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浮いてる自分



「ご注文頂きました商品が入荷いたしました。ご都合の

よろしい日にご来店をお待ちしております。では失礼致します。」

自分の用件だけを、受話器に向かって話す。

ピーと言う発信音の後の、伝言は無機質で棒読みである。


私は、この留守電に話す事が苦手である。

会話のキャッチボールが一方通行だからである。

そして、その姿が周りに分かり、なんだか職場で浮いてると感じる。

何処かに話をしてる人がいて、
自分の居場所があるならいいのだが

留守電に話をしている私は、
一人芝居を演じている様である。

一方的に話をするのは、アナウンサーとスピーカーと

話のクドイ おんつぁん だけで良いのだ。


1人で しゃべくる討論会なら、観客がいるからいい。

しかし、職場!ザワザワしているならいい。


私以外の人達が、接客していればいい。私を気に留めなければ良い。

そうじゃないと、受話器を置いた瞬間に、

私は自分が
ピント外れの発言をして

周りを白けさせた様な気分になるのである。

誰か、なんか言ってくれ!!私が「留守電にTEL済み」と記入しているうちに。

こんな私の姿は、職場背景の一部として、お客さんの目に どう映っているのだろうか。

今、私は浮いている。1人で留守電に話をしていた事が!

例えるなら
声を掛けたら、人違いと言う心境である。

付け加えるなら、話をしていたつもりの隣の人が、
自分ではない

別な人と話をしていたとか。

並んだ時に、自分の前と後ろが
私を避けて話しをしてるとか。

そんな心境である。ああ、私って一体なに!?そんな感じである。


ただ、一言。「留守電だったんですね。」この言葉だけで

浮いた自分が正気に帰ってくるのに。

こうして私は、留守電伝言の後、浮いてる自分が

日常風景の場所に戻れる
瞬間の一言待っているのである。

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