概要:
大学が基盤とする科学技術は、20世紀後半において著しく発展し、これが社会に果たした役割は目覚しいものがあります。半導体・コンピュータ・通信・メカトロニクス技術などの発展は、肉体的苦痛を伴う労働から人類を解放しました。さらに、テレパシーに相当するインターネットを世界的規模で構築し、時間と空間を超越することすら可能になりました。しかしながら、科学技術はマイナスの財産を我々に残しています。科学技術は資源浪費型の経済発展を加速し、その結果として環境問題を引き起こしてしまいました。地球環境問題の解決は、今後、科学技術が全力をあげて取り組み、人類の生存を確信するまで続く長い戦いとなるでしょう。さらに、来るべき長寿社会において、人間社会は健康・福祉などの問題と直面し、さらには、DNA、クローン、人工知能などと関連した倫理問題の解決もせまられるでしょう。

今後、人類は叡智をつくして環境問題を解決し、21世紀の半ばまでには、美しい地球の上で、人類が知的かつ健康な生活をおくれる社会を構築することになると思います。

略歴
東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了。東京大学生産技術研究所所長、CNRS(フランス科学技術庁)主任研究員、東京都立科学技術大学学長などを歴任。2004年より現職。東京大学名誉教授。工学博士。