伊藤常足旧宅
Itou Tsunetari



 
福岡県指定史跡 (平成7年1月9日指定)
福岡県鞍手郡鞍手町古門1256
建築年代/天明6年(1786)
用途区分/宮司・国学者
残存建物/主屋
公開状況/公開
伊藤常足は江戸期の国学者である。安政3年(1774)に古物神社の神主の家に生まれ、26歳で国学者・青柳種信に師事、31歳から37年の歳月をかけて九州全域の地誌「太宰管内志」全82巻を編纂した人物である。当住宅は彼が13歳の時に建てられ、85歳で天寿を全うするまでの生涯を過ごした住拠である。住宅が所在する鞍手町は筑豊地方北部に位置し、町の南北を遠賀川が縦貫し、水利に恵まれた大穀倉地帯で、明治期には産炭に恵まれたため石炭産業が勃興したこともあったが、廃坑後の現在は純然たる農村地帯に逆戻りしている。古門神社に隣接して屋敷を構える伊藤家は神主の家柄ではあったが、生計のため農業も営んでいたため、むしろ住宅は一般的な農家の構えを採っており、戸口を入ると広い通り土間があり、床上部は田の字型の四間取平面となっている。ただ太宰管内志の資料集である「群書抄録」に描かれる旧宅間取図には主屋の上手奥より渡り廊下で神祇殿と称する建物と結ばれている様が描かれていることから、嘗ては神官住居としての体裁も整えられていたようである。いずれにせよ、今に残る姿は実に質素な建前で、度々に亘って藩主に謁見する名誉を受けながらも、建物には飾るところが一切見られない。彼の気骨な人柄が想像されるようである。


 

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