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得意な歌


私は松田聖子ちゃん
の歌が得意だ。

聖子ちゃんの「抱いて・・・」を私に歌わせたら、自分の世界に

入り込んだ私を、もう誰にも止められない。


まず、出だしの「・・・♪何度も・・」で、私は横顔になり、

眉間にシワを縦に造る。(こうして余計な顔のシワが刻まれるのだ。)

もちろん、部屋は暗くしてスポットライトのみである。

こうして私は自分の世界で思う存分生きられる。

私には、周りとの見えない壁で境界線が出来る。

友人たちは、私にとって観客である。


曲のサビはサブ メインである。本当の私のメインは

この曲の一番最後のトリである「♪抱いて抱いてい〜て〜」である。

もう、この曲は終了!と言う所に賭けているのである。

それは、このメインを、はずさないように
上品かつ

丁寧に歌う事である。

最後の「♪・・い〜・・・・・」の所で首を左右に振り、

眉間にシワを寄せ、これはもうお約束である。

曲もなくなったタイミングで「♪・・・て〜」である。

しかもこの「♪て〜」の音は、しだいに強く仕上げ、顔を上げた私は

あさっての方を、途方に暮れて見ているのである。

このまま放心状態。数秒間の間、私は異邦人になるのである。



歌と言うのは、不思議な物で、その歌詞の主人公になれるのである。

一瞬、自分が自分なのか?歌詞のキャラクターなのか

分からなくなり自己陶酔出来る。

自分の心境に近ければ、近いほど感情移入が出来る。

失恋した時には、「中島みゆき」が心地良いのも

きっと、
心の隙間を埋めてくれる「癒し」とも呼べる物が

あるのかもしれない。


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