セーラームーンになりたくて


今日は一年に一度のコスプレ大会。

ああ、どんなにこの日を待ちわびた事でしょう。

私はセーラー服に身をまとい、
鏡の前でうっとりしている。

ルーズソックスを履いて
ポーズを決めてみる。

私はいつもと変わらないメイクをしながら

ナチュラルさも出さずに30歳の自分を見つめる。


そうだ。今日は「なんちゃって女子高生」ではなく

セーラームーンになろう。

私は金髪でもなければ茶髪でもない。

いたって普通の黒髪だ。

でも、
思いが強ければ髪の毛の色が違くても、

セーラームーンになれるのだ。

やはり、「セーラームーン実写版」に

対抗意識を持っている私
としては、ホンモノになりきる事で

自分のモチベーションと、意力を発揮するモノだと信じている。


私の巻き髪は、二つに分けられ、トップにまとまった。

これを縦にひねると。あら不思議。

あっと言う間に「縦巻ロール」の完成。

「おお、みかりん可愛いじゃない。」
自分で言うだけタダである。

自画自賛と言う言葉は、まさに今日の私の為にある台詞だ。


さらに頭のてっぺんに結んだゴムを隠そうと、
花を付ける事にする。

これは私の中での一大決心である。


100円ショップで購入したピンクの造花の薔薇

ブチッとちぎり、頭に乗せた。「おお。素晴らしい。」

自分で言うだけタダである。自己陶酔と言う言葉は

私の為にある
間違った日本語である。

鏡に映る私は、何処からみても


挑発的な小娘。
と言う事にしておく。


私は、車に乗りN子宅に向かう。

外はもう暗い。対抗車とすれ違っても、私が見える事はないのだ。

私は闇の中に消える、
怪しいセーラームーンである。

月が丸いなあ。今日の私は

月に変わっておしおきよ!と言う気分である。

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