尾田家住宅
Bita



国指定重要有形民俗文化財 (昭和53年8月5日指定)
旧所在地・石川県石川郡白峰村大道谷五十谷
建築年代/
用途区分/出作農家
移築年月/昭和52年

その昔、白峰集落から越前勝山へ抜けるには谷峠を越えていかねばならなかった。大道谷は、その谷峠手前の集落で五十谷は更に北西方向に伸びる谷筋の字名である。尾田と書いて「ビタ」と読む当家の住宅は、五十谷の標高820mの山中に所在していた永久出作り小屋で親子2代に亘って建てられたとのことである。永久出作りとは1年中そこに居住する薙畑農耕の一形態で、5月~11月の農耕期のみをそこで過ごす季節出作りとは対極にある言葉であるが、深い山奥にあって冬の間は完全に雪に閉ざされてしまう厳しい自然環境下の生活を甘受せざるを得なかった現実に胸が痛む思いである。出作り小屋との呼称から簡単で粗末な建物が想起されるが、技術的に素朴なところはあるにしても本格的な住居建築である。当住宅の最大の特徴は、片側の屋根を地面まで葺き下ろした「ナバイ小屋」と呼ばれる根葺形式で、風雪に対して強く、原初的な形態を留めていると云われている。恐らく軒下に風が孕むことで屋根が吹き飛ばされることを避ける工夫だと考えられる。また内部においては、現在板張りの床も当初は茅を敷き、筵を置いた土間であったとのことである。寒さを凌ぐには床張りよりも土間の方が勝っていることから、あくまで実用に徹していたためであろう。
 


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