悲しかった瞬間


「この日を待っていたの!」

耳の後ろでピアスを止めると、私は鏡の前で

「よしっ!」と気合を入れる。

「やっと、お披露目できるの・・」と呟く。

それは私のチャイナ〜ドレスである。

孔雀扇子と羽のショールを持って、

このスタイルで出発よ♪


これから「集いの場」に向かう。友人はブルーのチャイナ ドレス。

髪型に1時間かかったと言う、複雑なヘアースタイルに圧倒されながら

私の車で、目的地に向かう。
その前にガソリンを入れる予定である。

この行為は、私の楽しみの一つである。

どんな反応が返ってくるかワクワクである。

これは、とりあえず地元ではない場所でガソリンを入れよう。

この想いは、誰もが願う心理である。

真っ赤な私のチャイナドレスは、今日の私の情熱を現す色である。

私の孔雀扇子を友人に持たせ、私はショールを羽織っているのだ。

もう、気分は中国人である。このまま肉マンを頬張りたい気分である。

アップにした頭が少し重いが、素敵な衣装に身をつつんで

首の疲れも忘れてしまいそうである。


ああ!あった。ガソリンスタンド!私は左にウインカーを挙げる。

友人と私はドキドキしている。ああ、やっと公の場に公表なのね・・

車を止めると「いらっしゃいませ!!」と言われる。

「レギュラーお願いします」と私が答える。

「窓はお拭きしてもよろしいでしょうか?」とやり取りをする。

・・・以外と普通である・・・


ああ〜!!何故!?どうして!?

せっかくショールも羽織ってんのに!

こんなに
もの珍しい女が二人もいるのに!

何故なのだ〜!?これは普段着に見えるのか!?

それとも違和感なしなのか!

もっと「うわ〜!!ナニ、アレ・・・」と反応せんか!!

振り返って指を指さんかい!

身内でヒソヒソ「見た?今の!」とやらんかい!

「本物の中国人ですか?」とか「中国語で何か言ってみてください」とか

リアクションは、ないのか〜!!

こう友人と以心伝心しているうちに、ガソリンが満タンになる。

こうして私たちは目的地まで車を走らせる。


「なんか無反応で悲しかったね〜」と私が言う。

「・・ここって高速だから見慣れているのかもね」と

友人が言う。

・・・え?おかしい人に?

「これから稼ぎに行くのだろう・・と。

この二人はコスチューム有りなんだなあ。と

趣味なんだが・・・。

悲しい瞬間であった。


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