旧木村酒造場
Kimura



 
登録有形文化財 (平成27年11月17日登録)
兵庫県朝来市和田山町竹田字上町西側303
建築年代/明治35年(1902)
用途区分/商家(酒醸造業)
登録範囲/店舗兼主屋・米蔵・舟蔵・貯蔵所・裏門・門及び塀
公開状況/公開

アマチュアの写真家が撮った一枚の写真が地元自治体が発行する観光案内に掲載されたことで、これほどまでに様相が一変した例も珍しいのではないかと思う。山城の頂部に残る曲輪の石垣群が雲海に浮かぶ幻想的な様子を撮った写真、今や「天空の城」の名称で全国的な知名度を誇るようになった竹田城跡のことである。城跡には石垣以外の建造物は残っておらず、それまでは知る人ぞ知る存在で、何度訪れても人影は疎らで閑散としており、大声で感嘆しても何ら障りのない、広々として本当に気持ちの良い場所であった。しかし現在では城下に大規模な駐車場が整備され、シャトルバスで送迎されるなど大人気観光スポットへと変貌してしまった。地元の人々にとっては雇用の機会が生れ、この上ないことかも知れないが、私にとっては当然のことながら、既に気持ちの良い場所ではなくなってしまった。

嘗て映画界の巨匠として知られる黒澤明監督が「天と地」の撮影現場として選んだ城跡として、その存在が少しずつ知られるようになった頃から度々竹田城跡に足を運ぶようになった私は、ずっと城の石垣の端から臨む城下町一際に目に付く大規模な町家の存在が気になって仕方がなかった。それが当住宅である。当時はもちろん登録文化財の制度もなく、老舗酒造場跡の一般の住居として門戸を固く閉ざしていたため、外から様子を窺う程度に終始せざるを得なかったが、平成27年に国登録文化財となるとともに、一部が宿泊施設として活用されるなどして一般に開放されることとなった。


天空の城として異常なまでに脚光を浴びる山城・竹田城の城下町に所在する寛永2年(1625)創業の老舗酒造場跡を宿泊施設として改造。
建築は明治35~36年(1902-1903)。

【文化庁報道発表】
竹田城東麓に敷地を構える元造酒屋の施設で、宿泊施設やレストランなどに活用されている。店舗兼主屋は通りに面して建つ軸部重厚且つ上質な大型町家で、町並み景観の核となる。敷地内には、置屋根式の土蔵を二棟繋げた米蔵が建ち、また舟蔵や貯蔵所、裏門が一連で酒造施設の敷地構えを特徴付けている。敷地を画す門及び塀とともに、保存を図る。




 

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