中村家住宅
Nakamura



 
添田町指定文化財 (平成23年6月10日指定)
福岡県田川郡添田町添田
建築年代/大正初期
用途区分/商家(醤油醸造販売)
指定範囲/主屋・醸造蔵2棟
公開状況/非公開

小倉と日田を結ぶ日田道筋の要衝であり、英彦山参詣の拠点として発展を遂げた添田町の中心部に所在する醤油醸造業を営んでいた商家建築である。添田の町場は南北に日田道が縦貫し、南から北に向けて緩やかな傾斜地となっており、当住宅は南側の上町に所在する。屋号を新屋(あたらしや)と称し、当初は酒造業を営んでいたとのことであるが、明治44年に醤油醸造に転向、「ニダイマス」の銘柄で平成10年まで営業を続けていた。主屋は明治末年の火災後の大正初期に再建されたもので、白漆喰塗の土蔵造、妻入二階建の建物で、全体に建ちの高い造作は大正期の町家らしい風情である。伝統的な近代和風建築として特に際立つ特徴を見せる建物ではないが、細見すると屋根を支える持ち送り部には蔦と渦巻模様の洋風意匠の漆喰細工が施されるなど時代を反映した様子も垣間見れる。


※旧所有者から土地・建物の寄贈を受けた添田町であるが、その活用方法については策定できていない。急激な過疎化が進んでおり、当住宅前の通りも本町とは名ばかりの人影も疎らな閑散とした様子であることから、そもそも観光客どころか住民さえも如何にしてこの地区に集めるのか根本的な課題があるためである。主屋の背後を流れる不動川の対岸に旧醸造蔵が建ち、指定対象になっているものの、屋根が抜け落ち、崩壊は時間の問題の様相である。活用は難しくても、屋内に風を通すなど保護に向けた取り組みだけでも最低期待したい。それだけであれば費用も嵩むまい。


 

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