Tバックコンテストの内訳


VIP ROOMのテーブルに

Tバックコンテストに参加する女性9名。

そのステージで私は

一瞬だけ参加して、後は消える予定。

一緒のKさんと、他の姉さん達はしっかり

参戦するようだ。

Kさん。。ちょっとまずいよ!?

私らこの件が世間にばれたら、


仕事クビになっちゃうかもしれないんじゃない?

冷静なKさん。・・・と言うよりKさんも

Vフロントの姉さんや、この場の雰囲気に

すっかり飲まれてしまったのか大人しい。

いつもと違う。だけど、コンテストの件では

私のようにダダをこねない。

そこが二つ年上なだけあるのかな。



そして、ふと隣のソファーに座っていた男性が

「よ!○△!(←Vフロント姉さんの名前)

写真撮らせて」と

声を掛けてきた。

「いいよ!」とスッと立ち上がったこの姉さん。

なんと!ポーズの決め方が

お尻を突き出して、手を腰にあてて

バックショットを撮らせていた。


私、ポカーン。Kさんもあっけにとられていた。

身近な人達からから

「派手」と言われた私らでさえ

そんなVフロントの恰好で、

そのキメポーズはムリ。


・・と言うか、服、着ようよ!?

男性は「ありがとう!」と言って、

「写るんです」で写真を撮り終えると

その場を離れた。

・・・この男性は知り合いなのね。


今回のTバックショーコンテストとは

衣装は何でもOKらしいのだが

私ら他8名は、ボディコンや

ミニの花柄ワンピで

参戦していた。

私はスパンコールのキラキラしたトップスと

白のタイトミニ。まあ、

昔のピンクレディーみたいな恰好。

それにジュリ扇を持って・・。

の予定だったんだけどね。

まさかテレビ撮影があるんなんて言うから

もう、どうしよう。本当に一瞬だけ出で

すぐにステージから消えれるのかな。

ウーロン茶を飲みながら、

フロアの様子が映っているテレビを

観ていた。2フロア ブチ切りの建物。

その輪の中心に踊る人人人。

人の群れ。お立ち台もギュウギュウ。

その様子を客観的に観ている私。

なんだか、お立ち台で踊ってる私ら位の人達が

ものすご〜く遊んでいる女に見えてくる。





スタッフSさんのコンテストの話し合いが終わり

「じゃあ、みんな一人一人
ポラロイド

写真撮るよ」と言う。

「え?何するの?」とみんなが言う。

するとSさんは

「今回Tバックショーに参加するメンバーの

ワンショット写真を


愛ちゃんに見せるんだよ」と言う。

「えええ!うそ〜!」と、困った声で

9名みんなで言った。

一人一人順番に写真を撮られた。

カメラから出て来た1枚の白いカードは

徐々に自分の姿を映し出して来た。

ピンクのジュリ扇子を持って

作り笑顔をした私が映っている。

この写真を愛ちゃんが見てくれるの?

なんだか変な気分。

写真をそれぞれ撮られた後は


「今回テクノがかかったら、

一人の写る時間は

約30秒!この間、


なるべく激しく踊ってください」

説明される。

・・・一人のシーンが30秒。

この間だけ私は我慢すればいいのか。

「それで、みんな名前と年齢、職業ね、

本当の事書かなくていいから

偽名で言いから決めて
」と言われる。

・・・ちょっと待って、ちょっと待って。

いくら偽名でも、顔でバレない?

「私、なんて名前にしたらいいの〜」と言ったら

「カトウ マナミ でいいじゃん。」と


その場にいた姉さんが言う。

「じゃあ、私は?」とKさんも言ったら

「サイトウ エリ」!と言った。

なんでそんなとっさに出るのだ?

「こういう時はねありふれた、

どこにでもある名前の方がいいって」と

まるで慣れたような素振り。

はあ。ため息しか出ない。

そして年齢だけど、


私、19歳なんですけどテレビで

Tバック姿になって大丈夫ですかね?」と言った。

すると、名前を付けてくれた姉さんが

「未成年なんだ。あ〜ダメじゃん」

ダメじゃんって、別に高校生じゃないよ?

「こういう番組に出るのって、成人してないと

ダメなんだよ」

ほほう。それってR18って事?

「こないだジュリアナに取材で踊りに行った子

居たでしょ?テレビに映ったの見なかった?

あの二人、私の後輩だったんだけど

19だったのを二十歳って言って

放送したんだから


だって。そうだったんだ。

そのテレビ番組、私も興味津々で見たよ!

しかし・・世の中狭いわ。

「分かった!じゃあ、みかちゃん・・じゃなかった

マナミちゃんは二十歳のOLさんでいいね?」

「はい。」

私は、「カトウ マナミ」と言う名で

テクノを踊る事になった。

「今回参加する隣の姉さんね、


みかちゃんって名前にしたいって

言っていたから、もし本名の方で呼ばれてに

間違って返事しないでね!

みかちゃんは、マナミちゃんだからね。

いいね?まなみちゃ〜ん。

ちょっと大丈夫?」

・・・こうやって書いてると、なんか

新人ホステスが優しく説教されてるみたい。

「私、名前と歳を誤魔化したら

大丈夫ですか?職場の人達にバレません?」

「じゃあ、私の持ってる扇子が赤だから

こっち持ちないよ。」

またまたアドバイスをくれた姉さん。

「扇子変えた事で、返ってバレるかもよ」

Vフロント姉さんも言う。

ええ!そうですか?

でも、今まで目を合せてもらえなかったのに


そう言って私と会話をしてくれたのが

ちょっと嬉しくなってしまった。


なので、勢いで思わず私は

「あの・・・お姉さんって、サーファーの

〇□★さん(25)をご存じですよね?」

と、聞いてしまった。

その瞬間、Vフロント姉さんと

仲良くしているであろう二人の女性が

「え?なんで?

貴方まで彼を知ってるの?」と言う

顔をした。


これって、常連さんに向かって

新顔の私が言うのは

不味かったんですかね?


「え〜!?〇□★さん!?

あはは。どうだったかな?」とまたタバコを吸い

一瞬、笑顔ではぐらかされた。

なんだか、大人の余裕みたいな感じだった。

私は「あれ?その反応!

やっぱり知り合い程度じゃ

ない仲なのぉ!?」と不安になった。

私がその彼の事を言った事で

皆さん好意的に話しをしてくれた。

サーファー彼に感謝した。

だって彼の名前を出したから

この場で過ごす私のメンタルを

維持出来たから。

だから私も思わずホンネで

「この番組、本当にまずくないですか?


だって、親が観たらヤバくないですか?」と言った。

すると姉さん達は


「大丈夫、大丈夫!だいたい親が

深夜番組、見るワケないじゃん。」と言った。

「でも、お客さんとかにバレたら・・」

「あなたさ〜、マジメなんだよ。」とVフロント姉さん。

え?そうですか?

「もし知り合いに観られても

あれは私じゃないです!って

言えばいいだけじゃない」

「そうよ!大丈夫よ!

私だって接客業よ。


しかも看護婦なんだから!」

えええ!うそ〜〜!そのギャップ。

その場にいらした皆さんもビックリ。

そうなんです。今回の集まりの皆さんは

意外ととちゃんとした職業で、

フリーターと言う人はいませんでした。

「でもでも!すみません、あのその。。


親と仕事の上司に見つかったら

私はどうしていいか分かりません!!


・・と、本当の事を言ったら

24歳のピンチヒッターで参加される姉さんが

言う。

「私さ、両親もう死んでいないから

その心配はないんだ。」

・・・え。私、もしかして言わなくてもいい事を

言わせてしまいました?

Vフロント姉さんは

「私は出身地が仙台じゃないから、

全然問題なし。だから本名で行くの」だって。

・・・皆さん、メンタル強すぎ。

これが、普通の夜遊び大好きお立ち台ギャルの

本来の姿なんですか?

だとしたら、私ってなんて臆病モノなんでしょう。

ちょっと感覚が違う。私が良い子過ぎる。

私、もしかしてとんでもない世界に足を

突っ込んでしまったのでは・・。

ウーロン茶を飲みほし、

ドキドキを抑えている私。

そう言えば、今日の皆さんって

ずっと常連さん?

「私と、Vフロント姉さんは

ここで知り合ったよ。」だって。

あ〜・・そうなんですか。

「ちなみに、こっちの花柄ワンピ(23)姉さんとも

昔から通っててお友達だよ」

スタッフSさんが「こいつなんて15歳の時から

ディスコに通ってたんだよ」と指差す。

ええ!15歳から。
まあ、カッコいい!

そんな世間話で私も少し、私も常連さん達の

話しに混ぜてもらえて良かった・・けど

やっぱり変だよ。ナイト オブ ワールド。


さらに。今度はテレビ関係者の人が来て

今回のコンテストで、一人一人映っている時に

司会の人が色々言う言葉があるんだけど

どんな事を言ったらいいか、

一緒に考えて欲しいとの事。

Kさんは、「私は今回全身(ボディコン)白だから、

貴方の好きな色に染めて。って言ってほしい」

ちゃんと答えている!!

また、Vフロント姉さんは

「ついにここまで来たか〜〜!」と、言って

テレビの人達に観てほしいとの事。

はは〜。さすが強者は言う事が違う。

それで、「マナミちゃんは?」と言われる。

そう。私のその場での名前は「マナミ」。

「え〜・・・どうしよう。困ったな。

テレビだとTバック姿映されたくないし。。」と

マジメにテレビ番組の、

仕事をしている人に対しての

非協力的な私の態度。

この時、
私はもう被害者気分になっていた。

テレビの人も私に気遣って言う。

「そのキラキラする服って、スパンコールって

言うんですよね?その路線で行きますか?」

「う〜ん・・」

首をかしげる私に、スタッフSさんが助け舟を出す。

「見えるか見えないか、微妙な所を

しっかり見てね!は、どうですか?」

「う〜ん・・はい、じゃあそれで。」

「はい!じゃあマナミちゃんは

スカートの位置がギリギリって言う事で!」

「はい。」

「じゃあ、本番では「カトウ マナミ 20歳

職業OL。見えるか見えないかこの微妙な

所をしっかり見てね!(その後、ちょっと声を変えて)

全然、見えねえ!!!

・・と、こんな感じで良いですね!?」

私とスタッフSさんは「はい。」と言った。

いくら
Tバック姿モロだしにしなくていいとは言え

ちょっとヤバくないですか私。

これでもうほぼ話し合いは終わりかと

思ったら、まだ続いた。

「この9名のうち、

もし優勝したら次の全国大会にまで

参加してもいいって人いる?」


聞かれる。

3名ほど手を挙げた。うそ〜。

Tバックコンテストだけで全国って

一体どんな世界なの!

こうして「行けそうな人は、1番、4番、5番」と

メモを取られていた。

番組が続く様に、その三人のうちの

誰かに決定するのか。

これがテレビ業界の裏舞台なのかと

何も知らない私は思った。




そして、どんどん夜は更け

話している私らにスタッフSさんが

「飯島愛ちゃんがVIP ROOMに入場してきた

から、みんなここ、離れてね」と言った。

私は後ろを振り返った。

すると、男性が10人位で輪になって

愛ちゃんを守るかのようにされて歩きてきた。

「ここまでくればもう大丈夫」と言う感じで。

愛ちゃんはしっかりガードされてました。

私達が座っていたテーブルに座った。

しかも、愛ちゃんの場所、

さっきまで私が座っていた場所!

愛ちゃんはすごい笑顔で


ご機嫌な印象。

実物を初めてみましたが

日焼けしてて、髪は腰までの茶髪でした。

ミニスカートで、高いヒールだった。

可愛いというより、綺麗な感じ。

さすがに大人の空間VIP ROOMにいる

みなさんはミーハーな感じもなく

「サインください!」とか「握手してください」と

言って寄って来る感もなかった。

まあね、愛ちゃん一人で来てたんじゃないしね。

関係者が束になっていたら、そんな事

気軽に出来ないな・・と私も思った。




いつのまにか、テレビ放送が始まっていたらしく

ついに私達も出番が来た。

VIP ROOMのドアを開け、

人がごった返す中、私達はフロアに向かった。

1階のフロアに設けられた、小さなステージで

Tバックコンテストが始まる。

奥には司会の人達と愛ちゃんが座っていた。

スタッフSさんの後ろで待機する私達。

ギュウギュウのフロアで、

私の隣で観ていたメンズが

「あれ飯島愛?なんか真っ黒で

あんまり可愛くね〜」と言った。

「え?そう?見えないけど。」と私が言ったら

「こっちこっち!こっちに来て!」と言われ

フロアの柱に登ったそのメンズに

私の体を上げてもらった。←アホ。

思ってみれば、そんな心の余裕もないのに。

しかもさっきVIP ROOMで愛ちゃんを

ちゃんと見たってね。

一応「愛ちゃ〜ん」と呼んでみた。

すると、私を睨むコンテスト参加者の皆さん。

そうだよね。「何やってんの!」って言いたいよね。

そんな時、Vフロント姉さんは

「やばい!付け爪が割れた。誰か

ライター持ってない?」とその辺の人に

声を掛けている。

(ライターであぶると付くんですかね?)

こうしてみると、
見知らぬその辺の人が

適当なお友達化している平和な光景。


今まで賑やかだったディスコの空間は

静まり返っていた。

キラキラした照明だけが

中央のステージを光らせ

フロア内にいる誰もが、この時間を

共有して楽しんでいたように見えた。


「皆さん、お待たせいたしました!

Tバックコンテストです!」と司会者が言うと

フロア全体から大きな歓声が聴こえる。

うわああ・・私、本当にどうしよう!?

まだ今ならドタキャン可能?

スタッフSさんに「Sさぁ〜ん。私、

やっぱり出るのどうしよう」と

言ったら
「最初から最後まで出るかどうか

どっちかにして!!」
と力強く言われる。

その言葉を「言葉遊び」みたいに

参加者姉さん達が、私に向かって言う。

最初だけ出て消える・・と言う選択はもうない。

私の番だけ踊って、さっさと

ステージから消える予定だった。


でも、そうなると「じゃあ、すみません!

止めます」ととっさに私が言う。


すると、それに連動してKさんが

「Sさん、すみません。私もちょっと女の事情で、

テレビの前だと困るから」と言う。

「分かった!じゃあ6番、7番

二人キャンセル」

耳にしていたイヤホンみたいなので

テレビ局の人達と連絡を取っていたのか

私とKさんはドタキャンしたのを伝えていた。




「はい!ではトップバッターの方から

どうぞ!」

番組は生放送で、ステージに

1番と言う姉さんが向かっていく所だった。