そ よ 風 の 小 径
第8回 大根の話 (2009年 1月17日)
新年1月も半ばを過ぎ、一年で一番寒い時期を迎えています。 こんな寒い日は家族で囲む鍋が良い、と思いスーパーに出かけました。今朝の新聞で紹介されて いた{ぶりとセリのみぞれ鍋}という料理を作るつもりでメモ用紙にも、そのレシピが書き込んであり ます。 我家の場合は、4人家族だからブリは4切れで良いとしても、レシピ通りにすると大根一本が必要 ということになります。 大根をすりおろしてざるにあげ、汁気を切ったものをだし汁に入れて材料と共にぐつぐつ煮ると、
{みぞれ鍋}になるのですが、大根一本をそのまま全部 すりおろしたら一体どれだけの量になるんだろう、と想 像するだけで楽しくなります。 「でも・・・」 疲れるだろうなあ、大きな大根を両手で抱えてすりお ろすのは。そうだ!子供達に任せちゃおう。代わり番こ にやれば大丈夫。 そんなことを考えながらスーパーの入り口に山と積ま れた大根の品定めをしていると、こんな立ち話が聞こえ てきました。
「大根おろしにじゃこをかけて食べると旨いんだぜ、醤油をちょっとたらしてね。」 「俺は秋刀魚の焼いたのに大根おろしが欠かせないんだ。」 ふと声のする方を見ると、部活を終えて帰宅途中かと思われる中学生が二人、人待ち顔で話をし ているのでした。 大根は薬膳の考えから、中国では白菜、豆腐と共に重宝されてきたそうです。この三つは本来は 体を冷やす働きのある食材ですが、鍋に入れれば胃腸の働きを促してバランスを良くするというの で、この時期年末年始にご馳走を食べ過ぎて胃腸が疲れ気味の人のために効果があるのだそう です。 お年頃の男子中学生が大根の話で盛り上がっている姿がほほえましくて、「うちは今夜はぶりと セリのみぞれ鍋なのよ。この大根をたっぷり使ってね。」と話しかけたくなってしましました。ついで に今朝の新聞で仕入れたばかりの大根に関するうんちくもひとくさり。 勿論それは想像の中だけにして、我家の今晩のお惣菜を買うためにその場を後にしたのでした。 彼らの食卓もまた、お母さんたちの温かいアイデアで充たされることでしょう。