緒方家住宅
Ogata



 
福岡県指定文化財 (平成31年3月19日指定)
福岡県大川市小保181
建築年代/江戸末期(19世紀中頃/天保年間)
用途区分/医家
指定範囲/主屋
公開状況/非公開

筑後川河口に発達した家具の町・大川市の中心集落である小保町に所在する医家住宅である。隣接する榎津町とともに宿場町として栄えた小保町は、藩境の町でもあり、榎津が久留米藩領であったのに対し、小保は柳河藩領に属した。小保町の中心部に所在する当住宅は、町家建築が建ち並ぶ中にあって、大庄屋・本陣職を務めた吉原家住宅とともに屋敷型の家構えを採っており、現在は失われているものの、昭和の初め頃までは通りに面して表門と中門を構えていたという。当家は源平時代に活躍した緒方三郎惟栄を始祖とし、中世には豊後国主であった大友家に仕え、関ケ原合戦後は豊後竹田藩に、後に柳河藩に移り、普請役や藩医を務めたという。天保年間に当主・元郁により建てられたとされる主屋は正面に千鳥破風の付いた本瓦葺の式台を構える格式の高い建前で、内部は六間取の床上部に背後に狭い土間と台所を配置する平面とする。式台を上がると玄関の間があり、その下手に調合の間があり、これが診察室となる。患者は式台脇に設えられた縁側で待ち、ここを待合と称した。玄関の間の上手に次の間があり、その奥を座敷とするが、座敷は床、棚、書院を整えた本格的な造作となっている。藩医の住居が城下から外れた郊外の宿場町に在ることに当初は意外なことのように思えたが、どうやら常に殿中に詰めていた訳ではなく、町医者として活躍するような事例も多かったようである。



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