上妻家住宅
Kouzuma



 
登録有形文化財 (平成19年12月5日登録)
福岡県福津市津屋崎4-14-20
建築年代明治34年(1901)
用途区分/商家(紺屋)
登録範囲/主屋・井戸屋形
公開状況/公開 【津屋崎千軒民俗館藍の家】

福岡市の東方に玄海湾に面することから嘗て海上交易の拠点となり、併せて塩田開発により栄えた町がある。往時には人家の多さから津屋崎千軒と称され、宗像郡内一の町場として栄えた津屋崎湊である。しかし明治23年に赤間と博多を結ぶ九州鉄道が開通して以降、物資の輸送手段が船舶から鉄道に主役の座が移り、追い打ちをかけるように明治44年頃に塩田が廃止されると町場は急速に廃れ、嘗ての繁栄を知る人は令和の世に至っては皆無に等しくなりつつある。只、それでも町場には僅かに残る酒造屋敷や土蔵造の町家に辛うじて嘗ての繁栄の縁(よすが)を見出すことができる。当住宅は、その津屋崎町の中心部に残る紺屋屋敷である。紺屋とは藍染を主とする染物業のことで、当時の衣料の大半が藍染であったことから、ある程度の規模の町場には必ず一軒は存在していた程にメジャーな存在であったが、大正期に化学染料が国内で急速に普及すると、まるでそれが幻であったかのように姿を消すこととなった。当家の創業は約200年程前の江戸後期で、現在残る主屋は5代目・善兵衛が建てたとされる。桟瓦葺の切妻屋根総二階建の土蔵造で、桁行6間の中規模な建前である。仔細を見ると2階の両脇部分だけでなく、1階両脇部分にも袖壁を設け、火事に対する警戒心の強さが窺える造作である。建物は平成6年に町へ寄贈されて以降、現在は津屋崎千軒民俗館「藍の家」の名称で藍染体験などができる観光施設として活用されている。


 

一覧のページに戻る