佐伯家住宅
Saeki



 
国指定重要文化財 (昭和46年3月11日指定)
富山県高岡市福岡町蓑島495
建築年代/明和4年(1767)
用途区分/農家
指定範囲/主屋
公開状況/公開(要予約)

北陸道から小矢部JCTで分岐して高岡に至る能越道の福岡IC近くに所在する農家建築である。この辺りは砺波平野の西端に位置し、全くの平坦地に屋敷が点在する散居集落となっているが、当住宅に嘗てあった散居集落を象徴する屋敷林は近年に伐採され風情は著しく損なわれている。当家には明和4年「家作諸入用一巻」と書かれた袋に入った4冊(民家緊急調査の報告書では5冊)の普請帳が残されており、それによると現在地から西南15kmの福野町川崎の十村・三之助の住宅を買い取り、小矢部川を曳材して移築したことが明らかとなっている。住宅は桁行10間、梁間7間の中規模なもので、正面から見ると入母屋茅葺屋根の直屋建に思われるが、梁間のうち3間半のみの主体部にのみ入母屋屋根を架け、後半部分はカケオロシと称される片流れ屋根を葺き下ろす格好となっている。昭和48年の解体修理の際に行われた調査で、当初は中角を背面に突き出しており、当地に移築した後に片角を背面に突き出すとともにカケオロシ屋根を架ける形に改築したことが判明している。角屋部分は昭和44年の民家緊急調査から遡る12年前の大雪で損壊したため取り払われたとのことで、後半部分の復元は困難であったとのこと。主屋前面の入母屋の大屋根の下側には茅葺で庇を葺き下ろしており、こうした例は意外と残されておらず、今では珍しい。主屋内は広間を「枠の内」と称する束と貫で小壁を飾るとともに牛梁を縦横に組む見応えのある構成となっている他、座敷上手には土縁の上り縁を設けるなど、随所に県内の民家的な特徴を凝縮して見ることができる。



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