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捨てられて


私は「図工」と言うのが苦手であった。

その授業は「自由課題」と言われ

目的もないまま、ここにある物で適当な形を作ってくれ!と言うものであった。

枠にとらわれずに、柔軟性を持たせる為の授業だったのかもしれないが、

私には、目的のない授業が「手抜き」の様に感じた。


の「適当な物を作成」について忘れられない思い出がある。

小学生の頃、私は何かを作成していた。

勿論、無意味な物である。友人は「タイトルがつく物」を作っていた。

私は、ただハサミを使って意味のない物を作成していた。

「馬鹿とハサミは使いよう」
である。

得体のしれない形を作って、「のり」でくっつけていたのだ。

やはり
私は馬鹿である。

何を作っているか分からない私に、友人は「この得体の知れない物」を聞く。

「自分でも分からない。」そう私は答えた。

やはり
私はハサミに使われていた馬鹿者なのだ。

すると友人は「分かった!これって、宇宙人に人体実験された場面だ〜!」と言った。

・・・あんたは宇宙人にさらわれた事があるのか?

いくら私が
「歌って踊れる、陽気な看護婦さん」に憧れているからと言っても

人体実験などしたくないのだ。

でも、この際
「解剖シーン」でも良いのである。


こうして出来た「宇宙人にさらわれた、地球の餌食人解剖」は、後日、先生の目に留る。

仕上がった作品が、並べられていたロッカーの上で、

私は先生の目を疑ってしまう。

なんと、先生は私の作品を
ゴミ箱に捨てたのである。

どうせ、ゴミもどきの作品だし、目的もなく出来た物ではあるが!

私が見てる所で!少しの ためらいもなく!

遠慮もせずに捨てるなんて!!私は
ハートブレイクである。

ショッキング イン マイ ハートである。


大人なんて大嫌い。先生なんて大っ嫌い!!大きくなったらグレてやる・・・

私の「うらみます」の目をよそに、先生は生徒達と戯れている。

クラスメートらよ、その優しい先生のツラに騙されるんぢゃなくてよ。

私は、その輪に混ざる事も出来ず、自分自身が否定された気分であった。


数日後、「自由課題」の作品が返される事になった。

「みなさん、おうちに帰って家族にみせましょうね〜」と言って

先生が生徒の名前を呼んでいる。

私の名前が呼ばれるはずはないのだ。

何故なら
先生が、私の作品をゴミ箱に捨てたからである。

でも、居心地がそんなに悪くなかったのは、友人達も誰一人、

私の作品が返されない事を言わなかった事である。

完全にシラを切ってくれていたのだ。なんとも
大人な子供なんだろう。

ここで「捨てられた作品」を、
「捨てられた餌食人」を誰かが問い詰めたら

私は、惨めになる。私は平然と何気なく時間が過ぎるのを見届けていた。


こうして私が、幼女時代に学んだ事は

「目的を持たないと、捨てられた様な人生を歩む」
と言う事である。

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