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お掃除タイム


その日の私は、売り場の裏の

床の掃除に取り組んでいたのであった。

ヒールで汚れてしまったその床は

歩く度に、黒く染まっていく。

美白主義の私には、耐えられなかった。

漂白剤と、洗剤を用意し、スーツにヒール姿で

私は、しゃがみ込む。


タワシで、足跡らしい黒い汚れを磨く。力を入れて磨く。

「白くな〜れ!綺麗にな〜れ!私の肌の様に(?)」と言いながら

灰色に変わった床を雑巾で拭き取る。


私は、しゃがんで床磨きをしているうちに、

自分が「おしん」の様な気分になってきた。

「おれ、これで白い米が食えるだ」

思わず、なまってしまった。ついでに
語尾は上がる。


なんだか腰が痛くなってきた。床の美白効果は出てきた。

この汚れは、雑巾で拭き取る。

バケツの水は、泡沢山の黒い水に変わっていった。

ああ、4月だ、とは言え冷たい水だ。

私は、さらに「おしん」の気分になる。

これから意地悪な人が出てきて

「ここ!!まだ汚れているだろうが!!」と言われる自分を

想像してみる。そんな時、上司が

「おお、綺麗になったな。」と言いに来た。

勿論、この誉め言葉は、床が綺麗になった事である。


決して私への誉め言葉ではない。

今、私は「おしん」の気分でいる事を上司に伝えると

「・・・そんな、これ位の掃除で

「おしん」の気持が分かってたまるか!」

言われた。まあ、いい。今、私は少し悲劇のヒロイン気分だ。


それにしても腰が痛い。サロンパスを腰に張った。

そして私は、この四角の「ひんやり感」を通り越し

数時間後に、かゆみを感じたのであった。

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