猪熊家住宅
Inokuma



 
香川県指定文化財
香川県大川郡白鳥町松原166

東讃岐地方随一の神社として著名な白鳥神社は、八幡大菩薩を篤く信仰した高松藩主初代・松平頼重公が寛文年間に再興した名社であり、その後の歴代藩主たちからも手厚く遇されたことは、境内に林立する藩主寄進の石燈籠からも容易に推察されるところである。この白鳥神社再興にあたって頼重公が京都から招聘したのが、当住宅の祖先・猪熊千倉であった。猪熊家は平安時代には朝廷に神祇官として仕え、徒然草の作者として有名な兼好法師を輩出するなどした学者の家系で、隣接する白鳥神社の宮司として来讃するに際し、200石の御朱印地を幕府から賜るとともに、3000坪の敷地に40室もの部屋を備えた当住宅を整備したのである。
明治年間に白鳥神社の神官職を他家に譲り、住宅も大書院・奥座敷等を取毀し、現在では主屋と大門、長屋門が残されるのみとなったが、その規模は、それでも尚、一般の民家建築を遥かに凌駕するものである。以前には内部も公開されていたため、2回ほど内部を拝見したことがあったが、長大な茅葺屋根(現在はトタン屋根)に大きな千鳥破風付の式台玄関を正面に構え、武家住宅のように木割が細く、杉板戸を多用する格式の高い造作であったように記憶している。
現在(2010年)では、残念ながら内部は公開されておらず屋敷はひっそりとしていたが、将来再び拝見できる機会が来ることを待ち望みたい。(H22.5.9記)


 
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