許斐家住宅
Konomi



 
八女市指定文化財 (平成29年指定)
福岡県八女市本町126
建築年代/江戸末期
用途区分/商家(製茶問屋)
指定範囲/主屋2棟・離れ座敷・土蔵3棟・製茶作業場 計7棟
公開状況/店舗として営業中
八女は云わずと知れた日本茶の産地で、特に全国品評会でも入賞を重ねるような高級煎茶が有名である。玉露の部類になると、庶民にはなかなか手は出せないが、普通の煎茶でも十分に甘露である。当住宅は八女福島の重伝建地区内に所在する商家建築で、製茶工場を自ら抱える製茶問屋を生業としておられる。創業は周辺の山間部で産する茸や楮、茶、木材などの山産物を扱う問屋であった同町内の本家・矢部屋から茶専門問屋として分家した慶応元年のことであるが、明治維新後に長崎港を通じて日本茶の海外輸出が盛んになると、地の利を生かして当地方では急速に生産量が拡大したとのことである。町内でも本町通に面する町家は入母屋屋根の妻入形式で木部を白漆喰で塗り籠めた大壁仕上げの居蔵造を典型としているが、当住宅の場合は平入形式で木部の露出も多く、相対的に地味な印象の外観となっている。ただ、これはあくまでも個人的な見解であるが、一般に茶商の建物には真壁造の建物が多いように感じられる。こうした建前が茶商という生業と関係しているのであれば、何故なのか知りたいところである。さて住宅を目の当たりにした際に最も気になるのが主屋正面左脇に黒板の箱状の目隠しのようなものが設えられている点である。当家が開設されておられるHPを覗くと、茶葉の品質を確認する為に日光を遮り、同一条件下で作業できるようにするための日除けの工夫らしく、「拝見場」と称するようである。戦前に撤去されていたものを平成24年に昭和初期の古写真から復原したとのことである。非常に珍しい設えで、他では見たこともない代物である。予約制ではあるが、屋内でお菓子付きで茶を喫することもできるので、建物の風情と共に味わうと良い思い出になることであろう。





 

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