杉原家住宅
Sugihara


石川県指定有形文化財 (昭和59年1月31日指定)
旧所在地・石川県石川郡白峰村桑島
建築年代/元治元年(1864)
用途区分/商家・庄屋・組頭
移築年月/昭和53年
「古くから信仰の山として人々から崇められた白山は、その余りにも深い懐ゆえに自らの袂に特異な社会を形成した。」
山間僻地と形容しても憚ることのないほどに深く厳しい地理にある白峰村一帯のその実際を知らぬ者は、恐らくこの巨大な民家の存在を訝しく思うに違いない。藩政期において白峰村民は雪の頃になると加賀・越前の平野部に出て物乞いをせざるを得ない程に困窮し、「白山乞食」とまで蔑称された土地柄である。それゆえ誰しもがそこにある家々の貧弱な姿を想像するに違いないはずである。しかしそのようなステレオタイプ的な既成観念をあっさりと覆す程に、当家の威容は山間部にあって際立つものである。白山麓天領18ケ村の庄屋・組頭を務めたと伝えられる当家は嶋村(桑島)において酒造業や養蚕、米・衣類等の生活用品を幅広く扱う商家でもあり、地元では「おやっさま」と称される上層階級に属した。住宅は元治元年(1864)に越前永平寺の宮大工によって建てられ、延床面積が335坪にも及ぶ3階建ての巨大な建物である。恐らく民家建築の分野で1棟の建物としては日本最大級のものではないだろうか。「一体何故このような民家がここにあるのか?」-その不思議に思いを馳せることが、民家探訪の最大の楽しさであると私は常々考えているが、当家の前に立つとその感を一層強く持つことである。
 



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