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スクリュー ドライバー


オレンジ色の甘いカクテル。赤いチェリーが揺れる。

「VIP ROOMに、いらっしゃる男性からです」

ウェイターお兄さんがそう言い、差し出した左手の先に

視線を向けると、中年男性が私に手を振る。

(この様な事は、常連のお姉さまだった貴方なら

どうって事のない日常生活の一部だと思いますが

当時の私には、ものすごい扱いをされた。と思いました)

「一緒に飲みたい。と、おっしゃってます。よろしかったら

VIP ROOMにどうぞ!」

左足を立てたお兄さんが、私に言う。


ユーロが流れ、踊りに出かけた友人達を見ながら

私は一人。パーラメントに火を付け、揺れる煙を見ている。


先日、声をかけてきたあの中年男性。

その大きな黒い電話が、一般人ではない事をアピールか?

「030」から始まる10桁の電話番号。

それは、今で言う携帯電話だ。しかし ’93年に

その様な物を持ってるなんて怪しくないか?


フロアから立ち上がるスモークに埋もれ

怖さよ、消えて欲しい。

オレンジ色のカクテル・・・

この様な演出をされたのは、初めてだ。


踊り疲れた友人達が、爽やかな笑顔で帰ってきた。

私は、VIP ROOMに行けない理由を

黒服お兄さんに伝える。

口元に甘い水。オレンジベースの
カクテルに

私は背を向けた。


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