やきとり物語


最近は晴れが多い。梅雨に入るのに今日も晴れている。

それなら今日は洗車をしよう。久々に愛車を洗う。

気づかない所に小さな傷を発見。ちょっぴりブルー。でもめげずに洗う。

シャワーのしぶきが虹を描く昼下がり。汗をかく。

私は明日も晴れて、今日の洗車がムダにならないよう祈る。


次の日の朝。私は日頃の行いがいいのだ。

しかもカンカン照りである。おお、やはり天気は私の見方だ。

ご機嫌で愛車に乗ると、フロントガラスに白い物体を発見する。

この中央にある大きな集合体はなんぞや?

私はメガネをかけてみてみる。1.0の視力でハッキリみた。それは

他ならぬ鳥のフンである。

しかもそのフンは、
大きな集合体を中心に、点滅しておこぼれ後2つ

私へ遠慮する事なく、ガラス一面に気が済むまで描いていた。


私は腹が立ってきた。フロントガラスをティッシュで拭いた。

ボンネットに目線を下ろすと、
グリコのおまけのようにフンがまたあった。

本体だけでもう満足させてもらってますから!!!


私は生理前だったせいもあり、非常にムカついた。

この白いフンは、私への怒りを増加させるのに絶好の条件を

揃えてくださった。回りを見ると、この被害に遭っているのは


私の車のみである。

隣の軽自動車は無事だ。
何故私だけなのじゃ〜!

怒りが頂点に立った私は、運転席で

「ふざけんな〜!今日、出勤したら
腹いせに

焼き鳥食ってやるからな〜〜〜!!」と叫んだ。

何故、ここで焼き鳥と発想したのかは私も謎である。

しかし、
鳥=やきとりと直結していたのは確かである。

焼き鳥で腹いせはいいのだが、私の職場でみかける焼き鳥屋は

土日しかいない。今日は木曜日。きっと焼き鳥は食えないだろう。

土日で、夕方になると5本で500円なのに残念である。

まあ、良い。焼き鳥がなかったら

鳥唐上げ定食780円である。それも品切れだったら

フライドチキンを買って食ってやる。


そんな本性丸出しのまま愛車を走らせ

会社に向かう私である。


しかし、会社に行くと今朝のフンの話など

すっかり忘れてしまった。今日から入梅だし

まあいいか、と思っていた程である。

だが、ナンバーズを購入してふと、外をみると

いつも土日しかいない焼き鳥屋が居るではないか。

私は「あ!そうだ!
今朝の恨み」と思い出す事になる。


私は今朝の切ない話をSさんにした。

私はありのまま真実を伝える。そこにはMも居た。

「フロントガラスに、
白い花火みたいなフンがボン!!

置いてあったんです。しかも花火から下に

白く線をダラダラ引っ張って。

どうやら
悪いもんを食ってゲリピーになった鳥ですよね!?」

私は一生懸命説明する。

「みかりんさん、そいず、
花火でなくって

爆弾って言うんだど。」

「爆弾でもミサイルでも結構ですが、
私はこの恨みを晴らす為に

焼き鳥屋に行って来ます!!」

一同大笑い。

「なんで焼き鳥なのか意味分かんね〜」

だから!鳥=やきとりなんですってば!

Mも言う。「みかりんさ〜ん。。それって

面白すぎます〜。あの私思うんですけど

それって運がツイテルって事じゃないのですか?」

「そうだ、そうだ」とSさんも言う。


でも私の決心は固い。

「今の時間に行って、5本で500円で焼き鳥買えないか

交渉してきます」私はそういい、財布を持って出かけた。



焼き鳥屋のおじさんは

汗だくになって焼き鳥を焼いていた。

なかなかいいこげ加減だ、
お〜 いぇ〜い。

そこで私はツイテイル事を発見する。

なんと!夕方じゃないのに今、この時間は

タイムサービスで6本で500円だと言う。

なんてツイテイルのかしら私。

もしかして、本当に運がついてる?

焼き鳥屋のおじさんに「こないだ買った時に食べた

タレがすごく美味しかったです〜〜」と言った。

すると、塩味じゃない方で用意してくれた。

わ〜い焼きたてのホヤホヤ。

これをみんなで分け合って食べよう。

私の腹いせに協力してくださるよう

先ほどの会話のメンバーと

私の4人で仲良く食べよう。

ホカホカの焼き鳥を手に、タレのこおばしい匂いがする。

早くみんなに渡そう。



Mは今日、ライブを観に行くので

特別2本食べていいよ、とあげた。

ネギも2本入っていた。

みんな「美味しいね〜」と言った。



帰りは雨が降っていた。私のフロントガラスも

キレイに掃除されていた。

恵の雨のように思えた。


そして次の日。Mが

「焼き鳥2本食べたので、元気になってライブを

観る事が出来ました。
あの鳥のパワーすごいですね」と

私に言った。