Sサイズの悲劇


みかりんは7号のSサイズである。

しかし、私は決してリトルサイズには見られない。

生まれてこのかた「小さいですね」と言われた事があるのは

胸のサイズくらいである。

身長に関して言わせてもらえば

車と態度がでかいで 165くらいあるように見られるのだ。

みかりんは
159.9センチ+ヒール6センチで生きている女である。

しかし。この頃 タバコを2ヶ月吸わない生活をしたら

40キロの体重が、45.5キロになったのである。

みんな「太ったね」とは言わない。

いつも見ているから気づかないのだろうか。

それとも前髪があるから、ちょっと顔が丸く見えるのだろうか。

だけど確かに二の腕がプヨプヨした気がする。

そう言えば、ちょっぴり胸が大きくなった気がする。

人に誇れるよいな谷間はないが、

胸の隙間が少なくなってきたのである。

これを写メで自分撮影でもしようと思った32歳みかりん。

実は試みたが、あまりにもアップになりすぎ

どこがどこか分からない作品になったので没にした。

乳首が、人に自慢出きるようなピンクじゃないのも没である。

話は反れたが、女にとって胸のボリュームとは

女の武器のアピールなのである。

話を戻そう。みかりんは5.5キロ体重が増えたので

Sサイズのデニムが、骨盤の所がキツイのである。


そう言われてみると、会社用のスカートもキツクなったのだ。

7号のスカートが、ホックが止まらず

安全ピンで固定する習慣が付いたのである。

一ヶ月前は安全ピン1個で済んでいた。

しかし、今月は
安全ピン2個になっているのである。

女のウェストとは、日々 成長なのである。


さて。この安全ピンだが、

芋ずるのように繋がっているのである。

スカートを履き、ファスナーを上げた時、

一番上までファスナーが上がる事はなく

あと5センチくらい・・と言う所で

「もう少し・・・あと少し・・」と私は眉間にシワを寄せ

空を見上げながら歌っているのである。

止まらないファスナーは

安全ピンに守られ、2段攻撃で私の腰を

守っているのである。


そんな切ない日。みかりんは、お昼ご飯に

辛みそネギラーメンを食べたのである。

ここの辛みそは

とってもスパイシーで、後味がまったりしている。

私は濃い系が好きである。

勝手ながらもここのラーメン屋は

「私の好きなラーメン ベスト3」にランクインしたのである。

汗だくになりながら、汁を飲んでいるみかりん32歳。

しかし、この時、思わぬ悲劇が起きたのである。

私のウェスト2段攻撃の安全ピンが

ブチッと音を立てて、外れたのである。

私は周りを見渡した。みんな見て見ぬフリだろうか。

世の中の人達と言うのは、なんて良心的なのだろう。

私は、自分の現状を把握する。

この腹のゆとりのあるスペース・・・。

とても腹が開放的である。

私は周りに人が居るにも関わらず

ちょっと立ち上がって安全ピンをしっかり固定しようとした。

しかし。
ほろ酔い加減に腰から落ちたスカート

骨盤の所で完全に下がる事が出来ずにいる。

私は
中途半端な脱ぎ方をしたアホ女に見える・・。

ラーメン屋のアルバイト女子が一生懸命

見て見ぬフリをしているように思えてくる。

・・おお、なんていい女なんだ。君は。

私は中腰で、スカートを直そうとしている。

これぞ、空気椅子である。

いつまでもこんな体勢で居たら、

足に電流が走る気分になるではないか。

これぞ、電気椅子である。

ああ。それにしても

汗だくで、必死にスカートを支えている私は

もらした女のようである。

30過ぎて、何故
こんなスタイルでラーメン屋にいるのじゃ。

安全ピンが止まらない!悲しみが止まらない!

♪誰か助けて 安全ピンが、止まらない〜♪

私は恥じらいを通り越して

必死に平常心を保っているのだ。

どんな状況になっても

取り乱したら、バカをみるだけなのだ。

そんな事は子供の頃から知っている。

もうこれ以上、バカになれない。


私はスカートをグルグル回し、

目の前でファスナーを見つけ

とりあえず、あと5センチだけ

ファスナーを上げずに
(上がらないからである)

スカートを直した。

680円、小銭でお金を払って店を出た。


・・・Sサイズの悲劇である。