そ よ 風 の 小 径

第11回  巡る季節に  (2009年 3月 1日)

  3月弥生、桜の季節が巡ってきました。

  日々花の絵を描いている私の一年のスタートラインは、桜の季節にあるかもしれません。

  新年を迎えてしばらくの間は、温暖な東海地方でもさすがに自然の中で咲く花は、限られています。街路樹の椿や

 山茶花が、冬の彩りの中で僅かに赤味を添えて、静に佇んでいます。

  木枯らしの吹き荒ぶ街をコートの衿を立てて足早に歩きながら、気になっていることがあります。それは枯れ枝の

 ような桜の木の先端が、ほんのりと桜色を帯びて、次の季節が動き出したことが知れる瞬間です。 

  桜は咲き出してから描く準備をしていたのでは、遅いの

 です。また、準備が早すぎても間延びしてしまって、うまく

 ゆきません。要は気持ちを一番美しく咲くその時に定めて

 心も体も満開の桜に埋もれてゆく。そんなことをイメージし

 ながら、描くと良い絵が描けるように感じています。

 もっとも桜に限らず季節の花を描く時は、いつも花の一番

 美しいときを選んで描くようにこころがけています。

  季節ごとに開花する花たちの生命には、限りがあります。そしてそれを愛し、楽しむ私達にも・・・・・・。

  今年見た桜を来年の春また見られるかどうか分からない。季節は巡ってくるでしょうが、その場に自分が居合わせ

 ているか分からないから、真摯に受け取るのです。

  間もなく動き出すであろう桜前線を心待ちにしています。果たして今年はどんな思いで、満開の桜を見つめることに

 なるのでしょうか。
  

そよ風の小径へ
新エッセイの部屋一覧へ
トップページへ戻る