教室で考えたあれこれ記

               『No.1』 と 『Only1』


 SMAPの『世界に一つだけの花』が昨年大ヒットしました。その一番最後では、「小さい花や大きな花 一つとして同じものはないから No.1にならなくてもいい もともと特別なOnly1」と歌われています。この歌詞で、一躍『オンリーワン』という言葉が脚光を浴びたような気もするかたも多いと思います。僕も、以前から子どもたちに、「ナンバーワンよりオンリーワンをつかもうよ」と話してきたのですが、やはり『世界に一つだけの花』の歌詞ほど子どもにインパクトは与えきれなかったような気がします。


 子どもたちは、よくだれが一番かと気にします。そして、テストなどの順番があたかもその人の人格の順位であるかのように話す子もいます。そんな時に、子どもたちに「ナンバーワン」と「オンリーワン」について話して聞かせるようにしています。「ナンバーワン」というのは、いくつかあるうちの一つの尺度にすぎないことを。「オンリーワン」というまた別の尺度も、実は大切なんだと。


 僕が、『オンリーワン』という言葉に出会ったのは、沖縄アクターズスクールを作られたマキノさんの本でした。沖縄アクターズスクールといえば、安室奈美恵、SPEED、MAX、DA PUMPなどが出たことで有名ですが、そのアクターズスクールを作ったマキノ校長の手記『才能』は、学校の教員にもとても多くの示唆を与えてくれる本だと思います。その一節に「オンリーワン」という言葉もありました。ここにその一部を抜粋して載せてみたいと思います。


 《沖縄アクターズスクールの子供たちは、他人を押しのけて「自分が一番」=「ナンバーワン」になりたいと思ってはいない。「自分だけの一番」=「オンリーワン」を見つけようとしている。だから、毎日練習を欠かさない。
 才能に出会うとは自分しか持っていない「オンリーワン」に出会うこと。自分しか持っていない「オンリーワン」を見つけることだ。僕の仕事は、「君が持っているオンリーワンはこれだ」と指摘してやること。そして、「一緒に伸ばしていこう」と励ましてやること。これは、本当は親や学校がやることだ。でも、現実には、そんなふうに子供に接している人は少ない。「いい成績をとれ」「他人に勝て」としか言わない人が圧倒的に多いのではないだろうか。
 それに、もしかしたらあなた自身も、自分の才能なんか考えないで、ただ与えられたことだけをやっている、やってきたのではないだろうか。「才能なんて縁がない」そう思って、考えようともしないのではないだろうか。けれども、それでは、才能は見つからない。
 僕は、世の中すべての人が、何かしらの才能を持っていると思う。例えば、100mを10秒で走るというようなよほど特殊な才能を別にすれば、すべての人は才能を持っている。ところが、多くの人は、それが殺されているか、もしくは、まだ自分の才能と出会っていない。だから、常に、自分の才能を探し続けなくてはならないのだ。自分だけの才能、自分だけの夢を持つことは、人生最大の幸せだと思う。
 他人の夢と自分の夢を比べても意味がない。自分だけの「オンリーワン」の夢を持つことが肝心なのだ。》

                                    『才能』/マキノ正幸(講談社)より抜粋


 長々引用させていただきましたが、僕はこの文に出会えたことで、いろいろと子どもたちへ伝えたいことができました。それまでを振り返ってみると確かに、どこかで「この子は、他の子と比べて・・・」なんていう思いを持ったり、「この子は、〜がクラスで一番だよ・・・」といった部分にばかり目がいっていたりしたような気がしています。もし、この言葉に出会えなかったら、今でも必死になって「No.1」「No.2」を育てようとしていたかもしれないなと思います。


 前回受けもった6年生のクラス目標が「つかめOnly」というものでした。(『教室内の配置の一考』に、この学級目標を貼った写真があります) 5年生の時から、「他人を蹴落としてナンバーワンになるより、自分だけの一番、つまりオンリーワンを一人ひとりが見つけていけるクラスになるといいね。そしてそれをお互い認め合えるといいね。」と僕が言い続けてきたのを、何人かが感じてくれていて、学級目標を作るときに出してくれたのだと思います。僕自身も気にいっていましたが、なんといっても子どもたちが「これって〜さんのいいところだよね」「〜さんって、こんなすごいところあるんだよ」とお互い認め合える場面がたくさんあったことがうれしいことでした。卒業アルバムのクラスのページにも「どんなオンリーワンがつかめたか」というコーナーがありました。
 子どもたちは、いろいろな場面で「どうしたら自分たちらしいものができるのか」を考えていましたし、その中で「どうしたら自分らしく協力できるか」を考えていました。もしかしたらこの、自分たちらしさ、自分らしさこそ、「オンリーワン」の一つの形だったんだと子どもたちに教わったのは、僕自身だったかもしれません。


 競争自体が悪いとはまったく思いませんし、ある意味で意欲につながることも多いでしょう。でも、順位だけですべての物事が決まってしまうわけではない、ということは子どもたちに知らせる必要があるのでしょう。そんなときに「オンリーワン」という言葉が大きなキーワードになると思います。そして、マキノ校長のように「あなたには、こんないいところがあるんだよ」と子どもたち一人ひとりに別々の声をかけてあげることのできる教師でいたいとも思っています。人と比べるからこそ、それぞれの人の良さが見つけられる、それなら人と比べてもいいですよね。


                                                   2004・1・14 
 

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