンの手から震えが伝わってきた。
あれ?浪馬クン・・・・・?



「もしかして、ホントに寒いの?」



「だからそう言ってんじゃねーか」



「風邪?」



「いや、そうじゃねえ。多分、朝起きたらベッドの外にいたからだろ。
オレ、エアコンかけねえで寝るから効いたぜ」



「・・・・・・・・」




寝相はともかく、ホントに寒いんだ・・・・・・
大丈夫かなあ・・・・・・・

じゃあ・・・・・・

・・・・・周り、カップルだらけだし・・・・・寒いって言ってるし・・・・・
いつもより、強くてもいいよね・・・・・



「タマ?」



「・・・・・・えいっ」




ぎゅうっ・・・・・・



掛け声と一緒に、浪馬クンの腕へとしがみつく。
腕を組むなんてレベルじゃない。
身体を全部預けるみたいにして、顔を浪馬クンの肩にピッタリくっつけて、
本当にしがみついた。



「あははっ。あったかいでしょ」



・・・・・・なんか、私の心まであったかくなってくるよ。



「まあな」



顔を背けて、ぶっきらぼうに答える浪馬クン。
日が落ちる寸前の夕焼けに照らされて、横顔からの表情はわかりにくかったけど、
私には、赤くなっているように見えた。
うん。テレてるんだと思うことにしよっと。



そのままの姿勢で、遊歩道を歩いていく。
話はあんまりしなかったけど、全然退屈しない。


きっと、浪馬クンの暖かさが、私に伝わってくるからだね。
こんなに歩きにくい体勢なのに、浪馬クン、文句一つ言わないもん。
普段なら、絶対何か言ってるのに。
私の気持ちも、腕や、身体や、ほっぺを通して伝わってくれてるかな。


そんなことを考えていると、いつもと変わらないハズの遊歩道が
どんどんロマンチックに見えてくる。
木々の緑が、私たちを迎えてくれてるような気がする。
普段はバカな話ばっかりしてるけど、こうやって静かに歩くのも・・・・・いいな。
2人で寄り添って、一緒に歩けるなら・・・・・・



「クリスマスの公園かあ。キミにしてはけっこうロマンチックなチョイスしたよね」



ホントに珍しく、ね。



「そうか」



せっかく褒めてるのに曖昧な返事。
でもきっと、それもテレてるんだよね。
もしかしたら、浪馬クンなりに、今日のデートを一生懸命に考えてきてくれたのかな。

その場限りの勢いなのを完全に否定できないのもキミなんだけど、
今日は、そう思い込んで浮かれることにしよう。
だって、2人で過ごす、初めてのクリスマスなんだから。



「これで雪でも降ってくれれば最高なんだけど」



「おいおい。雪なんて降ってきたらもっと寒くなっちまうぞ」




浪馬クンわかってないなぁ。
雪が降ったら、ホワイトクリスマスだよ?
雪が、イルミネーションの変わりになってくれるんだよ?

浪馬クンには寒いだけかもしれないけど、そしたら、もっとあったかくなれるよ。
もし、ホワイトクリスマスになったら、



「そしたらもっとくっついてあげるよ。それならいいでしょ?」



そう言って、自分の今の気持ちを伝える。
今度は、浪馬クンは瞳をそらさないで



「あ、ああ」



と頷いてくれた。



「・・・・・・」



嬉しくなって、腕にギュッと力を込める。
浪馬クンの肩に、顔をもっと深く埋める。

目を閉じて、大好きな人のぬくもりを、安らぎを、愛しさを、
触れているところ全部から伝わってくる、浪馬クンを感じる。



「・・・・・・」



浪馬クンも、黙って私のことを支えてくれる。
このときだけは、お互いをわかりあえる気がした。

ちょっと前までは、わかっていた「つもり」なだけだった。
私が浪馬クンへの気持ちに気づいていって、わかっていなかったことにも気づいた。
こうして恋人同士になっても、わからないことはたくさんある。


だけど、こうして寄り添っている間は、お互いが幸せだってわかっている。


それは、幼なじみのままでは、決してわからなかったこと。
いろんなことがあって、悲しいことがあったり、迷惑をかけたりして、
今、こうしていられることで、わかるようになったこと。


私は浪馬クンが好き。浪馬クンも、きっと、多分・・・私が好き。




「今の私たち、幼馴染には見えないよね。きっと」




私の「みんなに、何よりもキミに、こう思って欲しい」という願い。
目を閉じたまま、伝えた。




「タマ・・・・・・」




浪馬クンの身体が、少しだけ熱くなる。
しがみついている腕に、力が入る。
ほんの少しだけだけど、もっと内側に抱き寄せてくれた。


浪馬クン・・・・・


たいした事じゃないかもしれない。
でも、浪馬クンが、私の気持ちに応えてくれる。
その事が、すごく嬉しい。


その嬉しさが、気持ちが胸から溢れ出て。




「大好き、だからね」




気持ちを伝えたことは何回もあるけど、言えなかった言葉。
初めて言葉にして、「好き」と呟いていた。




「え?」




聞こえなかった浪馬クン。
当たり前だよ。聞こえないように言ったんだもん。




「あははっ。なんでもない」




いまさら何だって思うかもしれないけど、今の私には、これでじゅうぶん。
もう、浪馬クンは気づいているはずだから。

私の、キミに対する気持ちに。




「なんでもないってお前、今なんか言っただろ?」




もう、浪馬クンは気にしなくていいことなのっ。




「どうでもいいじゃん。そんなこと」




浪馬クンが、とっくにわかってることなんだから。




「そうか?どうでもない事を言われたような気がするんだけどな・・・・・・」




もう・・・ドンカンなんだから・・・・・

微笑みながら、しがみついた腕を少し引っ張る。




「そんなことよりさ、このまま少し歩こうよ。
恋人同士みたいにピッタリくっついて。ね?」





早くしないと、せっかくのイブが終わっちゃうよ。
私たちは、恋人たちにとっていちばん大切な日を一緒に過ごす、
正真正銘の恋人同士なんだから。

今だけは、ここにいる今だけは、
クラスメートでも、先生でも、この公園で初めて会う人でも、
「恋人同士みたい」って、思われたい。
そして、「恋人です」って、宣言したい。

普段は言えないけれど、今だったら、言えるから。


だから、いっしょに歩こうよ。
浪馬クンが選んでくれた、この道を。
絶対一生忘れない、初めてのクリスマスを。




「あ、ああ。それじゃ行くか」




テレながらだけど、ニッコリと笑ってくれた。




「うんっ」




暖かさを感じたまま、私たちは歩いていく。
今日という日は終わるけど、
2人一緒にこれからも歩いていく道を、ゆっくり、ゆっくりと。




―――――――――――――――――――――――――――




イブの夜が更けるにつれ、幻想的なデートも終わりに近づく。
それに伴って、心臓の鼓動の種類が変わってくる。


恋人たちの、聖なる夜。
ちょっと前のドラマなんかでも、この日のデートはすごく神秘的。
だけど、夜になると、やっぱり・・・・・・



「今日も・・・・・・するの・・・・・・・かな・・・・・・・」



そう思ったら、心臓が、どっくんどっくん鳴り出した。
うわっ、腕にしがみついてるから、浪馬クンに伝わっちゃうよ。



「タマ」



浪馬クンが声をかける。
びくんっとして、顔が熱くなる。
それを見られるのが恥ずかしくて、浪馬クンの腕にますます顔を埋める。



「お、おい・・・・・・歩きにくいだろーが」



「・・・・・・だって・・・・・・・・」




ぎゅうっ・・・・・・



「ドキドキしてきちゃったんだもん・・・・・・」



「・・・・・・・・」




・・・・・何か言ってよ、浪馬クン・・・・・


クリスマスだし、恋人たちの夜だし。
最後はやっぱり・・・・・・その・・・・・・・アレ・・・・・・だよね?


浪馬クンが、しないわけ・・・・・ないよね?
キミ、エッチの塊みたいな人だもんね?


それに・・・・・私だって・・・・・浪馬クンの前では・・・・・・



うあああああ!さすがに私からは言えないよー!!



顔を、ますます深く埋めてしまう。
うあーなんてエッチなんだ私はー!
浪馬クン!キミのせいなんだからねっ!



「お、おい、タマ・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・」




ちらっと、浪馬クンの顔を見る。
少し驚いている顔に、ドキッとして心臓が跳ね上がる。
きっと、浪馬クンにも、伝わっている。



「・・・・・・」



「・・・・・・」



「・・・・・・・・なあ、タマ」



「な・・・・・なあに?」



「・・・・・・・公園・・・・・・・・出るか」








「・・・・・・・・・・・・・・うん」



また、顔を埋めて頷く。
浪馬クンはそれをほどかないで、歩き始めた。



少しずつ、2人の息が荒くなってくる。

公園の入り口で、ハッキリと家に誘ってくれたとき。
私が頷いて、浪馬クンの家に向かう道のり。

近づくたびに、どんどん気持ちが高ぶってくる。

いつものエッチな気持ちに、クリスマスという特別な気持ちが加わってるから
心臓が破裂しそうなくらい、すごいことになっている。


浪馬クンにしがみついたまま歩いていて、ほとんど顔は見ていない。
見られない。
たまにちらっと見ると、ほとんど目が合っちゃって、慌てて視線をはずす。

それでも、腕は離さなかった。
浪馬クンの熱くなった腕から、キミも同じことを考えてるってわかるから。
私と同じことを考えて、興奮してるって、わかるから。





「今日で4回目、だね」



浪馬クンの部屋に入るたびに、必ずいう言葉。
もう、私の中でのお約束。

1回目より2回目。2回目より3回目。
そして、今。
回数を重ねるたびに、この部屋が大好きになっていく。

ここにいると、不思議と落ち着いてくる。
エッチな気分は高まるのに、なぜかリラックスできる。
自分の部屋と同じくらい、身体になじんでいるのを感じる。

ここは、私の家。
私の第2の家なんだって、思えてくる。


だけど、実際には帰らなくちゃいけなくて。
それが、もどかしくて。


私は、ずっと、浪馬クンのそばにいたいのに。
隣でバカな話をしたり、エッチ・・・・したり、笑いあったり・・・・したいのに。



「もういっそ、ここに住んじゃおっかな」



ここに来るたびにふくらんでくる、私の願い。



「へ?」



浪馬クンが、呆気に取られた顔で私を見る。



「それでずーっと一緒にいるの」



朝起きて、一番最初に浪馬クンの顔を見るのは私。
一緒に家を出て、手を繋いで学校に行って。
学校でも隣で喋って。
帰りは腕を組んで同じ家に帰って。
1日の最後はお互いの顔見ながら、抱き合って眠るの。


少女趣味だとは思うんだけど、浪馬クンがいいって言ってくれたら、
今日からでもそうしたいんだからね。
いろんな問題はあるんだろうけど、いつかホントになったらいいな・・・・・・




「お、お前なぁ・・・・・・」



ふーんだ。そんな呆れた顔しなくたっていいじゃん!
願望だよ、願望。



「あははっ、冗談だってば」




今はまだ・・・・・・ね。



「ったく。そういう冗談を言うヤツにはすっごいエッチなことしちまうぞ?」



もう・・・せっかくムードあったのに、すぐそっちに持ってっちゃうんだから・・・



「言わなくてもするくせに」



「うむ。その通りだ」




そんなところばっかり男らしいんだから・・・・・
全部ひっくるめて大好きなんだからしょうがないけどさ。

私だって・・・・人のこと言えないし・・・・・ね。

ね、浪馬クンっ♪



浪馬クンに抱きつこうとすると、急に後ろを振り向かれた。

ん?何してんの?

引き出しを開けだして、ゴソゴソやり始めた。
どうしたんだろう・・・・・

ワケがわからず、浪馬クンの姿を見つめる。
なんだか、嬉しそうな、恥ずかしそうな、そんな表情。



「なあタマ」



その表情のまま、私に呼びかける。


「ん?」


「今日って何の日か知ってるか?」


「何の日って、クリスマスイブでしょ?」


「ああ」


「それがどうかしたの?」




そう聞くと、もっと嬉しそうな表情になった。
顔に赤みが増した。


なぜか嬉しい予感がして、公園でのドキドキが甦ってくる。
私まで、赤くなってくる。


そんな私を見た浪馬クンは、
ちょっとカッコつけた声で、小さな包みを差し出した。



「メリークリスマス、タマ。オレからのクリスマスプレゼントだ」



「え?」



クリスマスプレゼント・・・・・・デートに夢中で、何にも考えてなかった・・・



「ありがとう・・・でも私、何にも用意してないよ・・・・・・・」



「バーカ、そんなん気にするな。オレがあげたいから渡しただけだ。
それに、別に今日のために買ったわけじゃないしな」



「は?」



「おう。自慢じゃないが、昨日おっちゃんに言われるまで
イブのことなんてすっかり忘れてたぜ。はっはは」



「・・・・・・・・・・・」




はっははじゃないよう。
そんな余計なこと言わなくていいのに・・・・・・

でもそれって、今日のこと知ってから、すぐに私を誘ってくれたってことだよね・・・・・・
それはそれで・・・・・・嬉しいな・・・・・・・



「じゃ、開けるぞ」



「え?浪馬クンが開けるの?」



「ああ、タマの反応が見たいからな」



「・・・・・・今どきビックリ箱、とか言うんじゃないでしょうね?」



「そんな子供みたいなことしねえよ。タマじゃあるまいし」



「私がそんなことするかっ!」




まったく・・・私が子供だからって、バカにして・・・・
少しありがたみを失いながら、中身を取り出す浪馬クンを見る。



「え・・・・・・?」



浪馬クンを見ると、穏やかに笑っている。
冗談を言う顔じゃなく、本当に私に期待してくれてる顔で。


そして、中身を取り出すと、手の上に乗せて、私の目の前に差し出した。



な・・・・・・こ、これって・・・・・・・・?



浪馬クンの手の上にのっているのは、青い箱。
お母さんに見せてもらったことのあるデザインと同じような、
ちょうど手のひらに収まるくらいの、小さな箱。



こ・・・・・この大きさって・・・・・・もしかして・・・・・・・



「ろ、浪馬クン・・・・・・・?」



「大丈夫だ。その中にまた箱が、というオチじゃないぞ」



「・・・そうじゃなくて・・・・・・・!」




もしかして、が、現実に近づいていく。
さっきじゃれてたときのドキドキとも、
エッチの前のドキドキとも、どれとも違う、異常なドキドキ。
箱を開けようとする浪馬クンの手を見て、身体が震えてくる。



もしかして・・・・・本当に覚えてて・・・・・・



浪馬クンの指が、箱のふちにかかる。
カタカタと音がするくらい震えてきて、正視できない。
それでも浪馬クンの笑顔を何度も見て、何とか落ち着く。


蓋が少しずつあがっていく。

笑顔のままの浪馬クンをよそに、ドキドキは最高潮。



そして、ある程度まで上がったところで、自然に箱が開いた。




キラッ




最初に見えたのは、部屋の明かりに反射した、鮮やかな光。

徐々に、その姿が私の目に映っていく。


そこにあったのは。



「受け取って、くれるよな?」



ネフェルティティで、私が何度も見ていた、


昔から浪馬クンが好きだったことを思い出させてくれた、


幼なじみという関係に埋もれて、記憶の底にしまいこんでしまった
大切な思い出を呼び出すきっかけをくれた、




あの、リングだった。




「う、うそ・・・・・・」



私は思わず、声を上げてしまう。




「え?」




浪馬クンが素っ頓狂な声を上げる。
だけど、私にはそこで気づく余裕はなかった。




「あのこと、覚えててくれたんだ・・・・・・」




間髪をいれずに、喋り続ける。




「あ、あのこと?」



「うん。私が幼稚園のころ、サンタさんに・・・・・・」




「・・・・・・」





そこまで喋って、浪馬クンの?マークが点滅しまくりの顔を見て、
ようやく気づいた。




「って、その顔は覚えてない顔か」




そっか、そうだよね。
私だって、忘れてたんだもん。




「す、すまん」




本当に申し訳なさそうに謝られる。


謝ることなんかないんだよ。
覚えていなかったんなら、余計に嬉しいことだってあるんだから。


私が、浪馬クンからもらって一番嬉しいものを、選んでくれた。
他の人からじゃ嬉しくない、浪馬クンからもらえるから、嬉しいものを。

クリスマス用じゃなかったとしても、私のために、選んでくれたんだよね?
私のことを考えて、「タマが喜びそうだ」と思って、選んでくれたんだよね?

思い出のことと関係なく、指輪を選んでくれたんだよね?




「あははっ、別にいいよ。そうじゃなくてもすっごく嬉しいし」




私の願いを、叶えてくれた。
あの時から、何年もの時をかけて。

それが、私にとって、一番のプレゼントなんだから。




「タマ・・・・・・」




ただ、これだけは聞かせてね。




「これって、幼なじみとしてじゃないよね」




私のこと、好きでいてくれるんだよね。
彼女だって、恋人だって、思っていていいんだよね。

私の気持ちは、今のままでいて、いいんだよね。




「ああ」




浪馬クンが、私への気持ち全部をぶつけてくれるような勢いで、
深く、即答してくれた。




「・・・・・・ありがとう、浪馬クン」




浪馬クンの手を、そっと包み込む。

指輪にこめてくれた想いと、浪馬クンの手から伝わる私への気持ちを
全部受け取るつもりで、指輪の入った箱を、大事に、大事に受け取った。



想いが抑えきれなくなって、浪馬クンを見つめる。
浪馬クンも、私を見つめている。



2人の想いが、視線を交差させる。
どちらからともなく、手を差し出す。




吸い込まれるように、私たちは抱き合った。





――――――――――――――――――――――――――――――――――





「まったく・・・・・・」



シャワーを浴びながら、プリプリと怒りながら、でもニヤニヤと笑い続ける。


「まったく・・・長時間かっこよくいられないんだから・・・・」


そりゃ、私だってしたいんだけど。
せっかくあんないいムードにしてくれたんだから、こう・・・
さりげなく・・・・シャワーに促してくれたっていいのにさ。


抱き合っただけで・・・あんなに・・・大きくしちゃって・・・・・・


それだけで、私も・・・汗出てきちゃうんだもん・・・・・
興奮しちゃったのバレバレで、恥ずかしいじゃない・・・・・・


「・・・エッチなんだから・・・・・・」


自分のことを棚にあげて、笑いながら毒づく。
ま、気取りすぎるのも、私たちらしくないしね。



「・・・・・・嬉しかったな・・・・・・・」



リングのことを考えて、頭がボーっとなる。
エッチなことしか考えられない浪馬クンが、選んでくれたプレゼント。
私に、似合うかな。


「いつ・・・つけようかな」


学校ではやっぱ・・・・・マズイよね。
噂とか・・・されちゃうかな?
それは、いいってゆーか・・・むしろ、嬉しいけど・・・・・・

じゃあ、いつがいいのかな・・・デートのとき?
・・・失くさないように気を使っちゃいそうだ・・・・・・
気を使って、浪馬クンとの話が楽しめないなんて、イヤだし・・・・


「じゃあ・・・・もっと、たいせつなとき・・・・・・・とか?」


たいせつなとき・・・・・それって・・・・・・!!


「きゃー!きゃー!きゃー!!」


一瞬、白い服に身を包んだ私たちの姿が浮かんで、
ついつい大声をだしてしまう。
わわっ!浪馬クンに聞こえちゃうよっ!
ダメダメ!私たちはまだそこまで・・・・・っ!


「うう・・・・・ちょっと保留しよう・・・・・・・あ」


シャワーを浴びてから、結構な時間がたってるような気がする。
やばっ!浪馬クン待たせちゃってる!

浪馬クン、この時間、どうしてるのかな・・・・・
これからどうするかとか、考えてるのかな・・・・・・
どうやって・・・・気持ちよく・・・・なるか、とか・・・・・・・
私だって、いつもはここで考えて・・・・・・想像・・・・・・して・・・・・・


「うわあ!またああ!!」


浪馬クンを想像してしまい、再び大声。
ホントに聞こえてないよね?ね?


でも、いっつも待たせちゃってるんだよね・・・・
いくら私が、少しでもキレイな身体で・・・抱かれたいから・・・って、
もう少し、考えないとな・・・・・・


「いっしょに・・・・って、誘ってみようかな・・・・・・」


オッケー・・・して、くれるかな。
でも、そうなったら、浴びてるところとか、見られちゃうわけで・・・
うう・・・・エッチ以外で裸見られちゃうのって、何か恥ずかしいかも・・・・

浪馬クンも、当然裸なわけだよね・・・・
ってことは・・・・・・その・・・・・・

きゃーきゃー!いつまでたっても汗流れっぱなしになっちゃうよお!


と、またエッチな妄想にいってしまったその時、



「タマー、オレも一緒に浴びるぞー」



な、なんですとーーーーーーーー!!



浪馬クンが、すでに扉に手をかけようとしているっ!



「えっ!キャッ、ちょ、ちょっと待ってよっ!」



まだ心の準備ができてないっ!
今、浪馬クンの裸見ちゃったら、私っ!
ど、どこっ!?タオル!タオルどこっ!?
わーん、見つかんないよぉっ!



ガラッ



「あ・・・・・・」



浪馬クンの目に映ったのは、シャワーの範囲から遥かに外れた場所で
必死にタオルを探している、私のおバカな姿。


「お前、何やってんだ・・・・・・」


「ちょ、ちょっとタオルを・・・・・・」


「・・・・・その隅っこにブン投げてあるヤツか?」


「・・・・・・・・・・・」



しおしおしお。


「な、なんでいきなり入ってくるのよっ!」


「だ、だってよ。マッパで待ってるのがあんまりにもマヌケでよ。
それに、今日は特にお前が遅かったしよ」


「あう・・・、お、女の子は、準備に時間がかかるのっ!」



まさか、「妄想してました」なんて言えないもん・・・・・・


「まあいいや。せっかくだから、背中を流してやろう」


「い、いいよぉ。もう洗っちゃったもん」


「・・・くそっ。ならもっと早く入ればよかったぜ」


「・・・・・・前から考えてたの?」


「おう。正直前回のシャワーから潜入しようとしてたぜ」


「・・・・・・・・・・エッチ」


「そういうなって、今度はお前が待っててみろよ。結構マヌケだぜ?」


「それもヤダなあ・・・」


「だろ?だがまあ今回は仕方ねえ。出るか」



浪馬クンが、すごすごと出ようとする。


あ・・・・・・・


「・・・・・・待って」


「え?」


「私が・・・・・・背中・・・・・・流してあげる」


やっぱり・・・・浪馬クンといっしょに・・・・・・・


「タマ・・・・・・」


「・・・・・・ダメ・・・・・・かな?」


「そ、そんなわけねえだろ」


「やったあ♪じゃあ、座って座って」


「お、おう・・・・・」



両手を挙げて喜ぶ私を見て、浪馬クンが急に顔を赤くする。


「どうしたの?」


「い、いや・・・・・」


「言ってよぉ、気になっちゃうよぉ」


「・・・・・じゃ、言うぞ。お前さ・・・・・・」


「うん・・・・・」


「・・・やっぱり胸、デカイよな」


「!!?」


「や、こうやってマッパで立ってることって、あんまりねーだろ?」


「・・・・・・・・・」


「こうしてマジマジ見ると、やっぱりデカイよなー・・・・・ってな」



バキッ!!



「い、いってえ!言えっつーから言ったんじゃねーか」


「バカッ!こんな時に恥ずかしいことゆーな!」


「こんな時に・・・・ってお前、これからするんじゃねーか」


「うるさいっ!せっかく私が見ないようにしてたのにっ!」


「・・・・・見ないように?」


ボッ!!


「うわあああ!今のはナシ、ナシだからねっ」


「・・・・・見ないように・・・ねえ・・・」


「くっ・・・・これ以上殴られたくなかったら座りなさいっ!!」


「・・・・・・・・・・・はいはい」



ううう・・・・・バレた・・・・・・・・





ごしごしごし・・・・・・・・



しばらくの間、2人とも黙っていた。
私はもちろん、さっきの事でバレちゃったのが恥ずかしかったからだけど、
浪馬クンは、何で・・・・だろう。

いつもなら、私が失敗すると、それはもう、鬼の首を取ったかのような勢いで
問い詰めてくるのに・・・・・
背中向いてるから表情もわかんないし・・・・・・

もしかして・・・殴っちゃったから・・・・・怒ってる、とか?
あれは・・・浪馬クンだって悪いし・・・・・
でも・・・・・・



「・・・・・・ねえ」


「ん?」


「なんで・・・・・・黙ってるの?」


「あ、ああ、すまん」


「さっきのことなら・・・・・もういいから・・・・・・」


「は?何がだ?」


「だから・・・・私の・・・・・・」


「・・・・ああ、胸のことか、そうじゃねえよ。殴られた時点で、オチはついてる」


「じゃあ、なんでよ・・・・・」


「ん、ああ・・・・・・」



曖昧な声。


「不安に・・・・なっちゃうよ・・・・・・・」


「タマ・・・・・・」


「浪馬クン・・・・・・・」


「・・・・・・笑わないか?」


「・・・・・え?」


「笑わないって約束したら、教えてやる」


「そ・・・そんなことなの?」


もしかして、ニヤニヤしてただけ・・・・とか?


「どうだ?」


それでも、どんなに変なことでも。
浪馬クンの思っていることを、私は知りたいから。


「うん・・・・・・わかった」


「そうか・・・・・」



浪馬クンは後ろを向いたままで、頭をボリボリ掻いた。
そして、少しだけ息を大きく吸うと、答えた。




「いいな・・・・・・・・って思ってな」




え?

想像していたどれとも違う答えに、少し混乱する。



「いいな?」



「ああ。こういうのっていいな・・・・・って、思っちまってな」



「・・・・どういうことよお」




意味がわからなくて、質問してみる。



「あーもう。わかったっていいじゃねーか。ガキ」



「どうせ私はガキですよーだ」



「はっはは。スネんなよ、オレだって結構恥ずかしいんだから」



「恥ずかしい?」




浪馬クンはそこまで言うと、大きく深呼吸した。
まるで、緊張しているみたいに。



「こうやって、俺ん家にお前がいて・・・・・・

一緒に風呂入って・・・・・・

背中流してもらって・・・・・・

ずっと、一緒にいるのが・・・・・・・・こう・・・・・・・・なんか・・・・・・」



「え・・・・・・・」



「もし、いっつもこうしていられたらいいな・・・・・・つーか・・・・・・

ずっとこうしていたい・・・・・・つーか・・・・・・・・」




浪馬クン・・・・・・・



「・・・・・・・そういう、ことだ」



「浪馬・・・・・クン・・・・・・」




浪馬クンの突然の攻撃に、うまく言葉が出てこない。
こんなのって・・・・反則だよ・・・・・・
何て言ったらいいか・・・・・・わかんないよ・・・・・・



「なあ・・・・・・」



「・・・・・・な・・・に?」



「もしよかったら・・・・・・だけどよ」



「うん・・・・・・」



「次から・・・・・シャワーも・・・・・一緒に浴びねーか?」



「・・・・・・・・・・」




それって・・・・いつも・・・・いっしょに・・・・・・・・



「・・・・・・・どうだ?」



このタイミングで・・・・・そんなこと言われたら・・・・・・



「・・・・・・・・」



「い、イヤなら忘れてくれ。別にオレは・・・・・・・」





ぎゅっ・・・・・・・




「・・・・・・なあッ!!?」




私は、後ろから腕をまわして、浪馬クンに抱きついた。
そのまま、顔をくっつけて、




「・・・・・・・・・・・・・・・・うん」




こう答えるしか、ないじゃない・・・・・・




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「浪馬クンの背中・・・・・・大きいね・・・・・・・・」




腕を回したまま、浪馬クンの背中を感じる。
何かあるたびに、浪馬クンの存在の大きさに気づく。
先週より昨日。昨日より今日。そして、今。
これが限界だと思っていたのに、それを簡単に記録更新しちゃう。

どこまでも、どこまでも、大きくなればいいな。
そう思いながら、回した腕にちょっと力を込めた。



「もうちょっと・・・・・・こうしてていい?」



「・・・・・・・・・・・」



「背中・・・・・感じていたいから・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・」




なぜか、浪馬クンは答えない。



「浪馬・・・・・・・クン?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・」



「どうしたの?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「ねえってばあ・・・・・」




ゆさゆさゆさ。



抱きついたまま、身体をゆする。
私、ヘンなこと言ってないよね?



すると、



「・・・・・・・・・・・・・・・ってる」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?聞こえないよお」




ゆさゆさゆさ。




「ぐわあああああああああああっ!!」




いきなり、浪馬クンが奇声を上げた。



「きゃああっ!」



「きゃあじゃねえ!当たってる!ムネ当たってるっつーの!!」




「・・・・・・・・・へ?」



当たってる・・・・・?
改めて、自分の今の状況を確認してみる。

そこには、真っ裸で後ろから抱きつき、胸を密着させている私の姿が・・・・・



「・・・・・・・・・!!」



わ!私、なんてことを・・・・・・!


突き飛ばすように離れて、しゃがみこむ。



「バカっ!エッチ!!」



「お前がしてきたんだろーが!
こっちだってあんないいムード壊せねえから、耐えてたんだ!!」



「あうう・・・・・・」




それで、言葉が出せなかったんだ・・・・・・



「ったく、こっちは遠慮なく反応しやがるし!」



「え?・・・・・・・うわあああ!」




こっちを向いた浪馬クンは、ものすごく・・・・大きくなっていて・・・・・・・



「バカアっ!見せるなあっ!」



「だからお前のせいだって言ってんだろーが!
毎回見てるクセに今更恥ずかしがるな!」



「そんなこと言ったってえ!」




しばらくの間、裸のまんまで「どっちが悪いか会議」で大騒ぎ。
お風呂でなにやってんだ私たちは・・・・・・



「はー、はー、はー・・・・・」



「はー、はー、はー・・・・・・」



「・・・・・どうやらこの議論はムダのようだ」



「・・・・・みたいだね」




あきらめて、2人で向かい合う。
お互いの裸が、それぞれの目に映る。



「・・・・・・ふふっ」



「な、なんだよ」



「クリスマスなのに・・・・私たち、何やってんだろーね」



「そうだな。ホントに恋人なのか?オレたちは」



「・・・・・・・・・・それは、間違いないよ」




こんなバカなことしてても、それだけは、間違いないよ。
私は、力強く答える。



「私たちらしいってことで・・・・・・いいじゃん」



「タマ・・・・・・」



「ダメ?」



「・・・・・・・・いや、ダメじゃねえ」




そう言うと、私を見つめてくれる。
私も、目の前の恋人を、見つめる。



「なあ」



「ん?」



「そろそろ・・・・・・出ねーか?」



「・・・・・・・・・・・・うん」




そっと身を寄せて、頷いた。




「そうだ、タマ。お前にもう1つクリスマスプレゼントがあるんだ」



「え?これ以上もらったら・・・・・」



「っつっても、この前の約束も兼ねてるけどな」



「?」



「今日は、たっぷりサービスしてやる」



「!!」




な・・・・・そこでそのセリフ!?



「お前の限界まで、たっぷり感じさせてやるよ」



「だ・・・・・それはワガママだって言ったでしょっ!」



「まあそう言うな。だからプレゼントだって言ったんじゃねーか」



「・・・・・・・」



「それとも・・・・・・・イヤか?」




ドキドキドキ・・・・・・

そんな・・・・・・浪馬クンにそんなことされて・・・・・・・
いつもより・・・・優しくされて・・・・・・



「イヤじゃ・・・・・・・ない」



イヤなわけ・・・・・・ないじゃない・・・・・・・



「じゃあ、行こうぜ。聖なる夜の、始まりだ」



ニッコリともニンマリともどちらともとれる、
でも、本当に楽しそうなことだけは分かる笑顔。



「もう・・・エッチ・・・・・・」



「それはお前も同じだろーが」




浪馬クンが私の肩を、そっと抱き寄せる。
そのまま引き寄せ、顔を近づけて囁く。



「2人・・・・いっしょだ」



いっしょ・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」



ドキドキを、もう押さえようとしない。
正直な期待に、浪馬クンに、身を任せちゃうことにして、
2人一緒に、シャワールームを出た。





「ん・・・・・・っ」



出た瞬間、浪馬クンが私の唇を奪ってくる。
待ち望んでいた唇を、迎え入れる。



「ん・・・・・・んふうっ・・・・・・・」



いつもより、情熱的に舌を差し入れてくる。
絡み合う粘膜で、頭がボーっとしてくる。



んっ・・・・・舌の・・・奥まで・・・・・なめ・・・・・・んんっ・・・・・・
浪馬クンの・・・・舌・・・・・・気持ちいっ・・・・・・・・よぉ・・・・・・
やっ・・・・・そんなに・・・・・されたら・・・・・・
痺れて・・・・・きちゃ・・・・・・・ううっ・・・・・・・・・



「・・・・・・ぷはあっ・・・・・・はあ・・・・・はあ・・・・・・」



息が続かなくなって、お互いに唇を離す。
私と浪馬クンの間に、透明の糸が輝いている。


・・・・これって・・・・いつ見てもエッチだ・・・・・・



「浪馬クン・・・・・ベッド・・・・・んふうっ!!」



言葉を交わす間も与えてもらえず、再び舌がねじ込まれてくる。


やっ・・・・いつもなら・・・・ベッドに・・・・・・んんんんーっ!


突き刺すように差し込まれた舌が、呼吸をふさぐように愛撫してくる。
もうすっかりバレている私が気持ちいいところを、
溶かしてしまうくらいに、何度も何度もねぶってくる。



「んうっ・・・・・・・・んっ・・・・・・・・んんんんっ・・・・・・・!」



ふわあっ・・・溶けちゃう・・・・・私・・・・・溶けちゃうよぉ・・・・・・
そんな・・・・・・同じとこ・・・・・・・何回も・・・・・・・んんんっ!!



とろっ・・・・・・



〜〜〜〜!!

や・・・・・キスだけで・・・・・・垂れ・・・・・いやあっ・・・・・・
まだ・・・・・口しか・・・・・触られて・・・・・ないの・・・・・にっ・・・・・
身体・・・・・熱い・・・・・熱いよぉっ・・・・・・・!!


舌も頭も痺れて、もうマヒしちゃいそうなくらい。
なのに、私の大事なところから流れてくる感触だけは、ハッキリとわかる。



いやっ・・・・・いやあっ・・・・・・どんどん・・・・・溢れ・・・・・・・



「・・・・・・タマ」



浪馬クンが、私の名前を呼ぶ。
唇を離していたこともわからなかった。
そのくらい、甘くてエッチな痺れが、私を虜にしていた。



「・・・・・・なあ・・・・に?」



呼吸がうまくできないまま、答える。



「自分の胸・・・・・見てみろよ」



「えっ・・・・・・・」




言われるまま、視線を下に移す。



!!



「いやっ・・・・・・・!!」



こ・・・・こんなに・・・・・・勃って・・・・・・・



「まだ・・・どこも触っちゃいねえのにな」



「いやあ・・・・言っちゃ・・・・・ダメぇ・・・・・・・」




首を振ってイヤイヤをする。
でも、それは気持ちだけ。
言葉だけの否定だって、私の身体はちゃんとわかってる。

だって、どんなに否定しても、乳首は反比例して固くなっていくの・・・
どんなに否定しても、溢れてくるのが止まんない・・・・・!



「まだ、サービスは序の口だぜ?」



浪馬クンの言葉に、ビクッと、身体が反応する。
その響きに、もっと尖り、溢れ出してくる。



ふああぅ・・・・もう・・・・・太ももまでっ・・・・・・・!!



「・・・・・・・・・」



太ももで光っている部分をめざとく見つけた浪馬クンは、
そっと手を差し入れてくる。



「ふあああ・・・・・・・!」



自分で・・・・触ったって・・・・・なんともないのに・・・・・・!
なんで・・・・・・浪馬クンだと・・・・・・・こんな・・・・・・ああっ!

ぜんぶが・・・・感じるとこ・・・・なっちゃってる・・・・・・みたい・・・・
だよぉ・・・・・・ひいんっ!



太ももを撫で回しながら、また舌を、口の中を愛撫してくる。
やあ・・・・内側の・・・・ほっぺ・・・・までっ・・・・・!!



「んふうっ・・・・・・ふああ・・・・・・ああっ!」



やあっ・・・・足が・・・・・・・ガクガクして・・・・・・
立って・・・・・らんない・・・・・・!
キスと・・・・・太ももだけなのに・・・・・・!



くたっ・・・・と、浪馬クンに身体を預けてしまう。



「お、おい・・・・・」



「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・ろ、浪馬ク・・・ン・・・・・・」



「もう・・・・立てないか?」



「・・・・・・・・・うん・・・・・・・もう・・・・・」



「もう・・・・・なんだ?」



「いじわるぅ・・・・早く・・・・・ベッ・・・・・ドに・・・・・・」




浪馬クンは、了解の代わりに、軽くキスをする。
全身が敏感になっている私は、それだけでビクンっとなる。




とさっ・・・・




ベッドに連れてってもらった私は、座ることすらできずにあお向けに倒れこむ。
その上から、浪馬クンが優しく覆いかぶさってくる。
瞳に自分の顔が映るくらい、顔が近づく。



も・・・もっと・・・・・・・キス・・・・・・・



すっかり浪馬クンのキスの虜になってしまった私は、
おねだりするつもりで目を閉じる。
浪馬クンの両手が、私の頬にあてがわれる。
少しだけ、顔を横に傾けられる。


そのままキス・・・・・・と思っていたら、



ぺろ・・・・・・



「〜〜〜〜〜〜!!!??」



いきなり、耳の中に激しい感覚。
浪馬クンの舌は唇ではなく、耳へと伸びていた。
驚きと甘美の二重奏に、声のでない喘ぎ声を上げる。



そ・・・・・・いきなり・・・・・・・っ
耳・・・・弱いって・・・・・知ってる・・・・・のに・・・・・!
そんなに・・・・・なめちゃ・・・・・ああああんっ・・・・・・・・・



「ホントにタマ、耳弱いな」



「いやあっ・・・・・・いやあっ・・・・・・・」



「イヤならやめるぞ?今日はお前の希望通りにするつもりだからな」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「どうだ?」



・・・わかってて・・・・聞かないでよぉ・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・して・・・・・」



「・・・・だろうな」




いじわる・・・・・ひああああっ!



間髪入れずに、耳への愛撫が再開される。
耳たぶをなめられたり、



「んはあああっ・・・・・」



軽く息を吹きかけられたり、



「ふわああっ・・・・ぞくぞく・・・・・って・・・・・!」



甘噛みされたり、軽く歯を立てられたり、



「ひああああっ・・・・・んはあああ!!」



同じことを、もう片方の耳にもされたり、



「そ・・・・そんな・・・・・そっち・・・・までっ・・・・・!」



「タマはどっちが感じるんだ?」



「・・・・・両方・・・・・りょうほお・・・・・・ひあああ!」



「ホントにエッチなヤツだな」



「だって・・・・浪馬・・・・クン・・・・・が・・・あああっ!!」




浪馬クンの体勢が不自然だから、なめる位置とか、力の入り方が
同じところでも、少しずつ変わる。
それがいっそう刺激となって、私を甘く痺れさせる。

全身が、快感に包まれていく。
違うのは、尖りすぎた胸の先の痛みと、
とろとろとだらしなく溢れてくる、私の恥ずかしい液の感触。
それ以外は、もう、快感しかわからない。



「溶けちゃう・・・・・・とけちゃうよぉ・・・・・・!」



心で思っていることが、そのまま言葉になって出てきてしまう。
言葉をためておく入れ物が、壊れちゃったみたいに。



「いいぜ。溶かしてやるよ」



「浪馬クン・・・・・・ふああああっ・・・・・・・」




そう言うと、耳から舌を離し、首すじへと移動させる。
普段お風呂で洗ってもなんにも感じないのに、
浪馬クンに、触られ、なめられると、一瞬にして感じる部分へと変わる。



「ひあああっ・・・・ふわあああ・・・・・」



「ここも・・・・いいのか?」



「うんっ・・・・・うんっ・・・・・!
くすぐったいのに・・・・・気持ちい・・・・・・ひあああっ・・・・・!」




言ってしまうと、浪馬クンの責めが、更に執拗になる。
耳と同じように、なめたり、キスしたり、軽く吸われたり。



「やああんっ・・・・・ふわふわ・・・・するよぉっ・・・・・」



「そんなに強くしてないぞ?お前、キスマークつくのイヤがってたからな」



「・・・・・・・あはあ・・・・・・いいよ・・・・おっ・・・・・・・」



「え?」



「ついても・・・・いいからぁっ・・・・もっと・・・・もっとぉ・・・・・!」




見られたって、構わない。
快感と愛が、思考を支配する。



「・・・・希望とあっちゃしょーがねえな」



そう言うと、首すじに吸い付き、強く吸い上げてきた。


ぞくぞくぞくっ!



「あはあああああああっ・・・・・・・!」



思わずのけぞるくらい、強い快感。
身体がビクッ!って、激しく震える。
一瞬、視界が白くなった。



「ふああ・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・・・」



「お前・・・・もしかして、軽くイッたんじゃないか?」



「はあ・・・・はあ・・・・・わ・・・わかんない・・・・・・はあ・・・・」




今までにない体験に、そうなのかどうかの判断がつかない。
でも、まだ浪馬クンと触れていたい。
これが、今考えられる全てだった。



「浪馬・・・・クン・・・・・・」



下から腕を回して、浪馬クンの首の後ろで手を繋ぐ。



「・・・・・ったく」



みたび、愛撫の再開。



「あっ・・・・・・・」



私をころんと裏返し、うつぶせの姿勢にさせる。
すると、今度は背中をゆっくりと撫で始めた。


ぴくんっ!



「・・・・・・んんっ・・・・・・・・」



ここにも、甘い刺激を感じる。
大きな手のひらが動くたび、声が勝手に出ちゃう。



「んんっ・・・・・・んはあっ・・・・・・」



「・・・・・ここも感じるのか?」



「だって・・・・・そんなに優しく・・・・・・・んんんっ・・・・・・」



「これじゃあ、夏にサンオイルも塗ってやれねえなあ」



「・・・・・・・やあ・・・・・・・・塗ってよぉ・・・・・・・」



「・・・・・・・・わかってるよ。来年は、2人で行こうな?」



「・・・・・・・・・・うんっ」




少しだけほんわかした気分になったのもつかの間、
手の動きが舌に変わる。



「んああああっ!」



「お?やっぱなめる方がいいみたいだな」



「だって・・・・そんな・・・・・いきな・・・・・・あああっ!」




舌の動きが、言葉を止める。
私の反応を楽しむように、様々な所に這っていく。
背中全部が浪馬クンの舌で覆われちゃうくらいに、丹念に、丹念に舐められる。
多分、浪馬クンが作った何重もの線が、私の背中にできている。



「ふわああああっ・・・・・・んんあっ・・・・・・・」




それからも、浪馬クンは様々なところを愛撫してくれる。


腰、太ももの裏、ふくらはぎ、つま先まで。


私が少しでも反応したところは決して見逃さず、手を舌を這わせる。
その度に私は自分の知らなかった場所を開発され、恥ずかしい声を上げる。



「んふああああ!あああああっ・・・・・!」



今日1日で、浪馬クンの手が、舌が、あらゆる所に触れている。
触って、感じさせてくれている。



なのに。



こんなに激しく・・・・・舐めて・・・・・・・触って・・・・くれる・・・・・・のに・・・・・
なんで・・・・・なんで・・・・・・・・




いつも・・・・のとこだけ・・・・・・触ってくれないのよぉ・・・・・・・




感じすぎているのに、どうしようもなくもどかしくなる。
全身を愛撫してくれている浪馬クンなのに、
全く触ってくれてない場所・・・・・・




なんで・・・・・胸・・・・・・触ってくれないの・・・・・・よぉ・・・・・・




いつも、真っ先に触ってくる、私の胸。
浪馬クンに触られてから、すごく感じやすくなった、私の胸。
さっき、キスだけで、すごく尖っちゃった、胸。


なのに、一向に、そこを触ってくれる気配がない。



唇を、耳を、首すじを、背中を。
触られるたびに、声をあげるたびに、敏感に反応してるのに。
今までにないくらい固くなって、大きくなってるのに。


あえて、避けてるみたいに。



もう・・・・・私・・・・・・胸・・・・・・
こんなに・・・・触られたいって・・・・・・舐められたい・・・・・って・・・・・
思ってる・・・・・のに・・・・・・っ!!



「・・・・・・なんで・・・・・?」



「ん?」



「なんで・・・・・・触って・・・・・・・くれないのよぉ・・・・・・」



「どこをだ?」



「・・・・・わかってる・・・・・くせに・・・・・」




・・・・浪馬クン・・・・・言わせたいんだ・・・・・
そう思ったら、ますます先が反応する。
触って欲しくて、限界まで大きくなっている。



「もう・・・・・痛い・・・・・・のぉ・・・・・・」



「言ったら好きなだけしてやるよ」



「・・・・・・いじわるぅ・・・・・・」




言葉とは逆に、身体はもっともっと熱くなってくる。
早く触ってって、摘んでって、身体が訴えている。



「ターマ?」



やあ・・・・そんな優しい声で、呼ばないでよお・・・・・
このままじゃ・・・・もう・・・・・・ガマン・・・・・・できないっ・・・・・・!



「・・・・・・・・・ムネ・・・・・・・・・」



「ん?」



「胸・・・・・・・触って・・・・・・・・?」



「それだけでいいのか?」



「イヤあ・・・・・・・」




身体が求めている、欲望の、限りを。




「胸・・・・・・もんで・・・・・・・!
浪馬クンが・・・・いつも・・・・・してくれる・・・・・みたいに・・・・・・っ!」





心が飛んじゃうくらい、気持ちよくなれることを。




「ち・・・・・くび・・・・・・・つまんで・・・・・・
ぺろぺろ・・・・って・・・・・・・・なめてぇ・・・・・・・・・!!」




「よーし、よく言った」



「あはあ・・・・・・おねがい・・・・・だよぉ・・・・・・」




浪馬クンは待ちかねたように、私の胸に手を伸ばした。
その先が、私の乳首に触れる。



「ふわああああっ・・・・・・」



人差し指と親指で、優しく摘む。
それだけで、身体に電流が走り、溢れさせる。



その指を、軽く、



こりっ




「あはああああああーーーーーーっ!!」




待ちかねていた、刺激。
それでいて、あまりにも強い快感に、歓喜の叫びをあげてしまう。

やあっ・・・・外に・・・・・聞こえちゃう・・・・よぉ・・・・・

そう思うと、ますます快感が高まってくる。



「胸、そんなに気持ちいいのか?」



「・・・・うんっ・・・・・あふっ・・・・・ビリビリ・・・って・・・・・あはあっ」



「ほうほう。じゃあいやらしい胸を責めるとしますか」



「はああ・・・・・うんっ・・・・・・・してぇ・・・・・・はああっ・・・・・・」




言いながら、反対の手が、胸を掴む。
優しく、揉みしだく。



「ふああああっ・・・・・・・・」



「おー、柔らけえ」



「いやあっ・・・・・そんなに・・・・・・優しく・・・・・・ふわああっ」



「ん?乱暴なのはイヤなんだろ?」



「・・・・そうじゃ・・・・なくて・・・・・きゃああんっ!」




気持ちいいっ!気持ち・・・・・・いいのぉっ・・・・!


下から優しく揉まれて、正面からこりこりと摘まれて。
焦らされるのが、こんなに気持ちいいなんて、思わなかった。
それでも私は、浪馬クンの手がもっと欲しくて、いやらしいおねだりをしてしまう。



「・・・・・こっちも・・・・こっちもぉ・・・・・・」



「ん?こっち?」



「いじわる・・・・・しないでよぉ・・・・・・
こっちの・・・・・むね・・・・・・・も・・・・・・・・・して・・・・・ぇ・・・・・・」



「・・・・・りょーかい」




私が何もできないから、すっかり余裕の浪馬クン。
反撃したいのに、身体が反応できない。
浪馬クンの動きに、身を任せることしかできない。
いくら・・・・プレゼントだから・・・・って・・・・・・!



「あはあっ!・・・・・んうう・・・・・・ふああああっ!」



両方の胸を優しい手つきで揉まれて、また声が高くなる。
どんどん、柔らかくなっちゃうみたいな気になる。



「やはあっ・・・・・気持ち・・・・・・いいの・・・・・・・!」



「それはよかった。オレも気持ちいいぞ」



「・・・・・・ホン・・・・・・ト・・・・・・?」




わたし・・・・・なんにも・・・・・・してない・・・・・のに・・・?



「ああ。お前のその気持ちよがってる顔見てると、こっちまで伝染ってくるぜ」



「やああっ・・・・・・そんな・・・・・・恥ずかし・・・・・・・んああっ」



「嬉しいぜ。タマがこんなになってくれてよ」



「!んふあああっ・・・・私・・・・・もっ・・・・・」




嬉しいのっ・・・・!浪馬クンに触られて・・・・・・
私も・・・・・・嬉しいよぉ・・・・・・!



「じゃあ、もっと気持ちよくしてやるからな」



「・・・・・・え・・・・・?」




かぷっ・・・・・




「ふあああああああっ!!」




ち・・・・くび・・・・・・・舌がっ・・・・・あああっ!
ひああ・・・・すごい・・・・すごいよぉ・・・・・・・!!



唇で挟まれて、また違う種類のビリビリが走る。
ホントに雷が落ちてきたみたいな、体中を一瞬で駆け巡る電流。
痛いくらいなのに、気持ちよすぎて。



「おー、こっちは固えな。胸とは大違いだ」



「だって・・・・だってえ・・・・・・!」



「なんか、ポロッて取れそうだな」




そう言いながら、軽く歯を立ててくる。



びっくう!!



「ひゃあああああああああ!!」



力は入ってないのに、ホントに取れちゃいそうなくらいの衝撃。
噛まれるたびに、身体が跳ねちゃう。



「はああっ!・・・・・取れちゃう・・・・・・取れちゃう・・・・・・!」



「じゃあ、やめるか?」



「いやあっ・・・・・・」




即答。



「知ってるよ」



「ばかぁ・・・・・・ふああああ!」




噛んだり、吸ったり、舌で叩いたり。
同じ場所なのに、その度に、違う電流が流れる。
でも、一言で言っちゃうと、



「気持ち・・・・・気持ち・・・・・・・いいっ・・・・・・!」



これに、集約されちゃう。



「溶けちゃう・・・・・・乳首・・・・・・あはあっ!」



私が叫ぶと、それを望んでいるかのように、
ぺろぺろぺろぺろと、アメを舌だけで溶かすみたいに舐めまくる。



やだっ・・・・・ホントに・・・・・・・溶け・・・・・・っ!!




「ふあああああああああああん!!」




また、一瞬だけの、白い風景。
やっぱり・・・・これって・・・・・イッ・・・・・・



「タマ」



浪馬クンが、唇を求める。
私は、吸い込まれるように、舌を差し入れていく。
唇より先に舌が触れ合い、出したまま絡み合う。
空気に触れ、自分の目でもチラチラと見える舌が、すごくいやらしい。



「んふうっ・・・・・・ううう・・・・・んん!!」



さっきと違うのは、舌の愛撫に胸の愛撫が加わっていること。
決して離れない手の感触が舌へと伝わり、
唇も、胸も、両方の快感が増幅されていく。



ん・・・・・同時に・・・・・・・・はあんっ・・・・・んん・・・・・



言葉はだせないけれど、浪馬クンは、きっと全部わかっている。
私が気持ちいいって言いたいって。
だって、舌を離そうとすると、吸い付いてくるんだもん。
そうやって、快感を身体に閉じ込めちゃうつもりなんだ。
私をもっともっと、エッチにしちゃうために。

その作戦・・・・成功してるよ、浪馬クン。
だって、溢れてくる量・・・・・どんどん、増えてるもん。
とろとろって・・・・自分じゃないみたいに・・・・・
もうヒクヒクして・・・・・止まんない・・・・・・・



「あふう・・・・・んんんんっ・・・・・・」



「ぷはあっ・・・・・・」




ようやく、舌が離れる。
浪馬クンが、いやらしく、優しい笑顔で笑う。
言いたいことはたくさんあるのに、



「浪馬・・・・・クン・・・・・・・」



名前を呼ぶことしかできない。



「やっぱり、胸は外せねえな」



「・・・・・・だって・・・・・」



「キスだけより、反応が段違いだ」



「・・・・・バカあ・・・・・・・」



「今度はもっとすごいと思うぞ?」



「・・・・・も・・・・もっと・・・・・・?」




これ以上・・・・・感じたら・・・・・・どうなっちゃうの・・・・?



あまりの快感の予感に、恐怖すら感じる。
それに構わず、浪馬クンは顔を私に近づけ、



かぷっ・・・・・



もう一度、耳を噛んできた。



「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」



しかも、胸を掴んだままの手が、動き出す。




「ひあああああああああああんんんんっ!!!」




そんな・・・・いっぺんに・・・・・・っ!!
すご・・・・・・すぎて・・・・・・・・やあああっ!!



耳たぶを噛みながら、胸を揉まれて、
耳の中に舌を入れながら、乳首を摘まれて。

乳首を転がされてるときも、指が耳に触れている。


その伸びた腕を見ただけでも、興奮してくる。



びくっ!びくびくっ!!



「ふああっ!はあんっ・・・・・ひああああっ!!」



身体が跳ねるたびに、とろとろと溢れてくる。
太ももの裏側まで、濡れているのがわかる。
絶対、シーツまで垂れている。



「ふああっ・・・・・・おかしく・・・・・・なっちゃう・・・・・・・!」



「いいぜ。オレの前だからな」



「・・・・・こんなの・・・・・・浪馬クンにしか・・・・ふああああっ・・・・・
できない・・・・・できないよぉ・・・・・っ!」



「・・・・嬉しいこと言ってくれるじゃねーか」



「ふああああああん・・・・・・」





浪馬クンの舌が、また身体中を這い回る。
でも、手は必ず胸を捕らえている。
指先が、手のひらの真ん中が、先っぽを常にいじっている。
倍どころか、数え切れないくらいの倍々の気持ちいいのが、
私の頭の先からつま先まで、降り注いでくる。


これは、全て浪馬クンが与えてくれたもの。
これからもずっと、浪馬クンしか与えられないもの。


だって、浪馬クンが触れると、心にまで快感が響いてくるんだもん。
こんなの、絶対ありえないもん。
あの人とは、決してなかったことだもん。
浪馬クンじゃなきゃ、ダメなんだもん。



もう一生、浪馬クンから離れるなんて、できないもん。




とろとろが、私の快感と繋がってとめどなく流れてくる。
ひくひくが、どんどん大きくなっていく。


いよいよ、止まんなく・・・・なって・・・きちゃったよぉ・・・・・
もう・・・・・・あと・・・・・・触られていないところは・・・・・・
浪馬クン・・・・・・もう・・・・・・私・・・・・・



「・・・・・さて、これで全身の愛撫は終わったかな」



「・・・・・・え?」




私の望みをよそに、浪馬クンが突然の宣告。
思わず、聞き返してしまう。



「なんだ?まだどっかあるのか?」



ニタっと、笑う。



「・・・・・・・・・・・・・・・・」



この笑顔・・・・・・また・・・・・・イジワルしてる・・・・・
まだ・・・・・残ってるじゃない・・・・・・バカ・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・まだ・・・・・全部じゃ・・・・・・ないもん・・・・・」



消え入りそうな小さな声で、呟く。



「ん〜?なにかなタマ〜?」



イジワルさ全開のトーンで、右上がりに浪馬クンが聞き返す。
同時に、手が私の胸を軽く揉む。



「ふああああんっ・・・・・」



「どこだ?言ってくれれば、好きなだけ触ってやるぞ」



「ふああああっ・・・・・・・バカあ・・・・・・」




もう・・・・・ガマンできなく・・・・・なってる・・・・の・・・・・に・・・・



「知ってて・・・・・やっちゃ・・・・・・ヤダよぉ・・・・・・」



「言ってくれよ」



「くううううんっ・・・・・・・」




一言一言が愛撫になって、私の身体を震わせる。
浪馬クンのイジワルも、私の恥ずかしさも、全部愛撫。



「言ったら・・・・・して・・・・・んはあ・・・・・・くれる・・・・・の?」



「もちろんだ。お前の希望通りにな」




にっこり。


ふわああああ・・・・・・・とろおって・・・・出てきちゃうよぉ・・・・・




「・・・・・・・・・・・・・・ここ・・・・・・」



私は、浪馬クンが触れている手を、そっと両手で握りしめる。



「ん?」



「ここ・・・・・だよぉ・・・・・・」




その手を、私の恥ずかしい泉へと、近づける。



「ここ・・・・・・ここぉ・・・・・・・」



「そうか、ここか」



「うんっ・・・・・うんっ・・・・・・・・!」




もう涙声スレスレの声。



「了解。じゃあ、仰向けになれよ」



「うんっ・・・・・・!」




浪馬クンに触ってもらえる。
それがすごく嬉しくて、私は喜んでいわれるままになる。



「・・・・・・よし、自分で開いてみろよ」



「・・・・・・え?」




いきなりの支持が、何だかわからなかった。



「開いて、見せてくれよ」



もう一度、浪馬クンが言った。

そ・・・・・そんな・・・・・・・自分で・・・・・・・?




「・・・・・・・・いや・・・・・・・」



「へ?」




目論見が外れた浪馬クンは、ヘンな声を上げる。

だって・・・・・だって・・・・・・・



自分で・・・・・開くなんて・・・・・・・イヤ」



「タマ・・・?」




だって、私は・・・・・・・




「浪馬クンが・・・・・・・開いて・・・・・・」




「!!?」





今日初めて、浪馬クンが動揺した顔を見る。




「浪馬クンの手で・・・・・開いて・・・・・見て・・・・・ほしい・・・・・」




「た・・・・タマ・・・・・・・・」




「私の・・・・・希望通りに・・・・・してくれるんでしょ・・・・・?」





私のいやらしく開く姿・・・・・・
自分じゃなくて・・・・・・浪馬クンに・・・・・・・してほしい・・・・・・




「お願い・・・だから・・・・・・浪馬クンの・・・・手で・・・・・・
浪馬クンが・・・・・・してよぉ・・・・・・・」




「タマ・・・・・・」




「浪馬クンの・・・・手で・・・・・じっくり・・・・・見て・・・・・
いいからあ・・・・・・」




「・・・・・・」




「おねがい・・・・・だよぉ・・・・・・」





ものすごくエッチなことを言ってるのに。
恥ずかしさなんてどっかにいっちゃって。
浪馬クンに触ってほしくて、私は、哀願していた。




「・・・・・・ったく。オレなんか足元にも及ばないくらいのエロさだぜ」



「そんなこと・・・・・ないもん・・・・・・」



「・・・・・そうだな。お前の希望通りにするって、約束だもんな」



「じゃあ・・・・・・!」



「ああ、穴が開くほど、見てやるよ」



「・・・・・・・・・うんっ・・・・・・・・・」



「まあ、既に穴は開いてるんだけどな。はっはは」



「・・・・・・・・・・!ば、バカ・・・・・・・・!」




ムードと私の想いを壊すな!バカっ!
うわあん!急に恥ずかしさがあっ!!



そんな私の叫びも届かず、浪馬クンが、私の足をゆっくりと開く。



ドキドキドキドキ・・・・・・・



「・・・・なんか、オレ、緊張してきた」



「ヘンなこと・・・・言うからだよ・・・・・・」



「・・・・・・スマン」



「・・・・・・エッチ」



「・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・くすっ」



「な、なんだよ」



「やっぱり、相性いいんだね、私たち」



「へ?」



「私も・・・・すごく・・・・・緊張してるよ・・・・・」



「タマ・・・・・・」



「見たい・・・・・?」



「え?」



「私の・・・・・・開いて・・・・・・・」



「そ、そりゃもちろん」



「よかった・・・・・」



「な、何がだ」



「私も・・・・・浪馬クンに・・・・・見て欲しい・・・・・」



「な・・・・・・」



「エッチな様子とか・・・・・全部・・・・・・」



「・・・・・・やっぱ、エロいな」



「お互い様だよぉ・・・・・」



「・・・・・・だな」




また、恥ずかしさが薄れていく。
肯定するみたいに、とろっ・・・・と、蜜が流れる。

それを合図にして、浪馬クンの手が私に触れる。
蜜が、指に絡みつく。
その感覚だけで、息が荒くなってしまう。
ふあああっ・・・・・



「はあっ・・・・・もう・・・・・」



「・・・・じゃあ、開くぞ・・・・・・」



「うんっ・・・・・・・見てえ・・・・・・・」




浪馬クンの手が、ゆっくりと、左右に開かれていく。
指が震えているのがわかって、愛しさと、快感が大きくなる。


見られちゃう・・・・・見られちゃうっ・・・・・・!

浪馬クン・・・・・・全部・・・・・私の・・・・・・・
全部・・・・・・・見てえ・・・・・・・





くちゅあああっ・・・・・・・





「ひああああっ・・・・・・」




いやらしい音とともに、私が全部、開かれた。



待ちかねていたその部分から出た音が、部屋中に響く。



ふあああっ・・・すっごい・・・・・音・・・だよ・・・お・・・・・・



「おおっ・・・・・・・」



「んああっ・・・・・・何よ・・・・・・おおって・・・・・」




息が当たっただけで・・・気持ち・・・・いいっ・・・・・・



「や、何かすげえぞ、お前・・・こんなに濡れて・・・・・」



「ふわあああ・・・・・言わなくて・・・・・・いいよぉ・・・・・・」




わかってるもん・・・・・・
今まで、こんなに・・・・濡れたこと・・・・ないもん・・・・・・

きっと・・・・・私が・・・・見たことないくらい・・・・・
いやらしく・・・・なっちゃってるんだもん・・・・・・



「浪馬クンが・・・・・やったん・・・・だよ・・・・・・」



「オレはお前が望むようにやっただけだぜ?」



「それ・・・・以上・・・・だよ・・・・・ふあああっ・・・・・・」



「じゃあ、それはサービスってことで」




んはあああっ・・・・・喋ると・・・・・・息が・・・・・・かかるう・・・・・・



「ひああっ・・・・・サービス・・・・し・・・・すぎ・・・・・・」



「しすぎってことはねーだろ。
つーかお前、ちと感じすぎじゃねーか?」



「ふううっ・・・・・だって・・・・・・息・・・・・・・・が・・・・・・・・んんんんっ・・・・」



「息?そんなんで感じてんのか?」



「だ・・・ってえ・・・・・・」



「どれどれ・・・・ふーーーっと」



「んあっ!はああああんっ!!」




強めの息を吹きかけられ、びっくんびっくんしながら、大きく喘ぐ。



「す、すげえな・・・・・・」



「やああ・・・・・ふあああ・・・・・・・」



「これなら、息だけでイッちまうんじゃねーか?」



「!
そんな・・・・・の・・・・・・ヤダあ・・・・・・・・」




首を振りながら、即答。

こんなに早く・・・イクの・・・・・ヤダよ・・・・・・
だって・・・・・まだ・・・・・・・全部・・・・・・触ってもらってないもん・・・・・・
いじって・・・・・なめて・・・・・・

最後は・・・・・一緒じゃなきゃ・・・・・・・・



「ヤダあ・・・・・・・ヤダよお・・・・・・・」



「・・・・・もう、わかるだろ?」



「ふあああっ・・・・・・・バカあ・・・・・・・・」




言わないと、今日はしてくれない。
浪馬クンは、私の身体の全部を、知っちゃう気なんだ。



いいよ。

浪馬クンなら、いいよ。



私の全部。

私の、私だって知らない、身体の全部。

浪馬クンなら、全部、知っていいよ。

浪馬クンだから、全部、知って欲しい。



だから、だから。



「なめてぇ・・・・・・いじってえ・・・・・・・・!」



私のして欲しいこと、全部、教えるね。




「くりくりしたり・・・・ゆび・・・・いれたり・・・・・・
浪馬クン・・・・の・・・・・・・好き・・・に・・・・・・してえ・・・・・・っ!」





いやらしい望みを、臆面もなく、本能のままに。


浪馬クンが、微笑んだような気がした。



ぐちゅうっ・・・・・




「!!はあああああっ!!」




指なのに、最後まで挿ったみたいな、すごい音。
さっきの開いた音すら、比較になんない。



ぐちっ・・・・・ぐちっ・・・・・・・



「ふわあああっ・・・・・・ふあああああっ・・・・・・」



出し入れするたびに、中まで持っていかれそうになる。
たまった液が、全部かきだされちゃうんじゃないかと感じる。
それでも、新しい液が止まることなく溢れ続け、
浪馬クンの指に絡みつき、こぼれ落ちていく。



「タマ・・・・・キラキラ光ってるぞ」



「あはあああ・・・・・・すごい・・・・・すごいよお・・・・・」



「よし、もっとキラキラにしてやる」




浪馬クンが、既に剥けて、乳首みたいに尖った先に触れる。



「んはっ!そこお・・・・・クリ・・・・・はああん・・・・・!」



その皮を、更に根元まで引きずり下ろす。



「くはああああっ!!」



根元まで空気が当たる、初めての感覚。
痛いかも・・・・・けど・・・・・・・っ!



「くあああああ!はううううんっ!」



「い、痛かったか?タマ」



「ち・・・・・ちが・・・・・・・きもち・・・・・・いい・・・・・・・・のお・・・・・・・!!」



「・・・・・・さすがだぜ。オレもどうにかなっちまいそうだ」



「な・・・・なってぇ・・・・・・・いっしょに・・・・・・・なってえ・・・・・・・」



「それはダメだ。今日のオレはサンタだからな。
タマと一緒になっちまったら、プレゼントにならねえ」



「そ・・・・・そんな・・・・そん・・・・・ああああっ!」




やあ・・・・・浪馬クンも・・・・・浪馬クン・・・も・・・・・・
気持ちよく・・・・・なって・・・・よ・・・・・・・おっ・・・・・・・・



ぺろっ・・・・・ぐちゅう・・・・・・



「ひあああ!あうん・・・・・・ひゃああああ!!」



突起をなめられ、出し入れを繰り返され。
さっき感じた白い世界が、だんだん長くなっていく。
今までに浪馬クンと味わった世界に、近づいていく。


だめ・・・・・もう・・・・・・・このままじゃ・・・・・んふああ・・・・・・



かりっ・・・・・・・



「きゃううっ!!あはあああ!!」



この歯が、トドメ。



だめだめだめ・・・・・っ・・・・もう・・・・・ほんと・・・にっ!
まだ・・・・・もらって・・・・・・・んふううっ・・・・・

いちばん・・・・ほしい・・・の・・・・・まだ・・・もらって・・・・・・ふわあああ・・・・!



いちばんほしいもの。



そう思ったとき、もう、浪馬クンのイジワルを待つ必要はなかった。



「・・・・・・・れて・・・・・・・・」



「ん?」



「いれて・・・・・・いれてえ・・・・・・・・」




浪馬クンに「何をだ?」と喋らせる隙も与えず、一気に欲望をぶちまける。




「浪馬クンの・・・・・いちばん・・・・・・・いやらしいの・・・・・・
私の・・・・・・いちばん・・・・・いやらしい・・・・・ところに・・・・・・・っ!
いれてえ・・・・・・!おねがいっ・・・・・・・おねがいいっ・・・・・・!!」




「・・・・・・・・」




「浪馬・・・・クン・・・・・・・ちょうだい・・・・・・!
いちばんの・・・・・・プレゼント・・・・・・ここ・・・・・・・ここに・・・・・
ちょうだい・・・・・・・!ちょうだい・・・・・・・・・っ!!」




「・・・・・・・・しょーがねーな」




「あ・・・・・ありが・・・・・・はやく・・・・・・はやくう・・・・・・・・」



足を開いたまま、待ちわびる私。

なのに、また、浪馬クンから、予想外の言葉。



「じゃあ、後ろからだ」




「え・・・・!な・・・・・・なんでえ・・・・・っ!?」





浪馬クンの、感じてる顔を見ながらしたいのに。
私の感じてる顔を、浪馬クンに見せながらしたいのに・・・・・
どうして!?どうしてよおっ・・・・・・



「顔・・・・・見たいよお・・・・・・」



「プレゼントだっつったろ?
正常位だと、結構挿れる角度が決まっちまうからな」




くちっ・・・・くちゅう・・・・・・・



「あはあああ・・・・・・」




「だから、後ろからして、お前の感じる場所、全部調べてやるよ」





全部・・・・・・

私の中も、全部・・・・・・・



とろおっ・・・・・・



「お、また濡れてきた。今の言葉で感じたか?」



「やあ・・・・言わない・・・・・でえ・・・・・・」



「ほら、四つんばいになってくれよ」




指でかき回しながら、浪馬クンが要求する。


後ろから・・・されて・・・・・いろんな・・・・とこ・・・・突かれて・・・・・
やあ・・・・私・・・・・どうなっちゃうの・・・・・?

でも・・・・浪馬クン・・・・なら・・・・・
全部・・・・・知って・・・・・欲しい・・・・・・・からっ・・・・




「うん・・・・・・おねが・・・・い・・・・・」




感じすぎてうまく動かない身体で、浪馬クンに助けてもらって、
どうにか四つんばいの格好になる。



「タマ・・・・全部、見えてるぞ」



「やあああっ・・・・・・・」



「完全にバックでするの、初めてだぜ」



「わ・・・・・私も・・・・・・・だよ・・・・・・・」



「アイツとはしてないのか?」



「バカあ・・・・してないよお・・・・・・・」



「そーかそーか。嬉しいぜ」



「・・・・・ホン・・・・・・ト?」



「ああ」



「わたし・・・・も・・・・・うれし・・・・・・んああっ!!」




喋ってる途中に、突起に刺激が走る。
挿った感触がないのに、快感が全身に向かって流れていく。



「ふああっ・・・・・なに・・・・・・したの・・・・・はあんっ!」



「ん?オレので、お前のクリトリスを突っついただけだが」




・・・・・それだけで・・・・・・こんな・・・・・なっちゃう・・・・・の?



「なんだ、これでも感じるのか?」



そう言いながら、つんつんと、先っぽで私のお豆を突っつく。



「あはあ!はあああんっ!」



「タマ・・・・すげえエッチだ」



「だってえ・・・・・すごいの・・・・・・あはああっ!」



「これなら、スマタだけでも絶対イクな」



「・・・・・はあん・・・・な、何・・・・・・それえ・・・・・・」



「知らないのか、こうやってだな・・・・・」




浪馬クンの根元が、私のお豆にあてがわれる。
そして、そのまま、腰が引かれる。



びくんっ!




「ふああああ!」



全然違う方向に引っ張られて、すごい衝撃が私を襲う。

今度は、前に。



「あはああああん!」



やあ・・・・・取れちゃう・・・・・・!とれ・・・・・ちゃうううう!



前後への動きが連続的になる。



「はあっ!はあっ!はあっ!はああん!」



あんまりに気持ちよくて、また蜜が溢れてくる。
密着している浪馬クンに絡みつき、濡れていく。
蜜ごと擦られて、音まで出始めた。



しゅっ・・・・・くちゅ・・・・・くちゅっ・・・・・・



「ふああああ!ふあああああん!」



「これが、スマタっつーんだ。どうだ?」



「ダメ・・・・・ダメえ・・・・・・・っ!ふああああ!」



「ん?ダメなのか?ここはそう言ってないぞ?」




くちゅ・・・・・くちゅ・・・・・・・



「違う・・・・の・・・・・・ちがう・・・・・・のおっ・・・・・・」



やめ・・・・・・て・・・・・・
このままじゃ・・・・・・わたし・・・・・・・わたし・・・・・・



「このまま・・・・されたら・・・・・・イッ・・・・・ちゃう・・・・のお・・・!
はああん・・・・・!」



「いいじゃねーか。イカせてやるよ」



「ダメ・・・・・それは・・・・ぜったい・・・・・・ダメえ・・・・・・!」




だって・・・・だって・・・・・・・
イクの・・・・・浪馬クンの・・・・・・・じゃなきゃ・・・・イヤああ・・・・・




「浪馬クン・・・・ので・・・・・ふあああん・・・・・!ろう・・・ま・・・・クンの・・・
わたし・・・・・浪馬クン・・・・・で・・・・・・イキ・・・・・たい・・・よお・・・・!」




「タマ・・・・・」





絶対・・・・浪馬クンの・・・・・で・・・・・・イクのお・・・・っ




「はやく・・・・・・はやくう・・・・・・・
浪馬クンの・・・・・・いれ・・・・・・て・・・・・・・!ふあああっ!
浪馬クン・・・・・・の・・・・・・プレゼント・・・・・・・
ちょうだい・・・・・・・よう・・・・・・・・」





はやく・・・・・一緒に・・・・・・・・・




「いっしょに・・・・イこう・・・・・よお・・・・・・・」




ほしい・・・・・ほしいよお・・・・・・・・




「・・・・・・さすがはタマだぜ。オレのを中に挿れないとイヤだってか」



「うん・・・・・うんっ・・・・・・・」



「わかったよ。
そのかわり、気持ちいい場所はちゃんと教えろよ?
そうしねーと、プレゼントになんねーからな」



「うん・・・・・わかった・・・・・・っ・・・・・・ああんっ・・・・・」



「ケツ動かしておねだりかよ?ホントに、お前は・・・・」



「違うよお・・・・・勝手に・・・・動くの・・・・っ・・・・はやく・・・・ううっ・・・・」




もう、本能が、浪馬クンにしか、向かってないらしい。
お尻が動いてるのなんか、全然わかんない。
はやく、はやく、浪馬クンと気持ちよくなりたい。
それしか、求められなかった。




「いくぞ・・・・くれぐれも、指示、忘れんなよ?」




「わかって・・・・る・・・・よぉ・・・・・だから・・・・・だから・・・・・っ!」




「・・・・おう。いくぞ」





ぐちゅっ・・・・・




「ふああああああん!」




「おいおい、まだ先っぽしか挿ってねーぞ?」




「う・・・・うそお・・・・・だって・・・・・・こんな・・・・に・・・はああ!!」




まだ・・・・全然・・・・・なの?
・・・・こんなに・・・・・なっちゃうなんて・・・・・・
すごい・・・・・すごい・・・・・よぉ・・・・・・



「相当キテんな・・・・・奥まで、挿れるぞ?」




「うん・・・・・・・おね・・・・・がい・・・・・・んんんっ・・・・・!」





ゆっくり、ゆっくりと、浪馬クンが、私の奥に挿っていく。




「ふわ・・・・・ふわあ・・・・・・ふわあああ・・・・・・・・!」




「もうすぐだ・・・・・もうすぐ、一番奥だぞ」




「ふあああっ・・・・・ふあああああ!!」





にちゅ・・・・・にちゅうっ・・・・・・




そして、




ぐちゅうっ・・・・・!





「ひあああああああっっっ!!!」





繋がってるところからの一層大きな音と、
私の一番大きくて、一番いやらしい声と共に、
浪馬クンが、私の一番奥へと到達した。



「ふあああっ・・・・・・あああぁぁっ・・・・・」



身体が、心が、本能が、全てが求めていたものが、私の奥に届く。
その喜びが、私に悲鳴に近い声を上げさせる。



「うおっ・・・・・すげえ締まる・・・・・・」



「はあん・・・・はあああん・・・・・・っ!」



「大丈夫か?喋れるか?」



「だ・・・・・だいじょう・・・・・ぶ・・・・・はうんっ・・・・・・」



「オレに、ちゃんと教えてくれよ?」



「うん・・・・・浪馬クン・・・に・・・・・わたし・・・・・の・・・・
気持ちいいとこ・・・・教えて・・・・あげる・・・・・ふああっ」



「よしよし。じゃあ、動くぞ」



「うごいて・・・・・うごいてえ・・・・・・・」




待ちきれなくなって、いやらしいお願いをする。
動いて欲しくて、かき回して欲しくて。
浪馬クンの望みに答えることしか、考えられなくて



ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ・・・・・・



「はあうっ・・・・あはあ・・・・あああっ・・・・・・」



いつもの浪馬クンと比べたら、ほんの軽い動き。
それでも、イッちゃう寸前のような刺激が、私に響き渡る。



な・・・・こんなに・・・・・軽い・・・・・のに・・・・・・
すごい・・・・・・すご・・・・・あはああ・・・・・・
気持ち・・・・・いいよお・・・・・・

そうだ・・・・・ちゃんと・・・・・・言わな・・・・きゃ・・・・ふああ!
ちゃんと・・・・私を・・・・・教・・・・え・・・・・っっっ!



「あっ、あっ、あっ、あっ・・・・・・い、いいよ。すごく、気持ちいい・・・・・・」



意識を飛ばさないように、声を絞り出すようにして、
そこが気持ちいいことを伝える。



「タマ・・・・・・」



愛しそうに私の名を、浪馬クン専用の、私の名前を呼んでくれる。
そう言われただけで、普段はすごく安心して。
エッチの時は・・・・・・ますます興奮しちゃって。



ぴくんっ・・・・・



浪馬クンの先の出っ張った部分が、もっと気持ちいいところを掠めた。
や・・・・・今の・・・・・とこ・・・・・突いて・・・・・え・・・・・



「そ、そうっ。もっと・・・・・・もっと、突き上げて」



浪馬クンで、もっと擦り上げて欲しくて、
浪馬クンに、私の場所を覚えて欲しくて。
教えてくれと言われたことなんか関係なく、私を、教える。



「こ、こうか?」



少し角度を変えて、私が反応した場所をダイレクトに刺激してくる。



くちゅっ、くちゅっ・・・・・



繋がってる音が少し変わる。
ますます気持ちよくなっていくことを、2人に知らせている。
それが私を、もっともっと昂ぶらせる。



「う、うん。い、いいの。それがすごくいいの・・・・・・」




私のエッチな声と、浪馬クンのエッチな息づかい。
そして、エッチな2人が繋がってくるところから出てくる、
ぐちゅぐちゅの、いやらしい音。

音と、声が、浪馬クンの部屋を。
幼なじみとして何度も訪れた、この部屋を。
恋人として、4回目に訪れたこの部屋を。

私たちを、支配する。



「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ・・・・・な、なあ、タマ」



「な、なあに?浪馬クン」




とぎれとぎれになりながら、なんとか答える。



「お前、いつもより出来上がるのが早いんじゃないか?」



ぴくんっ!



その声が、私の中を大きく反応させる。



「そ、そんなのわかんないよぉ・・・・・あ、あ、あぁぁぁ」



そんなに・・・・早いの?
今、どのくらい時間たったの?
気持ちよくて・・・・何にも、わかんないよお・・・・・・



時計を見ることすらできない。
だって、浪馬クンの動きが・・・・
私が顔をあげようとする動きすら・・・・・・止めちゃうんだもん。
勝手に・・・・ここだけに・・・・・神経・・・・集中しちゃうんだ・・・・もん・・・・!
ひゃああっ・・・・・



そう感じる間も、浪馬クンの動きは止まらない。
それどころか、私のもっと感じる場所を探るみたいに、
少しずつ、場所をずらしながら突いてくる。


ふああ・・・・・そんなにいろいろしたら・・・・っ!
ひあああ・・・はあ・・・はあ・・・・あはああ・・・・・・っ



「ん、あ、はぁんっ・・・・・・ん、ん、ん、ん・・・・・・ひゃっ!」



〜〜〜〜〜〜〜!!!




1点を突かれたとき、一瞬、驚きに似た感覚が。
その後、爆発的で、息が止まるくらいの快感が、私の中ではじけた。



「ん?どうかしたのか?」



「な、なんかよくわかんないんだけど・・・・・・今のところ、すごく感じた」




なに・・・・?いまの・・・・・なに・・・・・・?



「ふーん、ここらへんか?」



ぐちゅうっ!




同じところを、勢いをつけて突かれる。



「きゃうっ・・・・・・う、うん。そこ、そこがいい」



声が、だんだんと出なくなっていく。



「そうか、じゃあ、ここらへんを重点的に・・・・・・」




よっぽど気持ちよさそうに見えたの・・・・かな・・・・
そこを攻撃することに決めた浪馬クンは、
狙いをつけて、何度も何度も、同じポイントを叩いてくる。



ひあ・・・・そこ・・・・・そこお・・・・すごい・・・・・のお・・・・・



「あ、あ、あ、あ、あ・・・・・・」



息を吐くのが難しくなって、呼吸の感覚が短くなってくる。
それでも、気持ちよくって、触ってほしくて、たまんない。


や・・・・きゅーって・・・・締ま・・・・・ふああっ・・・・・!



「ど、どうだ?」




わかってる・・・・・・くせにぃ・・・・・・



「う、うん。いいよ。すごくいい・・・・・・」



もう、こう言うのがやっと。
浪馬クンは・・・・浪馬クンは・・・・どう・・・・なの・・・・・?



「そうか。じゃあ、このまま一気に・・・・・・」



そう言うと、浪馬クンの腰が、一旦引かれる。



「え?ちょ、ちょっと・・・ひぁっ!」



ずんっっ!!



!!!!!!



今日いちばんの、衝撃。


さっきまで、探るように軽めだった動きが、いきなり激しくなる。
いつもの・・・・・いつも以上の、激しい動き。

あまりの違いに、それだけで、果てそうになった。



「あ、あぁん。す、すごいぃ・・・・・・こ、こんな・・・・・こんなの・・・・・
ひぁぁぁぁぁ」




こんなこと・・・・されたら・・・・す・・・・・ぐ・・・・イッちゃ・・・・ひああ・・・!
ダメ・・・・・浪馬クンといっしょお・・・・・ふわああ!
ガマン・・・・・がま・・・・・ん・・・・んんんんっ・・・・・



「ちゅっ・・・・・・」



私のガマンを吹き飛ばすような、背中への柔らかい、いやらしい感触。



「ひあっ!な、なに?」




な・・・・・背中・・・・・・ふああああんっ!!



「ちゅっ、ちゅるっ・・・・あむ、ふっ・・・・・レロ」



やああっ・・・・・動いたまま・・・・・背中・・・・・舐めてる・・・・・
汗・・・・・吸って・・・・るぅ・・・・・・
浪馬ク・・・ぅン・・・・ダメ・・・・・・きたない・・・・・よぉ・・・・・・



びくんっ!びくんっ!!



でも・・・・ふああっ・・・・・気持ち・・・・・・いいよぉ・・・・・
ぴくんぴくんっって・・・・・・しちゃうよぉ・・・・・・

そこも・・・・・痕・・・・つけて・・・・いいからあっ・・・・・
浪馬クンが・・・・してくれるなら・・・・
吸って・・・・・吸って・・・・・えっ・・・・・・!



ぺろ・・・・・ちゅううっ・・・・・ちゅっ・・・・・



ふああっ・・・・優しい・・・・・・なんか・・・・・わかんないけど・・・・
優しいって・・・・・感じる・・・・・よぉっ・・・・・ふああんっ・・・・・・
激しいのと・・・・優しいのが・・・・・一緒に・・・・・ひあああっ



「あ、あ、あ、あぁぁぁ・・・・・・そ、そんなに優しくされると、ああんっ。
わ、私、私・・・・・・」




息がますます短く、激しくなってくる。
私の中が、ヒクヒクと震えだす。
もっと、もっとって、浪馬クンを逃がさないように、締め付ける。



「レロレロ・・・・・ちゅっ、ちゅるるっ」



はああ・・・・汗・・・・・吸われてえっ・・・・・優しいのおっ・・・・・
優しすぎて・・・・・・背中が・・・・・んはああっ・・・・・・



「ひああんっ。だ、ダメ・・・・・・そんな風にされると、ゾクゾクして・・・・・・
背中がゾクゾクして・・・・くぅっ!」




ヒクヒクが、ますます強くなって、包み込んでいく。
溶けて、一緒になりたいって、願っている。


でも・・・・でも・・・・・このままだと・・・・・ふああんっ・・・・
私・・・・・わた・・・・・イッ・・・・・・ダメえ・・・・・・・



「タマ。中がヒクヒクしてるけど・・・・・イキそうなのか?」



私の・・・・イクとき・・・・・動き・・・・・わかっちゃってる・・・・
ふあああっ・・・・・また・・・・ひくひく・・・・・って・・・・・



「う、うん・・・・・私、もう・・・・・・」



「そうか、じゃあ、好きなときにイッていいぞ」




私の大好きな声で、優しく、囁く。



「で、でも・・・・・・はあんっ。そっちは・・・・・くぅんっ。
ま、まだなのに・・・・・・ひゃふっ」




一緒に・・・・・イけなくて・・・・・いい・・・の?ふあああ・・・・・はあん・・・・



「気にするな。今日はサービスだ。思いっきりイッていいぞ」



・・・そんなこと・・・・言われたら・・・・・・



「うん・・・・・・はあ、はあ・・・・・・ご、ごめんね・・・・・わ、私だけ」



ホント・・・・に・・・ガマン・・・・・できない・・・から・・・・・・ね?



「いいって。それじゃあ、行くぞ?」



「う、うん」




そう言うと、更に激しい勢いで、突きまくってくる。



ふああああっ・・・・!す・・・・・すご・・・・・・すぎ・・・・はああああっっ・・・・
こんなに・・・・・激しい・・・・・のに・・・・・・
さっき・・・・・新しく・・・・・感じた・・・・・と・・・・こ・・・・
正確・・・・・に・・・・・・ひああ・・・・は、は・・・・・・はあああんっ!!



「ひぁぁぁぁぁ。す、すごいぃ・・・・・・感じる。
感じすぎちゃうよぉ・・・・・・あ、あ、あ、あ・・・・・・」




逃がさないように、勝手に締め付けが強まる。
でも、激しい動きで、締め付けの先がどんどん擦れて。
それがますます、快感になって、必死にイクのを伸ばそうとする
私のこころを、壊してしまう。



「はあ、はあ、ふう、ふう・・・・・・」



もお・・・・・・ダメ・・・・・・!!




「も、もう私・・・・・・あっ、あぁぁ・・・・・我慢、できない・・・・・・」




ゴメンね・・・・・浪馬クン・・・・・・ふううううっ!!



「た、タマ・・・・・・」



白が、見える。



ゴメンね・・・・・ごめんね・・・・ろうま・・・・クン・・・・・!
私・・・・・もう・・・・・ダ・・・・メ・・・・・・ダメえええっ!!!





「あ、あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁ・・・・・・も、もう私、イク、イっちゃう・・・・・・
イっちゃうぅぅぅぅ!!!」






最後の叫びと同時に、支えていた両腕の力が、どっと抜ける。
それに逆らわないで、そのまま身体ごと、ベッドに倒れこむ。




「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・」




元の世界に戻れるまで、ひたすら呼吸を続ける。
浪馬クン・・・・・浪馬・・・・・くうん・・・・・・


ひたすら心の中で、好きな人の名前を呼ぶ。




視界がハッキリしてきたころ、私の視界に影ができる。
大好きな人が、うつぶせに倒れた私の背中に覆い被さってきた。


ふあ・・・・浪馬クンの・・・・・汗の・・・・におい・・・・・


微笑みが勝手に漏れちゃう。
その感覚にひたっていると、耳元に顔が近づく。


やだ・・・・息・・・・耳にかかっただけで・・・・・ぴくん・・・って・・・・・


その反応を楽しみながら、耳元で囁いた。



「どうだ?思いっきりイケたか?」



・・・・・バカ・・・・・当たり前じゃない・・・・・



「うん・・・・・・すごく気持ちよかった」



それでも、素直に感想を伝えてしまう。



「そうか」



浪馬クンも、素直にニコっと笑ってくれる。



2人とも、こんなときは素直になれるんだな・・・・・
いつもとのギャップに、また微笑んでしまう。
とっても、幸せな感覚。


でも・・・・・



「ごめんね」



申し訳なさが、その微笑みを打ち消してしまう。



「え?」



だって・・・・・私だけ・・・・・・・



「私だけ先にイッちゃって」



私だけ・・・・・気持ちよくて・・・・・
浪馬クン・・・・・何にも・・・・・してあげてない・・・・・


浪馬クンだって・・・・・同じなのに・・・・・
私・・・・・クリスマス・・・・何にも・・・・・あげてない・・・・・



「はっはは。だから気にするなって言ったろ?」



浪馬クンは、機嫌よく笑ってくれる。



「でも・・・・・・」



しょんぼり・・・・・



「だから・・・今日はサービスだって言ってんだろーが・・・・・」



「それでも・・・・浪馬クンに・・・何も・・・あげてない・・・」



「タマ・・・・・」



「私も・・・・・浪馬クンに・・・・・あげたいよ・・・・・・」



「・・・・・・まいったな・・・・・・」




私の反応が思っていたのと違っていて、浪馬クンは考え込む。
私は、じっと待つ。
浪馬クンの言葉を、聞き漏らさないように。


やがて、浪馬クンは、少し恥ずかしそうに、こう言った。



「じゃあよ、口でしてくれないか?」



「え?」




口って・・・・なめてくれ・・・・ってこと・・・・?



「まだオレ、お前の口でイッたことなかったろ?」



「そう言えば、そうだね」




前は・・・中に入れたい・・・って言って・・・・そのまま・・・・



「だから、今日は口で最後までしてくれよ」



最後まで・・・・浪馬クンの・・・・いっぱい・・・・・口に・・・・・


ぽーっ・・・・・


様子を想像して、ぽーっとなる。
不思議で、暖かい違和感があることに、私はまだ気づいていない。


今はただ。




「・・・・・・うん」




ちょっと恥ずかしくなっちゃったけど、嬉しさいっぱいで。
これで、浪馬クンに、少しでもお返しできるかな?


今日の幸せを。
ううん、今までの、これからの、幸せを少しでも返せるように。


私、頑張るからね。

一生懸命、なめてあげるね。

だから、浪馬クン、気持ちよくなってね。



そう思うともっと嬉しくなって、さっきまで私にいっぱいのプレゼントを
くれた浪馬クンのに、顔を近づけた。



「それじゃあ、始めるね」



呼吸を整え、少しかしこまってご挨拶。



「ああ」



さっきまで、私の中に挿っていたもの。
その証拠に、私の中に溢れていた液をいっぱいくっつけて、
ぬらぬらと光っている。
すっごくいやらしいのに、すっごく、愛しい。


だって、浪馬クンと私が愛し合ったから、こうなったんだもん。
私が、こうしちゃったんだもん。


だから、私が、綺麗にしてあげるね・・・・・


浪馬クンと私の、とっても大事なものに、口を近づける。
すご・・・・・脈・・・・・大きくなってる・・・・・



「あむ・・・・・・」



先っぽの部分を、口に含む。



「くっ」



浪馬クンが、感じたのとは違うような、痛いような、
この前とは違う声をあげる。



「え?痛かった?」



失敗・・・しちゃった?



「い、いや、ちょっと敏感になってるみたいだ」



テレたような声で言う浪馬クン。
ホッと胸を撫で下ろす。


口の柔らかい部分でも呻くくらい、敏感になっちゃうんだ・・・・・・
これって、私が・・・締めすぎたせいなのかな・・・・?
・・・・・気持ちよかったからなあ・・・・・


でも、ここまで敏感になっちゃうのって・・・・・
浪馬クンも・・・・・・感じてくれたってことだよね・・・
あんなに激しかったのに、平気な声だったから・・・・
ちょっと心配だったけど、ちゃんと、感じてくれたんだよね?


あははっ・・・・よかった♪


そう思うと、気分がラクになってきた。
目の前にある2人のものが、もっともっと好きになる。



「そっか。さっき私の中で頑張ってくれたもんね。
じゃ、思いっきり優しくしてあげる」




さっきの浪馬クンみたいに・・・優しく・・・・・・

口よりも・・・・柔らかい場所で・・・・・舌で、舐めてあげる・・・・・



ちょっとだけ舌を出して、敏感なところに触れる。


ぴくんっ


あ・・・・まだ痛いかな・・・・・・


でも、痛そうな声は上がらなかった。
ちらっと浪馬クンを見ると、少し歯をくいしばっていたけど、
痛い・・・ていうか、耐えてるような、そんな感じ。


・・・・・もしかして、ガマンしてる・・・・・?


そう思ったら、嬉しさと楽しさが、ぐーんと大きくなった。

じゃあ・・・この辺とか・・・・・・どうかな・・・・・


優しくするのは忘れずに、くびれの周りとか、
分かれたところとか、脈打ってるところとかを、丹念に舐めていく。
動くたびに、浪馬クンの身体が、ぴくんって動く。


ん・・・・あつい・・・・けど・・・・・嬉しい・・・・・・


私の液と唾液が絡み合う。
それを、垂れないように、ちゅう・・・・っと、吸う。
ほんのちょっと引っ張られただけでも、ちゃんと反応する。


えへへっ・・・・・これって、絶対感じてるよね・・・・・・♪



「んっ・・・・・・れろ、ちゅっ・・・・・・ちゅるっ・・・・・・ふふっ、どう?こういうの」



私の期待する答え・・・・・出るかな?



「あ、ああ。気持ちイイ」



やったあっ♪



嬉しいよお・・・・もっともっとしたくなっちゃう。
浪馬クンが、いろいろしてくれたみたいに・・・・・私も・・・・・・



攻守逆転に気をよくした私は、新しい場所を探そうと、
舌を根元にスライドさせていく。


あたた・・・・毛がチクチクするよ・・・・・
・・・・・・ん?


私の頬をチクチクさせる毛に覆われた、しわだらけのものを見つける。



うわ・・・・ちゃんと見たの、初めて・・・・・
た、確か・・・・・ここで・・・・・男の人の・・・・・アレ、作るんだよね・・・・・・


こ、ここって・・・・・・どうなのかな・・・・・・
やっぱり・・・舐めたりしたら・・・・・気持ちいいのかな・・・・・
あ、でも・・・・・こっちも・・・・してあげたいし・・・・・・
んー・・・・・・


根元に舌を這わせながら、どうしたらいいか考える。
すごくおバカな悩みだけど、今の私には真剣な議題。


でも勝ったのは、



「私も、浪馬クンの気持ちいいところを知りたい」



という、欲望と、恋愛感情に素直な欲求。
口と手のポジションを決め、一旦舌を離す。



「じゃあ、こっちも・・・・・・あむっ」



袋みたいのを口に咥え、浪馬クンのを優しく手で包み込む。



「!!!」



浪馬クンの身体が、さっきまでとは違う、ぴくん。



あははっ♪ここも、いいんだ。浪馬クン。
じゃ・・・こっちも・・・・してあげるね・・・・・・


舐めるたびに、手の中に刺激を加えるたびに、浪馬クンがぴくんってなる。
だんだん、私の想いと浪馬クンの反応が、シンクロしてくる。


こうすると・・・・・たぶん・・・・・



ぴくんっ



やっぱりっ♪



浪馬クンが、私にもわかるような気がして、すごく嬉しい。
その嬉しさが、もっと気持ちいいところを探そうと、舌を這い回らせる。


舐め続けていくと、中に今までとは違った肌触りを感じた、



・・・何だろ?このボールみたいの・・・・・
ちょうど・・・・・口に・・・・・・入りそう・・・・・・

だいじょうぶ・・・かな・・・・痛く・・・・・・ないかな・・・・・・

でも、何となくだけど・・・・・今の、浪馬クンなら・・・・・



あむっ



ボールみたいのを口に含む。



「!!」



浪馬クンの身体がびくんと、ハッキリわかるくらい跳ねた。
手の中からのものからも、汗が溢れてくる。



わわっ・・・・当たっちゃった・・・・・・
やっぱり・・・・相性・・・・・いいんだ・・・・・・・♪



私と浪馬クンは、繋がっている。
少なくとも、今は。



心の中が、浪馬クンで満たされていく。
どんなにいっぱいだと思っていても、浪馬クン用の器はどんどん大きくなって、
少しでも空きができると、また、想いが満たされていく。

その想いを浪馬クンに知ってほしくて、舌で、手で、口で。
触れた部分から伝えていく。



「ん、ん、ん・・・・・・れろれろ・・・・・・ちゅるっ」



吸いながら舐め、舐めながら擦っていく。

浪馬クンは腰を浮かせて反応して、私の気持ちに応えてくれる。



「う、す、すげえ・・・・・・」



ついに、声でも伝えてくれる。
嬉しさで、つい口を離して微笑んでしまう。



「ふふっ、ここも気持ちイイんでしょ?」



ちゃんと・・・・わかってるからね。



「あ、ああ」



浪馬クンの顔が、真っ赤になっている。


えへへ・・・やっぱり・・・言葉で伝えてもらうと・・・いいな・・・・・・

じゃあ、もっと・・・・・・



と、もう一回舌を這わそうとすると、浪馬クンが吐息交じりに言った。



「な、なあタマ、そろそろ・・・・・・」



あ・・・浪馬クン・・・イキたいんだ・・・・・・



ホントは、もっともっと舐めたいけど・・・・・
浪馬クンも、敏感になってたもんね・・・・・
私が・・・・イクまで、動かしていたわけだし・・・・・・


うん・・・・・今日は・・・・いっぱいプレゼントもらったし・・・・
私も、思いっきりイッたから・・・・・
浪馬クンにも、思いっきりイッてもらお・・・・・


浪馬クンを見上げると、「どうした?」というような顔をしている。
・・・考えすぎたかな?



「あ、うん。そうだね。それじゃあ・・・・・・はむっ」



ありがとう。


そんな想いを込めて、さっきまでよりちょっと強く、浪馬クンを咥え込む。



「かはっ」



この声は、浪馬クンの感じてる声。
わかるよ。顔見なくたって、わかるよ。
きっと、もうすぐ・・・・・・



「ん、ん、ん、ん・・・・・・ちゅぷ、レロレロ・・・・・・あむっ」



ほら、ね。
先っぽから、私のじゃない、液が出てきたもん。
全身が「気持ちいい」って、私に教えてくれてるもん。



「や、やっぱお前、上手いよ・・・・・・」



私は、一生懸命やってるだけだよ。
浪馬クンが気持ちよくなるのを感じたくて。
浪馬クンと、こころを一つにしたくて。
一生懸命、やってるだけだよ。


だって、浪馬クンに、最高だ・・・・・・って、思って欲しいから。


確かに、あの人との経験もあるのかもしれない。
けど、今の私は、無意識に覚えた知識を使ってでも、
愛しい人を、もっともっと愛したくて。
浪馬クンに、もっともっと愛してほしくて。
ただ、動かすことしか、思いつかなかった。



「んぐ、んぐ、んぐ・・・・・・ちゅうぅぅ」



先っぽの液を、ためらうことなく吸い上げる。



「くっ」



身体だけじゃなく、浪馬クン自身が、震えてきた。



「もひかひて、もうれそう?」



いつもの時と、同じ感じになってきたもん。



「ま、まだまだっ」




けれど浪馬クンは、否定の言葉。
一旦口を離して顔を見ると、私を責めていたときの余裕は見られない。
どうにか耐えているだけのように見える。
最初もあんな顔だったけど、レベルが違うぞ?浪馬クンっ。



「もう、強がり言っちゃって」



ムリしちゃって・・・・・
そんなに私の口、味わっていたいのかな・・・・・
私だってそうしたいけど・・・・
あの顔が、演技ってことはまずないし・・・・・


よーしっ。


もう1回、浪馬クンを握り締める。
さっきよりも強めに握って、上下に動かす。
浪馬クンが、更に険しい顔になる。



にちゅっ、にちゅっ・・・・・・



先から溢れる気持ちいい証拠が、私の手と絡み合って、
いやらしい音を立てる。
ほらあ、身体は正直に答えてるよ?
kれでもまだ、耐えようとするんなら・・・・・・



「じゃあ、もっと気持ちイイことしてあげる」



さっきの反応で、わかってるんだから。



「も、もっと?」



浪馬クンが、「ヤバっ」て顔をする。
へっへっへ〜。もう遅いもんねー♪



「ふふっ・・・・・・」



勝利を確信したかのように、微笑んでしまう。


すううう・・・・・


大きく息を吸って、準備完了。
ただならぬ雰囲気を感じてあせる浪馬クンに、口を近づける。
息を止めたまま、口を開けて。



「あむっ・・・・・・んっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅうぅぅ〜」



しっかりと咥えて、先っぽを舌で鳴らす。
そして、ほっぺがへこんじゃうくらい、思いっきり息を吸った。



「くっ!」



浪馬クンの悲痛な喘ぎ声。
でも、先からは、正直に液が溢れ出す。
私の口の中に飛び散って、暴れている。



ふわっ・・・・・浪馬クンの・・・・が・・・・・口に・・・・絡んでくる・・・・・

なんか・・・・なんか・・・・・いい気分かも・・・・・


吸える限界まで息を吸うと、口を離す。
口どうしよりもはるかにエッチな糸が、2人の間に伸びる。
輝きは少ないけど、余計にいやらしく感じた。



「どう?思いっきり吸われるとかなりくるでしょ」



「あ、ああ・・・・・・それはヤバイかも」




だよねっ♪
えへへっ、浪馬クンの一番のポイント、知っちゃった♪



「じゃあ続けるね・・・・・・はむっ」



もうここだけを責めちゃうつもりで、敏感な部分をすっぽりと覆う。



「くっ」



さっきよりも、もっと苦しそう。
んふふ♪そろそろ限界かなっ。



「じゅ、じゅるっ・・・・・・あむっ・・・・・・ん、ん、ん、ん・・・・・・」



ワザと、音を立てて口の中のものを舐める。
唇をパクパクさせて、敏感な部分を柔らかいもので叩く。
そして、強弱をつけて、吸う。



「う、うぅ・・・・・・」



浪馬クンの声が、だんだん遠くなってきたように聞こえる。
もう、少し・・・・・で・・・・・・浪馬クンが・・・・・



「じゅ、じゅるっ。じゅるるるるっ・・・・・・はむっ、んっ。ちゅっ、レロレロ・・・・・・」



溢れて止まらない液を、全て搾っちゃうみたいに吸い取る。
なくなても、また舐めまわすと、どんどん出てくる。
びくんびくんが、どんどん早くなっていく。



「う、うあっ・・・・・・」



声よりも、吐息のほうが大きく聞こえる。
ねえ・・・そろそろ、耐えられない・・・・・よね?



「んっ、ふっ、んっ、あっ・・・・・・はむっ。ちゅっ、ちゅるるるっ」



私の身体まで熱くなっちゃって、ヘンな声が出てくる。
だ、ダメだよ・・・・今は、浪馬クンを・・・・・っ・・・・・・

意識を集中させようとして、吸う力がもっと強くなる。



「ぐっ。くぅぅぅ・・・・・・」



エッチしてるときの最後に、声が似てくる。
そろそろ・・・・?ねえ、そろそろ・・・・・・?

最後のラウンドの前のインターバルのため、口を離す。
もう吸いきれなくなっていて、
ぬろおっ・・・・・と、音が聞こえたような気がする。



「ふぅ・・・・・・ふふ、さすがに、もうダメでしょ」



もう、先まで来てる・・・・・よね?



「く、くやしいが、そのとおり・・・・・・」



だよね。だったら・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お願い・・・・・・・・



「じゃあ、最後に・・・・・・あむっ」



・・・・・・・・出して・・・・・・・思いっきり・・・・・・
いいから・・・・・キミのなら・・・・・いいから・・・・・・・



「くあっ」




出して・・・・!私の口に・・・・・・精液・・・・・出して・・・・え・・・・っ!




「ん、んぐ・・・・・・レロレロレロ・・・・・ジュルルッ」




発射を受け止めようと、先をよく濡らして、思いっきり吸った。
溢れすぎた液が、音を立てちゃうくらいに、強く。


そのくらい、浪馬クンのを口にもらいたいと、身体が望んでいた。


出して・・・・・・・いっぱいいいっ・・・・・・!!




その瞬間、




「た、タマっ!」




急に、浪馬クンの身体が大きく動いた。
ケイレンというには、あまりにも大きく。



ふわあっ!!



その拍子で、浪馬クンの腰が離れていく。



ぬぽっ・・・・



やっ・・・
いきなりのことに対処できず、音をたてて、口から外れてしまう。
直後、




どぴゅっ!どぴゅっ!どぴゅっ!!




「きゃっ!」




口から外れたまま勢いよく放たれてしまう。
私の顔にまんべんなく降り注ぎ、白く染めていく。



こんなに・・・・・いっぱい・・・・・・



「はあ、はあ、はあ・・・・・・」



浪馬クンは、エッチの後と同じくらいの荒い息を吐きながら、私を見た。
白い化粧をした私に、申し訳なさそうな表情に切り替わる。



「んもう・・・・・・顔にいっぱいかかっちゃったじゃない」



こっちに・・・・・・出して欲しかったのに・・・・・・



「す、すまん・・・・・・」



さらにしょんぼりして、下を向いてしまう。
ああ、そこまで落ち込まなくても・・・・・・

もう、しょうがないなあ・・・・♪



「それにしても、ホントにいつもいっぱい出すよね?
これって気持ちいい証拠でしょ?なんか、ちょっと嬉しいかも」




そう言いながら、顔についたエッチな液体を指ですくう。



浪馬クンの・・・・・



ぺろっ



当然のように、その指を口に含む。



浪馬クンの・・・・・味・・・・・・・



「あっ」




急に、ヘンな声を上げられる。



「え?」



「お前、いまオレのを・・・・・・」




オレのって・・・・・・これ?



「うん。舐めたけど・・・・・・もしかして、イヤだった?」



浪馬クンって舐めるのキライなの?
なら、口でしろなんて、言わないよね・・・・・・
私・・・・・飲む気だった・・・・し・・・・・


あれ・・・・・・?飲む・・・・・?



「イヤじゃねえけど・・・・・・」



浪馬クンの複雑そうな顔。
え?なんで?また私、浪馬クンのこと、わからなくなっちゃった?

ただ、私・・・・こうやって・・・・・・

もう1回、顔についたものをすくって、顔の前に持っていく。


あ・・・・・


もしかして、あの人ともこういうことしたのかって、思ってるんじゃ・・・・


違うよ、そんなことしてないよ。
だって私、あの人のは全部、吐き出してて・・・・・
飲むなんて・・・・とんでもな・・・・・・い・・・・・・


・・・・・・・え?


今・・・・私・・・・・・舐めてる・・・・・よね?
口に出して・・・・って・・・・・・思ってたよね?

・・・・・・・・・・・・



そっか・・・・私、舐めたのって・・・・初めてなんだ・・・・・・



答えは・・・・・わかってる。



すっごくどうしようもない理由で、
あの人にも、キミにも、申し訳ない、そんな理由。


だけど、今なら、そう思っていても、いいよね。
浪馬クンになら、言っちゃっても、いいよね。

離れたりしないって、信じていいよね。
勝手な私を、許してくれるよね。



「なんかね、キミのならいいやって思えたの」



吐き出すことなんて、考えなかったの。



「え?」



浪馬クンのだから、いいって、思ったの。



「あの人のは何となく気持ち悪かったんだけど、キミのなら全然平気」



浪馬クンが、一番、大好きなんだもん。



もう一度、顔についたものをペロッと舐めた。



「タマ・・・・・・」



複雑な表情は消えなかったけど、なんとなく、安心した表情になってくれた。
ごめんね、こんな説明で。
でももう、この気持ちが変わることは、ないからね。



「さてと、それじゃ一緒にシャワー浴びようか。
二人ともベトベトになっちゃったしね」




もう・・・・ずっと、一緒だから。



「あ、ああ、そうだな」



さっきのシャワーでのことを思い出したのか、浪馬クンがちょっと赤くなる。



「じゃ、行こっ」



たまには私から、手を差し出してみる。



「ああ」



しっかりと、その手を握ってくれる。



「ねえねえ、浪馬クン」



「ん?」



「これ、全部舐めた方がいい?」




パコンッ



「いったーいっ!何すんのよぉ」



「アホ!このエロ娘!流せ流せそんなモン!」



「浪馬クンが顔にかけたんじゃない・・・・・」



「う・・・・・」



「ムリヤリ引っこ抜いてさ・・・・・」



「あ、あれは快感のあまり・・・・と、とにかく、今日は洗え!」



「・・・・はーい・・・」



「・・・・今度はちゃんと出すから・・・・・・」



「え?」



「な、何でもねえ。ホラ、今度はオレが洗ってやる」



「・・・・・・・・・浪馬クンが?」



「・・・・・イヤか?」



「・・・・・・・・・・・・・・・ううん」




今夜で、ますます近づいたことを感じながら、
私たちは、再びシャワールームへと向かった。





「ろーまくんっ♪」



シャワールームから出た後、裸のまま、ベッドに2人で寝転がる。
その瞬間、浪馬クンの腕に絡みついた。



「な、何だよいきなり」



「へっへっへ〜」




あったかいなー。嬉しいなー。



「お前、そうやって絡みついたり抱きついたりすんの好きな」



「な・・・何よー。いいじゃーん」




「シャワー出たばっかなのに、くっついたら熱くねえか?」



「いいのっ。それとも・・・・・イヤ?」




浪馬クンと、くっついていたいんだもん・・・・・



「浪馬クンがイヤなら、やめるけど・・・・・・」



じーっと、浪馬クンを見る。



「う・・・・・・」



「・・・・・・・・」




浪馬クンがちょっと赤くなった後、プイっと顔を背ける。
そして、



「べ・・・・別にイヤじゃねえよ」



「・・・・いいの?」



「ああ。お前がそうしたいんならな」



「やったあ♪」




もっときつく、腕を抱きしめる。



「〜♪♪」



「ったく・・・・・」




そう言いながらも、浪馬クンの顔は優しい。



「もしかして、照れてる?」



「・・・・・うっせ」



「へっへっへ〜。そっかそっか」




にゃーとでも言いそうな勢いで、腕にすりすり。
浪馬クンはビックリしてたけど、離そうとはしなかった。

そのまましばらく、浪馬クンのぬくもりを味わっていた。



「・・・・・んとね」



「ん?」



「こうやって、浪馬クンに触れてるとね・・・・」




ある程度味わった後、さっきの話に答える。



「私たち、恋人なんだなあ・・・・・って思えるの」



「・・・・そうなのか?」



「うん。学校では、さすがにこーゆーことできないでしょ?
なんか恥ずかしくて」



「・・・・行き帰りいっつもやってんじゃねえか・・・・・」



「そ、それはみんながいないときだけじゃないっ。
学校の中ではやってないよ」



「・・・・手はつないでるけどな」



「し、してないよっ!」



「・・・・・・気づいてねえのか?
お前、学校で話してるとき、結構オレの手握ったりしてんだぞ」



「・・・・・・うそぉ・・・・・・・」



「・・・・・・マジか?」



「うん・・・・全然知らなかったよ・・・・・・」




無意識で、そんなことやってたんだ・・・・・・
やっぱり、いつも浪馬クンに触れていたいんだなあ・・・・・



「・・・じゃあじゃあ、もしかしてもうみんなにバレてる?」



「うーん・・・わかんねえな。お前、昔から飛びついてきてたし。
体育祭ん時のあのダッシュにはビビったぜ」



「あ、あれは・・・嬉しくて、つい・・・」



「お前がリレー出ろよ!ってみんながツッコんでたな」



「ううう・・・・・・」



「まあ、そのせいで『幼なじみ』っていう意識があんのは確かだろ」



「幼なじみ・・・・・・」




そのせいで、私、気づけなかったんだよ・・・・・・
自分の気持ちが、周りに勝手に同調しちゃって。
もう少し、気づくのが遅かったら・・・・って思うと、怖くなって、悲しくなって。



「・・・・・・どうした?」



「う、ううん!なんでもないよっ」



「ヘンなヤツ」



「いいのっ。・・・・・・ねえ」



「ん?」



「バレたら、やっぱり・・・・・イヤ・・・・・かな?」



「オレたちのことか?」



「うん・・・・・・」



「んー・・・・・どっちかって言うと、、お前のほうが問題だ」



「え?私?」



「ああ。バレたときのこと、想像してみ?」



「う・・・・うん・・・・・・」




何が問題なんだろう・・・・・・と思いつつ、想像開始。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ボボボッ!!



「ひやあああああああああ!!!」



「な、なんだあ!?」




た・・・・ただでさえ、あの2人の攻撃で目一杯なのに・・・・・
それが・・・・クラスのみんなとか・・・・・他のクラスとか・・・・・・
委員会の人とかに・・・・言われたら・・・・・・・

ひえええええええええっ!!



「ダメ!ムリ!ぜったいムリ!!耐えられない!!倒れる!!」



「・・・・予想以上の反応だなオイ」



「だ、だってえ・・・・・」



「・・・・・まあ、そんなわけだ。オレたちから言いふらす必要もなかろう」



「う、うん・・・・・そうだね」



「第一、そんなことしなくたってよ・・・・・・」




ぐいっ



「え?」



急に私の身体を引き寄せ、腕だけじゃなくて、身体中をピッタリくっつける。



「あ・・・・・・」



「オレたちがわかっていればいいじゃねーか、な?」




見上げると、浪馬クンがニッコリと微笑んでいる。



「・・・・・うんっ♪」



私も微笑み返して、浪馬クンに顔をくっつけた。
シャワー後の熱さはすっかりなくなっていたけど、
私の心は、すっごくあったかくなっていた。



「・・・・・♪」



「・・・・・・・」




こうしていると、すごく気分が安らいでいく。
普段は、どうしても浪馬クンの幼なじみという面が出てしまうけど、
浪馬クンに触れていると、もっと感じることがある。

私も、一人の女の子なんだって。
浪馬クンのことを大好きな、女の子なんだ・・・・って。



そう思うと、もっと恋人らしいことがしたくなった。



「・・・・・・ねえねえ」



「ん?今度はどした?」



「リング・・・・・」



「へ?」



「リング・・・・つけてみて、いい?」



「おーおー、つけてみつけてみ。
サイズ合わなかったら交換せにゃならんからな」



「・・・・そういうこと言ってるんじゃないよう・・・・・」




恋人らしく、ロマンチックな雰囲気になりたかったのに・・・・・
こう・・・・「うわあ、キレイ」「よく似合うよ、タマ」みたいな・・・・・さ・・・・



「・・・・・バカ・・・・」



「あ?何か言ったか?」



「なんでもないよーだっ」




浪馬クンじゃムリか・・・・・・
このニブチンじゃあね・・・・・・


頭に?マークを浮かべる浪馬クンにため息をつきながら、青い箱を手に取る。
中には、あのリングが輝いていた。



まさか、ホントに私の元にくるなんてね・・・・・



昔の思い出、この前の思い出。
初めて見てからそんなにはたってないけど、数々の想いを運んでくれた、
私にとっての想い出を、じっと見つめる。



これから、よろしくね。



そう呟きながら、そっと左手を伸ばし、薬指に・・・・・



「お、おい!ちょっと待て!」



「え?」



「左手は・・・・マズくねえか?」



「なんで?指輪っていったら左手だよ?」



「だ、だってよ・・・・・」




浪馬クンが異様に赤い顔をして、止めようとする。


?何をそんなに慌てて・・・・・
なんかおかしいかな・・・・・・左手の薬指・・・・・

あ・・・・・・

ははあ・・・・・・・・・



「・・・・・そっか、そーゆーことか」



「な、なんだよ」



「大丈夫だよ。左手の薬指が、必ず結婚指輪ってワケじゃないんだよ」



「へ・・・?そうなのか?」



「そうだよ。結婚してるって思わせるためにワザとしてる人もいるけど」



「へえ・・・お前、詳しいな」



「女の子だもん」



「一応な」



「一応じゃないっ!」



「まあ、その身体を見たら、男とは・・・・・」




バキッ



「ぐわっ!」



「ジロジロ見るなっ!裸なんだから!」



「褒めたんじゃねーか!つーか女の子がんな鋭いストレートかますな!」



「褒めてないっ!まったく・・・・・」




はあ・・・・恋人気分が台無しだよ・・・・・・


所詮私たちか・・・・と思いながら、薬指にリングを通す。



すっ・・・・・



「「あ・・・・・」」



二人同時に、言葉を発する。
そのリングは、私の薬指で、静かに輝いていた。



「・・・・ぴったり・・・・・だね」



「・・・・ああ・・・・・」



「ど・・・・・どう・・・・・・かな?」




浪馬クンに、リングのついた手をそっとかざす。
それだけなのに、顔が赤くなってくる。



「よ、よかったぜ。交換行かなくて済んでよ」



「そ、そうじゃなくて・・・・・」




少しは褒めてよ・・・・・
こんなに・・・・ぴったりで・・・・嬉しいんだから・・・・・・
浪馬クンからもらえて・・・・・すごく・・・嬉しいのに・・・・・・


浪馬クンの態度に悲しくなって、顔を見る・・・・・



「・・・・・・あ」



浪馬クン・・・・・顔・・・・・真っ赤・・・・・・
そっか・・・・・いつもみたいに、茶化す余裕も・・・・・・・



「・・・・・・くす」



「・・・・な・・・・なんだよ」



「べっつに〜?くすくすっ」



「・・・・・うわ、感じ悪っ」



「お互い様でしょ。ほらあ、ちゃんと見てっ」




ブラブラと、浪馬クンの顔の前で手を振る。
そのたびに、リングが反射して輝く。



「あーあー、似合ってる似合ってる」



「ぶー・・・そんな言い方・・・・・・」



「・・・何て言ったらいいか、わかんねえんだよ」



「しょーがないなあ・・・・・・でも」




胸の前で両手を組んで、祈るようなポーズでリングを見つめる。
そして、浪馬クンの顔に視線を移して



「ホントに・・・嬉しいよ。ありがとう」



そう、言った。



「う・・・・・」



「?」




浪馬クンは再び真っ赤になり、そっぽを向いてしまった。
ん?どうしたのかな?



「浪馬クン?」



「・・・・・・・」



「浪馬クンってばあ」



「・・・・・・・・・・キレイだぞ・・・・・」



「え?」



「な、何でもねえっ」




わたわたしただけで、続きの言葉は言ってくれなかった。
なんだろ・・・・でも、悪いことじゃないような気がする・・・・・


不思議な気分で、指輪を見つめる。
ホントに、ぴったりだ・・・・・


なんとなく思って、言ってみた。



「・・・・・私の指のサイズ、よくわかったね」



いくら長年見てきたからって、そんなのわかるのかな・・・・
私だって、浪馬クンのサイズは正確には把握してないのに。
大体はわかるけど・・・・



「は?知らねえよ」



「え?じゃあどうやって買ったのよ」



「んーと、それはだな・・・・・」



さっきまでの幸せが、崩れ去っていく。



そうだよ・・・・知らないんなら、どうやって・・・・・
何号とか、意味も知らなそうなのに・・・・・



「まさか・・・他の女の人にも、贈ったこと・・・あるの?」



それなら・・・・わかっても、おかしく・・・・・ない・・・・・



「涙ぐむなっ!お前以外したことねえっ!」



「・・・・・・ホント?」



「マジだっ!ヘンな詮索すんな!」



「だって・・・・・・」



じゃあ、どうしてサイズなんかわかるのよお・・・・・



「・・・・・・店員に聞いたんだよ」



「・・・・それだけじゃ普通、わかんないよお・・・ぐすっ・・・・・・」



「あああ、泣くな!しょうがねえ、恥ずかしいが説明してやる。
お前も多少は関係あるしな」



「・・・・・え?」



「前、お前と宝石屋で逢ったろ?」



「・・・・・・・ネフェルティティ?」



「ああ。で、お前が先に帰った後・・・・・・」






・・・・・タマのヤツ、何を見てたんだ?
確かこの辺を・・・・やたら真剣な目で・・・・・



『・・・・・リング・・・・か』



あいつ、貴金属好きなのか?
つけてるの見たことねえけど・・・・・・



『ま、あいつも女の子・・・・ってことか』



割とすげえしな・・・・タマ・・・・・・
って、こんなこと考えてたら歩けなくなっちまうな。



タマに・・・・似合うかな・・・・・・?



『いらっしゃいませ。恋人への贈り物ですか?』



『うわあっ』



『・・・失礼致しました』



『い、いえ・・・・・・』




くっ・・・・・・さすがは女の店。普段オレが行く店とは勝手が違うぜ。
って、もしかして、この店員に捕まっちまったか?



『こちらのリングは、控えめなデザインが特徴でございます』



『これで控えめかよ・・・・』



隣の棚を見る。



『・・・・・納得・・・・』



『いかがされました?』



『いえ、何でもないっす』




・・・比べりゃ、こっちのがタマには似合うよな・・・・
もしやったら、喜ぶかな、アイツ・・・・・・



『お客様と同年代の女性の方にも、人気でございます』



『へえ』



『先ほども、熱心に見ていらっしゃった方が』



『・・・・・タマのことか』



『タマ?失礼ですが・・・・あの方はお知り合いでございますか?』




な、何だ急に?



『あ、まあ、知り合いっていうか・・・』



『・・・・そうですか』



『なんで、いきなりそんな事を?』



『失礼いたしました。その方、以前も ほ ん と う に 熱 心 に
そのリングを見ていらしたもので・・・・・・』




・・・・今、この人の地が出たような・・・・・・

何かやったのか?アイツ・・・・・
周りが見えてねえとこあるからな・・・・・・



『お客様?』



『あ、ああ。すいません。・・・・・・そんなに熱心だったんすか?』



『ええ。 そ れ は も う  』




・・・・・話題、変えたほうがいいのか?



『もしかしたら、何か特別な思い入れがあるのかもしれませんね』



『思い入れ・・・・・』




このリングに・・・?
そういや・・・・真剣だったけど、何となく楽しそうにも見えたな・・・・



アイツ、これ欲しいのかな・・・・・・



『お客様?』



『・・・・・・・・・・・』




高えな・・・・・
でも・・・・・なんとか・・・・・・足りるよな・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



『・・・・・・・これ、ください』



『え?』



『このリング、ください』



『か、かしこまりました。ありがとうございます』




・・・・言っちまった・・・・・・



『お客様、サイズはいかがされますか?』



『さ、サイズ?』



『はい、指のサイズでございます』




しまったあ・・・・・そんなのわかんねえよ・・・・・・



『あの・・・・大体、どんなもんなんすかね?相手はワリと細いんすけど・・・』



『・・・・1mmから1.5mm単位で異なりますが・・・』



『・・・・・・・ムリだ』



『ああっお客様、頭をお抱えにならなくとも』



『・・・・そもそも勢いで買おうとしたのが間違いだったか・・・』



『ご本人様がいらっしゃれば、確認できるのですが・・・・・・
せめて、大体でもわかれば・・・・・・』



『えーっと・・・髪が長くてストレートで、目がパッチリしていて、
胸は自己申告よりどう見てもデカくて、足は速いが手も早くて、
加減ってものを知らなくて、ウブなガキで、そのくせエロくて、
それでも、オレの・・・』



『私がお聞きしているのは指のことですが・・・・・・』



『・・・・・・・へ?』



『ふふっ。とってもよくご存知なのですね』



『ぐわあ・・・・・・・やっちまった・・・・・』




店員が営業スマイルを作りきれず、笑ってしまっている。
ぐおお・・・・逃げてえ・・・・・・



『タマにこんな高価なもんやろうとしたのが失敗だったか・・・・・』



すると、店員の顔つきが少し変わった。



『・・・・・お相手・・・・・・先ほどの方なんですか?』



『へ?』



『今、タマって』



『・・・・・あ・・・はい、そうです』



『なら、わかりますよ』



『は?』



『あの方のサイズなら、わかります』



『な、何で?』



『先ほどの話なんですが、以前も、熱心に見てらしたので。
その間、指先に注目してたんです』



『そんな長い時間見てたんかよ・・・・・・』



『ええ、そ れ は も う 』




・・・・あ、また素に。



『あの方なら、こちらのサイズで間違いないでしょう』



『はあ・・・・そうですか』



『今、お包みいたしますね。プレゼント用でよろしいですか?』



『あ・・・・それでお願いします』




うーん・・・さすがはプロと言うべきなのか?
最後の方はちょっと地が出てたが。

それにしてもタマのヤツ・・・・・
結構みんなを振り回すタイプなんじゃねえか?
オレは慣れてるからいいが・・・・・・



オレが・・・・守ればいいのか・・・・・・



『お待たせいたしました』



『あ、どーも。じゃ、代金』



『ありがとうございます』




小さな袋を受け取る。これが3万か・・・・・
メシ代とリングを天秤にかけていると、店員がじっとオレを見ていた。



『な、何か?』



『・・・・これは、なかなかどうして・・・・・』



『おーい』



『はっ!ご、ごめんなさい』



『素になってますよ?』



『・・・・・つい、2人の並んだ姿を想像してしまって』



『2人?』



『貴方と、あの女の子・・・・タマさん?本名ですか?』



『・・・(実は天然か?)いや、本名はたまきです』



『ですよねえ。さすがに本名じゃないですよねえ』



『当たり前だっての』



『で、さっきの話していた風景と、想像を合わせてみたんですが・・・』



『(聞きゃあしねえ)はあ』



『店員の枠を外して、一個人として思うんですけど』



『既に外れていると思うが』



『いいんです。で、お二人なんですけど・・・・・』



『・・・・・・・』



『すごく、お似合いです』



『え?』



『多分、私が今まで見てきたカップルの中で、一番』



『そ・・・・・そっすか?』



『ええ。お世辞じゃなく』



『は、はあ』



『たまきさん、そのリング・・・・・絶対、喜んでくれますよ』



『・・・・・・』



『お幸せに』



『あ、ありがとうございます』






「というわけなんだが・・・・・」



「そうなんだ・・・・・あの時に・・・・・」



「ああ。つーかお前あそこで何やったんだ?
店員がバッチリ指のサイズわかるくらい、熱心だったらしいが・・・・・」



「な、何にもしてないよお」




うわあ・・・・思いっきりマークされちゃってるよ私・・・・・
しばらく、あのお店行けないよ・・・・・・



「なぜトホホ顔になる?」



「・・・・気にしないで」



「・・・・・・まあ、何となく想像はつくがな・・・・・」



「お願い、想像しないで」



「・・・・はいはい。で、濡れ衣は晴れたか?」



「・・・・・・うん。ごめんね」



「はっはは。わかればいいのよ」




浪馬クンが、私の肩をパンパンと叩く。
素肌だから痛いんだけど、私の早とちりだからなあ・・・・・・



「・・・・・・店員の言ったとおりだったな」



「え?」



「リングやったとき・・・・・すごく、嬉しそうな顔だった」



「あ、当たり前だよ・・・・・」



「そんなに気に入ってたのか?」



「それも、ちょっとあるけど・・・・・・」



一番嬉しかったのは・・・・・・



「浪馬クンがくれたから・・・・・・だよ」



「タマ・・・・・・」



「ずっと・・・・・・大切にするね」



「・・・・・・・ああ」



「ねえ」



「ん?」



「やっぱり、左手につけちゃ・・・・・・ダメ?」



「こだわるなあ。右手じゃダメなのか?」



「うん・・・・・・だって、左手にはちゃんと、意味があるんだもん」



「結婚とか婚約ってことじゃないのか?」



「必ずしもそうじゃないんだよ。左手の薬指にはね・・・・・」



「・・・・・・・」




「『愛の絆を深める』って、意味があるの」




「・・・・・・・・え・・・・・・・」



「だから、どうしても、左手につけたいんだ・・・・・・」



「タマ・・・・・・」



「学校では没収されたらヤだから、つけてかないけど・・・・・
それ以外は・・・・・つけちゃ・・・・・ダメかな?」




もっともっと、絆、深めたいから。
今だって深いけど、私は欲張りだから。
毎日毎日、深くなっていきたいの。
だから、だから・・・・・・・



「・・・・・ったく、そんな顔で言われて、断れるかっての」



「!じゃあ・・・・・」



「・・・・・なくすなよ?」



「・・・・・・うんっ」



「じゃあ、次のデートのときな」



「・・・・・・・うんっ!!」




嬉しさのあまり、また浪馬クンに抱きつく。



「おい、なくすぞ」



「浪馬クンとは違いますー」



「口の減らないヤツだな」



「キミと一緒にいるから伝染ったんですよーだ」



「・・・・・・このやろ」



「あははっ」




じゃれあいながら、今日という日を存分に味わう。
もう何回目かわかんないくらいの、一緒になれてよかったと思う幸せ。


もうそろそろ時間かな・・・・・でももう少しくっついていたいな・・・・・
あーあ、明日も一緒にいれたらいいのになあ・・・・・・


どうしても離れる気にならなくて、でも時間が気になって、
時計を眺めてみる。



「・・・・・・あれ?」



「どした?」



「浪馬クン、あの時計壊れてるよ?」




そう言って、私は目覚まし時計を指差した。



「いや、壊れちゃいねえぞ」



「そうなの?じゃあ、電池切れたのかなあ」



「何で急にそんなこと聞くんだ?」



「だって、私がここに来てからちょっとしか時計動いてないよ?」




ここに来て、一緒にシャワー浴びて・・・・・・
いっぱい、いっぱい触ってもらって・・・・・・
たくさん動いてもらって・・・・・私だけ先に・・・・・・

で、私が口でしてあげて・・・・・・もう1回シャワー浴びて・・・・・
リングつけて・・・・・話、して・・・・・

いつもなら、もう、かなり立ってるハズなのに・・・・・・



「だから、壊れちゃいねえし、電池も切れてねえよ」



「じゃあ、なんで時計動いてないの?」



「だーかーらー、実際にそれしか時間たってねえの」



「・・・・・・うっそだあ」



「だから、『出来上がるの早くねえか?』って言ったじゃねーか」



「・・・・・・・・・」



「うそっこだよね?」



「・・・・・・・・・・・・・」




・・・・・・・・・・・ホント・・・・・に?



「ええええええええええ!!???」



がばあっ!



「うわっ」



ものすごい勢いで飛び起きて、テレビをつけ、ビデオとオーディオの時計をチェック。
どれも目覚まし時計と同じ時間をさし、テレビも時間通りの番組をやっている・・・



「な?だから・・・・・」



「携帯!携帯どこっ!?」



「そこにあるが・・・何する気だ?」



「時報!時報聞くのっ!」



「・・・・・・・錯乱してるな・・・・・・・」




慌てまくって、携帯を掴み取る。
何か私のじゃないような気がするけど、気にしない。



「それ、オレの携帯・・・・・・」



「1、7、7・・・・じゃなくて!えっとえっと・・・・1、1、7だっけ?」



「・・・・・・ダメだ、この女」




・・・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ポーーン・・・・・・



呆然として、携帯を置く。



「どうだ?信じる気になったか?」



「・・・・・・・どうやら・・・・・・」




いくら・・・・まだ1回しかしてないからって・・・・・
もしかして、触ってもらった時間って・・・・ほんのちょっと・・・・・・?
それとも・・・・・挿ってから・・・・・・そんなにすぐに・・・・・?
うそおおおっ・・・・・・・



自分の感じていた時間と実際の時間のあまりのギャップに、思わず呆けてしまった。



「やれやれ・・・・・・」



すっ・・・・・・



「あっ・・・・・・」



後ろから、浪馬クンが抱きしめてきた。
吐く息を首の後ろに感じて、ちょっとぴくんってなる。



「ろ・・・浪馬クン・・・・・・?」



「そんなに感じてたのか?」



「・・・・・・・」



「いつもより、時間を忘れるくらいに」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」



「はっはは。なら頑張った甲斐があったってもんだぜ」



「もう・・・・・・・」




頑張ってくれたから・・・・・まだ、こんな時間なんだよね・・・・・・

・・・・・なら・・・・・・まだ、時間・・・・・・あるんだよね・・・・・・・・
まだ、私たちの夜は・・・・・終わって・・・・・ないよね・・・・・・・



「浪馬クン・・・・・・・」



「なんだ?」



「・・・・・・・・えっと・・・・・・・その・・・・・・・」



「・・・・・・どうした?」




私から言っても・・・・・いいよね。




「・・・・・・・・もう1回・・・・・・・・・・しよ」




「・・・・・・・・・・・・」



「だから・・・・・・・」



「・・・・・・・・・エロタマ」



「なっ・・・・!」



「『・・・・・・しよ』ってお前」



「だ、だって!浪馬クンから言ってくれないから・・・・・」



「オレはしたいなんて思ってないぞ?」



「ウソだあ!私より浪馬クンの方がエッチだもん!」



「ほぉ・・・・・『しよ』と自分で言っておいてか・・・・・」



「ぐぬぬぬぬ・・・・・・」



「・・・・・・・勝った」




・・・・勝ち誇らなくたって・・・いいじゃない・・・・・・



「浪馬クン・・・・・・ホントにしたくないの?」



「は?」



「私と・・・・・・」



「・・・・・・・うわっ、その声は汚ねーぞ」



「じーっ・・・・・・」




肩越しに、浪馬クンを見つめる。
少し泣きそうなのを、ガマンして。



「・・・・さすがタマだ。オレの操縦法をわかっていやがる」



そう言って、離れていた下半身を、私に当てる。



「・・・・・・!」



・・・・・・・・・あつい・・・・・・・・・・



「浪馬・・・・・クン?」



「ご名答だ」



・・・・すっごい・・・・・・・固くなってる・・・・・・・



「・・・・・・ずっるーい!」



「はっはは。こんな状況でオレが欲情しないワケねーっつーの」



「いばるなあ!」



「ごめんな、タマ」




急にシリアスな声で、首筋にキス。



「はうっ・・・・・」



「まだ、時間はあるからな」



「・・・・・・・・うん」




まだ・・・クリスマスは終わってないから・・・・
もっともっと、想い出・・・・・つくろうね。



「また、速攻でイカせてやるよ」



・・・・やっぱり、ロマンチックな時間は短いけど。



「・・・・・・こ、今度はガマンするもんっ」



「それはどうかな?さっきので、お前の弱いところはかなりわかったしな」



「わ・・・・私だって、浪馬クンがぴくぴくするとこわかったもんっ」



「・・・・・・じゃあ、勝負と行こうか」



「望むところだよ」




これも、私たちなりの想い出。



「じゃ・・・・・いくぞ」



「うん・・・・・・・・浪馬クン・・・・・・」




ちゅっ・・・・・・・



「はあ・・・・・はむ・・・・・ん・・・・・・んんっ・・・・・・・」



「ふう・・・・・ん・・・・・んちゅっ・・・・・・れろ・・・・・・・」





静かな部屋の中に、2人の湿った音と声が響き渡る。
私たちの聖なる夜は、こうして更けていく。





「ふう・・・・・・」



玄関先で、浪馬クンがホッと息を吐く。
ため息じゃなくて、なんか「一仕事終わったぜ」って感じの。



「あははっ。なんか、すごくスッキリしたって顔してる」



さっきまでしてたことと、今のすがすがしい表情のギャップに、思わず笑ってしまう。
だって、なんか妙に男らしいんだもん。



「へ?そりゃまあ、やることやったしな」



「でも今日はそんなに回数こなしてないよ?」




普段の・・・・その・・・・半分・・・・くらい・・・・・?



「確かに回数はこなしてないけどよ、それなりに内容は濃かっただろ?」



その言葉に、さっきまでの内容を思い出す。
優しかった指。
優しかった舌。
そして私の中を探る・・・・・・

回数こそこなしてはいないけど、私は何度も何度も・・・・
その度に、浪馬クン、待ってくれて・・・・・

最後は・・・・・一緒に、イッてくれて・・・・・・



「・・・・・うん」



思い出すと、言葉が失われていく。
代わりに生まれてくるのは、頬の熱さと、甘い感覚。



「はっはは、なに照れてんだよ。さっきまではあんなに大胆だったクセによ」







「ちょ、そういうこと言わないでよ。誰かに聞かれたらどうするのよ」



思わず浪馬クンの寸前まで近づいて、小声で抗議。
軽く胸をポカってやりながら、恥ずかしいのを訴える。
前は「セックス」とか言ってたクセに、今はなんだか恥ずかしい。



「聞かれたってわかりゃしないって」



私の抗議を、浪馬クンは軽く受け流す。
きっと、浪馬クンにはバレバレなんだろうな。
今日で、私のこと、いっぱい知られちゃったからなあ・・・・・・



「んもう。デリカシーが足りないんだから」



ぷうっとふくれてみたけど、全然怒ってなんかない。
そんなところも、浪馬クンの魅力だから。
浪馬クンになら、全部知られてもいいから。



「はっはは」



ばーか・・・・
私も、笑みが漏れる。



「それじゃあ私、もう帰るね」



もっとくっついていたかったけど、浪馬クンは明日からまた仕事。
ジャマにはなりたくなかったので、退散する。



「ん。またな、タマ」



「バイバイ」




・・・・・あ、そうだ。
2、3歩歩いたところで、くるっと振り向いて、浪馬クンを見る。



「ん?どした、忘れ物か?」



「うん。言うの忘れてた」



「?」




今までよりももっともっと私たちを仲良くさせてくれた、今日という日に。
そして、最高の恋人の、浪馬クンに。



「浪馬クン。メリークリスマス」



「・・・・?お、おう」



「おうじゃないよ。ちゃんと言うの!」



「今日、逢って一番に言ったじゃねえか」



「いいのっ。今日は特別な日なんだから、最後も言うの!」



「わ、わかった」



「じゃあもう1回ね。メリークリスマス」



「・・・・・・メリークリスマス」



「うん、よろしい」




にっこり。



「・・・・・ワケわかんねえな」



テレくさそうに言いながら、浪馬クンも笑ってくれた。



「あははっ。じゃあね、バイバーイ」



元気よく手をぶんぶん振りながら、家の外へ出て行った。
ちょっと歩いたところで振り向くと、まだ見送ってくれていた。





「ん―――――――っ!!」



部屋に戻った私は、ベッドに大の字。
天井を眺めながら、さっきまでのことを振り返る。



「・・・楽しかった・・・・・・・な・・・・・・・」



今日一日で、浪馬クンとの距離が、また埋まった気がする。
幼なじみとしてじゃなくて、恋人としての距離。

浪馬クンが、私の事をたくさんたくさん、考えてくれた。
クリスマスにふさわしい場所を選んでくれて、
クリスマス用じゃなかったけど、私に似合うと思って、プレゼントを選んでくれて。



「えへへっ・・・・・・」



視線が、薬指のリングに移る。
これからは、浪馬クンと逢うときは、必ずリングをつける。
これをつけている限り、私は、浪馬クンのもの。
学校でつけられないのが、すごく残念。

約束は忘れちゃってたけど、そんなのどうだっていい。
浪馬クンがくれたことが、最高のプレゼントだから。



しかも、プレゼントはそれだけじゃなくて、
私を、あんなにいっぱい・・・・・・



「気持ち・・・・・・・・よかった・・・・・・・な・・・・・・」



この前、私が言ってしまった、普通は嫌われても仕方のないこと。
大好きな人のエッチにダメ出しなんて、普通、やらないよね。

でも、浪馬クンは怒るどころか、「甘えてたのかもしれない」って言ってくれた。
そして今日、私が時間を飛ばしちゃうくらい、感じさせてくれた。



「いっぱい・・・勉強したのかな・・・・・・」



そう思うと、恥ずかしいけど、すごく嬉しい。
浪馬クンがエッチなのはわかってるけど、今までと比べても全然違った。
自分自身の気持ちよさより、私を、優先してくれた。
いっぱい触ってくれた。
いっぱい舐めてくれた。
それこそ、指と舌だけで、イッちゃうくらいに。



「・・・・・・・・・・私は・・・・・・・・・」



私が浪馬クンにあげたものなんか、ほんのちょっとしかない。
浪馬クンへの気持ちは誰にも負けていないって言っちゃえるけど、
浪馬クンからもらった気持ちと比べたら、少ないよね。

口で・・・・だって、すごくがんばったけど・・・・・



「もう、私が知ってることなんか、全部使っちゃったよ・・・・・・」



それでも、今日の浪馬クンに足りてるなんて、全然思わない。
『私のことも考えて欲しい』なんて言っといて、
自分の気持ちよさばっかり考えていたのは、私。
今度は、私が浪馬クンに応える番。


そして、応えあって、一緒に気持ちよくなれたら、最高だよね。


そのために、



「私も・・・・・勉強しないと・・・・・・ね」



ろ、浪馬クンに負けてらんないからだもん!
今日は惨敗だったから!
次は勝つんだから!



今日の内容を思い出して顔を真っ赤にしながら、決めた。
浪馬クンのために。
二人のために。





寝ようとすると、携帯に電話が入った。
ん?あの娘だ・・・・確か刃君たちと、遊んでるんだよね・・・・
なんだろ・・・・・


「もしもし?」


「やっほお〜〜〜、たまき、元気い〜〜〜?」


「・・・・・・・何よそのテンション」



明らかにアルコール入ってるよ・・・・・・


「ね、ね、楽しかった〜〜?」


「・・・・・・・うん」


「お〜〜〜、その沈黙はいいもんいっぱいもらったぜって感じ〜〜?
すうぃーとな一夜を過ごしたわけですな〜〜〜?
いいなーいいなーコノヤロー!」


「!?や、その、そんな・・・・・」


「なーにあたしの前で恥ずかしがってんのよぉ!
優しくされちゃったりなんかしたんれしょおおお!
『タマ・・・・』とか熱く見つめられたりとか!
その後はあっついベーゼれすか?
見つめられるのは顔だけじゃありませんか?
あーーーーもううらやましいぞおおおお!!」



・・・・・・・魂の叫びだ・・・・・


「・・・・・・刃君は?」


「あー雨堂くん〜〜〜?楽しそうだよお〜〜?」



そう言うと、どうやら受話器を刃君側に向けたらしい。



『も、もういい加減飲むのはやめようぜ、な?』

『うるさいっ!あんたみたいなモテ野郎に一人身の気持ちがわかるかっ!ぐすっ・・・・・』

『絡むな!おい!ウオッカとジンを混ぜるな!』

『酒なんか胃に入っちゃえば同じよ!』

『酒同士を混ぜてどうする!こっちにカシスとかあるだろ!』

『知るかボケ!ねえ、何で彼氏ができないのよーーーえぐっえぐっ』

『その姿を見たら・・・・・』

『なんだとおおお』

『うわあああああ!』




「どお〜〜〜?楽しそうでしょ〜〜〜〜?」


「・・・・悲鳴が聞こえたけど・・・・」


「き・の・せ・い♪」


「・・・・・・・・・」


「よかったね〜〜〜〜」


「?」


「織屋君と過ごせてさ〜〜〜〜」


「・・・・・・・・うん」


「織屋君のこと、好き〜〜〜〜〜?」


「え?」


「好きかろうか言え!」


「な、なんで今・・・・・・」


「ゴチャゴチャ言わないっ!言うのら!」



酔っ払いだ・・・・完全な酔っ払いだ・・・・・
ううう・・・・恥ずかしいけど、どうせ忘れるだろうから、いいか・・・・・


「・・・・・・・・うん。大好き」


「・・・・・くあああああああ!」


「!?」


「『・・・・・・うん。大好き』くああああああ!
あたしもそんな相手ほしいいいいいいい!!」


「ちょ、ちょっと・・・・・・」


「あたしも幸せをつかむ!星をつかむ!そう決めまひた!」


「は、はあ・・・・がんばって」


「では!星に向かって突き進むのれす!
たまきは愛しの彼と電話ででも語り合っててくらさい!」


「・・・明日仕事だから、もう電話しないけど・・・・・」


「くうううう!気い使ってええええええ!
奥さんか!?新妻か!ご飯?お風呂?それともア・タ・シ?」


「!!そ・・・そんな、まだ・・・・・・・って何言ってんのよ!」


「くそおおおお!あらしも掴むぞおおおおお!
たまきと話してる場合じゃないのらあああ!」


「そっちからしてきたんじゃん・・・・・・」


「では!あらしはいってまいります!
たまきは今日の幸せをかみしめつつねむるがよいのれす!」


「はあ・・・・・」


「では!!めりーくりすます〜〜〜!!」



「・・・・・あ・・・・ねえちょっと!電話切れてない・・・・・・」




『ああああ!何2人でじゃれあってるのよ〜〜〜!』

『これのどこがじゃれあってる!絡まれてるっつーんだ!』

『私だってえ・・・それなりに胸とかあるのにい・・・・ひっくひっく・・・・・・』

『首に腕を回して泣くな!』

『そんならぶらぶな2人にだ〜〜〜いぶっ!』

どかあっ!

『ぐわあっ!重い!重いっての!』

『れでぃーに向かって失礼らぞお、あまどー!』

『いきなりボディプレスかますレディがいるかっ!』

『いっつも夜な夜な女の子上に乗っけてるくせにぃ』

『乗っけてない!おい、望!助けてくれ!』

『・・・・・・』きゅっきゅっ

『何事もないように釣竿を磨くな!』

『性格だって・・・・実は尽くすタイプなのに・・・・ぐすんぐすん・・・・ごくごく』

『ウオッカ+ジンをそのまま飲むな!それはカクテルじゃない!』

『あらしもかまってよ〜〜〜〜』

『まずは降りろ!』

『何よお!D組の○○さんはよくてあらしはダメなの〜〜〜?』

『告られただけだ!乗っけてない!つーか何で知ってる!?』

『うふふふふふふ』

『雨堂!聞いてよお・・・・ごくごく・・・・ぐすぐす・・・・・・』

『た、助けてくれええええ』




・・・・・・・・・・ぴっ


「・・・・・・・ごめんね・・・・・刃君・・・・・・」


行かなくて、本当によかったよ・・・・・・





12月25日(土)



だだだだだだっ!



「あ、姉ちゃんおかえりー」



バタンッ!



「あれ、たまきが帰ってきたんじゃないの?」


「帰ってきたけど、走って部屋入っちゃった」


「どうしたのかしら?ご飯の支度手伝ってもらおうと思ったんだけど」





「はー、はー、はー・・・・・・」


何とか家に帰ってきた私は、へなへなと座り込む。
手に握られた、普段あんまり使わないトートバッグの中には、厚い紙袋。


「ふう・・・誰にも見つからなくてよかったあ・・・・・・」


どさどさどさ。


紙袋を開け、中身を取り出す。


「うーん・・・勉強のためとはいえ・・・・・・・」


出てきたのは、マンガ雑誌や音楽の雑誌。
その間に挟むようにして、レディースコミックやら女性の体験談集やら、
タイトルを言うのがためらわれるような本の数々。


「こんなの大量に買うの、見せられないよ・・・・・」


エッチの勉強をするって決めたのはいいけど、どうやって勉強するのかわからなかった。
で、結局思いついたのがこれ。


「男の子と発想同じだよね・・・・・・」


そういえば、去年浪馬クンの家を(勝手に)掃除しにいったとき、
エッチな本が大量に出てきたなあ・・・・・

今もあったりするのかな・・・・・・


「ダメっ!今は私がいるんだから!」


自分の手にしている本を、棚にあげて叫ぶ。
私なら、言ってくれればいつだって・・・・・・!


「・・・・何言ってんだ私・・・・・・」


でも、今度掃除しにいってあげようかな・・・・
喜んでくれるかなあ・・・・
最近、女の子としてしか行ってないからなあ、浪馬クンの部屋・・・・

これからもずっと一緒にいたいし、そういうこともしてあげられたら・・・・


「・・・・・・・・・掃除して・・・・洗濯して・・・・・・」


顔を赤くしながら、将来の想像がスタートする。
同じ家に・・・・浪馬クンと・・・・・・・


「・・・・・・・・はっ!きゃーきゃーきゃー!!」


しばらくたったところで我に返り、手をぶんぶんと振る。
まだ・・・まだ早い!じゃなくて!今日は想像してる場合じゃないの!
勉強するの!勉強!


「よーしっ!やるぞお!おー!」


試験勉強よりも遥かに気合を入れて、まずは体験談集を開く。


う・・・・うっそお・・・・・私より年下になってるよね・・・・・
こんなこと・・・・しちゃうの・・・・・?


へえ・・・・・そういう流れもあるんだあ・・・・・
男の人も・・・・胸・・・・・へえ・・・・・・なるほどなるほど・・・・・


>彼が「おい、手コキしろ」と私に命令する。


手コキ?なんだろこれ・・・・・・


>私は逆らうことができず、手を彼のモノへと伸ばした。
>そして、ゆっくりと上下にしごいていく。



あ・・・・・手でするの、そういうんだ・・・・・・
手コキ・・・・・覚えとこ。
でも、こうやって命令されるの、やだなあ・・・・


『おいタマ、手コキしてくれ』


うーん・・・・「してくれ」だったら逆らえないかも・・・・・・
ちょっと・・・・かっこいいかも・・・・・・浪馬クン・・・・・・


・・・・・はっ、勉強勉強。



「・・・・ぶっ!!」



ある体験談を読んで、思わず口に含んだコーヒーを吹き出す。


「けほっ!!けほけほっ!!ううう・・・・・鼻に入ったよう・・・・・・」


しばらく咳き込んだあと、再びその記事を凝視する。
声に出して読んだらお母さんが腰を抜かすような内容。
それなのに、目が記事から離れない。


うっそお・・・・・う、後ろ・・・・・・?
そんなの・・・・・入るの・・・・・?
だって・・・・・普通と・・・逆・・・だ・・・・・よ?
それに・・・・浪馬クンの・・・・あんな・・・おっきいの・・・・・・


どっきん・・・・・どっきん・・・・・・どっきん・・・・・・


「や、やだ・・・・・なんで、ドキドキしちゃうのよ・・・・・・」


もしかして、興味あるってこと・・・・?


ぶんぶんぶん!
違う違う違う!私はそんな変態さんじゃなーーーーいっ!!


パタン!


「はあはあはあ・・・・・こ、この本は私にはキツすぎる・・・・
違うのを・・・もうちょっと、その・・・初心者向けの・・・・・・」



何が初心者向けなのかよくわからないけれど、とりあえず次の本へ。


ふわあ・・・・・コスプレして・・・エッチ・・・・?
女の子は制服着てかわいいって思うけど、
男の人はエッチしたくなるのかなあ・・・・・

でも、私のバイト先って、かわいい系じゃないよね。
かっこよくて、私は気に入ってるんだけど。
あれでも、浪馬クンはエッチしたいって・・・思うのかな・・・・・・
もし、今度着てみたら・・・・・

ぶんぶんぶんっ!
そんなことしたら、バイト中に思い出しちゃうよお!却下却下!

つ、次!次の本!!



・・・・・・・・・・・・・



そんな調子で、顔を真っ赤にしたりしながら、存分なジャスチャーを交えて
本を読み続ける。


「なんだか・・・・頭、クラクラしてきた・・・・・・」


情報を一度に詰め込みすぎて、パンク状態。
奥・・・深いんだな・・・・・エッチって・・・・・・
何か、終わりが見えないよ・・・・・・


そう思いながら尚もページをめくっていくと、


「あ・・・・・・・・」


それは、処女を失ったときの体験談。

ずっと好きだった人に、初めてをあげられたときの痛み。
それ以上の嬉しさ。
最後は、こう締めくくられていた。



>好きな人に初めてをあげられて、私はホントに幸せです♪



・・・・・・・・・・・・ちくん。



胸に、小さくて、鋭い痛みが走った。


文章から、本当に幸せそうな様子が伝わってくる。
なのに、それと全然違う感情が、私を襲ってくる。


「なんで・・・・・・・」


あの時は、本当にあの人が好きだったのに。
浪馬クンも、気にしてないって言ってくれたのに。
今は、すっごく幸せなはずなのに。



どうして、こんなに悲しいんだろう。



「浪馬クン・・・・・仕事、まだ終わらないの?」


まだ日が沈んでないから、終わってるわけがない。
それでも、私は思わず窓の外を見てしまう。
きれいな夕焼けの中、工場の音がかすかに聞こえてくる。
無機質な金属音なのに、不思議と優しい音を奏でているような気がする。


「・・・・がんばってるんだね・・・・・」


その音の中に、浪馬クンがいる。
土日を返上して、頑張っている。
そう思ったら、少しずつ、胸の痛みが取れてきた。
浪馬クンのことを考えると、何でもできるような気になってくる。


「さあ、私ももうひと頑張りしますかっ」


間違っているかもしれないけど、浪馬クンだって頑張ってくれたから。
私だって、もっともっと、浪馬クンをイカせちゃうんだから。

ファイト、私!


「・・・・・・・浪馬クンと思考、似てきたなあ・・・・・・」


嬉しいような、ちょっとマズイような、複雑な感情を抱きながら、
違う本を手に取った。





12月31日(金)〜1月1日(土)


「・・・・・・・・にこにこ」


もうすぐ今年も終わりだというのに、既に私の心は明日へと飛んでいた。
新年から浪馬クンと初詣なんて、最高だよっ♪

この晴れ着・・・・浪馬クン、気に入ってくれるかなあ。
キレイって言ってくれるかな?カワイイって言ってくれるのかな?
さすがに何か言ってくれるよね。
髪のこととかには全然ドンカンだけど、服は結構見てくれるもんね。

・・・・やっぱり、コスプレとか、好きなのかな?
きゃー!あの本のことは封印!忘れよ忘れよ!

でもきっと、初詣の後は・・・・浪馬クンの部屋で・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・きゃー☆



「どうしたのたまき?晴れ着見ながらニヤニヤして」


「に、ニヤニヤじゃないもん!ニコニコだもんっ!」


「違いがお母さんにはわからないけど・・・まあいいわ」


「ぶーぶー!」


「それより初詣、明日は何時ごろにする?去年と同じでいい?」


「あ、ゴメン。私、明日は一緒に行けないんだ」


「え?どうして?」


「ちょ、ちょっと・・・その・・・・・待ち合わせしてて・・・・・」


「あらそうなの、まあ友達と一緒なら、しょうがないわねえ。クラスの娘?」


「えっと・・・・クラスはクラスだけど・・・・・・」


「なによ、歯切れ悪いわねえ」


「・・・・・・・・・」


「もしかして、浪馬さんでしょ?」


「!!ご、吾郎!?」


「だって、さっき浪馬さん来てたもん。一緒に行こうって言ったんだよね?」


「あ・・・・アンタ聞いてたの!?」


「ううん。でもなんか姉ちゃん嬉しそうだったし、そうかなあって」


「そうなの?たまき」


「え・・・ええっと・・・・・その・・・・・・」


「ね、ね、でーと?」


「なあっ!?」


「浪馬さんと、でーとするんでしょ?」


スパーーンッ!


「いったー!姉ちゃんがぶった〜」


「うるさいっ!マセたこと言うからでしょ!」


「ほらほら、ケンカしないの」


「だ、だってえ」


「で?」


「え?」


ずずいっ


お母さんが、寸前まで、顔を近づけてきた。


「浪馬君と、本当にデートなの?」


「あう・・・・あうう・・・・・・」


「アンタたち、昔から仲良かったもんねえ」


「そ・・・そういうわけじゃ・・・・・・」


「じゃあ、誰と?」


「えっと・・・その・・・・・・お、幼なじみのみんなとだよ」


ごめんね、刃君、望君・・・・・・


「あらそうなの。浪馬君だけじゃないのね。ふーん・・・・・・」


「そ、そうそう。はっはは」


「何?そのヘンな笑い方」


「はっ!な、なんでもない!なんでも!あははっ!
じゃ・・・じゃあ、私、部屋に戻るね!では!よいお年を!」


早口で一気に捲し上げてダッシュ!!


「・・・・・・・・姉ちゃん、素早い」




「ふー・・・・・バレて・・・・ないかな?ないよね?」


お母さんのニブさを祈りつつ、へなへなと崩れ落ちる。

ふー・・・まったく吾郎ってば、どこであんなことを・・・
まさか、浪馬クンじゃないでしょうね・・・
昔から、けっこう懐いてたし・・・・・・


「うーん、お母さんには、言ってもいいかなあ・・・・・・
浪馬クンと私・・・・・・その・・・・・・つきあってる・・・・・・って・・・・・・」


うー・・・でも私から言うの、恥ずかしいよ・・・・・・
浪馬クンに、言ってもらおうかなあ・・・・・・


『オレたち、つきあってるんです』


『あらそうなの。浪馬クン、たまきのことよろしくね』


『任せてください。タマはオレが幸せにしますよ。はっはは』


・・・・・ダメっ!これじゃ将来の話じゃない!
お母さんが圧倒的にカン違いしちゃいそうだよ!
別に、カン違いしちゃってもいいんだけど・・・・・ってそうじゃなくてっ!


「・・・・・・やっぱり、もうちょっと期間を置こう・・・うん」


将来・・・・・・か。


こうやって、浪馬クンと恋人になるなんて、今年の初めは
夢にも思ってなかったんだよね・・・・・・


初詣では「ステキな恋人ができますように」とかお祈りしてたっけ。

それから、春休みにあの人と出会って・・・・・・
それなのに、浪馬クンと遊ぶのを止められなくて・・・・・・
当たり前だよね。ホントはわかってたんだから。

それに気づくのに時間がかかったせいで、いろんな人を傷つけて・・・


「いろいろ・・・・・あった・・・・・・・な」


でも、ホントにいろいろあったから。
いっぱい泣いて、悲しんで、何回も振り返って、背中を押してもらって、
前に進むことができた。
だから今、こうして浪馬クンのことを考えていられる。
そう思うと、神様ってけっこうイジワルかもね。

でも、ステキ・・・・・・かどうかは疑問だけど、
本当に好きな人が恋人になってくれたのは、間違いないから。
だから明日は、まず「ありがとう」って言うね。


「できれば・・・また願いをかなえてほしいな・・・・・・なんて」


そうそう、今年を振り返るのもいいけど、それよりも明日だよね・・・・・・
晴れ着で、浪馬クンと、初詣・・・・・・


「そうだ・・・・・あれ・・・・・・できるかな・・・・・・・」


時代劇とかでよくあるやつ。
帯を・・・・浪馬クンに持ってもらって・・・・・・・


『あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜』


『よいではないか、よいではないか』



ムードも何もないかもだけど、明日しかできないんだよねー。
何となく、浪馬クンこーゆーの好きそうだし・・・・・・
こんな雰囲気も・・・・・・たまには・・・・・・


「・・・・・・私はデート後のことしか頭にないのか・・・・・・」


そりゃ浪馬クンにエロ扱いされるわ・・・・・・
何のために晴れ着着るのかわかんないよ・・・・・・


・・・・・・・・・・・・でも、ちょっと・・・・・・練習してみよ。


ノリのよさとして、浪馬クンには(ムリヤリ)納得してもらうことにしよう。
ここを・・・・こう持ってもらって・・・・・


「あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜」


くるくるくるくる。


・・・・・結構・・・・・・・楽しいかも・・・・・・・

回りながらそう思っていると、


コンコン。


「たまき?何やってるの?」


びくうっ!!


「お、お母さん!?どうしたのっ!!?」


「アンタこそ、何ヘンな声出してんのよ」


「ちょ、ちょっと練習を・・・」


「練習?」


「な、なんでもない!あははっ・・・・・・」



み・・・見られなくてよかった・・・・・・


ガチャ


「えっとえっと・・・で、どうしたの?」


「ああ、お母さんたちもう寝るから、とりあえず言っておこうと思って」


「何を?」


「明日、晴れ着着るんなら、早めに起きなさいね。
一緒に行かないにしろ、着付けしなきゃいけないでしょ」



・・・・・え?


「・・・・・・き・・・・・つ・・・・・け・・・・・・?」


「そうよ。一人じゃできないでしょ?」


「あ・・・・・・うん・・・・・・」


「だから、早めにね?」


「・・・・・・うん・・・・・・・・」


「どうしたの?急に暗くなって・・・・・」


「な・・・なんでもない。おやすみ、よいお年を・・・・・・」


「ヘンな娘ねえ・・・」



パタン


しまった・・・・肝心なこと忘れてた・・・・・・・



「着付けできないのに、脱いだ後どうするのよ・・・・・・・」



ゆ・・・浴衣は着られるから!その応用で・・・・・・!


普段あんまり使わないパソコンの電源を入れ、
着付けについての検索を始める。

カタカタカタカタ・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・手順多すぎて今日中に覚えられない・・・・・・・」


ガックリと肩を落とす。
浪馬クンに教えてもらった顔文字?みたいになってると思う。orz ←こんなの


どうしよ・・・・・・着替え持ってく?

って、行きはまだいいけど帰りどうすんのよ・・・
あんなかさばる着物持って帰れないよ・・・・・
シワになったら大変だし、それ以前にお母さん達に見られたら・・・・・・


じゃあ・・・浪馬クンと一緒に着付けする?
浪馬クンの部屋にもパソコンあるし、画面見ながら・・・・・・

浪馬クンと共同作業・・・・・いいかも・・・・・
二人で肌をくっつけて・・・・・肌着から・・・そうそう・・・そんな感じ・・・・・


「あ・・・・・浪馬クンの息が・・・・・素肌に・・・・・・」


・・・・・また始めちゃいそうだ・・・・・・

わーん!それじゃいつまでたっても裸のままだよお!
さすがに一日中はまずい!却下!


その後もうんうん考えるけど、いいアイデアが浮かばない。


やっぱり・・・晴れ着=エッチなしで考えるしかないのか・・・・・
クリスマスから・・・逢ってないのに・・・・・
もう・・・一週間も・・・・・・ガマン・・・・・・

ぶんぶんぶんっ!違う違う違う!
今のは浪馬クンの気持ちを代弁しただけっ!
私は・・・・・私は・・・・・・・・別に・・・・・・・っ!!


「ウソついても・・・しょうがないや・・・・・・・」


でも、浪馬クンに晴れ着姿見せたいのも確かだし・・・・・
やっぱり、キレイとかかわいいとかって、思ってもらいたいもん・・・・
せっかく、幼なじみだけじゃなくて、恋人になったんだから・・・・・・


晴れ着で・・・・デート後はなしか・・・・・・・
普段着で・・・・その・・・・・浪馬クンの部屋で・・・・・か・・・・・・・


どうしよう・・・・・どうしよう・・・・・・・・




ゴーン・・・・・・ゴーン・・・・・・ゴーン・・・・・・ゴーン・・・・・・





「あけましておめでとうございますっ♪」


「あ、姉ちゃん、おめでとー」


「あけましておめでとう、たまき」


「おめでとう・・・って、時間大丈夫なの?着付けしないと」



「・・・・・・・今年は、いいや」



「は?」


「今年は、晴れ着、着ないの」


「なんでよ?昨日晴れ着見てニヤニヤしてたじゃない」


「ニコニコだもんっ!・・・・・・ちょっと、事情があって」


「事情?」


「えっと、その・・・・・・はっはは」


「またその笑い方・・・・・」


「え?・・・・・あ、もう行くね。ゴメン、晴れ着は帰ったら片付けるから」


「ちょっと、たまき?」


「いってきまーす♪」





玄関を出て、しばらく歩いたところで、ため息。


「ろ・・・浪馬クンの・・・・・・ため・・・・・・だもん」


・・・・・・・・私の新年は、エッチな考えでスタートするのか・・・・・・

心の中に、また orz が浮かんだ。





1月1日(土)

「あっ、早いね」


いつもよりちょっと早く着いたつもりだったけど、
浪馬クンは、いつもと同じ調子でボーッと立っていた。


「やあやあタマ、あけましておめでとう」


「あ、うん。おめでとう」


「今年もよろしく頼むぜ」



この辺は、毎年変わらない会話。
お互いに年賀状なんて、ほとんど出してない。
昔から、こうやってすぐに逢えたから。


「あははっ。こちらこそ」


でも今年からは、私にとってはちょっと違うけどね。
「よろしくね」の意味。


「ところでタマ」


「ん?」


「お前、晴れ着とか着ないのか?」


「晴れ着?うん、着ないよ」


「そうか・・・・・・」



あれ、予想以上に沈んでる・・・


「あれれ?もしかして、期待してた?私の晴れ着姿」


「え?いや・・・・・・まあその・・・・・・少し、な」



いつもはワケわかんない言い回しで私を翻弄する浪馬クンが、
私の晴れ着姿を見られなくてヘコんでいる。
嬉しいんだけど、それ以上に素直な態度がおかしくて、


「あははっ。そうなんだ」


つい、笑ってしまった。


「あ、ああ・・・・・・」


「でもね。あれってかなりめんどくさいんだよ。
着付けにも時間かかるし、着てる間もいろいろ気を遣わなきゃいけないし」



その後も・・・・・・ね。


「へえ・・・・・・」


「だから、パス。ごめんね」



なるべく悟られないように、軽く言ってみる。
浪馬クンのヘコみようがおかしくて、結構いつもの調子で言えた、と思う。


「いや、別にいいって」


その代わり、デートの後は・・・勉強の成果、見せたげるね。


「じゃ、そろそろ行こっか」


「うむ」



いつものように腕を絡め、浪馬クンを引っ張るように歩き出す。
浪馬クンは、絡めた瞬間はいつもピクッとするけど、
優しい笑顔で、私に合わせて歩いてくれる。
ちょっとしたことだけど、やっぱり、幸せ。




「わ〜〜、すっごい人だね」


「そりゃそうだ。元旦に空いてたら商売上がったりだからな」


「商売って・・・・・」


「え?違うのか?神社って、正月の賽銭で1年過ごすんじゃないのか?」


「え、さすがに違うんじゃ・・・・・・わかんないけど・・・・・・」


「まあ、神主の生活まで気にしてもしょうがねえ。俺たちも行くぞ」


「あ、待ってよ」




どやどやどや



「きゃっ!」


人ごみに流されて、腕が離れそうになってしまう。


「大丈夫か?」


「うん。でもやっぱりすごい人・・・・・・」


「ああ、はぐれたら見つけんの大変だな」


「・・・・じゃあ、もっとしっかり捕まってていい?」


「え?」




ぎゅうっ・・・・・



腕を抱え込み、頭をピッタリと肩にくっつける。
クリスマスのときにもやった、しがみつきの体勢。


「お、おい。これじゃ歩けねえって」


「どうせゆっくりしか進めないんだからいいじゃん」


「し、しかしだな。その・・・・・」


「何よー。イヤなの?」


「つーか・・・ホラ、この神社、同じ学校のヤツら結構来るじゃねーか。
見つかったら、その・・・マズくねーか?」


「・・・・・何が?」


「何が・・・って・・・・・お前・・・・・・」


「・・・・・・・平気・・・・・だもん」


「え?」


「自分から言うのは・・・恥ずかしいけど・・・・・・
見られるのは・・・・・平気・・・・・・・だもん」


「タマ・・・・・・」


「・・・・・それとも、見られちゃマズイ人でもい・る・の・か・な〜〜?」



ぎゅぎゅーっ


片腕を離し、浪馬クンのほっぺを思いっきりつねる。


「いてえ!や、やめろ!!」


「ど・う・な・の・か・な〜?」


「い!いない!いません!だからやめろ!やめてくださいお願いします!」



ぱっ


「うー・・・いててて・・・・・相変わらずすぐ暴力だなあお前・・・・」


「・・・・・・」


「タマ?」


「・・・・・・ホントに?」


「え?」


「・・・・・ホントに・・・・・・いない?」


「タマ・・・・・・」



ちょっと泣きそうになっちゃって、言葉を出せずに、浪馬クンを見つめてしまった。
だって、もし、それが女の子だったら・・・・・・


「じーーーーっ・・・・・・・」


浪馬クンも、不安を煽るように黙ってしまう。
やだ・・・何か言ってよお・・・・・・


「・・・・・・・」


「・・・・・・・・・浪馬クン・・・・・・」


「・・・・・・何だよ、ヤキモチかあ?」


「な・・・・・・!?」


「はっはは。あのタマが、オレのヤキモチなんか焼くようになったのか。
ずいぶん扱いがよくなったもんだな、オレも」


「あ・・・当たり前じゃない!だって・・・・・・
だって私は、浪馬クンの・・・浪馬クンの・・・・・・」



恋人・・・・・・だもん・・・・・・好き・・・・・なんだもん・・・・・・


「タマ」


「何よお・・・・・え?」



浪馬クンが、顔を肩に近づけてきた。
私の瞳と、視線が交わる。
何度も見てるのに、今もまた、顔が赤くなってしまう。

人ごみの中だったけど、その時、周りの声が聞こえなくなった。
浪馬クンの感覚と、私の感覚だけが、世界の全てになる。


「ろ、浪馬クン・・・・・・」


そして、にっこりと、私の大好きな笑顔で、



「嬉しいぜ」



そう、言ってくれた。
ほんの小さな声だったけど、間違いなく、そう言ってくれた。


「・・・・・・浪馬クン・・・・・・」


「お、前が空いたからいくぞ。腕、離すなよ?」


「うんっ♪」



お言葉に最大限に甘えて、顔をすりつけるみたいに強くくっつけて、
浪馬クンをいっぱい感じつつ、進んでいった。
ちょっとだけ、はぐらかされてるような気がしたけど、どうでもよくなっちゃった。
ずるいなあ、浪馬クンは・・・♪




「お、着いた」


「あれ、もう?早かったね」


「まあ、ずっと喋ってたからな」


「そうだね♪」




いつものようにバカ話をしてたせいで、あっという間に私たちの順番。
ちなみに話の内容の一部。


「巫女さんだって、バイトなワケだろ?」


「そうだね、募集とかしてたよね」


「そのバイト代ってのは、俺たちの賽銭から出てるんのじゃないのか?」


「えー?さすがに違うんじゃないかなあ」


「じゃあ、誰が出してんだよ?」


「例えば・・・『日本神社協会』みたいなところが・・・」


「なんだそりゃ」


「私だって、わかんないよう・・・・・・今度、調べてみる?」


「いや、巫女さん本人に聞いてみればいいだろ。
お参り終わったら行くぞ」


「・・・・・忙しいからやめようよ・・・・・・」


「どうせなら、かわいい娘がいいよな・・・ここからじゃ見えんか」


「なにか言った?」



ぎゅぎゅーっ


「いてえ!またそれかよ!」


「だって、メガホン持ってないもん」


「そうじゃねえ!いたたたたっ!」


「なにがそうじゃないの?かわいい娘がいいんでしょ?」


「違うって!せっかくなら、巫女服が似合う娘のほうが・・・・いててて!」


「・・・・浪馬クン・・・・巫女服、好きなの?」


「え?・・・似合ってれば可愛いと思うぞ」


「・・・・・私にも・・・・・似合うと思う?」


「へ?」


「どうかな?」


「・・・・・・いいんじゃ・・・・・ないか?」


「そっか・・・・・・」


「どうした?タマ」


「なんでもないよっ。あははっ」


「ヘンなヤツ・・・」




こんな感じの会話を、延々と。
着たら・・・喜んでくれるかなあ・・・・・・



「・・・・タマ?どうした?」


「え?あっ・・・・・な、なんでもないよっ」


「そうか。なら、鈴は俺が鳴らす」


「あああ!鈴は私が鳴らすのー!」



じゃらんじゃらんじゃらんじゃらんっ


「ああああ・・・・私が鳴らしたかったのにぃ・・・・・」


「ふふふ、早い者勝ちなのだよ、タマくん」


「私も!私も鳴らすっ!」



ムリヤリ、浪馬クンの手から綱をひったくる。


「おいおい、神様の前で・・・・・・」


「いいのっ!浪馬クンだって、神様なんか信じてないじゃない!」


「・・・・この場所でそれを言うか」


「ふーんだ。さっ、お参りしよっ」



しゃらんしゃらん・・・・・・


「へっへっへ〜」


「やれやれ・・・・・・」



鈴を鳴らして気分がよくなったところで、お賽銭を入れる。
あー、何だかんだで、浪馬クンだって入れてるじゃなーい。
・・・・何か、願い事でもあるのかな?



ぱんっぱんっ



2人同時に拍手を打つ。


「あ、そうだ・・・・・・」


ちらっと薄目で浪馬クンを見ると、ちゃんと目をつぶってお参りをしている。

よし、今がチャンス・・・・・だね。


「えっと・・・これは、去年のお願いを叶えてくれたお礼です」


心の中で言いながら、浪馬クンに見つからないように、
お賽銭とは別に、お札を箱の中に入れた。
そして、再び目をつぶる。



お願いを叶えてくれて、本当にありがとうございました。

おかげで、こうやって、大好きな人の隣にいることができます。

ちょっとイジワルもされちゃいましたけどね。あははっ。

でも、いろんなことがあったおかげで、こうして今、幸せでいられます。

ついでに・・・って言うのはヘンですけど、ここを通して、

私を助けてくれたみんなに、ありがとうって言いたいです。



で、ワガママですけど、今年もお願いしちゃいます。

今年の私のお願いは・・・・・・



今、私の隣にいるこの人と、ずーっと一緒にいられますように。



ちょっと、頼りなさそうに見えますか?隣。

確かに、普段は・・・バカで、スケベですけど。

だけど、大事なところではちゃんと決めてくれるんですよ。

私の・・・・・大好きな、人なんです。


きっと、来年も、再来年も、同じ願いです。

私の望みは、これが一番だから。

もちろん、私もいっぱいがんばります。

だから、ちょっとでも助けてくれると・・・・・・嬉しいです。



あ、後、浪馬クンの進路が、ちゃんと決まりますように。
どうするのか、いまいちわかんないんだもん。
えっと、それと、浪馬クンが・・・・・浪馬クンが・・・・・・・



「おい、タマ」


「ろうま・・・・・え?」


「いつまで祈ってる。後ろ、つかえまくってるから行くぞ」


「あ・・・・でも、まだ・・・・・・」


「アホ!後ろの人生かけてそうな受験生に早くお参りさせてやれ!」


「・・・・・・・あーん、まだ終わってないのにい・・・・・」



ずるずると、引きずられるようにしてその場を後にした。
浪馬クンのお願いオンパレードタイムが・・・・・



「はうう・・・・・」


「そんなに何をお願いしたいんだお前は・・・・・・」


「な、ナイショだよお。それより、浪馬クンは?」


「え?」


「お願い事。神様なんか信じないのに、ちゃんとお参りしてたじゃん。
何をお願いしたの?」


「・・・・そ、それはまあ・・・・・・なんだ」



なぜか、私の顔を見て赤くなる。


「???」


「お、俺も、内緒だ」


「えええーーー!!」


「や、そんな声出されてもだな」


「教えてよー教えてよー教えてよー!!」



首をガックンガックンゆする。


「お、オイ!それはキケンすぎるぞ!」


「だってえ!知りたいんだもん!」


「お、俺のはそのうちわかるって」


「・・・・・そうなの?」


「・・・・ああ。間違いねえよ」


「じゃあ、今教えてくれたっていーじゃん!」



がっくんがっくんがっくん。


「だから!それはキケンだっての!」


「ぶーぶー!」


「お、お前はどうなんだよ?」


「むー・・・教えてくれないんなら、私も教えないもん!」


「ヒントは出しただろーが。ヒントだけでもいいから、教えてくれよ」


「あれがヒントお?なら、私も遠いヒントでいい?」


「・・・・・まあ、仕方あるまい」


「んーと・・・・じゃあねえ・・・・・・・」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぎゅっ・・・・・・



「な・・・なんだよ?いつものしがみつきじゃねえか・・・・・・」


「うん・・・・・・・・これが、遠いヒント」


「は?サッパリわかんねえぞ」


「浪馬クンのだって、サッパリわかんないもーん。お互い様だよっ」


「・・・・・・ぐ・・・・・仕方ねえ・・・・・・」




こうやって、いつまでも一緒に・・・・・・・
結構、サービスしてるんだよ?
ニブチンの浪馬クンには、わかんないだろうけどね♪



「ねえねえ、おみくじ引きに行こっ」


「俺、まともな運勢でたことねえんだよな・・・・・・」


「いいじゃん。また大凶とか引いて、みんなの失笑を買おうよっ」


「サラッとひでえこと言いやがる・・・・・・」


「あははっ。行こ、浪馬クンっ♪」



にこにこしながら、浪馬クンの腕を引っ張る。


「・・・・ったく・・・・・」


そう言いながらも、笑顔で、私に合わせてくれる。
参道ほどは混雑してないのに、そのときと同じスピードで歩く。
お互いの暖かさをかみしめながら、おみくじの場所へとゆっくり歩いていった。




「・・・・・・・・・ホントに大凶だったね・・・・・・」


「ああ、ここまでくると運命だな。しかし、お前がヘコむことはなかろう」


「だって・・・もしかして、私がヘンなこと言ったから・・・」


「確かに『ええええええ!!』と叫ばれたときは失笑を買ったな」


「あう・・・・・・」


「まあ、木に結んどきゃ、問題ないんだろ?」


「だけど・・・・・・」


「えーい!大吉のお前がそんなんでどうする!」


「・・・・・」


「それに・・・・・今、幸せだしな・・・・・・


「え・・・・・・?」


「な、なんでもねえ!ホレ、行くぞ!」


「今・・・・なんて・・・・・・」



幸せ・・・・?今?私といて・・・・・ってこと?


ぱああああ・・・・・・・・


しがみついた腕に、力を込める。
赤い顔の浪馬クンに、イジワル全開で聞き返す。


「ねえねえ、何て言ったのよーーー!」


にこにこにこにこ。


「なんでもねえ・・・・ってなんだその大吉な笑顔は!お前、聞こえてただろ!」


「聞こえてないよー♪だから、もう一回言って?」


「くっ・・・・・絶対言わねえ!言わねえからな!」


「言えー!!」


「ぐあっ!ほっぺたつねるなっ!」


「ぐりぐりぐりぐり♪」


「いてえええええ!」


「あははっ♪」




『おーい、ずいぶんと楽しそうだな、お二人さん?』




「「!!!???」」




聞き覚えのある声に2人同時に振り向く。
そこには、刃君、望君、私の友達。
クリスマスに遊んでいたメンバーが、ニヤニヤと私たちを見ていた・・・・・



「よ、よう。久しぶりだな」


「あけましておめでとう、たまきっ♪」


「あ、お、おめでとう・・・・・・」


「2人仲良く初詣とはな」


「う・・・・・・」


「しかも、腕組んで・・・・てゆーか、既に抱擁だよねえ」


「!!」




ばばばばっ!!



咄嗟に腕を離し、一歩横へずれる私。



「あ、あはは・・・・あははははは・・・・・・」



「あ、離れた」


「いまさら離れてどうすんのよ」


「あ、タマ!お前、見られても平気だとか言ってたくせに」


「だ・・・・だって、恥ずかしいんだもん!」


「『見られるのは・・・平気・・・だもん』とか言ってたクセによ・・・・
ああ、やっぱり今年は大凶だ・・・・・・」


「な・・・何よ!さっきは『今・・・幸せだしな・・・・・・』って言ってたじゃないっ!」


「ぐああ!やっぱり聞こえてたんじゃねーか!」


「声小さかったんだもん!もう一回言って欲しかったんだもん!」


「何回も言わすな!オレだって恥ずかしいんだ!」


「いーじゃん!それで大凶が飛ばせるんなら安いもんでしょ!」


「大凶って言うなあ!」




「・・・止めなくていいの?」


「気にすんな。昔からあんな感じだ」


「うん。変わってないね」


「あ、砂吹君、起きてたんだぁ」


「・・・・・・」


「しかし、子供のケンカだな」


「お互いのモノマネが妙に似てるのが、何かムカつくね」




「くそう!大吉だからってバカにしやがって!」


「やーいやーい!悔しかったら浪馬クンも大吉ゲットしてみろ!」


「バーカ!大凶なんて超枚数少ないんだぜ!逆にラッキーなんだよ!」


「少なくったって大凶は大凶!これからキミには未曾有の災害が降りかかるの!」


「はっはは!そんなもんは全てお前にリバースしてやるわ!」


「大丈夫だもんっ!
私は浪馬クンと違って、ちゃんとお賽銭たくさん入れてお礼とお祈りしたから
バチなんてあたらないもんっ!」


「なにぃ!いつの間に!ならオレに奢れっての!」


「やーだよー!浪馬クンのためになんか一銭たりとも使ってあげないもん!」


「ひでえええ!ならクリスマスにやったリング返せ!返せよう!」


「絶対イヤ!ずーっと大事にするんだから!」




「・・・・・・さりげなく、とんでもないこと言ってるねぇ」


「ああ、薬指に輝いてるな」


「ケンカしてるのに・・・じゃれてるみたいでムカつくのは私だけですか?」


「残念。あたしも〜」


「幸せだからしょうがないな。だがまあ、そろそろ止めるか?」


「うん。私たちが新年早々不幸を満喫しないうちに」


「了解。おーい、そこのバカップル。痴話喧嘩はそろそろやめとけよ」



「「痴話喧嘩じゃないっっっ!!!」」



「・・・・息、ピッタリだね」


「私のムカつきゲージが更に高まったよ」


「まあまあ」


「わかったわかった。頭冷やして何か飲みに行こうぜ。奢ってやるから」


「「ホント(か)?」」


「・・・・・・・・」


「そうと決まればとっとと行くぞ。タマ、お前は何にする?」


「んーとね。ココアがいいな♪」


「じゃあオレはコーヒーだ」


「飲んだことないのだったら、少しちょうだいね」


「オッケー」




「・・・・・ケンカ終わってたね・・・あのお子ちゃまカップルは何者ですか?」


「手も、繋いでたねえ」


「気にするな。昔からあんな感じだ。違いは手を繋いでたかどうかくらいだ」


「・・・・・・お守り、大変だったでしょ?」


「・・・・・さすがに慣れた」


「砂吹君も、大変だった?」


「・・・・・・・・」


「砂吹君?」


「・・・・・いや、なんでもないよ」


「コイツもこんな感じだ」


「・・・・・・よくまとめてたねえ」



「「おーい、早く来て(来い)よーーーー!」



「・・・・・・呼んでるね」


「ふう・・・・・・じゃあ、俺たちも行くか」


「はぁい」


「砂吹君も、寝てないで行くよ」


「寝てないよ」




(これでいい・・・・・・後は・・・・・・浪馬次第・・・・・・・・)



その後は、6人で行動を共にしていた。
クリスマスのことを聞いてみたけど、


「あの日のことはなかったことにしてくれ・・・・・・」

「なんでぇ?楽しかったよねー」

「うん、私も。途中から記憶ないけど」

「俺の記憶も消してくれ・・・・・・」

「ヘンな雨堂君。砂吹君は?」

「楽しかったよ」

「お前は釣竿磨いてただけだ・・・・・」



電話の後、更に何かあったみたいだけど・・・・
あの冷静な刃君が怯えてたので、聞けなかった。




「じゃ、あたし達はここで」


「へ?なんでだ?」


「俺たち、まだお参りしてないんだよ」


「そうなの?」


「うん。途中でたまき見つけたから近寄ったら、抱き合ってたから」


「だ、抱き合ってないっ!」


「似たようなもんじゃん。それに、今年は何としてもお参りしなきゃ。
受験も近いし、それに・・・・・・・」


「抱き合うまではしてないのに・・・星を掴むってやつ?」


「な、何で知ってんのぉ?」


「電話で言ってたじゃない」


「電話ぁ?たまきにいつ電話したっけ?」


「・・・・・・履歴見てみなよ・・・・・・」



「たまきちゃん、ちょっと」



一緒に履歴を確認しようとすると、ちょっと離れたところで刃君が手招きしている。


「なに?」


刃君に近づく。


「どしたの刃君?」


「お袋さんには、うまく言っといたからな」


「え?」


「幼なじみみんなで、初詣に行くって言ったんだろ?」


「あ・・・・・・」


「急に言われたから、あせっちゃったよ。
ま、こうして一緒にいるから、ウソじゃなくなったけどな」」


「ごめんなさい・・・・・・」


「いいっていいって。でも、一つ聞いていいか?」


「何?」


「どうして、晴れ後着なかったんだ?浪馬に見せてやれば喜んだだろうに」


「!!」


「とりあえず『その後みんなで遊ぶから』って言っといたけど、
俺にも理由がわかんないからさ」


「そ・・・・・・それは・・・・・・」



・・・・いくら刃君でも、こればっかりは・・・・・
でもでも、何か言わなくちゃ・・・・・えっと・・・・・


「その・・・・・あの・・・・・・」


「??どうしたんだ?そんなに真っ赤になって」


「えっと・・・・・」


「・・・・・・まあいいや。そんなに顔から湯気出されてまで聞くことじゃない」


「・・・すいません・・・・・・」




「何話してんだ?アイツら」


「気になるのお?ヤキモチ?」


「バーカ。雨堂相手に焼いてどーする」


「・・・・・・たまきはねえ」


「え?」


「織屋君が他の女の子と話してると、悲しそうな目になるの」


「え・・・・・・」


「前まではプリプリしてたんだけど。
今は、すっごく悲しそうな目で見てるんだ」


「タマ・・・・・・」


「前よりずっと、織屋君のこと好きなんだと思うよ」


「・・・・・・そりゃ、前はただの幼なじみだったからな」


「そんなことないでしょお?前から、たまきは・・・・・・」


「・・・・・・・・・・それは・・・・・・どうかな」


「・・・・・・何か知ってるの?」


「・・・・・・・・・・まあ、な」


「そっか・・・・・・・でも、今のたまきの気持ちは・・・・・・」


「・・・・・わかってる・・・・・つもりだ」


「あんまり、泣かせちゃダメだよぉ?」


「泣かせてねえよ」


「だったら、これからも」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・織屋君?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」


「よろしくね♪」


「お前も、タマのことよろしくな。あの天然、オレが見てないと何すっかわかんねえ」


「たまきも同じこと言ってたよ・・・・・」


「・・・・あのバカ」


「でも、天然なのは確かだしねぇ。了解だよ」


「頼む」


「ねえ」


「ん?」


「たまきのこと、好き?」


「んぐっ!・・・・・ゲホッ!何をいきなり!」


「聞きたいの。教えて?」


「そんなこと言ってもなあ・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・タマには言うなよ?耳貸せ」


「うん・・・・・・・・」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・にっこり」


「ふう・・・・・・もう聞かないでくれよ?」


「りょーかーい♪たまきは幸せ者だねっ」


「うぐおおお・・・またオレの弱みを知る人間がここに・・・・・」


「あはははっ」


「とほほ・・・・・・」


「・・・・・・・いいなあ」


「え?」


「たまきと、織屋君・・・・・・うらやましい」


「・・・・・・・・」


「あたしも・・・・・・がんばんなきゃ・・・・・・・」


「・・・・・・・自分だけは・・・・見失うな」


「・・・・え?」


「・・・・・・オレ自身にも当てはまる・・・・・助言だ」


「織屋君・・・・・」


「・・・・・応援・・・・・してるからな」


「あはは・・・・たまきの方に気を遣ってあげなよ」


「バーカ」


「あはは」




「・・・・・・・楽しそう」



浪馬クンの背後から、恨みがましくボソッと呟く。


「おわっ!タマ!」


「何2人で楽しそうに話してるのよー」


「お、お前!どっから聞いてた!?」


「今だよ。楽しそうに笑ってるのは見てたけど」


「お前にはあれが楽しそうに見えたのか?」


「ふーんだ」


「お前だって、雨堂と顔真っ赤にして話してたじゃねえか」


「あ!あれは・・・・・その・・・・・」


「浪馬も知らないのか?たまきちゃんが晴れ着着てこなかった理由」


「は?めんどくさかったからじゃねーの?」


「そんな理由で真っ赤になってたの?たまきちゃん」


「あう・・・・えっと・・・・・その・・・・・・・」


「タマ???」


「まあいいや。じゃ、俺たちは行くぞ」


「ああ・・・・・・って、望たちはどこ行った?」


「あれえ?確かその辺に・・・・・・」




「熊手は福をかき寄せるもの、破魔矢は魔を打ち砕くものなんだって」


「へえ・・・詳しいね」


「じいちゃんが教えてくれたんだ」


「じゃあ、この破魔矢でたまきと織屋君のバカップルを・・・」


「それじゃ、君が魔だよ」




「あ、いた」


「アイツら、結構お似合いなんじゃねえか?」


「あたしは、微妙だと思う・・・・・・」




「ぶすー・・・・・」


「たまき、まだブーたれてるのぉ?」


「だって・・・・・・楽しそうだったんだもん・・・・・・」


「あー・・・くすくす」


「何よぉ・・・・・・」


「あれはね、たまきのことを話してたんだよ」


「え?私?」


「うん。いろいろ・・・・・ね♪」


「えええ!ヘンなこと言ってないよね?ね?」


「さーどーでしょーねー」


「うわああん・・・・・!」


「ウソウソ、何も言ってないよぉ。たまきはおもしろいよ、まったく」


「ホント?もう・・・・・」


「話の内容はヒミツだけどね♪」


「・・・・気になる・・・・・・」


「織屋君との話だから?」


「・・・・・・うん・・・・・・」


「仕方ないなあ。じゃあこれだけは教えたげる。こっちに寄ってたもれ〜」


「どこの言葉よ・・・・・・」



ツッコみながらも不安を押さえられず、素直に耳を近づける。
何を言われるんだろう・・・・・・


「・・・・・んとね」


「うん・・・・・・」



「・・・・・・たまきと織屋君は、ちゃんと、恋人だよ」



「え・・・・・・・」


「あたしから言えるのはこれだけ。後は自分で確かめるのだ〜」


「・・・・・・・」


「ずっと・・・応援、するからね」


「・・・・・うん・・・・・・ありがと」




「おーい、雨堂たち、並ぶってよー」


「あ、はぁい。じゃあね、たまき」


「うん、バイバーイ」


「後は、また2人でお楽しみくださーい♪ごゆっくりー」


「!!」



そう言うと、刃君の方へと駆けていった。
もしかして、私が普段着の理由、気づいてるんじゃ・・・・・・



「・・・・嵐が去ったな」


「・・・・・・・・・」


「じゃあ、オレたちも行くか・・・・・・ん?」



浪馬クンが歩き出すのを、袖を掴んで止める。


「どうした、タマ?」


「あの・・・・その・・・・」


「?」


「今日は・・・・ごめんなさい・・・・・・」


「・・・何がだよ?」


「恥ずかしくって・・・腕・・・離しちゃったり・・・・・・とか・・・・・・
友達と話してて・・・・ヤキモチ焼いたりとか・・・・・・」


「・・・・・・」


「いっぱい・・・・・ケンカもしちゃって・・・・・・」


「・・・・・・・・何を気にすることがある?」


「え?」


「それこそ昔から変わってねえじゃねーか。オレたち」


「・・・・・・」


「オレはもう、口ゲンカは全然気にしちゃいないぜ?」


「・・・・・・・・・」


「まあ、腕は・・・・・最初のハードルとしちゃ、高すぎるしな。
いきなり最高クラスが4人だからな」


「うん・・・・・・」


「ヤキモチは・・・・・焼かれると、やっぱり、嬉しいしな。
何か、お前に・・・・その・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」



「・・・・・好かれてる・・・・って、気がしてな」



「浪馬クン・・・・・・」




ふわっ



抱きつこうとする前に、優しく肩を抱かれる。
・・・・・あったかい・・・・・・・


「タマ・・・・・・」


なでなでなで・・・・・・


「ふあっ・・・・・」


優しく、頭を撫でられた。


「や、やんっ。髪がハネちゃうよ〜」


そう言ったけど、手を止める気にはなれなかった。
なんか・・・・キスみたいに、ふわああ・・・・って・・・・・・・


「お前の髪・・・・・キレイだな」


「・・・・・・え?」


「すげえ・・・・・サラサラしてる。手入れ・・・・・・大変だろ?」


「あ・・・・・・」



気づいて・・・・・・くれた・・・・・・


「嬉しい・・・・・・・」


「タマ?」


「・・・・・あははっ。何でもないよっ」



ちょっとじーんとなっちゃって、涙がこぼれそうになった。
私の身体が、勝手に浪馬クンにしがみついていく。


しばらく、なでなでされた後、


「・・・・・・・・出るか」


「・・・・・・・・・・・・・え?」



一瞬、デート・・・・もう終わり?と思った。
けど、浪馬クンの顔を見ると、私を見て、微笑んでいた。


終わりじゃ・・・・・・ないんだね・・・・・・


「・・・・・・えへへ・・・・・・」


しがみついた腕に、キュッと力を入れる。
お互いの言いたいことが伝わって、笑顔が更に倍増する。


「行くぞ」


「うんっ♪」




神社を出るときも、電車の中でも、私たちはずっとくっついていた。
初詣で、いつもよりたくさんすれ違う人々に、見せ付けるみたいに。

浪馬クンは、なんとなく私の髪を触っていることが多かった。
「ハネちゃうよー」とは言うものの、手をどけることは絶対にしなかった。
だって、あったかくて、気持ちいいから。
やっと、気づいてくれたことだから。


駅について、浪馬クンが「二人きりになりたい」と言う。
私は「言わなくても・・・わかるよね」と了承する。

お互いこの後にすることはわかっているし、期待している。
もう形だけの確認になってしまっているけど、私たちには必要に思えた。
幼なじみよりも、恋人の方に天秤を傾けるための、2人の儀式みたいなもの、だから。


「お・・・・・・」


「?」



浪馬クンが急に声を上げる。
その方向に顔を向けると、晴れ着を着こなした、女の人が歩いていた。


「ほお・・・・これは・・・・・・」


「・・・・・むっ」



ぎゅぎゅぎゅーっ


「いてててててっ!」


「な・に・を・み・て・る・の・よっ!」


「離せ!同じとこばっかやられて常に痛えんだからよ!」


「つねられるようなことするからでしょ!」


「ただ見てただけだろーが!」


「なんかヤなの!」


「晴れ着にヤキモチ焼くなよ・・・・・」


「何よ!美人だったからって・・・・・晴れ着?」


「あ?美人だったのか?晴れ着しか見てねえからわかんなかったぜ」


「・・・・顔、見てなかったの?」


「ああ、ちょっと考えちまって・・・・・・な」


「何を・・・・・・?」


「何って・・・・・その・・・・・そんなことまで聞きたいのかよ」


「うん・・・・・・聞きたい」


「・・・・・・・・」



浪馬クンの考えてること、知りたい。


「・・・・・・お前に・・・・・似合うかな・・・・ってな」


「え・・・・・・・」


「は・・・・・・はっはは。お前の晴れ着姿、思った以上に見たかったみたいだぜ」


「浪馬クン・・・・・・」



・・・・・・やっぱり、着てくればよかったのかな・・・・・・
そんな、晴れ着に振り返っちゃうほど見たかったんなら・・・・・・


「・・・・・・タマ?」


「・・・・・・・・・・・ごめんね・・・・・・・・」


「・・・・・あ、いや。そんなにマジに謝んなくてもだなあ・・・・・・」


「・・・・・・・私、着付けできないから・・・・・・」


「う・・・・・・」



私が沈んじゃったから、浪馬クンがあせっているのがよくわかる。
それでも、すぐ元に戻ることはできなかった。

どんなに面倒でも、あきらめないで勉強すればよかったんだよね・・・・・・
めんどくさいなんて、一瞬でも思っちゃった・・・私が・・・・・・


「・・・・な・・・何を沈んでるんだよ、タマ吉!」


「・・・・・・・」


「オレだって着付けなんかできねえよ。
もし晴れ着着てきたら、脱がせねえじゃねーか」



浪馬・・・・クン・・・・・・


「ってことはだ、これからが楽しめねえってことだ。
晴れ着より、姫はじめできねえほうがオレにはよっぽどツライぜ!はっははははは!」



一気にまくしたてて、自分がさも悪いかのように喋る。
その一生懸命に私をなだめようとするその姿に、
公園で励ましてもらったときの浪馬クンが。
2回目のキスをしたときの浪馬クンの姿が、重なった。


「オレみたいなタマとエッチすることしか考えてないヤツには、
晴れ着なんかジャマにしかならんわ!はあっははははははは!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「はははは・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・くす・・・・・・」


「お」


「・・・・・・ばーか・・・・・エッチ・・・・・・・」


「あ・・・当たり前だ!オレを誰だと思っていやがる!」


「うん・・・・・・バカでスケベでどうしようもない、織屋浪馬・・・だね」


「う・・・それはちょっと言いすぎだろ」


「・・・・・・あははっ」



まったく・・・バカなんだから・・・・・・♪


「お、笑った」


「あはは・・・・ばーか」



そう言いながら、絡めた腕に力を込める。


「うむ。それでこそタマだ」


「・・・・・・・ありがと」


「それによ」


「?」



「案外お前が晴れ着着なかったのって、オレとエッチしたかったからとか
そんな理由じゃねーのか?はっはははははは」



「!!!」



「なーんてな・・・・・・ん?」




かあああああああああっ!!



「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・タマ?」


「ダメっ!顔見ちゃダメっ!!」



ぼふっ


いきなり図星をつかれて、何がなんだかわからなくなる。
とにかく熱くなった顔をみられたくなくて、浪馬クンの肩に埋めて隠した。


「た・・・・・・タマ・・・・お前・・・・・・・・」


「言っちゃダメ!お願い!言わないでえっ!」



ぽふぽふぽふっ!


顔を埋めたまま、胸をぽふぽふ叩いて大騒ぎ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


わーん!浪馬クン絶句しちゃったよー!
もしかして・・・引いちゃった?
エッチすぎて、キライになっちゃったらどうしよ・・・・・うわああん!


「お前・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカだろ」


「!!だって・・・だってえ・・・・・・・」


「いっくら一週間ぶりに逢うからってよ・・・・」


「ふえええええん・・・・・・!」



寂しかったんだもん・・・・・・浪馬クンにとってはたった一週間かもしれないけど・・・・・・
私には・・・・とっても長かったんだもん・・・・・・


「・・・・・でもまあ・・・・・・」


「・・・・・・ふええ・・・・・・」



「それくらいエロくねえと、オレとは釣り合い取れねえな。うむ」



「ふえ・・・・・・?」


涙目で浪馬クンを見上げると、ニヤアっと口の端が吊り上げていた。
いかにも作ったようないやらしい顔。


「さっきも言ったろ?オレはお前とすることしか考えてねえってよ。
お前がノッてこなかったら。オレ一人でするしかないからな」


「・・・・・・それは・・・・・ダメ」



私が・・・・・浪馬クンの・・・・・・するんだから・・・・・・


「だろ?だったらそれでいいじゃねーか。オレたちはよ。
元旦からタマとヤれるなんて、オレは幸せだぜ」


「・・・・・・・・・いいの?」


「当たり前じゃねーか。ホレ、行こうぜ」


「・・・・・・・・うん♪」




刃君も、望君も、幼なじみですら知らない、私たち2人の会話。
2人ともどうしようもなくエッチで、きっと、みんな引いちゃう。


でも浪馬クンは、それでもいいって、言ってくれた。
私も、今のままの浪馬クンが大好き。


だから、2人きりのときは、これでいいんだ。



「しっかし、マジでお前がそこまでエロかったとはなあ」


「な・・・何よお。それでいいって言ってくれたじゃない」


「だけどよ・・・・晴れ着より・・・・・・ぷぷっ」


「もー!笑わないでよおっ!」


ぽふぽふぽふっ


「よし、これからタマのリングネームを『キングオブエロス』と名づけよう」


「リングネームって・・・プロレスなんかしないよう。
それに私、女だからキングじゃないよ?」


「そ、そうか・・・・・じゃあ・・・・・・エロスの女王で」


「なんで日本語になるの・・・・あー!もしかして女王って英単語出てこないんでしょー!」


「う・・・そ、そんなことないぞ」


「じゃあ言ってみなさいよー。女王は英語でなーに?ほれほれ」



浪馬クンの言い方をちょっとマネして、人差し指でほっぺたをぐりぐりしながらイジワルしてみる。
ぜーったい知らないんだからっ。


「ぐ・・・・・」


「ほれほれほれほれ♪」



ぐりぐりぐりぐり。


「降参?降参なら『参りました』って言うんだよっ」


「くっ・・・・毎日毎日授業中寝まくって鍛えた睡眠学習方をナメるな!」


「・・・・・それ、受験生の前では言わないほうがいいよ」


「ふむううううう・・・・・ふおおおおお」


「あははっ。どしたー浪馬クン」


「ふおおおおっ!!よおしっ!」


「おっ。答えは?」


「参りました」


「よろしいっ♪」



予想どおりの答えに軽くおでこを叩いて、再び浪馬クンの腕に絡める。


「くっ・・・全くオレの辞書に存在しない単語だったぜ」


「・・・・ホントに卒業できるの?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・だ・・・・・・大丈夫だ」


「すごい間だね・・・・心配になった?」


「・・・・ちょっと・・・・」


「あははっ・・・・」


「ちなみに、答えはなんなんだ?」


「クイーンだよ」


「おお!エリザベスか!」


「は?何それ」


「知らん。でも何かエリザベス!って感じがしねえか?」


「・・・・・そう言われてみると・・・確かにそんな気が・・・・・・」


「だろ?なんだろーな、このマッチ感は」


「確かに・・・どっかで聞いたことあるんだよね・・・なんだったかなあ・・・・・・」


「うーむ・・・・・・」




昔からしていた会話と、今の恋人としての会話が、私たちの中でうまく溶け合って、
2人にだけ通じる絶妙な間を作り出す。

昔から、浪馬クンといると、安心できた。
今は、それに加えて、嬉しいとか、楽しいとか、愛・・・・とか、たくさんたくさん。
気づこうとしなかった感情を、一度に受け取れる。
それが、私を一層笑顔にさせてくれる。



家に近づくにつれて、段々と口数が少なくなる。
これからすることへの、緊張へと期待。
未だに慣れないけど、悪い気分じゃない。
浪馬クンも期待してくれてるんだ・・・・・って思えるから。
体から伝わってくるぬくもりが、そう教えてくれるから。


「あ・・・そうだ」


「なに?」


「今日は、ちょっと趣向を変えてみるか」


「変える?」


「ああ、楽しみにしてろよ」


「・・・・・・・・・・・・うん」




その後はお互い喋らず、時々顔を見合わせて笑いあうだけ。
ただそれだけのことにたくさんの幸せを感じながら、浪馬クンの部屋へとたどり着いた。





「今日で5回目、だね」


ずっと、一緒に過ごしてきたけど、まだ5回。
幼馴染としてじゃなくて、女の子として来るようになって、まだ、5回しかない。

今まで浪馬クンの部屋には、たくさんたくさん入ってきた。
掃除したり、ご飯作ってあげたり、遊んだり、テスト勉強したり。
でも、それらは全部、幼馴染としてでしかない。

これからは、女の子として、ここにいる時間が、どんどん増えていく。
その全てを、覚えておきたい。
何十回来ても、何百回来ても。
お気に入りの手帳につけている、秘密のマーク。
浪馬クンに恋人として見てもらった日にこっそりつける、私にしかわからないマーク。
それがいっぱいになっても、その全部を覚えていられたらいいな。

今までだって、たくさんの想い出を、こうして思い出せてるんだもん。
これからだって、きっとできるよね。
2人なら。浪馬クンとの想い出なら。



「見つかってないよね」


ちょっとだけ気になることを、聞いてみる。


「なにがだ?」


「私たちがこういう事してること」



おかしなもので、その・・・・・・するために・・・・・・部屋に入っていると思うと、
恥ずかしくなってくる。
掃除とかで勝手に上がりこんでいたときは、見つかったって何ともなかったのに。
そういう詮索をされていたとしても、何とも思わなかったのに。


「誰に?」


「ビッグのおじさんとか、工場で働いている人とか」



でも、今は、見られたら・・・・・と思うだけで、恥ずかしい。
私の気持ち、浪馬クンの気持ち、そういうのが全部、知られちゃいそうな気がするから。
前までだったら笑い飛ばせたけど、今は多分、すっごく動揺しちゃう。
それが、本当のことだから。
私が、浪馬クンを好きだって気持ちが・・・一番出ているところを、見られちゃうから。


「はっはは、大丈夫だって。おっちゃんたち、滅多にここには近づかないから」


浪馬クンは「そんなの気にしてねえよ」と言わんばかりに、いつものようにバカ笑い。


そ・・・・そうは言うけどっ。もし見られて、何か聞かれたらどうすんのよお。
私、多分・・・・・さっき刃君たちに見付かったときみたいに、真っ赤になっちゃうよ?
何も言えなくなって、浪馬クンの後ろに、隠れちゃうよ?


「でもさ」


・・・・・・おじさんに知られちゃうんだよ?
浪馬クンの身内の人に、バレちゃうんだよ?
今までの私たちとは違うって、バレちゃうんだよ?
そしたら・・・・・・


そしたら、言ってくれる?。
私の代わりに、「タマはオレの恋人だ」・・・・・・って、言ってくれる?

言ってくれたら・・・・・・私も、「うん」って、頷くから。
だから、おじさんに、そう・・・・・・言って・・・・・・くれる?



「心配いらないって。そんな余計なこと考えてるより、もっと楽しいことしようぜ」



余計なことって何よう・・・・・・
浪馬クンだって、もし見つかったらホントは困るんじゃないの?
滅多に人が来ないからって、安心しきっちゃってるの?


それとも・・・・・・見つかっても、ホントに心配しなくてもいいの?
私の勝手な思い込み・・・・・・届いてるのかな。
当然のように・・・・・・言ってくれたり、するのかな。


でも、早くしたいだけのような気もすっごくするなあ・・・・・・
息、ちょっと荒いし・・・・・・
ちょっとは気の利いたこと言ってよね、もう・・・・・・
相変わらず、浪馬クンなんだから・・・・・


・・・・・・・・・クスッ・・・・・・



「・・・・・・んもう。エッチなんだから」



信じちゃう・・・・・からね。

必ず、ちゃんと言ってくれるって・・・・・・信じちゃう、からね。


知らないよ、もう。
これ以上・・・・・・考えるの、やめちゃうよ?


私だって・・・・・・したい・・・・・・んだから・・・・・・



どちらからともなく手を伸ばし、抱き合う。
外でしがみついていたのより、強く、強く。


浪馬クンの舌が、私の中に入ってくる。
もうすっかり場所を覚えられちゃってて、キスだけで、びくんって震える。
触られてもいないのに、先っぽが固くなってくる。
ぬくもりを感じただけで・・・・・熱くなって・・・・・・・濡れて・・・・・くる。


や・・・・なんか・・・・・・覚えちゃって・・・・・るっ
身体・・・・浪馬クンの・・・・・動き・・・・・・
こうされると・・・・・・こうなって・・・・・・
撫でられると・・・・・もっと・・・・・・固くなって・・・・・・
浪馬クン・・・・・・ガマンできなくなって・・・・・・



「タマ・・・・・・」



必ず、脱がそうとする。



「ストップ」



そして、私がそれを止める。
浪馬クン・・・何回しても、こうするんだろうな・・・・・・



「え?」



「もう、焦らないの。シャワーを浴びてからでしょ?」




「たまにはいいじゃん。お前の汗の匂いをかぎながら抱かせてくれよ」



・・・・・・・なんかその言い方、やらしい・・・・・・



「イヤよそんなの。動物じゃないんだから」



そんなに、したいのかなあ・・・・・・
キレイな身体でするほうが、その・・・・気持ちいいって、思うんだけどなあ・・・・・・
ドラマなんかでも、大体シャワー浴びてるし・・・・・・



「ふぅ。しょうがねえな・・・・・・」



やれやれのポーズで首を振る浪馬クン。
しょうがないのはこっちだよ・・・・・もう・・・・・・バカっ。



「ほら、行こっ」



浪馬クンの手を取って、シャワールームにの方に引っ張る。



「え?」


「いっしょに浴びるんでしょ?」




約束・・・・・したよね。
これからも・・・・・一緒に・・・・・シャワー浴びるって。
洗いっこ・・・・・するんだからね。



「お、おう」



2人で入るにはせまいシャワールームで洗いっこ。
すぐに身体がくっついちゃうけど、それもまた嬉しい。


「やんっ。浪馬クン、くすぐったいよ〜」


「そうか?オレはここ洗っても全然くすぐったくないぞ?」


「人にされるのとは違うよー」


「そんなもんか、じゃあやってみ?」


「よーし・・・・・えい、こしこし」


「くっ・・・・・・」


「あ、反応。どう?どう?」


「こ・・・・これは・・・・・確かに違うな」


「でしょー?えいえいっ♪」


「ぬおっ!負けるか!」


「きゃっ!急に動いちゃダメだよっ」


「・・・・・・・」


「浪馬クン・・・・・?」



ふにっ・・・・・・


「ふあっ!な・・・なんでいきなりそこ洗うのよお・・・・・ふあんっ」


「自分で洗うのとは違うだろ?」


「や・・・・・やだ・・・・・そんなに優しく・・・・・・」


「ふにふにふにふに・・・・・・」


「ふあ・・・・・やあ・・・・・・」


「・・・・・・・勃った」


「い、言わなくていいよぉ・・・・・・」


「・・・・・・・・う・・・・・・」


「あ・・・・・浪馬クン・・・・・・だって・・・・・・こんなに・・・・・」


「んぐっ・・・・・た、タマ・・・・・・」


「や・・・・・お湯より・・・・熱い・・・・・・」


「お・・・お前のだって・・・・・・絶対・・・・・熱くなってるって・・・・・・」



くちゅっ・・・・・・


「ふああああっ・・・・・・」


「ホラな」


「だ・・・・ダメ・・・・・え・・・・・・」



くちゅくちゅ・・・・・・
こすこす・・・・・・


「ぐ・・・・・な、なあ、タマ」


「・・・・・・ふあ・・・・な・・・・に?」


「出ようぜ・・・・このままじゃ、2人とものぼせちまう」


「そ・・・・そうだね・・・・あんっ・・・・」


「今日は、どうしてもして欲しいことがあるからな」


「・・・・・・・・・・うん・・・・・」



ぬるっ・・・・・・


「ふああっ・・・・・・」


「うお・・・・・や、やべえ・・・・・・」


「浪馬・・・・クン・・・・・・」


「で・・・・・出たら、少し落ち着こうぜ?」


「それは・・・・浪馬クンのほうだよお・・・・・・」


「だ、だな。これから頼むことを考えたら、オレが落ち着かないと
どうしようもねえからな」


「え・・・・・?何ソレ・・・・」


「大丈夫だって、きっとお前も気に入るからよ。期待してろって」



期待・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」



このまま始めちゃいそうなのをなんとかやめて、シャワールームから出る。
お互いを刺激しすぎないように、バスタオルを巻く。
・・・・・・なんか、これもエッチな気が・・・・・・

浪馬クンも、少し顔が赤い。
シャワーのせいじゃ、ないよね。



「・・・・・ちょっと・・・・待ってろな」



「うん・・・・・」




私が頷くと、浪馬クンは押入れを開けだした。



「確か、この袋に・・・・・・っと。後は・・・・・・」



つぶやきながら、ゴソゴソと何かやっている。
そんな浪馬クンの後ろ姿を、私はじっと見ていた。


やっぱり・・・・・・浪馬クン、男の子なんだな・・・・・・
がっしりしてるわけじゃないけど・・・・・・筋肉とか・・・・・ちゃんとついてて・・・・・・
キックボクシングしてると、こんな風になるのかな?

普段、顔ばっかり見てるからなあ・・・・・・
その・・・・運動してる浪馬クン・・・・かっこいいから・・・・・・

きゃー☆そんなこと、絶対本人には言えないけどねっ。
すーぐ調子に乗っちゃうから。



「よ・・・・・・っと」



浪馬クンが、少し大きめの袋を取り出して、私の前に差し出した。
クリーニング屋さんの袋?



「なあタマ。お前に着て欲しいモノがあるんだけどいいか?」



え・・・?それって・・・・・・
着て欲しいと言った瞬間、あの本の記事を思い出す。



「着て欲しいモノ?もしかしてコスチュームプレイってヤツ?」



「まあな。もしかしてイヤか?」




浪馬クンが、ちょっと心配そうに聞いてくる。



「別にイヤじゃないけど、そういう趣味あったんだ?」



やっぱり、男の人って、そういうの好きなのかなあ。
あの本も、楽しそうだったし・・・・・・



「・・・・・・お前のせいなんだぞ」



「え?」




意味がさっぱりわかんなかったので、質問してみる。
けど、浪馬クンは顔を逸らしちゃって、



「い、いいから。とにかく着てくれよ。ほれ」



と言って、そのまま後ろを向いてしまった。



「う、うん」



どうしたんだろ?いつもの浪馬クンなら、着替えシーンなんて
すっごいエッチな目で、かぶりつくように見てもおかしくないのに・・・・・・
なんか、理由でもあるのかな?
べ、別に見て欲しいわけじゃないけどっ!

・・・・・・・・見ても、いいけど・・・・・・



「ね、ねえ・・・・浪馬クン・・・・?」



「・・・・・・・・・」




あれ?返事がない・・・・・・



「浪馬クン・・・・・・?」



ど・・・どうしたのかな・・・・・・
ちょっと心配になって、近づいてみる。


すると、



「・・・・・ふー・・・・・ふー・・・・・・」



いつもより明らかに大きな呼吸の音が、私の耳に届いてくる。


・・・・・・え・・・・・・・これ・・・・・・・鼻息?


もしかして・・・・・興奮・・・・・・してるの?
私のコスプレ姿、想像してる・・・・・・・とか?



「ちょ、ちょっと・・・・・・?」



「・・・・・・・・早く・・・・・・してくれ」



「え?」




私の声が聞こえてるんだか聞こえてないんだかわかんないような反応で、
浪馬クンは呟いていた。



「ろ・・・・・浪馬クン・・・・・・」



「・・・・・・・オレに・・・・・もう一度あの姿を・・・・・・ふーー・・・・ふーー・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・」




・・・・・・・・とりあえず、エッチなこと考えて興奮してるのだけは確かだ・・・・・・



「・・・・・・・・スケベ」



その呟きも聞こえてないらしく、ひたすら荒い息を吐いている。


そんなに・・・・この衣装、楽しみなのかな・・・・・・
私が・・・・・・これ着るの、楽しみにしてくれてるのかな・・・・・・
これで・・・・・するの、いいのかな・・・・・・



「・・・・・・・くす」



なんだか楽しくなってきちゃった私。
だって、浪馬クン、あんなにふうふう言って・・・・・・
そんなに期待されたら・・・・・・


しょーがない。浪馬クンのために、文字通り一肌脱ぎますかっ♪



「・・・・・・・あれ?」



袋の中には、何となく見覚えのあるものが入っていた。
このピンクが基本の色使い、どっかで・・・・・・



「とりあえず・・・・・着てみよっと」



びくん!



「え?」



私が喋った瞬間、後ろを向いたままの浪馬クンの身体がびくんって反応した。
どうしたんだろ・・・・・・


不思議に思いながら、まずは上から着てみる。
大きく前の開いているそれが、胸のちょっと上でなんとか止まる。



「うわあ・・・・・見えちゃいそ・・・・・・」



びくん!!



あ、また。

もしかして・・・・・・想像しちゃってる?
私の着替えてるとこ・・・・・・



「んしょ・・・・・」



びくん!びくんっ!!


声を出すたび、衣装が肌に擦れるたび、浪馬クンの身体が動く。

・・・・・なんか、おもしろーい。
お楽しみって思って、待ってるのかなあ。一生懸命、見ないようにガマンして・・・・・・
かわいい・・・・・・かも・・・・・


それにしても・・・・・・これ・・・・すごいなあ・・・・・・
エプロン・・・・・胸の下から持ってきて・・・・・・
すっごい・・・・強調されちゃうよ・・・・・・
スカートも・・・・・・超ミニだし・・・・・・・


それにしてもこれ・・・・・・着たことあるような・・・・うーん・・・・・


浪馬クンを見ると、そわそわそわそわ。
っていうか、もはや貧乏ゆすりに近いくらい、身体が動いている。
大丈夫なのかな・・・・・・

わ、「Tamaki」って書いた名札?までついてるよ。凝ってるなあ。
浪馬クン、けっこうこだわりある?

でも、これにも見覚えあるなあ・・・・・・思い出せそうなんだけど・・・・・・

頭の中にひっかかりながら、着替えを続ける。



「・・・・・・・うん」



これでひととおりは着たね・・・・・
後は・・・・・この袋かな。

・・・・・・・すごいリボン・・・・・・・

ピンクで・・・・・・ひらひらで・・・・・・
でも・・・・この衣装とお揃いだから、かわいいかも。
んしょ・・・・・・と。


よしっ。かんせーい♪


軽くくるっと1回転してみる。
うん、ぴったりぴったり。なかなか似合ってるかも、私。
男の子って、こういうの好きなのかなあ。
・・・・・そういえば、学園祭のときも男の子たち、見てたなあ・・・・・・あれ?



「って、これ学園祭のときの衣装じゃない」



その日のことを思い出して叫ぶと同時に、浪馬クンが振り向く。
と同時に、目を見開いた。うわ・・・・すごい顔だ・・・・・・
今にも「おお・・・・・でかした」とでも言いそうな顔だった。
運動してるときとは別人だ・・・・・・まあ、これが本来の顔か。あははっ。


でも、これどうしたの?確か、一緒に返しに行ったんだよね?
まさか・・・・・かわいいからって一着こっそりと・・・・・・


じいいいいいい・・・・・・と、目を細めて疑いのまなざし。
すると、浪馬クンは察したのか、首をぶんぶん振りながらこう行った。



「べ、別に盗んできたわけじゃないぞ。サンチョのおっちゃんがくれたんだからな」



どもりながらも、衣装を返しに行った後の、倉庫整理のお礼としてもらったことも
付け足しで説明した。
バイト代のかわりにこんなのもらったのか・・・・・・


あー、そういえば思い出した!
胸元がどうとか言い出して、私思いっきりトレイで殴ったんだ。
そのころから、浪馬クン、こういうの好きだったんだ・・・・・・



「ふーん。そっか・・・・・・まあ確かに、ずいぶんギラギラした目で見てたもんね」



また、目を細めてジト目で見つめる。
さっきとは、ちょっと違うけど。

このエッチ!っていう目が半分。
もう半分は・・・・・・

あの頃から・・・・・私を・・・少しは女の子として見てくれてたんだ・・・・・・

っていう恥ずかしさと、照れ。
きっとその頃は、浪馬クンは私のこと好きなわけじゃなかった・・・から、
口に出しては言わないけど。


浪馬クンは、私の視線に耐えられなかったのか、下を向いてしまった。
そして、わざとらしいくらいの大声で、こう言った。



「う、うるさい。似合いすぎてるお前が悪いんだ」



え・・・・・・似合いすぎてるって・・・・・
学園祭のときは、そんなこと言う気配すらなかったじゃない・・・・・・
ずっと、そんな風に考えて・・・くれてたの?

あの時は・・・・特大パフェのせいで、ほとんど教室にいられなかったもんね。
あれからずっと・・・・見てみたかったのかな・・・・・・
あんなに・・・・・・顔真っ赤にして・・・・・・


・・・・・・・・ぷぷっ・・・・・・・・・


もう。興奮しすぎて、本音が出ちゃってるぞ、浪馬クンっ。

そっかそっか。いつもの軽口が叩けなくなるほど、余裕ないのかあ。
しょーがないんだから・・・・・・エッチ♪
こんな浪馬クン、めったに見られないよっ。ぷぷぷ・・・・・・



「あははっ・・・・・・で、どうすればいいの?」



「え?」



こらえられなくなって笑っちゃいながらそう言うと、浪馬クンが呆けた。
おいおい、キミの希望でしょーが。



「この格好でするんでしょ?お客様とか言った方がいい?」



「あ、ああ。お前がイヤじゃなければ」




普段はイヤがったってしちゃうくせに、今日に限って妙に殊勝。
そんなに抵抗あったのかな?

でも、全身が動いちゃうくらいはあはあ言ってたから、
よっぽどしてみたかったんだろうなあ・・・・・・


こんな浪馬クン、しばらく見られないかも・・・・・・


そう思うと楽しくなって、自然と笑いがこみあげてくる。



「あははっ。別にイヤじゃないってば。って言うか結構面白いかも」



キミの反応が、ねっ。


そう言った瞬間、浪馬クンがまた目を開く。
全身から「ウソだろ?」というのが伝わってくる。
自分から頼んできたのに、なんか私の方が上みたい。
おもしろいぞー♪



「じゃ、始めるね」



「あ、ああ・・・・・・」




私の反応に、すこし戸惑い気味の浪馬クン。
やっぱり、イヤがられると思ってたみたい。

でも、浪馬クンの反応見てるの、すっごく面白いし。
正直、あの本の記事、興味あったし・・・・・・ね。
さすがに・・・バイトの制服はちょっと・・・・・・・だけど。
この衣装なら・・・・・・



雰囲気を盛り上げるために、一旦深呼吸。
学園祭のときの気持ちと・・・・・・バイトの接客のときの気持ちで・・・・・・


すう・・・・・・・・はあ・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よしっ。


浪馬クンの方に向きなおると、手をもう一度前に組みなおす。
ちょっと大げさに営業スマイルを作ると、ニコッと微笑んでみた。



「ではお客様、まずはどうなさいますか?」



なるべく爽やかに、普通の飲食店みたいにふるまってみる。
こんな感じでいいのかな?
学園祭のときとは、やっぱり違う気分。
今は、浪馬クンだけが、お客様。
ドキドキして・・・・・・わくわくする。



「そうだなあ・・・・・・それじゃあフェラからお願いします」



ぷぷっ・・・・・・浪馬クンも、お客様になっちゃってるよ。
私に敬語使うなんて、ありえないね、うん。
結構、シチュエーションを楽しむタイプなのかな?


よーし・・・そんなになりきってるんなら、私だって・・・・・・



「かしこまりました。ではそちらにお座りください」



浪馬クンをベッドに腰掛けさせる。


「・・・・・・・・っ」


座ったとたん、ガマンできないみたいに、バスタオルを自分から外した。


うわあっ・・・・・・・


もう何回も見てるのに、ちょっとビックリ。
こ・・・・・これ・・・・・・いつもより大きいんじゃ・・・・・・?
すっごい・・・・・・上・・・・・向いて・・・・・・



「・・・・・・・・・・タマ?」



「・・・・あっ・・・・・・・し、失礼しました」




見つめてすぎちゃったみたいで、浪馬クンが話しかけてしまった。
私は慌てて、店員さん(でいいの?)の思考に戻す。
思わず、いつもの私に戻っちゃったよ・・・・・・

気を取り直して・・・っと。浪馬クン、準備万端だもんね。

私を待ち構えているかのように、大きく開いた足の間に身体を割り込ませる。
わ・・・・・正座じゃ届かないよ・・・・・・上・・・・・・向きすぎ・・・・・・

膝立ちの姿勢で、ようやく口が届く。
うわ・・・・・熱が・・・・・ここまで伝わってくるよ・・・・・・

位置を調整して、まっすぐに顔を見られる場所に陣取る。


うん・・・・・これでいい・・・・・・かな?浪馬クンは・・・・どうかな?


浪馬クンの顔を見ようとすると、自然と上目遣いになる。
・・・・この体勢で見上げるの、なんかエッチ・・・・・・

ずっと様子を見てたっぽい浪馬クンと、目が合う。
何事もなかったのように、すっと逸らされてしまった。
あははっ。バレバレだぞー♪
浪馬くんの熱い視線、私が気づかないワケないでしょっ。



(そー・・・・・・)



ゆっくり、ゆっくりと浪馬クンがこっちに目を向けるのを、じいっと見つめて待つ。
視線が完全にぶつかったとき、また目を逸らされる前に、



(じゃあ・・・・・・始めますよ。お客様♪)



という意味を込めて、営業スマイルと自分の笑顔を一緒にして、にっこりと微笑んだ。


表情に注目したまま、手をゆっくりと近づけていく。

・・・・・・あつっ・・・・・・
な・・・・・・なんだか・・・・・・いつもより、熱くなってるみたい・・・・・・
角度も・・・・・いつもの手の位置じゃないし・・・・・・
す・・・・・ごい・・・・・・・



・・・・・・・ぴとっ・・・・・・



「・・・・・・っ!」



びくんっ!!


えっ?

そっと触れただけで、浪馬クンの身体がすっごく反応する。

触っただけなのに・・・・・・もう、そんなに気持ちいいの?
まだ・・・・・握ってもいないのに・・・・・・
最初っからこんなで・・・・・・これから・・・どうなっちゃうんだろ・・・・・・


どっくん・・・・・・どっくん・・・・・・・どっくん・・・・・・


私の身体も、浪馬クンに合わせるように熱くなってくる。

や・・・やだ・・・・・私・・・・・・なんにもしてないのに・・・・・・
熱い・・・・・・熱いよ・・・・・・


浪馬クンのがぴくぴくって動くのを見るたびに、溢れてくるのがわかる。
見てるだけで・・・こんなに・・・・・・・
そう思うと、ますます止まらなくて。


や・・・ガマン・・・・・・できな・・・・・・・いっ・・・・・・



「ちゅっ・・・・・」



「んくっ!」




添えた手を動かす前に、いきなり先っぽにキス。
いつもなら擦ったりするんだけど、とにかく唇で触れたくなっちゃって。
浪馬クンも、いつもと違う行動にビックリしたみたい。
でも・・・・・・痛く・・・・・ないよね?このまま・・・・・いいよね?



ぺろ・・・・・・



「ふああっ!?」



「くあっ!」




舌で触れた瞬間、浪馬クンと一緒に叫んでしまった。


な・・・・・熱い・・・・・・いつもより・・・・・すっごい・・・・よ・・・・・・


触れただけで、舌が乾いちゃいそうなくらいに、熱くなっていた。
いつもだって熱いのに、それが霞んじゃうくらいに。


なんで?なんでこんなになっちゃってるの・・・・・・?


上目遣いで浪馬クンを見る。
すると、また目を逸らされてしまう。
私の言いたかったこと、わかったのかな?

なら・・・・目、見てくれたって、いいじゃない。
むー・・・・・・


えいっ。



「はむ・・・・・・」



「くうっ・・・・・・」




先っぽを咥えて、舌で舐めまわす。
どうだ・・・・・・浪馬クンの好きな、攻撃だぞっ。


そのまま、また浪馬クンを見る。
また、目をそらされる。
どうしたんだろ・・・・・・話しかけてもくれないし・・・・・・
気持ちよく・・・・・・ないのかな・・・・・・


でも、そんなことないよね・・・・・・
だって・・・いつもより熱くなって・・・・・・・


あむあむ・・・・・ぺろっ・・・・・・



「くああっ・・・・・・」



舐めるたび、キスするたび、浪馬クンの身体が跳ね上がる。
わ・・・・また・・・・固くなったよ・・・・・・

こんなに固くなってるのに・・・・・



「く・・・・・・くううっ・・・・・・」



なんか・・・・ムリして黙ってるみたい・・・・・
いつもみたいに、「タマ」って、声かけてくれれば・・・・・・



・・・・・・あ。



一つの可能性を思いつく。


そうだ・・・・今日は、浪馬クンはお客様だったんだ・・・・・・
私が・・・店員さんだったんだよね。

もしかして、店員さんが声かけないから、黙ってたのかな・・・・・
こんなに気持ちよさそうなのに、喋らないんだもん・・・・・・

試しに、浪馬クンの顔をちらちら見ながら、舌を動かしてみる。


ぺろぺろ・・・・・



「・・・・・・・っ!」



すると、私の顔を見ないようにして、必死に声を押さえている。


あははっ・・・・・・やっぱり、すっごくガマンしてる・・・・・・・
浪馬クン・・・・・・なんか・・・・・・・かわいい・・・・・・・・♪

そう思ったら、愛しさがどんどんこみ上げてきて。


よーし、じゃあ私も、店員さんになりきっちゃうからねっ。
いきますよー、お客様っ♪



「はむ・・・・・ん、ペロッ・・・・・・ちゅっちゅっちゅっ」


「くっ」




いつもより、もっと大胆に責めてみる。
浪馬クンの声が、思わず大きくなる。



「ふふ、お客様のもうビンビンになっちゃってますね。
これじゃあまりもたないんじゃないですか?」




ふあっ・・・・・・い、今の・・・・・・


な・・・・なんか今のセリフ、エッチ・・・・・・・
私が言ったんじゃないみたい・・・・・・


浪馬クンを見ると、苦しそうな、それでも嬉しそうな顔で、
ようやく言葉を出してくれた。



「だ、大丈夫ですから、もっと続けてください」



や・・・やっぱり、私が店員さんになるの・・・待ってたみたい・・・・・



「かしこまりました。それでは・・・・・・」



心と身体は熱くなってるけど、冷静に言葉を返す。
・・・・・ホントに、バイトの接客のときの気分みたい・・・・・・


私なのに、私じゃないみたいな、ヘンな感じになってくる。
考えるよりも先に、身体が、口が、浪馬クンのものへと近づいていく。



「あむっ」



「くっ」




先っぽを、口で覆う。
浪馬クンが耐え切れずに声を上げるのが嬉しくて、もっともっと聞きたくなって。



「ん、ん、ん、ん・・・・・・」



そのまま舌で、上あごで、全体を愛撫していく。
浪馬クンの弱いところを、ちょっとだけ強く刺激する。



「くぅっ」



声が、たまらずに大きくなる。
私だって、ちゃんと勉強してるんだから・・・・・・



「んぐんぐんぐんぐ・・・・・・」



や・・・・・先から・・・・・・・出てきた・・・・・・
気持ちいいんだよね・・・・・・浪馬クン、気持ちいいんだよね?
私も・・・・・・触ってないのに・・・・・気持ちよく・・・・・・なって・・・・・・


とろっ・・・・・


ふああ・・・・・また・・・・・あ・・・・・・



浪馬クンの顔がちゃんと見たくなって、一旦口を離す。
少しぼーっとしたような顔の浪馬クンが、目に映る。
そんなに・・・・気持ちよくなって・・・くれて・・・・・・・



「どうですか?気持ちいいですか?」



あ・・・・・・こうやって・・・・・・丁寧に・・・・・喋ると・・・・・・
ホントに、接客してるみたい・・・・・・



「い、いいです。すごく・・・・・・き、気持ちいいです」



私の接客口調に、お客様として答える浪馬クン。
お互い・・・・ホントになりきってる・・・・・

ううう・・・・・浪馬クン・・・・素直で・・・・・かわいい・・・・・・



「ふふっ。じゃあ、もっと頑張っちゃいますね」



素直な声が聞きたくて、また浪馬クンのを口で愛撫する。
咥えたまま、舌と口の中で舐めまわしていると、先っぽからどんどんと滲み出てくる。


すご・・・・・まだ・・・・・そんなに時間たってないのに・・・・・こんなに・・・・・・



「ちゅぷ・・・・・・ん、ん、ん・・・・・・あむ・・・・・・」



出てきたのを残らず舐めとろうと、一生懸命舌を這わせる。


ふあ・・・・苦い・・・・・・でも・・・・・・浪馬クンの・・・・・だからっ


浪馬クンから出たものだと意識すると、余計に私の身体が欲しくなってくる。
浪馬クンのを、私の中に入れたい。浪馬クンと一緒に、私も感じたい。
2人一緒に、同じものを・・・・・・



「くぅ・・・・・・」



や・・・・・浪馬クン・・・・・気持ちよさそ・・・・・はあっ・・・・・
私も・・・・もっと・・・・もっと・・・・・・飲みたい・・・・・・よぉ・・・・・・っ・・・・・
もっと・・・・・出して・・・・・・・全部・・・・・・吸ってあげる・・・・・から・・・・・



「んっんっんっんっ・・・・・・チュルルルッ!」



ガマンできずに、自分から吸い出してしまう。
浪馬クンの顔が歪む。
でも、どんなに吸っても、後から後から溢れ出て、止まらない。


ふあ・・・浪馬クン・・・・こんなに・・・・出てる・・・・・・
いっつも・・・・こんなには・・・・・・出てないよ・・・・・・

私が・・・・この格好だから・・・・・?
この格好だから・・・・・・興奮・・・・・してるの・・・・・・?
あの時も・・・・・ちょっとは・・・こんなこと・・・・・考えてたのかな・・・・・

ふああっ・・・・そんなこと・・・思ったら・・・・
私も・・・・・・すっごく・・・・・ぬれ・・・・・きちゃう・・・・・よお・・・・・・



「そ、そんな激しくされたら・・・・・・」



・・・・・・はっ!?

やだ・・・・知らないうちに・・・吸いすぎちゃってたみたい・・・・・
ふわあ・・・・すっごい・・・・・びくびくしてる・・・・・・

もしかして・・・・・もう・・・・・・



「もう出ちゃいそうですか?」



私じゃない私が、あくまでも店員さんとして質問する。
興奮してるのを何とか抑えて、冷静になろうと努力する。
でも、私は全然冷静じゃなくて。

なんか・・・・・私じゃなくなってる・・・・・・みたいだよお・・・・・

もし・・・・もし出ちゃいそうなら・・・・・・浪馬クン・・・・・・
・・・・・・・欲しい・・・・・・・・こっちに・・・・・・・



「あ、ああ」



や・・・・素直に・・・・・頷いて・・・・・・かわいいよお・・・・・・



「ではどうなさいますか?このまま口で出しますか?
それとももう一つのお口で・・・・・・」




こっちだよね?こっちで・・・・・・してくれる・・・・・よね?



「も、もう一つの口でお願いします」



よ・・・よかったあ・・・・・・
このまま口で・・・なんて言われたら、素に戻っちゃったかも・・・・・・
だって・・・・・私も・・・・・もう・・・・・・

ダメ・・・・・・冷静に・・・・・・れいせい・・・・にっ・・・・・・



「かしこまりました。では、私が上にならせていただきますね」



ちゃんと・・・・・言えて・・・・・る?
店員さんに・・・・・・なれてる?



「は、はい・・・・・・」



なんだか、少し不安そうな顔の浪馬クン。

もしかして・・・・冷静な口調だから・・・・・感じてないんじゃないかとか・・・・・・
思ってないかな・・・・・・?


大丈夫だよ・・・・・私も・・・・・すっごく・・・・・・


浪馬クンと・・・・・・私・・・・・触れてみれば・・・・・わかるから。
私が・・・・ホントは・・・どんなに・・・・・なってるか・・・・・わかる・・・から・・・・っ



ワザとゆっくりとした動作で、浪馬クンの上にまたがる。
ホントは・・・その・・・・・・すぐにでも・・・・・・・なんだけど、今の私は店員さんだから。
お客様を・・・・・浪馬クンを・・・・・・気持ちよくしてあげないと、いけないから・・・・・・


ふああっ・・・・浪馬クンの熱いの・・・・・感じるよぉ・・・・・・
早く・・・・・早く・・・・・・でも・・・・・・・ガマン・・・・しなきゃ・・・・・



「ではお客様、私の中に・・・・・・」



もっとじらしたほうがそれっぽいのかもだけど、私のほうが耐えられなかった。
もう、口調を整えるのがせいいっぱい。

手でそっと触れると、ものすごい鼓動が伝わってくる。


ふああっ!脈・・・・・・びっくんびっくん・・・・・すご・・・・・いっ


浪馬クン・・・・・もう・・・・・私に・・・挿りたくて・・・・・たまんないんだよね・・・・・
わ・・・・・私も・・・・・すぐ・・・・・・・

で、でも・・・・・今日は私が・・・浪馬クン・・・・おきゃく・・・・さま・・・・・だから・・・・・
私が・・・・・リード・・・・しな・・・きゃ・・・・・ふああん・・・・・・


浪馬クンの瞳を見つめる。
もうガマンできないって言いたげな顔で、私を見ている。


うん・・・・うん・・・・・・わかってる・・・・・・から・・・・・・・
ゆ・・・・ゆっくり・・・・・・味わって・・・・・・ね・・・・・・・
わたしの・・・・・・な・・・・・か・・・・っ・・・・・・


手で導いて、私のもう一つの口でキスをする。


ぴと・・・・・



「っ!!」



「ひああっ!」




2人の一番エッチなところがキスした途端、揃って声をあげてしまう。



んはあ・・・・触れた・・・・だけ・・・な・・・のにっ・・・・・
なに・・・・・これえ・・・・・
すぐ・・・・いっ・・・・・
だ・・・・だめ・・・・・れいせいに・・・・なら・・・・・なきゃ・・・・・・



ずりゅ・・・・・



「・・・・・・・!」



いや・・・あ・・・・・こえ・・・・・・でちゃ・・・・・
だめ・・・・・浪馬クン・・・・・きもち・・・・・よくう・・・・・・



ぐちゅ・・・・・にちゅ・・・・・・



ゆっくりと、浪馬クンを中に沈めていく。
早く動きたいのを、ガマンして。
浪馬クンも、もしかしたら動きたいのかもしれないけど、
それじゃ、いつもと同じになっちゃうから。


ふああ・・・・当たる・・・・とこ・・・・・いつも・・・と・・・・・ちがうよお・・・・・
そんなに・・・・反って・・・・・あふうう・・・・・



そして、その反ったものはやがて、



ぶちゅっ!!



「うっく」



「あはぁっ!」




いやらしい音と、私のものすごい声とともに、一番奥に到達した。



ぬちゅ・・・・・・っ



一瞬、何も見えなくなった。


あんまりの衝撃に、息が止まる。
肺の中の空気が、全部吐き出されちゃったみたい。


ふああっ・・・・・・ああっ・・・・・・・・


な・・・・すご・・・・・・・なんで・・・・こん・・・・な・・・・・・っ
浪馬クン・・・・・浪馬・・・・・クン・・・・・・


声にならない声で浪馬クンを呼びながら、なんとか顔の方向に目を向ける。
浪馬クンも、驚いたような顔で、私を見つめていた。


びくんっ!!



「!!」



見つめあった途端、私の中の浪馬クンが脈打った。
や・・・・また・・・・・・大きく・・・・・・・くうんっ・・・・・・・


ろ・・・浪馬クンも・・・いつもと違うって・・・・・・思ってるのかな・・・・・
いっつも・・・気持ちいいけど・・・・・・
今日は・・・・・感覚が・・・・・・ぜんぜん・・・違う・・・・・・んはあっ・・・・・

服が・・・違うから?
浪馬クンが・・・・・興奮・・・・・して・・・るから・・・・・?
それだけ・・・・・?わたし・・・・・・・は・・・・・・?

やああっ・・・・心臓・・・・・まだ・・・・・早くなっちゃう・・・・
沈めなくちゃ・・・・・うごけ・・・ない・・・・・よお・・・・・・・・

私・・・店員さん・・・・だから・・・・・・浪馬クンに・・・・・してあげ・・・なきゃ・・・・・



何回も何回も大きく息を吐いて、何とか声を出す。



「はぁ、はぁ・・・・・・お、お客様の・・・・・・固くて、す、すごく・・・・・・大きいです」



ふああっ・・・・・また・・・こんなエッチな言葉・・・・・・
考えてないのに・・・・出てきちゃうよお・・・・・・

だって・・・・浪馬クン・・・・・いつもより・・・・・かた・・・・く・・・・・・
違う・・・・とこ・・・・・当たってる・・・・もん・・・っ



「た、タマの中も・・・・・・すごく締まって・・・・・・」



わ・・・・たしも・・・・・?いつもより・・・・締まっ・・・・・



きゅうっ・・・・・・



ひあああっ・・・ま・・・また・・・・・・・
浪馬クンのが・・・・・・・大きく・・・なっ・・・・たの?
それとも・・・・・・わたし・・・・が・・・・・


やはあああっ・・・・・もう・・・・・わかんないよお・・・・・
でも・・・・・でも・・・・・・っ・・・・・



「ああんっ。い、いい・・・・・・い、いつもより・・・・・・感じるっ」



気持ち・・・・・いいよぉ・・・・・浪馬クン・・・・・私・・・・・きもちいいよお・・・・っ


浪馬クンも・・・・気持ちよく・・・・なって・・・・
今から・・・・・動くから・・・・・はぁんっ・・・・・・

少しでも・・・・・長く・・・・気持ちよくなって・・・くれるように・・・・・・
ゆっくり・・・・・ゆっく・・・・り・・・・・・・



プチュッ・・・・・・プチュッ・・・・・・



ふああ・・・・あああっ・・・・・・


ゆっくり動いているのに、すごく大きな音が、2人の繋がってるとこから聞こえてくる。
耳が、身体が、その音だけに集中しているみたいに。
熱くて、溢れて、止まらない、私と浪馬クンの場所から。



「あ、あ、あ、あ・・・・・・」



足に力を込めるたび、言いようのない快感が私を襲ってくる。
普段とは違う、浪馬クンがこみ上げてくるような。
でも、絶対に出したくないような、そんな感じ。
呼吸が、全て喘ぎ声に変わってしまう。


あ、あ、あ・・・・・・こんなの・・・・・こんな・・・・・のっ・・・・・
浪馬クン・・・・・どう・・・・・・私・・・・・い・・・い・・・・・・?


浪馬クンは、私を見ていた。
私と同じように荒い息を、何回も何回も吐いていた。
その、私にだけ見せてくれる顔に、ホッとする。


よ・・・よかった・・・・浪馬クンも・・・・・・気持ちいいんだ・・・・・・
私だけじゃ・・・・ないんだね・・・・・・

ふああっ・・・安心したら・・・・・また・・・・・きゅうっ・・・・て・・・・・
たぶん・・・今は・・・・・私が・・・・・締ま・・・・


きゅううっ・・・・・


や・・・やだ・・・・・・また・・・・・・・・・


浪馬クンと私の隙間が、更に埋まっていく。
勝手に動いて、止められない。
・・・・・・止めたく、ない。

浪馬クンと、もう一度見つめあう。
ちょっと苦しいのか、顔を歪めている。
それでも気持ちよさそうに、ちょっとテレながら微笑んでくれた。


浪馬・・・・クン・・・・・・・


思わず抱きつきたくなる。
浪馬クンを好きって気持ちと、もっともっと一緒になりたいという気持ちが
身体を伝わって、敏感に、正直に反応する。



とろおっ・・・・・



んはあっ・・・・・・
ま・・・・・また・・・・・・いっぱい・・・・・出て・・・・・・うああっ・・・・・・


やっ・・・・もう・・・・・
動きたく・・・・・なって・・・・きちゃったよお・・・・・・

でも・・・・浪馬クン・・・気持ちよく・・・・だから・・・・・・・
私だけ・・・・・そんなの・・・・・んふうっ・・・・・



「な、なあタマ」



必死にガマンしてると、浪馬クンが声をかけてきた。
もう、浪馬クンは素に戻っている。

だめ・・・・名前で・・・・呼んじゃ・・・・だめえっ・・・・・・

いつものように呼ばれただけなのに、身体がもっと熱くなる。
動きたくなるのを、私まで素に戻っちゃいそうなのを何とか抑えて、
店員さんとしての声を繕う。



「はあ、はあ、な、なんですか、お客様?」



声・・・聞いただけで・・・・・あ・・・あふれ・・・・て・・・・・くうっ・・・・・
だめだよ・・・・声の響きだけで・・・・・
大好きな人の・・・・・声・・・・・・あはあっ・・・・・
ガマン・・・・・が・・・・・まん・・・・・・・・っ・・・・・



「お、お前・・・・・・い、いつもより、濡れてないか?」



どくんっ!!



心臓が1回、ものすごい勢いで跳ねた。
その後、大きさが早さに変わって、どくんどくんどくんどくんって、
壊れちゃいそうなくらいに鳴り出す。

やああっ・・・・そんな・・・・・事・・・・・・言われ・・・・・たら・・・・・・!



「そ、そうですか?」



とぼける。でも、ちゃんと気づいてる。
こんな格好して、浪馬クンにご・・・ご奉仕・・・・・・して。
浪馬クンが、こんなに興奮してるのを見て。
私も同じくらい・・・・・・ううん、それ以上に・・・・・・・興奮して・・・・る。

認めたら、ますます気持ちいいのが強くなってきた。


ああっ・・・・・まだ・・・まだ気持ちよく・・・・・なっちゃう・・・・の・・・・?
なんで・・・・なんで・・・・・・・?
こんなに・・・な・・・・ちゃったら・・・・・・も・・・・もう・・・・・・
だめ・・・・・が・・・・・まん・・・・・・ふあああっ・・・・・・
しな・・・・・く・・・・・・っ!



「あ、ああ・・・・・・って言うかオレ、愛撫した覚えもないし、
どうしてこんなに・・・・・・くっ、濡れてるんだ?」




〜〜〜〜〜!!



や・・・・はあ・・・・・き・・・気づかない・・・・フリ・・・・してたのに・・・・・
い・・・言われ・・・・ちゃ・・・・た・・・・・・

そ・・・・そうなの・・・・浪馬クンに・・・・・今日・・・・触ってもらって・・・・ないの・・・・
私が・・・・してあげる・・・って・・・・決めて・・・・ふああん・・・・!

なのに・・・・・舐めてた・・・・だけで・・・・こんなに・・・・・ぬ・・・ぬれ・・・・はああっ・・・・


きゅうううっ・・・・・


あああっ!ま・・・また・・・・・締まっ・・・・・あはあっ!


浪馬クンの言葉が、頭の中で繰り返しリピートされる。
その度に、心臓の音がどんどん大きくなる。
繋がってるところが、どんどん狭くなっていく。
音が、動きが、私の思考を奪っていく。
浪馬クン以外、何も見えなくなっていく。


なんでかは・・・・わかんないの・・・・・けど・・・・・こうしてるだけでも・・・・・
ぐちゅっ・・・・・て・・・・・ふああああっ・・・・・・

ひあああ・・・・こ・・・・このまま・・・・じゃ・・・・・・・


ろう・・・・ま・・・・・クン・・・・・わ・・・たし・・・・・・
も・・・・もう・・・・・ホントに・・・・・・ダメ・・・・・・っ!


ゴメンね・・・・・もう・・・・・・もう・・・・・・・・・っ!



「も、申し訳ありません・・・・・・そ、それは私にも・・・・・・あぁ、
私にもわからなくって・・・・・・ああんっ!」




ぐちゅうっ!!



言葉の途中で、抑えきれなくなった。
一気に、私の一番奥まで沈み込ませる。
身体が、弾けたようになった。
それでも上下に動いて、何度も何度も私の奥にくっつけていく。



ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ



あああっ・・・・・いやらしい・・・・音・・・・・くううっ・・・・・・
浪馬クン・・・・・私・・・・・止まんない・・・・・止まんないよお・・・・・・

おっきいのが・・・・・・・・・・奥に・・・・当たって・・・・・
・・・・・・か・・・・・かたい・・・・・固い・・・・よお・・・・・・はうううっ・・・・!

すごい・・・・浪馬クン・・・・・す・・・・ごい・・・・・あああっ・・・・・


気持ちいい?浪馬クン・・・・・きもち・・・・いい?


視界はボーっとしてるのに、浪馬クンの顔だけはハッキリ見える。
私が沈んでいくたびに、苦しそうに眉を歪める。
それでも吐く荒い息は、間違いなく気持ちいいときの息で。
中で何回もびくんびくんって脈打って。
それが、私をもっと早く動かす。



「くうぅ。そ、そんな急に・・・・・・」



ごめん・・・ね・・・・もう私・・・・・・止まんない・・・・・ああああっ・・・・・



「す、すみません。もう私、自分が抑えきれなくて・・・・・・あ、あ、あ、あ、あぁぁぁ」



やだっ・・・・思ってること・・・・・・勝手に・・・直して言ってるよお・・・・
勝手に・・・・店員さんに・・・・・なってる・・・・・はああんっ・・・・・

ホントに・・・・私・・・・が・・・・・・言ってるんだよ・・・・ね?
私・・・以外の人じゃ・・・・・ないんだよね・・・・・?

だって・・・・私なのに・・・・・私じゃない・・・・・・みたい・・・・・・ふあああ!


私じゃない私に、見られてるような感覚。
私は、すごく気持ちいい。
私じゃない私も、すごく気持ちいい。
1人なのに、2人分みたいな気持ちよさ。

もう、自分が何を考えてるのかすらハッキリしなくなってくる。

ハッキリしているのは、私が今、一番したいこと。


このまま、浪馬クンを包み込んでいたい。
ずっと、一緒に・・・・・・いたい。


部屋の外にまで聞こえちゃいそうなくらいの、大きな音が耳に響く。
いやらしくて、大切な音。
そう思ったら、勝手な動きが更に激しくなった。
浪馬クンが突き上げてくるのが、間に合わないくらいに。



「ふぅ、ふぅ・・・・・・た、タマ・・・・・・そんなにされたら、お、オレもう・・・・・・」



浪馬クンのかすれた声が、私の耳に届く。
もう、声自体より漏れる息のほうが大きいみたい。


浪馬クン・・・・・ごめんね・・・・・・
私・・・・・・あふう・・・・・止まんない・・・・・・ふあああっ・・・・!

勝手に・・・・・身体・・・・動いちゃ・・・・のぉ・・・・・ああっ・・・・・・


動いたまま、浪馬クンの顔を見る。
気持ちいいのをなんとかして耐えている。

それでも、視線を逸らしたりはしなかった。
耐えながらも、私を見つめてくれた。


そして、ほんのちょっとだけど、笑ってくれた。



あ・・・・・



ぐちゅあっ!



「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」



その笑顔を見たら、また、すごいのがきた。
もう限界、これで限界と思っているのを、簡単に抜いていっちゃう。


ああああっ!ま・・・・まだ・・・・気持ちよく・・・・・はあんっ!


ふあああっ・・・・浪馬クン・・・・・ガマンしてるのに・・・・・・
歯・・・・くいしばって・・・・・
私が・・・・こんな・・・・・激しく動い・・・・て・・・・・
い・・・イキ・・・・・そ・・・・・・なの・・・・に・・・・・・んはあああ!


なのに・・・・なのにそんな・・・・笑顔・・・・され・・・たらあっ・・・・・!



浪馬クン・・・・・わた・・・・し・・・・・もう・・・・ごめ・・・・ん・・・・っ!ああああっ!



それを最後に、奉仕という感情が、私の中から消し飛んだ。



ぐちゅっ!ぶちゅっ!ぐちゃあっ!



私たちの喘ぎ声より大きな音が、部屋の中を駆け巡る。
浪馬クンの顔色が、もっと険しくなる。




すご・・・音・・・・おっきい・・・・んやああっ・・・・
でも、わ・・・・わた・・・・もっと・・・・・・浪馬クン・・・・・・

こっちも・・・・こっちもお・・・・・・触っ・・・・・ふあああ・・・・・・
ここ・・・・もお・・・・浪馬クン・・・・・・!


繋がってない部分全部が、浪馬クンに触られたがる。
今までまったく触れていなかった部分が、怒り出したみたいに。
その中で、一番触られたがっている部分が、アピールしている。
固く、大きくなって。
それが私に伝わって、言葉として浪馬クンに伝える。



「はあ、はあ・・・・・・お、お客様。む、胸を、胸をいじっていただけますか?」



おねだりするなんて、もう店員さんでもなんでもないと思う。。
自分で考えて喋っているのか、勝手に口から出てくるのかもはっきりしない。

着ているものが違うから?浪馬クンがいつもよりも興奮してるから?

そんなことを考える余裕もなく、タマとしての私と、言葉使いだけがかろうじて残っている
店員さんとしての私が同じ事を考え、浪馬クンに求めていた。


あんっ!・・・・服に・・・・擦れて・・・・・んあっ・・・・・



言葉にすると同時に、先がもっと固くなるのが手に取るようにわかった。
素肌の上から直接着た衣装が、ダイレクトにその動きを捉える。
早く外に出たいって、せっついている。



「ふぅ、ふぅ・・・・・・」



声をだすのもつらいのか、浪馬クンは無言で手を伸ばしてくる。
手の熱が近づいてくるだけで、先っぽが敏感に反応する。
早く触って欲しい。
その手で、指で。私が一番大好きなキミで。

私のどうしようもなくいやらしい身体が、
きっと、キミ以外にはもう反応しない身体が。
求めている。
どうしようもなく、浪馬クンを求めている。



ぷちっ・・・・・・・



こんなに激しくしているのに、すごく優しい手つきでボタンが外される。
待ちかねていたように、先っぽが外に飛び出した。
自分でも見たことがないほど、固く、大きくなっている。

浪馬クンと重なるたびに、新しい、いやらしい自分が見つかる。
私はそれを抑えずに、少しでも手が触れやすいように、身体を前に倒す。


はやく・・・・・・はやくう・・・・・・!
むね・・・・・むね・・・・・いじってえ・・・・・・!


いやらしい音を立てながら動きっぱなしだから、触りづらいかもしれない。
それでも、身体は止まってくれなくて。


浪馬クン・・・・止まんない・・・・止まんないよお・・・・・・!
はやく・・・・いじって・・・・欲しいのに・・・・・んはあっ!



でも、そんな心配は無用だった。



ぴたっ



「!!」



私の動きがわかるみたいに、浪馬クンの手が吸い付いてきた。
息が止まっちゃうくらいの刺激。
その手が、ゆっくりと撫で回していく。
繋がっている部分とは違う、甘い甘い刺激を感じる。

でも、激しいのに打ち消されることは、絶対にない。
お互いにどんどん高まりあって、身体の中を巡っていく。

激しいのはすごい速さで。
甘いのはゆっくりと。



「きゃふっ。そ、そうです。そうやって胸を・・・・・・あぁっ」



自分のして欲しいことを、伝える。
もう、それしかできない。

そんな勝手な私に、浪馬クンは応えてくれる。
私の動きにも、いつのまにか合わせて突き上げてくれている。


す・・・すごい・・・の・・・・・・胸も・・・あそこ・・・・・も・・・・・あ・・・あ、あっ・・・・・・・
全部・・・・からだ・・・・・全部・・・・・あはあ・・・・きも・・・ち・・・・・いい・・・・・の・・ああ!

なんで・・・・・どうし・・・て・・・・・・こんなに・・・・・・?



「はあ、はあ、ふう、ふう・・・・・・」



荒い息だけを吐きながら、浪馬クンの手が胸を愛撫し続ける。
手のひら全体を使って胸を刺激される。
指の間にはさまれた乳首が、その動きに敏感に反応する。
横から絞るように力が入る。
ときどきその指が動いて、横から中心へとなぞっていく。


ふあああっ!そ・・・そこ・・・・・・っ!


中心を押したり、押したまま動かしたり。
ときどき「くっ」とか呻くだけで、全然喋ってはくれないけど、
今までのエッチで、もう私を全部知っちゃってるみたい。
まるで、私の気持ちいいところが、身体に書いてあるみたいに的確にいじられていく。



「!っ!んんっ!んんんんっ!!」



胸に力が入るたび、乳首の横に、中央に指が触れるたび、
びくんって、身体中に電流が走る。
その後は甘い刺激になって、また身体中に広がっていく。
刺激が消える前にどんどん新しいのがきちゃうから、
快感がどんどん身体にたまっていく。

私の目から、浪馬クン以外が消えていく。


んはあっ・・・・はああっ!
気持ちいい・・・・・気持ちいい・・・・・気持ちいい・・・・・・・・っ!

ど・・・どうして・・・・・・どうしてえ・・・・・・
胸・・・・と・・・・・いっしょ・・・・なんて・・・・・はじめて・・・・じゃないのに・・・・ああっ
どうして・・・・こんなに・・・・・・

お・・・教えて・・・・ろう・・・・ま・・・・・クン・・・・んうう・・・・


ぶちゅっぶちゅっぶちゅううっ


うふうううっ・・・・・息・・・・・できない・・・・・
おしえ・・・て・・・・どうして・・・・こんなに・・・・・こんなにいっ・・・・!



「く、くふっ・・・・・・あ、あ、あ、あ、いやぁ・・・・・・ど、どうしてこんなに、
どうしてこんなに気持ちいいの?」




考えを頭の中に留めることもできなくなって、そのまま言葉にしてしまう。
エッチな私と店員さんの私が、完全にシンクロしている。
浪馬クンは答えてくれなかったけど、また、微笑んでくれた。
それだけで、また電流が走る。


そ・・・・そんな顔されたら・・・・イ・・・・イッちゃ・・・・ふあああっ
だ・・・め・・・・いっしょ・・・・・いっしょに・・・・・イクのお・・・・・っ!


それだけは避けたくて、何とかこらえようとする。



たらっ・・・・・



・・・・・え・・・・・・?


気づくと、私の口と、浪馬クンの胸が、一本の糸で繋がっていた。
キラキラと、妖しく、やらしく光っている。


や・・・わたし・・・・・よ・・・・だれ・・・・・垂らして・・・・・んんんん・・・・・!


やがて口から外れ、浪馬クンの胸に銀の筋となって残る。
む・・・胸に・・・・私の・・・・・エッチ・・・・えっちだよお・・・・・


ぎゅううっ・・・・・


くううううっ・・・・・・!


その様子に、また、私の中が小さくなる。
私の頭の中が、どうにかなっちゃいそうなほど、気持ちよくなっちゃう。


ま・・・・またあ・・・・・っ・・・・・・・
よだれ・・・・・たれちゃうまで・・・・・きもちよ・・・・・ふああっ

どうして・・・・・どうして・・・・・こん・・・・な・・・・・・
顔・・・・見て・・・・・よだれ・・・・・見て・・・・・・こんなに・・・・・んうううっ!

浪馬クンの・・・全部が・・・・・気持ちよくて・・・・
触られてるのも・・・・・見られてるのも・・・・・全部・・・・・くうう・・・・
服・・・・違う・・・だけなのにいいつ・・・はああっ・・・・はあ、はあ・・・



「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・い、いつもと同じなのに・・・・・・
してることはいつもと同じなのに・・・・・・それなのに・・・・・・それなのに私・・・・・・くうぅ」




なんで・・・・・こんな・・・・・に・・・・・・・
ホント・・・・・に・・・・・・私・・・・・・・なの・・・・・・?
店員・・・・さん・・・・・なの・・・・・?
わかんない・・・・・わかんない・・・・・・・よお・・・・・あああっ・・・・・!



「た、タマ・・・・・・」



浪馬クンが、切なげに声を上げる。


それだけで、



どっくんっ!



くはあああっ!!



浪馬クンのが大きくなったのか、私が破裂しそうなのか、もうそれもわからない。
私が私なのか、店員さんなのか、それもわからない。
ただ、わかっているのは、



ろ・・・・浪馬クン・・・・・・も・・・もう・・・・・・イク・・・・・・の・・・・・?
限界・・・・・げんか・・・・・い・・・・・だよね・・・・・?

わた・・・・・私も・・・・・・もう・・・・・も、ダメ・・・・・・・

ねえ・・・・・いいよね・・・・?
私・・・わた・・・・しも・・・・・・いっしょ・・・・・に・・・・いいっ・・・・!



最後まで、一緒に。



「い、イキますか?お客様。も、もう・・・・・・イッちゃいますか?」



なんで・・・・まだ・・・・こんな喋り・・・・・ああっ・・・・・
私・・・・・まだ、店員さんのつもりなの?
もう・・・・そんな気なんて・・・・・ないの・・・・に・・・・くうう・・・・・



でも・・・・・・っ・・・・



「はあ、はあ・・・・・・」



浪馬クンが荒い息を吐きながら、コクリと頷く。
心から気持ちを出した表情が、今、私だけに注がれている。
そう感じただけで、もっと、ずっと、このままでいたい気持ちが高まってくる。


でも、浪馬クンはもう限界が近いから。
私は・・・・・もう、限界を超えちゃってるから。


私か私じゃないかなんて。
そんな気がなくったって。


浪馬クンと・・・・・一緒に・・・・・・イ・・・・・なら・・・・っ・・・・・



「そ、それじゃあ、一緒に・・・・・・一緒に、イキましょう」



もう・・・・・どっちでも・・・・・・いい・・・・・・っ!



最後の力を振り絞って、一気に腰を落とす。


同時に、浪馬クンも最後の力を振り絞って、腰を突き上げる。



ぶちゅううう!!!



「くううっ!!」



「はあああ!!」




お腹の奥の奥まで入っちゃったような、ものすごい圧迫感。
浪馬クンのが、直接私の身体全部にいきわたるような快感。
それを証明するような、私たちの喘ぎ声よりも絶対に大きかった音。



はああ・・・・ま・・・・まだ・・・・イッちゃ・・・・ダメ・・・・・・
ろ・・・・ま・・・・クン・・・・・・が・・・・・・まだ・・・・・あああっ・・・・・・



何とか、本当に何とか耐え抜いて、もう一度腰を浮かせる。
浪馬クンのお尻が、ベッドの上に戻る。



勢いをそのままに、腰を落とし、腰を突き上げる。



ぐちゅあっ!ぶちゅ!ぐちゅううっ!!!



私のやわらかいところと、浪馬クンの根元が、何度も何度もぶつかる。
何回ぶつかっても、一番深いところで、一番強いところでぶつかる。
完全に、動きがシンクロしている。

私の腰の動きと、浪馬クンの腰の動き。
これしかないっていう完全なタイミングで、一番気持ちいい場所で、
2人は重なる。
何度も、何度も、何度も。



なんで・・・なんで・・・なんでえ・・・・・・っ?
どうして・・・・こんな・・・・・ピッタリ・・・・・・はあっ、はあっ、はああっ・・・・・!



「あん、あん、あん、あんっ・・・・・・す、すごいぃ・・・・・・す、すごいです・・・・・・
こんな、こんなのって・・・・・・はあぁぁん」




加減なんてできなくて、腰を落とし続ける。
力なんて、お互い残ってないのに。

お互いを求め合う心が、心の底にある意識が、2人を動かす。
身体が強制的にストップをかけるまで。



「はあ、はあ、ふう、ふう・・・・・・」



浪馬クンの息が、いよいよ途絶えそうになってきた。
それと反対に、私の中の浪馬クンが鼓動と共に膨らんでいく。
残った力の全部が、そこに集まっているみたいに。



あ・・・・・あ・・・・・・ろうま・・・・クン・・・・・・イ・・・・クんだ・・・・・
わた・・・しも・・・・・・私もぉ・・・・・私もお・・・・・っ!
いっしょに・・・・・いっしょにいいっ!はあああんっ!!



「い、イキます、も、もう私・・・・・・イッちゃいますぅぅ!」



後のことなんか、どうだっていい。
浪馬クンと、一緒に。


最後の力を振り絞って、腰を落とす。
浪馬クンのを少しでもたくさん感じるために、深く、深く。



ぶちゅうっぶちゅうっぐちゅううっ!!!



一番の早さで落とし、突き上げる。
全部が一致して、私の一番深いところに浪馬クンが当たる。
浪馬クンがぶくっと音がしそうなくらい膨らむと同時に、
私に、最後のときが訪れる。



い・・・イクの・・・・・浪馬クン・・・・・私・・・わた・・・し・・・・・・
イクの・・・・・!イク・・・・のお・・・・・っ!!


いっしょに・・・・・いっしょに・・・・・・・いっしょにいいぃぃ!!




ぐちゅうううううっ!!!




ああああああっっ!!!




「くっ!た、タマッ!!!」




「イックぅぅぅーーーっ!!!」




同時に叫ぶ。
2人の中心から、閃光が走った。




私は大きくのけぞり、一瞬意識を飛ばす。
薄い膜ごしに浪馬クンの熱さを感じて、視界が徐々に広がっていく。
その先に見えるのは、私のいちばん大切なひと。

繋がったまま少しだけ前かがみになって、大きく動いているお腹の辺りに
そっと手を添える。
胸が裂けそうなくらいに大きく息をしながら、浪馬クンを見つめる。



「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・」



浪馬クンも私に負けないくらい、荒い息をしている。
その様子を見て、考える前に笑顔になる。
そして、私の意志とは関係なく、話しかけていた。



「お、お客様・・・・・・ご、ご注文は以上で、よ、よろしいですか?」



今日のメニューの終了を告げる言葉。



「あ、ああ・・・・・・もう満腹・・・・・・」



よ・・・よかった・・・・・・浪馬クン・・・・・満足・・・できたんだ・・・・・・
よかった・・・・ホント・・・・に・・・・・・



「ご、ご利用ありがとうございました・・・・・・」



最後の挨拶を発すると、昂ぶりまくっていた気持ちが遠のいていく。


限界まで交わった幸福感。

今までと、ベクトルが全然違った快感。

私じゃない私からの開放感。


全部が身体の中を巡って、すうっ・・・・・・と、また視界が白くなっていく。



とさっ・・・・・・



そのまま浪馬クンの胸に倒れこむ。
汗の匂いが、私の鼻をくすぐる。なんか、嬉しい。
大きく上下する胸の音を、顔を埋めるようにして聞く。

すると、今度は視界が黒くなっていった。
浪馬クンが腕をまわしてくれたのかな。



浪馬クン・・・・・・・あったかい・・・・・・・な・・・・・・・・・・



それを最後に、私は夢の世界へと落ちていった。






――――――――――――――――――――――――――――――






「・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・・・」



あったかい光を感じて、目を開く。


「・・・・・・お、起きたか。おっす、タマ」


「・・・・おはよー・・・・・」


マヌケな返事をしながら声のほうを向くと、そこにあるのは大好きな人の顔。


「んー・・・・?」


寝起きで何がどうなってるのかよくわからない。
なんで?なんで浪馬クンが私の隣に?
夢でも見てるのかなあ。


「なんだよタマ、寝ぼけてんのか?」


そう言うと、大きな手が私の頭にぽんっと置かれた。
髪に沿って、ゆっくりと撫でてくれる。


・・・・・・あったかい・・・・・・・・


浪馬クンを見上げると、とっても優しい顔をしていた。
その表情に、ほう・・・・って感じで安らぎが身体に広がっていく。


あ、そっか。私、眠っちゃったのか・・・

ずっと、私の寝顔、見ててくれたのかな。
だとしたら、ちょっと恥ずかしいかも。
でも・・・・・・


目が覚めたとき、一番大好きな人がそばにいてくれる。
そのことがとっても嬉しくて。


・・・・・・・浪馬クン・・・・・・♪


甘えたくなって、少し丸まって、浪馬クンへぴったりとくっつくように身を寄せる。
ゴワっとした感触とともに、胸元の私のポジションへと・・・・・・



・・・・・・・ゴワ?



いつも寝てるときとも、浪馬クンと・・・した・・・後とも違う、変な感覚。
まだ半分寝ぼけながら、自分の周りを見てみる。
そこにあったのは、


「Tamaki」と書かれた、寝るときに着けるには不自然なプレート。

パジャマには全く適さない、ヒラヒラで露出の高くて、
汗でグッショリと濡れて、だけど部分部分はパリパリに固まっていて、
パジャマどころか全く保温できなくなっている、服。

そこから、片方だけ飛び出している・・・・・・胸。

スカートは着けているのに下着のない下半身。

汗とは明らかに違う液体が膝の近くまで伸びていて、
乾いたのが部屋の光にキラキラって反射して・・・・・・



「・・・・・・・・あ・・・・・あ・・・・・・・・・」



強制的に意識がハッキリしてくる。
起きる前に私たちのしていたことが、鮮明に思い出される。



わ・・・私・・・・・・店員さんになって・・・・・・
浪馬クンの上に・・・・・じ、自分からま・・・たがって・・・・・・
途中から・・・・わけわかんなくなっちゃって・・・・・
なのに、何喋ってたかはちゃんと覚えてて・・・・・

す、すごいぃ・・・・・・す、すごいです・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「・・・・・・?タマ?」


「あ、あわわ・・・・・・・」




も・・・・ものすごい・・・・・・感じ・・・・ちゃって・・・・・・
最後は・・・・・最後は・・・・・・・



「イックぅぅぅーーーっ!!!」



!!!



ぼおおおおおおおおおおっっ!!!



足先から頭のてっぺんまで、ラインが上昇するみたいに赤くなっていくのが
はっきりとわかった。


「!?た、タマっ!?」


「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」



がばあっ!



赤面ラインが上昇しきった顔を見られたくなくて、2人にかかっていた布団を奪い取る。
ごろん・・・というにはあまりにも大きな音をたてて、浪馬クンに背を向ける。
奪った布団を抱きしめて小さく丸くなる。
少しでも、浪馬クンから見えないように。


うあああ・・・・・うああああああ・・・・・・・!


声にならない叫び声をあげてパニック。



「おい、布団・・・・・じゃなくて、タマ!?どうした!?」


ぶんぶんぶんぶんっ!!


浪馬クンの問いかけに答えることも振り返ることもできず、
ひたすら首を横に振るしかできない私。
やあ・・・聞かないで・・・・・聞かないでえ・・・・・!


「た、タマ・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・」


「急にどうしちまったんだよ・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・」



何とかして言葉を出そうとしても、何一つ出てこない。
沈黙の空気が、部屋を支配する。
浪馬クンもやがて黙ってしまう。


お・・・怒ったの・・・・・・かな・・・・・?
でも・・・・でも・・・・・あんなこと・・・して・・・・・・
顔なんか・・・・見れないよう・・・・・!



時間がたっても、全然収まらなかった。
それどころか、一字一句まできっちりと思い出せてしまって、ますますパニック。


た・・・・たった1回しか・・・・してないのに・・・・・
なんで・・・・こんなに・・・・・・
・・・・・って「たった」1回って!!


余計にパニック。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・なあ、タマ」


ぴくんっ!


浪馬クンの呼びかけに、小動物のように反応する。

な・・・

声を出そうとしたけど、出てこない。


「あのよ・・・・・・」


ちょっと、真剣な声に聞こえた。
なんだろ・・・・・気になる・・・・・・



「もしかして・・・・・・よくなかったか?」



・・・・・・え?



「考えてたんだが・・・・・お前のその態度の理由が、思い浮かばねえからよ・・・・・・」


え?え?


「もし、そうだったんなら・・・もう・・・」



ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんっ!!



反射的に、ものすごい勢いで首を振る。
違う!違う!そうじゃ・・・・・ないの!


「!!?た、タマっ!!?」


ぶんぶんぶんぶん。


「ち・・・違うってことか?」


こくん。


「じゃあ・・・・・なんだよ?」


「・・・・・・・・」



首を動かすのもやめて、丸くなったまま黙り込む。
浪馬クンは何とかしたいみたいで、うんうん唸りながら考えている。
うう・・・・・考えなくていいよう・・・・・・


「悪くはなかったってことだろ・・・・・じゃあ・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・あ!」




ぴくんっ!



手をポンを打ち鳴らしながら、ひらめいたらしい浪馬クン。
その声に身体全体で反応する私。
背後から漂ってくるイヤな予感に、恐る恐る振り向いてみる・・・・・・



「・・・・・・クックックッ・・・・・・・」



してやったりと言わんばかりの、この上なくスケベな顔。
笑いをこらえているけど、しっかりと声が漏れている。


「!!!」


がばあっ!!


再びものすごい勢いで、背中を向ける。
どきどきどきどきどき!
心臓が、早鐘のように鳴り響く。


わ・・・わかっちゃったの?ホントに?
で、でもっ!ニブチンの浪馬クンだし!き、きっと的外れだよ!



「そーかそーか、そんなに恥ずかしいほどよかったのか。うむうむ」



完全にバレてるーっ!!



ぶんぶんぶんぶんぶんぶんっ!!



違うもん違うもん違うもん違うもん!!


自分をごまかすように、必死に首を振る。
だけど、


「そーかそーか。そりゃそーだよな。なんせ一回でアレだもんなあ」


ぶんぶんぶんぶんぶんぶんっ!!


うああああああ!!


「しかも最後思いっきり叫んでたよな。イッく」


「!!!」



ダメええええっ!!


思わず抱きしめていた布団を持ち上げ、


ばふんっ!


「ぐわあっ!」


思いっきり浪馬クンに投げつけていた。


もがく浪馬クンを尻目に、私は立ち上がる。
どうぢようもなく熱くなる顔と頭を覚まそうと、シャワールームに向かう。
そ、そうだよ。着替えなきゃ。
こんな乱れた服着てるから・・・・・・

下を見ると、片方出た胸が目に入る。
ピンクの派手な服よりも、目立っていた。
浪馬クンとの激しさを、象徴するように。


かあああああっ・・・・・・!


胸を両腕で隠すと、たった数歩の距離なのに、思いっきり駆けていった。




シャワーから上がって着替えても、浪馬クンの顔がまともに見られない。
ベッドに腰掛けている浪馬クン。
近くの座布団で、なぜか正座している私。
浪馬クンのそばに行きたいけれど、ベッドを見ると
さっきまでのことを思い出してしまって動けない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちらっ


そーっと浪馬クンに視線を向けると、必ずこっちを見ている。


「タマ」


さっ!


その穏やかな、でもエッチな顔に、目を逸らしてしまう。
すると、思い出したかのように「クックック・・・・」とこらえた笑い声。


あうう・・・絶対見透かされてるよ・・・・・
私の反応、楽しんでるよ・・・・・



そんな調子で目を合わせては逸らし、その度に顔を赤くして、
時間だけが過ぎる。
結局、帰らなきゃいけない時間になるまで、会話らしい会話も
できなかった。



家の前まで送ってもらう。
横に並んだだけで、どきっとする。
お互い服も着て、いつもの2人に戻っているはずなのに、
さっきまでのことが少しも消えてくれない。

浪馬クン、平気なのかな・・・・・・
あんなに・・・興奮してたのに・・・・・
うああ・・・また、顔熱くなっちゃう・・・・・


「・・・・・・」


私の様子を見て、浪馬クンが声をかけてくる。


「なあ、なんか、やけに照れてないか?」


!?


「べ、別に照れてなんかいないわよ」


もうバレバレなのに、つい反抗してしまう。


「そうか?」


「そうよ」



うん、照れてなんかいないんだからっ。
何とか元に戻ろうと、自己暗示をかけながらそう言う。


「ふーん。じゃあ、今日のお前の乱れっぷりとは関係ないわけだ」


そんな願いもむなしく、ニヤアっとエッチな笑みを浮かべながら
あっさりと私の暗示を解いてしまう。


「なっ!べ、別に私は乱れてなんか・・・・・・」


「あれで乱れてないっていうんだ」


ふーーーん?へーー?と明らかに先を言いたそうな顔。


「そ、そうよ」


顔を真っ赤にして、必死に否定する私だけど、


「・・・・・・ま、いいんだけどな」


軽く流される。
くうっ・・・・なんか悔しい・・・・・


「そ、それじゃあ今日はもう帰るから」


ダメだ、今日は絶対勝てる気がしないよ・・・・・
逃げるように立ち去ろうとする。


「なあタマ」


そこへ、浪馬クンの声がかかる。


「な、何よ」


まだいじめる気なの?ううう・・・・
そう思いながら振りむく。


でも、少し違っていた。
エッチなのは相変わらずだったけど、バカにしてる表情じゃなかった。
少し顔を赤くして、少しあせってるみたいに。


「またあれ着てやろうな」


「え?」


さっきまでとは違う真剣な声に、少しビックリする。


「お前があれ着てくれるとすげえ興奮するんだ。だからまた・・・・・・いいだろ?」


あ・・・・・・

浪馬クン・・・やっぱり気に入ったんだ・・・・・・
店員さんのエッチ、いいのかな・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・」


少し、複雑な気分が胸に広がっていく。

あの格好、好きなんだ・・・・・・そっか・・・・・・
あの服が・・・私じゃないみたいな・・・・私が・・・・・・


「な?」


浪馬クンは思い出したのか、少し興奮してるみたい。
念を押すみたいに、私に聞きなおした。

浪馬クン・・・・・・そんなに・・・・・・いいんだ・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・気が向いたときだけだよ」


ボソっと、小さな声で、答える。


「え?」


「お願いされて仕方なくなんだからね。
べ、別に喜んで着てるわけじゃないんだから」



あんなになっちゃった私をごまかすのと、
もう1つ芽生えた、ちょっとネガティブな気持ち。


「うんうん。分かってるって」


本当に嬉しそうに、満面の笑顔を見せる浪馬クン。
・・・・・そんなに・・・・・・・


「そ、それじゃあね」


その笑顔に吸い込まれそうになったのと、原因の今日のエッチ。
それらが重なって、また浪馬クンが見られなくなってしまった。
足早に家を立ち去る。
ちらっと後ろを見ると浪馬クンが見守っていてくれたけど、
手を振ったりできなかった。





「つ・・・・つかれたっ」


帰ってくるなり、ベッドに倒れこむ。
年の初めからいろんなことがありすぎて、もうフラフラ。


「今日・・・・・1回しかしてないのにな・・・・・・ってまた!」


枕で顔を覆いながら、自分のエッチさに真っ赤になる。
ううう・・・浪馬クンのせいだ!元旦からあんなコトするからっ!


「・・・・・・気持ち・・・・・・・よかった・・・・・な」


浪馬クンには言えなかったけど、正直な私の気持ち。
服が変わっただけで、あんなに興奮して。
最後なんて、叫んじゃって。


「・・・・・・・・・」


ハマるのも、わかる気がする。
浪馬クンもすごく興奮してたし。またお願いされちゃったし。

・・・・・・・・・・・・でも。


「少し・・・・・・・怖いな」


家の前での話で感じた、もう一つの気持ち。

あの時に出てきた。私じゃない私。
もちろんあれも私なんだけど、私が飲み込まれてしまう気がして。


「コスプレは・・・・その、控えめにしよう・・・・・うん」


でも、きっと、お願いされたら断れないんだろうな。
浪馬クン、ホントに気に入ってたみたいだし。
断って浪馬クンがヘコむとこ、見たくないしな。
やっぱり、気持ちよくなってほしいし・・・・・・


「浪馬クン・・・・・・」


浪馬クンのことを考えていたら、また逢いたくなってきた。
さっきまで一日中一緒にいて、重なっていたのに。

組んだ腕の感触。
抱きついたときの、胸のぬくもり。
重なっているときの、気持ちよさそうな顔。
私が目を覚ましたときの、あの穏やかな笑顔。
バカにしてるときの、エッチな顔。

思い出して、胸がキュンとなる。


あ・・・明日からまた、バイトなんだっけ・・・・・・


また、しばらく逢えない。
そう思ったら、寂しくなってきた。


「最後、あんまり話できなかったもんね・・・・・」


浪馬クンは、寂しくないかな。
私みたいに、一日中考えてるわけじゃないのかな。
少しは、考えてくれてたりするのかな・・・・


「まだ・・・起きてる・・・・・かな」


携帯に手を伸ばす。
少し、躊躇する。
さっきまで一緒だったのに、もう電話するのって・・・
ヘンな別れ方しちゃったし・・・・・・
だけど、



「・・・・・・・・ごめんね、わがままな幼なじみで」



勢いを付けて、携帯を開く。
発信も着信も、同じ名前で埋め尽くされた携帯。
恋人としての時間が、この中に詰まっている。



「でも、声、聞きたいの。許してね」



また、同じ発信履歴が増える。
思い出と、未来が、また、増える。



・・・・・・・・カチャッ



「あ・・・・あの・・・・・起きてた・・・・・?」





1月10日(月)


『・・・・・・じゃあ、そろそろ・・・だね。
あ、明日から3学期だからね、忘れちゃダメだよ?
寝坊したら、容赦なくおいてくからね?

・・・・・え?デートの時はいつも俺のほうが早い?
あ・・・・あれはっ!その・・・・いろいろあるのっ!イジワル!もう・・・

・・・・・うん。いつもの場所で待ち合わせね。一緒に・・・・行こうね。

・・・・・・あははっ。じゃ、明日・・・・・ね』



思い切りよく、電源を切る。
いつもなら、終わらせちゃうのが惜しくて、私からは切れない。
浪馬クンが切るのを待って、それでもしばらくしないと切れないんだけど。
今日は、多分同時ぐらいだと思う。
だって、


「よしっ。明日からまた学校だっ」


嬉しくて、つい声に出して言ってしまう。
ちょっと声大きかったかな。でも、自分の部屋だし、いいよね。

もうすぐ卒業だから、学園に通うのもあと少し。
そう思うと、行っておかなくちゃ、って気分になる。
でも、一番嬉しいのは別のこと。


「明日から・・・・また、浪馬クンに逢えるんだ♪」


2日から早速バイトに入っちゃった浪馬クン。
また朝から夜まで働いてたから、全然逢えなくて。
毎晩電話で話していたんだけど、あんまり長時間はできないから、
終わったあと、寂しい気持ちが心をよぎっちゃって。
話している間は、あんなに楽しいのに。

でも、3学期が始まれば、浪馬クンと毎日一緒にいられる。
一緒に登校して、一緒に帰って、お互い瞳を見ながら話して。
話し足りなければ、電話だって少し長めにできる。


「・・・・んふ〜〜」


考えると、口元が緩んでくる。
こんなに学園が始まるのが楽しみなのは、初めてかもしれない。


「冬休み、4回しか逢えなかったもんなあ・・・・・・」


冬休みの初日、クリスマスイブ、初詣。
どれもこれも、私の中では忘れられない思い出。
逢う度に、ホントにたくさんのものを、いっぱいいっぱいもらって。

それでも、朝「今日は、浪馬クンに逢えない」ということを思うと寂しくなって。
仕事場を見に行こうかと何度も思ったけど、少しでも迷惑になるのはイヤだったし。

だから、夜が来るのを、浪馬クンと電話ができるのをじーっと待ってたりしてた。
この電話も、初詣の後からようやくできるようになったんだよね。



「あ・・・・あの・・・・・明日も・・・・・電話していい?」


「へ?なんでそんなこと聞くんだ?」


「だって・・・バイト・・・忙しいでしょ?疲れてるかな・・・って・・・・・・」


「・・・・・ぷっ」


「な、何よぉ」


「なーに遠慮してやがる。エッチのときは遠慮なんかしねえくせに」


「なっ!?」


「どれ、もう1回お前の絶頂のセリフを・・・」


「言わなくていいっ!!言ったら次が命日!!」


「・・・スイマセン。正月早々命日はカンベンしてください」


「もう・・・・・・」


「・・・・・・・・・・遠慮なんかすんな」


「え?」


「オレとお前の間で、遠慮なんかすんな」


「・・・・・浪馬クン・・・・・・」


「終わった後なら、構わねえよ。出なかったら風呂だと思え」


「・・・・・・うんっ」


「オレも・・・・・話したいしな」


「あ・・・・・・」


「いや、その・・・気にすんな」


「・・・・・・へっへっへ〜」


「気にすんなって」


「はいはいは〜い♪」


「くそう・・・・・・」


「あははっ」


「・・・・・・ぬおっ!やべえ!そろそろ寝ないと遅刻しそうだ」


「あ・・・・もうこんなにたってたんだ・・・・・・」


「タマ」


「え?」


「じゃあ・・・・・『明日』な」


「・・・・うん、『明日』ね」



浪馬クン・・・・・・話したいって言ってくれた。
すごく、嬉しかったな・・・・・・


幸せな気分に溢れながら、1冊の本を取り出す。
私の、大切なもの。
てゆーか、大切なことが記してあるもの。


それは、私の日記。


といっても、そんなに長々と書いてあるわけじゃない。
その日行った場所とか、ちょっとした一言とか、そんな程度。
例えば、12月24日 緑地公園♪とか、そんな感じ。
それだけで、その日に何があったか、思い出せるから。
だって、


「見事なまでに、浪馬クンとのことしか書いてないね、これ」


遊園地も、水族館も、動物園も。
全部、全部、浪馬クンと行ったところ。
日記帳というより、「浪馬クン帳」と言った方が、しっくりくるくらい。
そのくらい、浪馬クンのことでいっぱいだった。
空白も、思い出で埋め尽くされているような気がしてくる。


そして、眺めていると、必ず顔が赤くなって、口元が緩んでくることがある。



「1、2、3・・・・・うん、6回。付け忘れてないね」



もう何回も確認してるのに、日記を開くたびに数えて、ニンマリ。

それは、日付の横についている、特別なマーク。
浪馬クンとデートは何回もしたけれど、ある日からつくようになった、
とっても特別なマーク。



浪馬クンの部屋に、女の子として訪れたしるし。
浪馬クンと・・・・・・・・重なった・・・・・・・しるし。



付けなくても忘れることはないんだけど、どうしても何かに残しておきたくて。
いろいろ考えた上に、こうすることに決めた。
ホントはもっとちゃんと書きたいんだけど、何かの拍子で見られたらやっぱり・・・・・
一人暮らしするようになったら、そうしようかな。
あ、だけど、一人暮らしはしないか。
できれば・・・浪馬クンと・・・・2人で・・・・・・きゃー☆



そういえば、昨日浪馬クンに「お前、もしかして数えてるのか?」って聞かれたなあ。
そりゃ、部屋に入るたびに今日で何回目って言ってれば、気になるか。



「好きな人に抱かれるっていうの、女の子にとって特別なことだからね。
ちゃんと覚えておかないと」




・・・・・・今考えると、恥ずかしいこと言ったなあ・・・・・・

でも、ホントにそう思ってるし。


できれば、浪馬クンにも覚えてて欲しいな・・・・・なんて。
そこまでは言えなかったけど。

覚えててくれると・・・・・嬉しいな。何となくでいいから。



マークを見ながら、昨日のことをまた思い出す。



「ふふん。ついにタマもオレの虜か」



帰りがけに言われた、あのセリフ。
最初は意味がわかんなくて聞き返したら、

「おねだりしたろ?もう入れてって」

なんて言い出すから思いっきり耳つねってやったっけ。
まったく場所を問わずエッチな話ばっかりするんだから!
つい「だいたい、虜なのはそっちなんじゃないの?」って返しちゃったよ。
で、つい・・・・・


「ふーっ」


耳に息を吹きかけて、


「さわさわさわっ」


背後から・・・・タッチして、


「モミ、モミ、モミっと」


服の上から、浪馬クンのポイントを愛撫して・・・・・


「あははっ。ほーら、アレだけしたのにもう大きくなった」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



場所を問わないのはどっちだ・・・・・・
外でこんなこと出来る度胸あるならお弁当くらい持っていこうよ私・・・・・・



虜・・・・・・か。



浪馬クンはエッチの意味で言ったんだろうし、
私もあんな返し方しちゃったから言えないけど。


うん。きっと私は、浪馬クンの虜。


べ、別にエッチな意味じゃないよっ。
何ていうか・・・・・・精神的に・・・・・・・?

浪馬クンがいない生活が、考えられない。
浪馬クンと一緒じゃない未来が、想像できない。

これって、虜・・・・・・って、言っていいよね?


正直に言ったら、浪馬クン、どんな反応するかな。
ビックリして、黙っちゃうかな。それとも、

「はっはは、やっぱりそうか。もうお前はオレのコレなしでは生きていけな(以下略」

・・・・・・・・・・絶対コッチだな・・・・・・
確かに・・・もう、浪馬クンのじゃないと・・・・・ってそうじゃないんだってば!


浪馬クンは・・・・・・どうなんだろ?
私の虜に・・・なってくれてるのかな?


浪馬クンが私のことを大事にしてくれてるのは、よくわかる。
でも、それはきっと、ずっと昔から。
私がこの気持ちに気づくずーっと前から。
「ただの」幼なじみだった、ずーっと昔から。


私には、自信がない。
昨日は「虜なのはそっちの方でした」って返したけど、
心は・・・・・・って聞かれたら、自信を持って返事なんてできない。


いつか、胸を張って「浪馬クンは私の虜です」って言える日、くるのかな。
私は・・・・・・もし、茶化しながらじゃなくて、ちゃんと聞いてくれたら
「うん」って、答えるよ。
「私は浪馬クンの虜です」って、言えるよ。


できれば、浪馬クンから「オレはタマの虜だ」って、言ってほしいな。
私、ヘンに恥ずかしがったりしちゃいそうだから。
ワガママ言っちゃうけど、浪馬クンから言ってくれれば、私も素直に・・・・・・



あははっ。こんなこと、マジメに話すことじゃないよねっ。



だけど、私が浪馬クンの虜なのは、本当だから。
私がそばにいたいのは、浪馬クンだけだから。


明日からまた、そばにいさせてね。
あさっても、その次の日も、卒業しても。
キミのそばに、ずっと、ずーっと。


私は、キミの、虜だから。





1月11日(火)

今年最初の制服。
別に去年と変わってるところなんてないんだけど、
これを着ると、また毎日一緒に歩けると思えて、嬉しい。

顔を見て、話せる。大好きな人に、逢える。
そう思うと、待ちきれない。
結局、いつもより早めに家を出る。


「あれ?」


それなのに、私の大好きな人は、そこにいた。
相変わらず、ボーッとしながら。


あははっ。新年も相変わらずだなあ浪馬クンは♪


顔をほころばせながら近づいていく。
浪馬クンは途中で気づいて、いつものようにそっけなく手を上げる。
そのしぐさが優しさの裏返しだって、私、知ってる。
自然と足が動いて、走り出してしまう。


「ふう・・・・・おはよ、浪馬クン」


「おっす、タマ。別に走ってこなくても、今日は遅刻じゃねえぞ」


「わかってるよ、そんなの。少しでも早く・・・・・・」



キミに、逢いたかったから。


「ん?」


「な、なんでもないっ。それより浪馬クンこそどうしたの?」


「何がだ?」


「私、いつもより早くきたんだよ?なのにもういるからさ」


「あ、ああ・・・・・・」


たまたま早く起きたとか?」


「いや、そういうわけじゃないんだが・・・なんつーか・・・」


「?」



言葉を濁して、浪馬クンは目を逸らしてしまう。


「浪馬クン?」


「う・・・・・・」



じっと見つめると、ぷいっと、顔ごと背けられた。


「むー。何よー、急にそっぽ向いてー」


「・・・・・・」



覗き込むみたいに顔を近づける。


「あ、バカ」


慌てたように、顔の方向を変える。
そして、ほっぺにうっすらと赤みがさしてきた。


あれ?これって・・・・・・もしかして・・・・・・・・テレてる?
でも、何で?ただ、どうして早く来てるのか聞いただけだよ?
なのに、顔赤くして・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・あ」


「な、何だよ」



なーんだ。


「・・・・・・・・あははっ」


「く・・・何がおかしい」



わかっちゃった・・・・わかっちゃったよ、浪馬クン。


「うんうん。そっかそっか」


きっと、私と同じ理由。


「おいおい、一人で納得すんな」


「あははっ。もういいよ。聞かなくてもわかっちゃったから」



通学路は寒かったけど、私の心に暖かいものが広がっていく。
浪馬クンの気持ちが私の中に流れてきて、身体全体に溶けていく。


「だから、何が・・・・・・」


「へっへっへ〜」


「ぐうっ・・・・勝ち誇った顔しやがって・・・・・・」


「まあまあ、せっかく早く来てくれたんだもん。行こっ」


「!?オレは別に!こ・・・・今年から早起きになっただけだ!」


「うんうん。そっかそっか♪」


「信じてねえ!お前全然信じてねえだろ!」


「じゃあ、3学期は絶対遅刻しないね♪」


「う・・・・・それは」


「あははっ。行こ」



そう言って、浪馬クンの横に並ぶ。
肩が、腕が、ピッタリとくっつく。


「お、おい。近すぎねえか?」


「・・・・・・ダメ?」


「・・・・・・・・・いや」


「ありがと」


「べ、別に礼を言われることじゃねえよ」


「・・・・・・うん」




足並みを揃えて、歩き出す。
小さいころは、こうやって2人で歩いて、一緒の学校に行ってた。
飽きることなく話をしながら、毎日。
そしてまた、同じように、浪馬クンの隣にいる。
当たり前のように思っていた昔。
それがまた戻ってきた今。
あの時よりも、もっと近くにいられるのが、とても嬉しい。



でも、2人でいられたのは、ほんの一瞬だった。



「おはよう、織屋君」



よく通ったきれいな声が、浪馬クンの名前を呼ぶ。



「よお、七瀬」



振り向いた先には、柔らかい笑みを浮かべた、高遠さんが・・・・・いた。



「珍しいわね。あなたがこんなに朝早くから登校なんて」


「はっはは。新年を機に生まれ変わったんだ」


「フフッ。いつまで続くかしらね」


「お前もか」



そこまで話すと、高遠さんが私のほうを振り向く。



「柴門さん」


「は、はい」



なぜか、びくっとしてしまう。



「新年あけましておめでとうございます」



深々と頭を下げて、高遠は新年の挨拶をしてくれる。
その振る舞いは、すごく優雅だった。
そして、ゆっくりと元に戻り、私を見る。



「あ・・・・・・・」



すごい・・・・・・きれい・・・・・・・



今まで見たことがない、高遠さんの顔。
元々顔立ちがすごく整っていて、美人だなあとは思っていた。

けど、今の高遠さんは、私が思っていたどの高遠さんとも、違う。


何ていうか・・・・・あったかい?やわらかい?
・・・・・・うまく言い表せない。
ただ、きれい・・・・・・・・と思った。



「・・・・・・柴門さん?」


「え?あっ。お、おめでとうございますっ」


「今年もよろしくね」


「う、うんっ」



うまく言葉が出てこなくて、少しどもってしまう。
高遠さんが、不思議そうな顔で私を見る。
その顔も、初めて見る顔。
今度は、かわいいな・・・・と思った。



「?なにボーっとしてんだタマ。行くぞ」


「あ、うん」




3人で歩き出す。



「・・・・・同好会、どうなるのかしらね」


「ああ、夕璃チャンが『先輩の亡き後は、わたしが同好会を守りますっ!』とか
言ってくれてるが・・・・・・」


「そんなこと言ってたの?吹奏楽部よね、白井さんって」


「そうなんだが・・・何だかマネージャー魂に目覚めちまったみたいでな。
同好会としても新入生を歓迎するらしい」


「まあ。結構行動的なのね」


「オレもビックリした。ヘッドギアとグローブのつけ方も聞かれたし。
『着けてた方が、話を聞いてくれそうじゃないですか。シュシュッ(シャドーのマネ)』
だってよ」


「・・・・・・人数だけは部に昇格できるくらい集まりそうね」


「だな」


「ウフフッ」


「・・・・・・・・・」




何となく、会話に入れない。



最近、みんな『副会長、変わった』って言ってるけど、
こうして見てると、ホントにそう思う。
さっきの笑顔だって、1学期には見たことなかったもん。
美人だけど、何となく近寄りにくそうで。

でも今は、そんな印象は全然受けない。
頼りがいがありそうなのは変わらないけど、何か、こう、トゲがなくなったみたいな。
だけど、前より大人っぽくなった感じがする。


「ウフフッ」


あ・・・・・また、笑った。


前まで、浪馬クンをあれだけ嫌っていたのに。
いったい何があったんだろう。


・・・・・・きっと、わかってくれたんだよね。
何回も、話す機会あったもんね。
それで浪馬クンが、悪いヤツじゃないってわかったんだよね。
だらしなくて、スケベで、執行部にも迷惑ばっかりかけて。
でも、とっても優しい・・・・・って。

ケンカなんて、しないにこしたことはないもんね。
いがみ合ってるよりは、仲良くしてたほうが・・・・・・



・・・・・・・・・・・ちくん。



「・・・・・・・え?」



急に、胸に痛みが走った。
針が軽く触れたみたいな、ほんのちょっとの衝撃。


な・・・・・・何、今の?


「タマ、お前はどう・・・・・ってどうした?そんな後ろで」


気づくと、浪馬クンの横にいるはずの私は、2人の後ろにいた。


「え?あ、ううん。なんでもないよっ」


慌てて駆け寄る。


「相変わらずヘンなヤツ」


「キミにだけは言われたくないよっ」


「このヤロ・・・・・・」


「・・・・・・・・」


「でな?七瀬」


「え?・・・・・うん」



また、浪馬クンが話し始める。
高遠さんのきれいな笑い声が、私の心に響く。



高遠さん・・・髪、きれいだな。
私と同じロングのストレートなのに、何もしなくても重く見えなくて。
モデルさんみたいだよね。
いいなあ・・・・・


・・・・・・・あれ?私、なんで高遠さんの髪見てるの?
あ、また、後ろへ下がってるんだ。
なんで、下がっちゃうんだろう。


・・・・・高遠さん、楽しそう・・・・・・
浪馬クンの突拍子もない話、ちゃんと理解してる。
頭もいいもんね。

理想の女の子かもしれないな、高遠さん。
頭よくて、運動もバッチリで、礼儀正しくて・・・・・・
同年代の私にも、あんなに丁寧に新年の挨拶するんだもん。
かといって、他人行儀じゃないし・・・・




・・・・・・・・・・・ちくん。




・・・・・・・・あれ?でも・・・・・・・・


浪馬クンには・・・・・新年の挨拶・・・・・してないよね?
ただ、おはよう・・・・・・って。


ただ、忘れただけ?
でも・・・・・高遠さんに限って・・・・・・


浪馬クンには・・・・必要ないってこと?
・・・・・・・・もう、挨拶・・・・・・・してる・・・・・・?



ちくん、ちくんっ。



今年になってから・・・・・・・逢ってる・・・・・・・ってこと・・・・・・?



・・・・・・・・・・・ちくん!



「・・・・・・・・っ!」



続く痛みに、胸を押さえてしまう。


だ・・・・・だとしても、それがどうしたのよ。
バイトの帰りとか、偶然出会っただけかもしれないじゃない。
高遠さんなら、どんなときだってちゃんと挨拶するよ、きっと。
休みでも早起きそうだから、バイト行く途中に会ってるかもしれないし。
そ、そうだよ、いくらだって可能性あるじゃない。あははっ。



ちくん・・・・・ちくん・・・・・ちくん・・・・・・・・



・・・・・胸の痛みが、止まらない。



なんで・・・・・・なんでこんなに、胸・・・痛いの・・・・・・?
ただ・・・・・2人を見てるだけじゃない・・・・・・



見てる・・・・・・から?



あんなに、楽しそうな高遠さんを。
高遠さんを見て笑ってる、浪馬クンを。
「七瀬」って笑いかける、浪馬クンを。


と・・・友達になれたんなら、それでいいじゃない。
浪馬クン、最初っから高遠さんのこと、七瀬って呼んでたじゃない。
ただでさえ、浪馬クンには女の子の友達多いみたいだし。
女の子に嫌われるような、魅力のない人じゃないもん。
友達と仲良く話すのは・・・・当たり前だよ、うん。



でも、今の、2人は。



肩と腕が、今にもくっつきそうなくらい近づいていて。
常に横顔が見えるくらい、お互いの視線が絡んでいて。
高遠さんの笑顔が、今日の、今までの中でも一番輝いて見えて。
2人を見てると。




・・・・・・・・・・すごく、似合ってる。




ちくんっ!!




「くううっ!」




さっきよりも、一段と強い痛み。
思わず、うずくまりそうになってしまう。
でも、なぜか浪馬クンにも高遠さんにも知られたくなかった。
知られたら、歩けなくなるような気がした。


「・・・・・タマ?」


「あ・・・・・ゴメン。
・・・・・・靴の中に、石が入っちゃってるみたいで」


「大丈夫?柴門さん」


「だ、大丈夫っ。ゴメンね、心配かけちゃって。あははっ」


「・・・・・・・・・」




悟られないように、胸を押さえるのをなんとかガマンして、
2人の後を追いかける。
時々話を振ってくる浪馬クンに話を合わせながら、
とにかく気づかれないように、学園への道のりを歩いていく。

いつもより、遠く感じた。
浪馬クンと2人のときは、すぐに着いちゃうのに。




「それじゃあ、私は執行部に寄っていくから」


「毎朝大変だな」


「そうでもないわよ。後任は決まってるし、流れを教えてるだけだから。
新年度は誰かさんみたいな問題児はいないだろうし」


「それは誰のことだ?」


「自覚はないのかしら?」


「・・・・・キツいぞ、七瀬・・・・・・」


「ウフフッ、じゃあ、また」


「ああ、またな」


「柴門さんも、また・・・ね」


「・・・・・・・うん」



少し私を見つめると、高遠さんは身を翻して廊下を歩いていった。
きれいだなあ・・・・・・


「よしっ。オレ達は階段を昇るとしますか」


「うん・・・・・・」


「どうした?元気ねーな。・・・ああ、階段昇るのがツライのか」


「・・・そんなんじゃないよ」


「わかるわかる。どーせ正月思いのままに食ってたんだろ?
そりゃ身体も重くなるってもんだぜ」


「なっ・・・・・・そんなに食べてないもん!
てゆーか女の子にそんなこと言うな!」


「はっはは」


「もう・・・・・」


「・・・・・足、痛いのか?」


「え?」


「石、入ったんだろ?急に歩くの遅くなったし、結構鋭かったりしたんじゃねーのか?」


「浪馬クン・・・・・・だ、大丈夫!ちょ、ちょっと気になっただけ!
取れた後も結構気になったりするでしょ!?アレって」


「・・・まあ、そうだな」


「そーそー!それだけそれだけ!ホラ、行くよ行くよ!」


「お、オイ!朝から走るな!」





嬉しかったのと、ホントに痛いのは足じゃないのを知られるのがイヤで、
つい走り出してしまう。
浪馬クンはだるそーに、それでも走って私についてきてくれる。
それだけで、さっきまでの気分があったかいものに包まれていくのがわかる。



教室に着いたときには、すっかり胸の痛みはなくなっていた。
なんだったのかは、考えないことにした。
考えたく、なかった。



こうして、学園生活最後の学期が、始まる。





1月12日(水)


「何してんのたまき?キョロキョロして」


「あ、えっと・・・浪馬クン見なかった?」



いつものように一緒に学食へ行こうと思ったら、浪馬クンがいない。
今までだって、いきなりいなくなることはあったのに。
おとといのことがあってから、浪馬クンを見てないと落ち着かない。

どこ行ったんだろ、浪馬クン・・・・・・


「織屋君なら、志藤先生に呼ばれてたよぉ」


「あ、そうなんだ・・・」




ほっ・・・・・・



なぜか、ほっとする。


「何〜?その安心したようなため息は」


「え?あ、ううん。何でもないよ」



どうしたんだろう。
また、何かやったのかな?


「ねーねー、たまには一緒に食べようよ〜。
最近付き合い悪くてつまんないよ〜」


「つまんないって・・・・・でも、最近一緒に食べてないね」


「当ったり前じゃん、いっつも織屋君と2人なんだもん。
あのラブラブな空気に入る度胸は私にはないよ〜」


「・・・・・・・わ、私パン買ってくる!」


「あ、逃げた」





「お、お待たせ」


「まだ顔赤いし・・・・・って、何でそんなにたくさん買ってきたの?」


「・・・・えっと、その・・・・・・」


「・・・・ああ、ゴメン。聞くだけ野暮でした。ダーリンの分ね、ダーリンの」


「だ・・・そんなんじゃ!」


「でも、織屋君の分でしょぉ?」


「・・・・・・・・うん・・・・・・まあ」


「甲斐甲斐しいのお」


「だからあ!」


「でも、織屋君学食でしょ?少しくらい遅くなっても行くんじゃないの?」


「ううん。めんどくさがりだから、遅くなったらパンで済ませちゃうと思う」


「お見通しですか・・・にやにや」


「な、何よっ。確かに・・・・・」



買ってきてくれなんて言われてないし、浪馬クンなら
きっと、「先に食ってろ」って言ってると思う。

だけど、一緒にいないと落ち着かない。
隣で何かしてあげたくて、仕方がない。


「一人で学食行っちゃっても、ちゃんとパンのお金はもらうもんっ」


「・・・・強制ですか」





「ふいーっ。まいったまいった」


「あ、浪馬クン・・・・・・」


「よっ」


「織屋君おつかれ〜」


「ったく志藤のヤツ、人をコキ使いやがって・・・・
ううう、腹減った。俺も早くメシ食いに・・・・・って、タマ?
何だそのパンの山は?」


「あ・・・えっと・・・・・・」


「ずいぶん食うなあ。太りたいのか?」


「んなわけないでしょっ!キミの分!キミの!」


「俺の?頼んだっけ?」


「うわー、織屋君ニブっ」


「・・・・もしかして、買っといてくれたのか?」


「・・・昼休み終わるまで怒られてて
『ちっ、腹が減ったぜ。お前はちゃんと食ったんだよな』
とか言いながら、私は悪くないのに恨めしげに見つめられる姿が見えたから」


「や、別に怒られてはいないんだが・・・ってそんなビジョン見たのかよ」


「じゃあいらない?」


「ありがたく頂戴します」


「よしっ」



山の中からわけたパンを、浪馬クンに差し出す。


「じゃ、これね」


「サンキュ」


「織屋君に選ばせないの?」


「うん。浪馬クンってこれ好きだから」


「ああ。これで問題ないぞ」


「・・・あーそーですか。ホント、完璧に把握してんだね、たまきは」


「そんな・・・・・・パン買うときはいつもこれだし、
昔からこんな感じのが好きだったなーとか思ったからっ」


「把握してんじゃん。あーあ、顔真っ赤にして」


「ま、真っ赤になんてなってないもん!」




その時、浪馬クンの声が響いた。




「ホント、よくできた幼なじみだぜ、お前は」




え・・・・・・?



「おさな・・・・なじみ?」



ちくん・・・・・・



いたっ・・・・・



また、あの痛み。



「タマ?どうした?」



「おさな・・・・・・なじみ・・・・・・・」




頭の中で、その言葉がぐるぐる回る。



そうだよ。私、浪馬クンの幼なじみじゃない。
昔から、ずーっと。



なのに、なんで浪馬クンに言われて、胸が痛くなるの?


幼なじみって、言われたのがイヤなの?


そんなわけないじゃない。
私は、浪馬クンの幼なじみで、本当によかったと思ってるよ。


なんだろう。この痛みは、なんだろう。
わかんない。わかんないよ、浪馬クン。





1月15日(土)


「あははっ。そっちこそ、忘れないでね」


自分でもハッキリわかる、さっきまでとは全然違う顔と声。



学園に行くときも、教室の中でも、バイトに行く前の部室でも、
いつものようにずっと一緒にいたのに、

明日の日曜日、誘ってくれなかった。



今までだって同じことはあって、夜遅くなってから電話があることだってあったのに、
今日はなぜか、少しでも早く誘ってほしくて。

何度も自分から誘おうとしたけど、できなくって。
普段どおりの軽口しか出てこなかった。


バイト中も留守電が入ってないか何度も確認して、
そのたびにため息ついて。
しまいにはオーナーに注意されちゃって。

終わりの時間になっても来てくれなかったから、余計にヘコんで。
確実に同じ時間に帰れるわけじゃないから約束してんだけど、
帰り道が、すごく寂しかった。
足取りが重かった。


家に着いて、まずお母さんに電話がなかったか聞いて。
「友達?なら携帯にかかってくるでしょ」とごもっともな意見をもらって更にヘコむ。
来ないから聞いたんだってば・・・


ベッドの上に座って、携帯を眺める。
電話しようかな・・・・・・いや、もう10分だけ待ってみよう。
何度も繰り返しながら、時間だけが過ぎていく。
どうして私から誘えないんだろう。



「明日・・・用事あるのかな・・・・・・」



そう思って、また胸が痛くなりだしたころだったから、



♪〜



「うわわっ!」



専用の着メロが鳴ったとき、すごい勢いで電話開いちゃった。
「も、もしもし」なんて言っちゃったよ。



「はっはは。何つっかえてんだよ」じゃないってば。
電話しようかどうか、携帯見ながら迷ってたんだからねっ。
つい「うるさいわね」って言っちゃったじゃない。
その後もうまく話せなくて何回もつっかえちゃうし。



「明日、予定空いてるか?」



って、当たり前じゃない。
予定なんか、入れるはずないじゃない。
その言葉が聞きたくて、ずっと待ってたんだからねっ。



だから、電源を切った後、



「ふうううっ・・・よかったあ・・・・・・」



思いっきり息を吐いてしまった。
でも、今までのため息とは全然違う、命が吹き込まれるような、そんな息。



明日も、浪馬クンに逢える。
そう思うと、嬉しくて、安心する。



きっと、浪馬クンが好きだと思い出させてくれたあの日より、
手を繋いだときより、
キスしたときより、
裸を見せ合って、エッチしたときより。


今の私、浪馬クンのことを好きになっている。



きっと、今日より明日のほうが。
明日より次の日のほうが。
浪馬クンと話すたびに、触れ合うたびに、浪馬クンのことを考えるたびに、
この気持ちは大きくなっていく。
止まらないし、止めたくもない。




明日も、きっと最後はエッチするんだろうな。
浪馬クン、エロの塊だからなあ。
もし、私が拒んだら、どうなっちゃうのかな。


・・・・・・拒むわけ、ないけど。


それなら明日こそ、私から浪馬クンにしてあげよう。
浪馬クンが気持ちよくなってくれることを、いっぱいしてあげよう。



どうしても何かしてあげたい。
浪馬クンに、何かしてあげたくてたまらない。



別にエッチじゃなくてもいいとは思うけど、
いちばん、二人の距離が近づくところで。
浪馬クンに近いところで、してあげたい。


自己満足なのかもしれない。
いっつも言われてるように、これも
「お節介だ」って、言われちゃうのかもしれない。

でも、私は浪馬クンが喜んでくれる顔が見たい。
浪馬クンの笑顔が見られると思うと、嬉しくて、もっともっと頑張れる。


私からして、浪馬クンが気持ちよくなってくれたら。
浪馬クンが、少しでも「よかった」って思ってくれたら。
そのまま私の幸せになる。


浪馬クンが気持ちよければ、私も気持ちいい。
そう思うのは、悪くないよね?




明日は、どんな楽しいことが起こるんだろう。
もしかして、今までで一番、楽しみかもしれない。
ううん、間違いなく、一番楽しみ。



だって、30分前の私より、5分前の私より。
今の私が一番、浪馬クンのことが好きだから。





1月16日(日)


ニヤニヤが止まらない。


デートが終わってからの帰り道。
家の中でも、お風呂でも。
吾郎に「姉ちゃん、気持ち悪い・・・」とか言われたけど、それすら気にならなかった。


ベッドに転がって、目を閉じる。



「んふ・・・・んふふふふふ・・・・・・・・・」



今日一日のことがくっきりと浮かんできて、またおかしな笑みが漏れてしまう。
そのくらい嬉しくて、楽しい一日だった。
思い浮かんでくるのは、当然浪馬クンのこと。


「浪馬クン・・・・・・♪」



今日は、浪馬クンのいろんな顔を見た。



浪馬クンの部屋に女の子として入って。
抱きしめてくれて、キスしてくれて。


浪馬クンが私の服に手をかけて、


「こうやって、私の服に手をかけたらーー」


「シャワーが先ってお前が言う」



いつもの幼なじみとしてとは違う通じ合い。


そして、


「まあ、それ以外に大したパターンがあるわけじゃないからな」


「え?」


「例えば、強引にベッドに押し倒すとか、無理やり服を剥ぎ取るとか・・・・・・
そういうのはイヤだろ?」


「まあ、ね」



「ならパターンは決まっちまうさ。オレはお前をイヤがらせたいんじゃなくて、
一緒に気持ちよくなりたいんだからな」




と、当たり前のように言ってくれたときの、飄々としながらも、真剣な顔。


もう。
どうして、そんなキザなこと、サラッと言えるのよ。
普段はタマの助だのなんだの、ロクなこと言わないくせに。


嬉しくなっちゃうじゃない。
また、浪馬クンのことが好きになっちゃうじゃない。
どこまで私の好感度を上げれば、気がすむのかな。



嬉しすぎて、切なくなっちゃう想いにガマンできなくなって、
シャワーから出た途端、浪馬クンに飛びかかっちゃった。

少しでも早く、浪馬クンに触れたったから。
浪馬クンに、気持ちいいって言って欲しかったから。




「ちゅぷっ、ちゅぱっ・・・・・・」



浪馬クンのを舐めているだけで、身体が熱くなってくる。
真ん中から、溢れてくる。


顔が見たくて、ちょっとだけ口を離す。
私の手から飛び出した先っぽと、浪馬クンの顔が、両方視界に入る。
顔を見ているのに手が勝手に動いてしまう。


先っぽは出したままで、根元までくにくにするたび、浪馬クンの顔が歪む。
でも、痛がってる顔じゃない。


先っぽがぴくんぴくんって動き出す。
口が、舌が、それを求めて、勝手に近づいていく。
口の中がいっぱいになって、鼓動が直に伝わってくる。
私が見つけたポイントに舌を這わせる。


ぴくんぴくんが、ますます大きくなる。
それに合わせて、浪馬クン自身の声も聞こえてくる。
一生懸命声を押し殺しているみたい。


もう、ガマンしなくたっていいのに。


そう思って、口を離して、浪馬クンを見つめる。
イジワルしたくなって、わかりきっていることを、ワザと口に出す。



「ふふ。もうこんなにピクピクしてきたよ」



私の声に、浪馬クンの顔がみるみる赤くなる。
目を逸らして、普段からは考えられない、小さな声で、



「く、くそ・・・・・・お前のフェラ、気持ちよすぎるぜ」




と言ったときの、悔しそうな、切なげな顔。
ううっ・・・何よ、その母性本能をくすぐる仕草は。
そんなの見せられたら、私、ますます・・・・・・



「フェラだけ?気持ちいいのは。手コキは嫌い?」



本に載っていたエッチな言葉が口をついて出てくる。
あんまり女の子は言わない言葉みたいで、ちょっとビックリしてたけど、



「い、いや。それも・・・・・・気持ちイイ・・・・・・」



私の言葉にツッコむ余裕がなく、目もまっすぐ見られずに、
それでも肯定してくれる。
普段とはあまりにも違う、浪馬クンの素直な姿。



うあああっ!浪馬クン・・・・・・可愛いっ♪



私よりもすっかり大きくなったのに。
普段、ヘリクツばっかり並べて、そんな感情はかけらも思わないのに。
浪馬クンを、可愛いと思った。


私の口の、舌の動きで、浪馬クンが気持ちよくなってくれている。
浪馬クンが、私の前で、素直になってくれている。
私まで、普段出さないような笑顔が出てきちゃう。



「ふふっ。それじゃあ、素直に答えられたご褒美に・・・・・・」



ご褒美なんて形だけの言葉を告げて、浪馬クンへの愛撫を再開する。
だって、私が、浪馬クンの声を聞きたいんだもん。
私しか知らない浪馬クンの素直な姿を、もっともっと見たいんだもん。


だから、勉強したこと、全部使っちゃうからね。
エッチって思われたって、浪馬クンが気持ちよくなってくれるなら、
私、がんばっちゃうからね。



喉の奥に当たる寸前まで口に含む。
苦しいより、嬉しいほうが何倍も上。
そのまま、舌の先から奥までを使って、全体を舐め上げる。
心臓よりもかなり早い鼓動が、舌に直接伝わってくる。
浪馬クンの興奮の具合が、私の身体にダイレクトに伝わってくる。
真ん中まで届いて、まったく触られてないはずのそこが、
とろとろになっていく。



浪馬クン・・・・・・私みたいに・・・溢れてる・・・・・・



先から溢れている液を、舌の奥を使って舐め取っていく。
こぼすなんて、したくない。浪馬クンのだもん。



「くあっ・・・・・・」



・・・・声、大きくなってきてる・・・・・・
ガマンしきれないんだ・・・・・・
可愛い・・・・かわいいよお・・・・・・

もっと、舐めたら・・・ガマンしないでくれるかな・・・・・・
この、とろとろの・・・・もっと、出してくれるかな・・・・・・



「レロレロレロ・・・・・ちゅうーーーっ」



浪馬クンを味わいたくて、少し力を入れて吸い上げる。
その瞬間、口の中の鼓動が、びくんっ!って跳ねる。
同時に、浪馬クンの慌てた声が私の耳に入る。



「す、吸うなっ」



口を止めて顔を見ると、声以上に慌てた表情。
そして視界の隅でもわかるくらい、びっくんびっくんしたもの。


あ・・・もしかして・・・・・・



「ふふ、どうして?」



わかってるくせに、浪馬クンから言って欲しくて、ワザととぼける。



「ど、どうしてって・・・・・・」



浪馬クン、テレてるよ。
いつもエッチなことばっか言ってんのに。
ああっ・・・・かわいい・・・・・・っ♪



「答えてくれるまでやめないから・・・・・・」




そう言うと、もう1度咥えこむ。。
音が響くように少し口に隙間を開けて、さっきより少し力を強くして。



「ちゅっ、ちゅっ、ちゅぅぅーーーっ」



その吸い方に、私がわかっててイジワルしてるのに気づいたみたいで、
浪馬クンは早々に根を上げた。



「くぅぅぅ・・・い、イッちまうって。そんなにされたら、すぐにイッちまうって」



必死に吸うのを止める様子が、また可愛い。



「イッちゃうの?」



「ああ」




そんな顔で、そんなこと言われて・・・・・・



「じゃあ、イクまで吸ってあげる」



止められるワケ、ないじゃないっ♪



「お、おいーー」



やめさせようと何か言いかけたけど、私の口に収まった瞬間、
呼吸と一緒に言葉も止まった。



「あむっ・・・・・・んー・・・・・・」



すぐに、口の中に、自分のではない液が絡んでくる。
とめどなく流れてくるのを感じると、私もますます溢れてくる。



「ちゅるっ・・・・・ちゅ、ちゅ、ちゅ・・・・・・」



浪馬クンの気持ちいい声が聞きたくて、何回も何回も吸う。
液を絡めるように吸い上げたり、キスみたいに軽く唇をつけたり離したり。
浪馬クンと私の液ですっかり濡れた唇から、その度に音が漏れる。
それがますます、私を昂ぶらせていく。
浪馬クンも、一緒。



「だ、ダメだって。ホントにーー」



浪馬クンの声が、どんどん弱くなっていく。
そんな・・・情けない声出して・・・・・・
かわいい・・・・かわいすぎるよお・・・・・・



「ちゅうぅぅぅ・・・・・・」



嬉しくなって、つい、結構な勢いで吸っちゃった。


すると、



「くあっ!」



え?



どぱあっ!と音が聞こえるくらいの勢いで、いきなり浪馬クンから
さっきまでとは比べ物にならない濃さと、量。



「きゃっ」



あんまりいきなりだったから、思わず口を離してしまう。
それでも、どっくん、どっくん・・・・・・って、
何度も白い液が発射される。



・・・・・イッちゃったんだ・・・・・・・



私は、少し呆けながら、その様子を見ていた。
口の中に発射された1回目を味わいながら。


こんなに、いっぱい・・・・・・


私の舌で、こんなにたくさん。
そう思うと、顔についてるのも、布団にこぼれたのも、
浪馬クンの身体にかかっちゃったのも。
嬉しくて、愛しくなってくる。



「ふう、ふぅ・・・・・・」



荒い息を吐きながら、私を見つめる。



「ふふ。いっぱい出たね」



見つめ返すと、また赤くなって、また素直に
自分の気持ちを出してくれる。



「く、くそぉ・・・・・・なんか悔しいぜ」



そう言って、真っ赤になって私を見るキミが、大好き。
私を気持ちよくする前にイッちゃったのが、悔しいのかな。



大丈夫だよ。


私、すっごく、気持ちいいから。


それに、


まだまだ、終わらないから。



「それじゃあ、お掃除しようかな」



大好きな人の、私を感じてベタベタになってくれたものに、
もう一度触れたくなって、舌を近づけていく。



「あむっ」



少し柔らかくなった浪馬クンを、もう一度咥え込む。
出口付近を中心に、飛び散った浪馬クンを、丁寧に舐め取っていく。


すっごい・・・・濃い・・・・・
私のフェラで、こんなに喜んでくれるなんて・・・・・
やだ・・・そう思ったら・・・・お・・・おいしくなってきちゃった・・・・・
・・・もっと・・・・・・・浪馬クンの・・・・・・



「ちゅっ、ちゅっ、ちゅぷ・・・ペロペロ・・・・・・」



舌が、どんどん浪馬クンの味を求めていく。
私の顔に飛び散った匂いが、欲求を大きくしていく。

しばらく舐めていると、ドロっとした感触がなくなってしまう。
でも、私は止まらない。
もっと、もっと。



「んー。まだ中に残ってるかな?」



浪馬クンの、全部、飲みたい。
出したものを全部、私に移し変えて欲しい。



「ちゅうぅぅぅ」



「く、くっ!」




浪馬クンの喘ぎ声とともに、少しだけ残ったのが出てくる。
こぼさないように、大切に舌で受け取る。


あはっ・・・浪馬クンの・・・・・・おいしい・・・・・・
もう1回・・・・吸っちゃお・・・・・・んんんっ!?


急速に口の中に感じる圧迫感。
それはどんどん膨らんできて、カチカチになっていく。
お掃除してたときには止んでいた鼓動がまた復活して、時を刻み始める。



・・・・・・また・・・・おっきく・・・・・・・



浪馬クンが私の口を占領するにつれて、私の中心から溢れるのも激しくなっていく。
ずっと浪馬クンの足の間に入り込んで、四つんばいの状態になっているから、
多分、膝まで垂れている。もう、膝についてるシーツを汚してるかもしれない。



「あははっ。また大きくなってきた」



それが気にならないくらい、目の前の浪馬クンの表情と、
口の中のものしか考えられなかった。



「あ、当たり前だっ!」



私で感じてくれるなら、何度だって。
浪馬クンが出してくれるなら、何度だって。



「じゃあ、もう1回しようか」



「へ?」



「今日はとことんイカせてあげるからね」




浪馬クンの呆けた顔がおかしくて、ついイジワルっぽく言ってしまう。



「お、おい。ちょっと待ーー」



「あむっ・・・・・・」




答えを聞く前に吸い付くと、浪馬クンの動きが止まる。


やめて欲しいフリしたって、ダメだよ。
浪馬クン、ホントにイヤなときは、即答するもん。
どんなときだって、そうだったもんね。
ずっと、昔から。
それに・・・・・・



「か、勘弁してくれぇ・・・・・・」



そんなに情けない声だしても、こっちはすっかり元気になってる。



「ふふっ。でも、ここはそんなこと言ってないよ」



喋りながら軽く擦ると、ご主人様の言葉とは全然違う動きをする。



「ほら、すっかりギンギンになってて。早く舐めてくれーって、言ってるみたい」



「そ、それは、そうかもしれないけど・・・・・・」



むー。まだ素直になってくれないんだ、浪馬クン。
こっちはこんなに素直なのにさ。
こんなに、私の舌に、素直に反応してくれてるのに・・・・・



「私のフェラ、好きでしょ?」



もっともっと気持ちよくなってくれるように、勉強だってしてるんだよ?
前にいいって言ってくれたから。
なのに、意地張っちゃうんだもん。
私だって、イジワルに聞いちゃうんだからねっ。



「あ、ああ」



意地を張り切れずに頷いてしまう浪馬クン。
あははっ。んもう、ホントかわいいなあ。



「じゃあ、いいじゃん・・・・・・あむっ」



素直な浪馬クンの声が聞きたい。
私に、いつもと違うキミを見せて欲しい。
どこが感じるのかを、もっともっと知りたい。
「恋人」の浪馬クンを、もっともっと知りたい。


そう思うと、私の動きが、大胆になっていく。
口の中を出入りするものの幅が、どんどん大きくなっていく。
喉の奥まで入っていって、抜けちゃう寸前まで出て行いく。



「んっ・・・・・ちゅるっ。あむっ・・・・・・ん、ん、ん、ん」



浪馬クンの先から溢れ出るのと、私の口から溢れ出る唾液。
両方が混じり合って、2人が共同で作った蜜が出来上がる。

少しでもこぼれるのがイヤで、咥えたまま飲み込んでいく。
それが口の中で刺激になるみたいで、喉が締まった感覚と一緒に
浪馬クンの全身がぴくって震える。

振動が私の真ん中に伝わってきて、また膝まで垂れていく。



「んっ、む、む、んむっ・・・・・・ちゅっ。レロレロ。
ろう?きもひいいでひょ?」




咥えたままで、歯を立てないようにして確認する。
何度も上あごに当たり、浪馬クンの刺激をさらに増大させる。



「あ、ああ・・・・・・」



何とか答えてくれようと、歯を食いしばっているみたいな声を出す。
上目遣いでチラっと見えたその表情が、私の心の奥まで刺激される。


かわいい、かわいい、かわいいっ・・・・・・!


何度もそう思っちゃって、離れられなくなる。


喉の奥まで飲み込んで、吸い上げながら、舌の根元で先を舐める。
自分が苦しいとか、そんなのは考えられなかった。



「くっ」



うめき声がこもってきて、呼吸がどんどん激しくなっていく。


浪馬クン・・・すごい、興奮してる・・・・・・
そんな声、聞かされたら・・・・・


ダメだ。

顔・・・・見ながら、したい・・・・・・・・!


どうしようもなくなって、唇をくっつけたまま、浪馬クンを抜き取る。
出てくる部分に、残らず2人の蜜が絡み付いて光っている。
すっごくいやらしくて、愛しい。


もっともっと、私を、染み込ませたい。


顔を見つめたままで、浪馬クンのくびれたところに、舌を這わせていく。


くびれて、ふくらんだところを舌全体を使って舐め上げる。
自分も興奮するように、言葉にして強く思いながら、
舌の先を、中心を、根元を、同じところへ擦るようにして舐める。

もしかしたら、実際に声に出ちゃって、浪馬クンにも聞こえてるかもしれない。
聞こえたっていい。
浪馬クンが興奮して、気持ちよくなってくれれば、いくらだって説明しちゃうよ。



「あ、あ、あ、あ・・・・・・」



え?
今の声・・・・・浪馬クン・・・なの?



同じポイントだけど、舌の這う場所が変わるたびに、浪馬クンが声を上げる。
まるで、女の子みたいな、私・・・・・みたいな、断続的な喘ぎ声。
初めて聞く浪馬クンのこんな声に、私の胸がきゅうんってなって、
真ん中から、エッチな蜜が勢いを増して流れてくるのがわかる。



私が・・・・浪馬クンにこんな声・・・出させてるんだ。
・・・・・・・・・・・・・あははっ・・・・・・うれしいよぉ・・・・・・



また、浪馬クンのことを一つ、知る。
好きな気持ちと、エッチな気持ちが、器を突き破って大きくなる。


舌が触れている浪馬クンの、脈の打ち方が変わってくる。
数え切れないくらいに早く、破けちゃいそうなくらいに強く。

でも、こうなったときの浪馬クンは、私、分かってる。


また・・・・私の舌で・・・・・・・イク・・・んだ・・・・・・・


這わせたまま、上目遣いで浪馬クンを見ると、さっきよりもずっと必死な顔。
出ちゃいそうなのをガマンしてる様子が、子供のときの浪馬クンとかぶる。



あははっ・・・そんな・・・・・ヤセガマンしちゃって・・・・・・
大きくなっても・・・そーゆーとこ・・・変わらないんだね。
ムリしなくてもいいのに・・・・・・ムキになって・・・・・・
そんなキミを、私がからかって。
キミはますますムキになって・・・・・・


昔と今の変わってないとこを知ってるのは、私だけ。
どんなに時が経っても、きっと、私だけ。


わかってるんだから。
また、出ちゃうんだよね?


でも、浪馬クンがガマンしたいなら、もうちょっと、焦らしてあげる。



硬い毛に埋もれるほど根元まで、舌を沈める。
チクチクするけど、それも気持ちよく感じる。
浪馬クンの、小さな喘ぎが聞こえる。

ここも、いいんだ。

また、浪馬クンを知って、嬉しくなる。
絡みついた毛をそのままに、舌をゆっくりと上に這わせていく。
ねっとりという音が聞こえてきちゃいそうなくらい、ゆっくり。


同じ部分なのに、熱さが違う。
舌が上にいくたび、どんどん熱を帯びていく。

感触が、ある部分を境にして変わっていく。
皮膚だったのが、皮膚じゃなくなっていく。
これは、なんて言ったらいいんだろう。
とっても不思議。
でも、キミのだから、とっても愛しい。



いろんなことを考えられるくらい長い時間をかけて、舐め上げる。
やがて、一番先っぽに、舌が届く。



「あむっ。ん、ちゅっ」



迷うことなく口に含む。離す。そして、キス。


唇を離すと、私と浪馬クンとの間に、透明の橋がかかる。
お互いの出した液が交じり合って、2人を繋ぐ。

キスのたびに、浪馬クンから出てくる新しい液が、私の唇と繋がりたがる。
私は当然それに応え、橋をより強く、鮮明にしていく。
部屋の明かりに感謝してキラキラ光ったそれは、
すごくエッチなはずなのに、綺麗に見えた。



「た、タマ・・・・・・」



浪馬クンが、いよいよせっぱつまった声を上げる。
これも、私が知ってる声。
恋人同士になってから知った、浪馬クンの本音の声。



「ん?なあに?またイッちゃいそう?」



動き、鼓動、膨らみかた。
さっきから出したくてたまんないのはわかってるんだから。



「あ、ああ・・・・・・」



とうとう耐え切れなくなった浪馬クンが、消え入りそうなくらいの声で頷く。
みんなの知らない浪馬クンを私が知ってると思うと、
背中がぞくっとなるくらい、嬉しい。



「ふふ。ちょっと早いんじゃない?そんなに私のお口、気持ちイイの?」



実際、時間なんかわかんない。
私がここにきてから、どれくらいたっているのか。
時計なんか見たくないから。
ずっと浪馬クンと、こうしていたいくらいなんだから。

ただ、みんなが知らない浪馬クンを、独り占めしたくて。
私だけに見せてくれる表情をずっと見ていたくて。
ワザとそんなことを言っちゃう。


浪馬クンは、きっと私の考えてることがわかってる。
わかってるから、なんとかごまかそうとして、



「そ、そうだよ。お前のフェラは最高だよ」



ワザと、ぶっきらぼうに言うんだ。


でも私だって、浪馬クンがしてほしいこと、わかってるんだから。



「ありがと。じゃ、最高に気持ちよくしてあげるね」



浪馬クンのマネをして、ぶっきらぼうに言ってみる。
その分の気持ちを口に込めて、また、お互いが望んでいるように近づける。



「あむ・・・・・・」



見るたびに大きく、強く、光っていく。
私が、こうしたんだ。
そう思うと、恥ずかしさよりも何よりも、嬉しさが先に出て止まんない。
想いが、口の中を更に熱く、敏感にさせていく。



「ぐっ・・・・・・」



あれ?ここも、感じるんだ。
今までも舐めていたはずの場所。
なのに、初めて触れたみたいに・・・・・・

そっか。
私、もっともっと、浪馬クンを求めちゃってるんだ。
もっと感じてくれるように、自然と舌が細かく動いてるんだ。
私が、私だけが、この場所を覚えておけるように。



「ちゅっ。はむっ・・・・・・ん、ん、ん、ん。ちゅっ、ちゅぱ。
レロレロレロ」




身体の底まで刻み込むように。
絶対に、忘れないように。
その初めての場所を、触れて、啜って、舐める。
浪馬クンの気持ちいい証拠が流れてきて、私の口の隙間を塞ぐ。



「あ、あ・・・・・・」



いっつも私が出しているような声を、浪馬クンがあげている。
私で感じてくれている。
もっともっと、私で気持ちよくなって。



「ちゅっ、ちゅるっ・・・・・・レロレロ・・・・・・ん、あむ。ん、ん、
ん、ん・・・・・・」




ちょっと苦しいけど、構わない。止まんない。
どんどん溢れ出るそれを吸い込むと、口の中に、浪馬クンが広がる。
私たち、繋がってるよ。
浪馬クンが、私に、染み込んでいくよ。



「い、いいぞ。そこのところを、もうちょっと・・・・・・」



そんなに、ここ、してほしいの?
他のとこに動いてほしくないくらい、ここがいいの?
ここが、今日の浪馬クンの、最高なの?

なら、してあげる。
浪馬クンがおかしくなっちゃうくらい、触ってあげる。
おっきなものの中の、ほんのちっちゃな部分。
私が、見つけた。



「ほう?」



ぴくんっ。



「あ、ああ・・・・・・」



とぷっ・・・・・と音がするくらい、先っぽから溢れ出してくる。
浪馬クンの匂いが、はっきりと伝わってくる。
イッたわけじゃないのに、口の中がいっぱいになっちゃう。
漏れちゃいそう。


・・・・・そんなの、ダメ。



「はむっ。ん、ん、ん、ん・・・・・・」



躊躇なく、唇を浪馬クンに密着させる。
一滴だってこぼさないように、喉が鳴りそうなくらいに飲み込んでいく。
浪馬クンの全部を、私の中に入れて欲しい。
舌も、頭も、本能のままに。
浪馬クンを欲しいと思うままに、もっと大胆に。



「くっ・・・・・・」



どくんっ、って、音がしそうなくらいに、私の中の先っぽが膨らむ。
あ・・・・とうとう・・・・・なんだ・・・・・・

さっきみたいにいきなりじゃないから、浪馬クンの変化がよくわかる。
きっと、すっごく、光ってる。
そう思ったら、私までイッちゃいそうなくらい、溢れてくる。
・・・・あ、膝・・・まで・・・・・・
私・・・・もっと・・・・・エッチになっちゃうよ・・・・・


私と同じように、どんどん溢れてくる浪馬クン。
や・・・・・私・・・・・・・っ

ほし・・・・・い・・・・・・


浪馬クンの・・・・・・・・のみたい・・・・・・っ



「ちゅっ、ちゅるっ・・・・・・ジュルルルルル」



出して。思いっきり、出して。
吸い付く力が強まっていく。
浪馬クンが、自分が高まるように、いやらしい音を響かせる。
これが、浪馬クンと私の、音だよ。



「うわっ、あ、あ、あ」



さっきの部分と、先っぽと。
びくんびくんって、私に合図してる。



「ん・・・・・・あむ、ちゅ、ちゅるっ。はむ、レロレロ・・・・・・」



いいから。ガマンしなくていいからっ。


「た、タマ・・・・・・」



「ん、なあに?」



出したいんだよね?
そう確信して、口の力を抜いて浪馬クンを見つめる。
そんな、寸前の浪馬クンは、



「お、オレ、もう・・・・・・」



きゅううううううん。



人前では絶対聞けない情けない声。絶対見せない泣きそうな顔。
うわあああああああっ。
心臓が縮み上がるほど嬉しい。
私が、浪馬クンをこんなにしちゃえるんだ。



「いいよ、イッて。好きなときに出していいよ。あむっ。
ん、ちゅるっ。ん、ん、ん、ん・・・・・・」









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