千葉家住宅
Chiba



 
国指定重要文化財 (平成19年12月4日指定)
岩手県遠野市綾織町上綾織1-14
建築年代/天保年間(1830-1844)
用途区分/農家
指定範囲/主屋・土蔵・石蔵・稲荷社・大工小屋・土地
公開状況/公開 (但し、平成35年まで修復中)
遠野市の西郊、県都・盛岡へと続く国道396号線が標高476mの小峠に向かって登りの傾斜を強める辺りに所在する農家建築である。国道に面する大垂水の山麓に野面積で石垣を築き、まるで城砦さながらの様子に屋敷地を造成、入母屋屋根に木格子の妻飾が施された馬屋を石垣から迫り出す様にして建てられた南部藩領特有の曲屋の巨大な主屋は、見る者を圧倒する。主屋は当家4代目の喜右衛門が天保の飢饉に際して救済普請として10年の歳月を要して建てたと伝え、現存する曲屋建築としては最大級のモノである。内部は時代が下がるだけに整型の間取り配置で、座敷も端正な造作である。当家の由緒は明らかではなく、江戸中期から農業を営み、末期には士分格を得たことが判明しているが、幕末に向かって急激に家勢を伸長させたことは、尋常でない屋敷構えからも想像に難くない。江戸末期とはいえ、封建的な身分制度下でこのような住宅建築が許されたことに驚かされる。


【文化庁報道発表】
千葉家は、遠野市西寄りの山麓に小城のような屋敷を構えている。天保年間に主屋が建設され、大正末期頃までに現在のような屋敷構えが整った。主屋は、馬屋を前面に張り出してL形平面とする、いわゆる南部の曲り屋形式の民家で、主屋の座敷では面皮材の棹縁を使用するなど、瀟洒な意匠を見せる。千葉家住宅は、南部曲り屋の分布域南縁に位置するとともに、遠野地方に典型的な平面を持ち、洗練された座敷意匠を採用するなど、江戸末期の大型曲り屋民家として高い価値がある。また主屋の周囲には、江戸末期から大正期にかけて建設された付属建物が残り、その特異な敷地構成とともに豪農の屋敷構えをよく保っている。

 

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