藤田家住宅
Fujita



 
国指定重要文化財
旧所在地・宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町三ケ所
建築年代/天明7年(1787)
用途区分/山村農家
移築建物/主屋 (昭和53年移築)
宮崎市の中心部に県立博物館の付属施設として移築・保存されている民家である。外観的には小振りながら均整のとれた美しい姿をしているが、軒が深く外周に軒柱が一間等間隔に密に並ぶ姿から一見して古い民家であることが想像できる。しかし建築時期は移築解体時に発見された間仕切柱の刻銘によって1787年と推定されており、その古びた姿から想像されるほど古いものではない。中央から遠く離れた九州の中でも鄙びた山間部に所在していた民家ゆえに後進的な造作が残されたと解釈するのが妥当なところであろうか。(当家は県内最古の民家ではある)
ところで当家は建築年代の事以外にも非常に面白い要素がある。それは驚くべきことに建物内部の空間に土間が存在しないことである。近世の民家において「土間しかない」という家はあったとしても、「土間がない」という家は聞いたことがない。確かに山間部の民家で土間が極端に狭い例は多々見受けられるところではあるが、全く無いという例は極めて珍しいのではないだろうか。内部は板床の「オモテ」「ヘンヤ」の2部屋から構成されるのみである。想像を廻らせると別棟で土間のある炊事棟が建っていたことも考えられるが、移築前の段階では確認できなかったようである。鄙びた山間部に所在しただけに、こうした姿の民家があったとしてもおかしくないと思わせる背景が混迷の度合いを深めるのである。





 

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