早瀬 雫






☆2日目
    「そうだな…目覚ましにもなるし、悪くないかな」
    由織さんの提案に、僕はそう答えた

    そうだ…あの場所にも行ってみようか。
    僕はそう思い立ち、少し寄り道することにした。

    「じゃ、じゃあ緑だ」
    しばらく考えた末に、僕はそう解答した。

    「へえ。そういう水着でもオッケーなんだね」
    治美ちゃんの格好を見て、僕は意外にそう言った。

    「ちなつちゃんも、日焼け止めを塗っておいた方が、
    いいんじゃないかな」

    …さてお役ご免になったことだし、風呂に入ろう。
    僕は炊事場に背を向け、寮の中に戻った。

☆3日目
    「そう言えば、『花には、育てた人の人柄が現れる』って聞いたことがあるな」
    僕はそんな話を切り出すて、言い繕った。

    「今日は特別に暑くなりそうだし、部屋でゴロゴロする予定でいるんだ」

    「あの、ところでそのボウルは…?」
    管理人さんの手元に目を止めて、僕は訊ねた。

    しかしまあ、所詮は子供のすることだ。
    そう思い、今回はお咎めなしで見逃すことにした。

☆4日目
    …またあの子は、あの場所にいるのかな。
    僕はそれを確かめに、裏手の林のほうへ足を向けた。

    「雫ちゃん!」
    その背中に向かって声をかけ、呼び止めた。

    「ごめん、実はちょっと行きたいところがあるんだ」
    僕はそう言って由織さんからのお誘いを断った。

    「なら、僕と話しているときはどうだい?」
    僕はそう訊ね掛けてみた。

    「……」
    何気なく、手元にあった松ぼっくりを放り投げた。

    今からサッと入れば、間に合うな…。
    僕は洗面器を小脇に抱えて、部屋を後にした。

    いったい何をしているんだろうか?
    興味を持った僕は、スリッパのままで下に降りると、雫ちゃんの背中に向かって話し掛けた。

    僕はふと思い浮かんだことを、口にした。
    「いや、それだけの理由だけじゃないと思うよ」

☆5日目
    きっと雫ちゃんは、あの場所にいるに違いない。
    そんな予感がした僕は、寮の表へと出た。

    「でも、お兄さんとの約束はどうするんだい?」
    そんな雫ちゃんを、僕は言い咎めた。

    いや…雫ちゃんは、きっと来てくれるはずだ。
    僕はそう信じ、このまま砂浜へ向かうことにした。