整理洋服棚 リアルみかりんの部屋の掃除に凝ってから、私はありとあらゆるモノに サヨナラを告げてきた。 だってもう今の私には必要のないモノだから。そして、サヨナラをバネに新たな自分になるの。 さて、今日 サヨナラを告げるのは、洋服収集の、組み立て式整理棚である。 なんの事はない。この棚は、四箇所車がついているのだが、いつも外れてしまうので レンガで抑えていた。しかし、一箇所だけレンガがなくて、安定力に欠けていたのである。 10年以上お世話になった、この棚。黒くてピンクの私の部屋には浮いているアイテムであった。 しかし、今日まで健在だったのは、「こう見えても昨年は、 震度5の地震に耐えれていた」と言う 完全な裏づけがあったからである。だけど、ピンクの統一感を出したいので そろそろ消えてもらおうと思う。 「・・・と、言うワケで。みかりんは家具屋に行って、ピンクのタンス買うよ。」私は母に言った。 「あらそう。あの洋服棚、捨てちゃうの。でもレンガ一つ買えば安定するんでしょ?」 それはそうだ。しかし、私はいつも突然決めて、行動に移すと言う性格なのである。 「いいの。模様替えをしながらピンクに包まれるの。」私がそう言うと母は 「じゃあ、一緒に行ってあげる」と、答える。母はアドバイサーのつもりでお供するのだが 人の車に乗ってお出かけするのが好きと言うだけの話である。 みかりんの愛車で家具屋へ行く。色調を合わせた部屋の作りをみると ますますピンクのタンスが欲しいと思う。組み立て式のシンプルな白で1万円未満も 考えてみたが、ここは家具屋。本格的な金額の、しっかりした商品しかない。 私は「あ!」と声を上げた。そこにあったのは「真っ赤なタンス 24.500円」である。 「これがいい!ピンクの部屋のアクセントになる!」 ・・一気に予算アップである。しかし、目を輝かせている私を見て、アドバイサー母は一言。 「こんなに赤いんじゃ、部屋に居る人の存在感がなくなるでしょうが〜!」 ほほう。部屋をのっとられてしまうと?さらに「絶対飽きるよ。金無駄。」 あまりにもリアルな意見である。私も冷静になり取りやめる。 二件目を当たる。「白にしたら?」そう言われたので、白とピンクのパステルトーンを 夢見ながらタンスを見る。すると、自宅の冷蔵庫と同じデザインのタンスを発見。 「あ!これいいわ。親しみ感持てそう。しかもスリム。」金額は34.800円。 予算オーバーだが、魔法のカードで会計しよう。母も「これなら嫁入り道具としても 持っていけそうねえ。・・いつの話か分からないけど。」とリアルな事を言う。 会計コーナーに行くと「お届けは今月末になります。」と言われる。 ええ?どうやら人気商品で、込み合っているらしい。 私は、即 部屋の片付けをしたいのだ。 当然衝動買いをしたのに、即 お渡しじゃなきゃ、 今日の心意気の意味がない。 そんなワケで却下。すると「もう少し早く渡せる似たような商品でいかがでしょうか?」と 販売員のおばさんに言われる。もう一度見渡したが、 やっぱり あの冷蔵庫モデルが良い。 だから「納期の件、いいですよ」と言ってお願いした。すると、今度は部屋の寸法の関係やら 階段の踊り場の広さを聞かれ、どう考えても私の欲しい冷蔵庫モデルのタンスは リアルみかりんの部屋の進入が無理であった。ドアも狭い。タンスも斜めになれない程 踊り場が狭い。狭き門の「リアルみかりんの部屋」よ。私の部屋は選ばれた限定商品しか 存在していないのだと、今、家の狭さを改めて知った。豪邸に住みたい! 家具 無しで 服が収集できる、最近のリッチな家に住みたい! レンガで作られた、外見もピンクの家がいい。 まあ、豪邸は今後 住むと言う事に勝手にしておいて、さて、現実。 本当に欲しいモノで必要なアイテムなら もっとスムーズに事も運ぶであろう。そんな現実的な条件により、却下になった。 「これは やっぱりピンクのタンスに巡り合う為なのかな?」私がそう言うと 母は「違う違う!美香の(←みかりんのみかって、こう書くんだね。) 洋服棚はね、貴方の部屋の、主なの!」 ・・・・おい、みかりんの部屋の主は、みかりんである。 なんで脇役の洋服棚なのじゃ! 「だって、貴方の部屋の中で、一番 長居していて、 処分されていないアイテムでしょう?」 うむ。確かに。ピカチューと、トトロのぬいぐるみは あげた。 学習机も高校の時から無い。ベッドも処分して無い。 最後まで残ったのは、あの組み立て式タンスだ。 「では、新しいタンスなんて買わせてたまるか!と言う、洋服棚の ささやかな反抗だとでも?」「うん、そう。」 「だって、収集力あって活躍してくれていたでしょう。」 そう言われてみると、私は新しいモノを買うと言う行為は、例えるなら 会社で!長居している社員を辞めさせ、 新人の人を使うと言うリストラに似ていないか! 素晴らしい収集力と、震度5に耐えながら、 衣類を守ってくれた、あの組み立て式タンスを 捨てるつもり?私は動物とのコミュニケーションは得意だが、モノとの会話は 交わした事がないので、今まで気づかなかった。 しかし。こうして考えてみると 「レンガ一つで、まだまだ使えるタンスを、何故 捨てるの!」と言う意味に聞こえてきた。 私は夕日に染まる帰り道を運転しながら、 「レンガ、ひとつ100円位で買えるから、ホームセンターに行こう」と母に言われる。 庭のコーナーに行くと、あったあった。レンガ。なるべく厚めのモノを選んで 予備って事で三個にする。手に持つと結構重い。これ、足に落としたら骨折れそう。 なんて重い「組み立て式タンスの思い」なのだろう。私は、この重さを手に取り 小銭300円を払う。 「34.800円の、116分の1だったね。」私が現金のリアルな数字を挙げると母は 「資源と、金を無駄にするなって事かもよ。」と言った。さすがアドバイサー。 その後、ハーゲンダッツの「パンナコッタ ラズベリー味」を買いにスーパーへ行く。 すると、最後の一個だけが残っていた。「ああ!ツイテル!もう少し遅かったら このアイス、買えなかったよ!」 そうだ。本当に必要なら、すぐに欲しいモノが見つかって、即 食べれるのだ。 母と一緒に出かけて良かった。 震度5の地震より、強い地震が来ない事を祈って 私は帰宅してから、組み立て式タンスの足にレンガを置いた。 |