再会した里美さん



私が里美さんと出会ったのは

高校3年の18歳の時。

彼女が見習いの頃だった。

私が美容室に行くと

シャンプーと、ドライヤーは

里美さんがやってくれたが

カット&パーマは

ベテランの仕事だった。


新人として、頑張っていた事の

里美さんは

とっても明るく、良く私の

話し相手になってくれた。

里美さんが居ない日に

美容室に行くと

夜、家に「今日来てくれたのに

会えなくてごめんね」と

電話をかけてくれた。

そして面白い話を良くしてくれた。

社員旅行でハワイに行った時には

お土産を私の分まで買ってきてくれた。

所が、私が成人式の髪をセットに行ったら

もう辞めていた。


あれから23年が経ち

友達経由で「里美さんって知ってる?

みかりんが昔行ってたパーマ屋さんで

働いていたんだよ」って言われた。

それがきっかけで

里美さんの働いている美容室を

訪ねる事にした。

23年ぶりの再会になった。




私が知らない所で、里美さんは

母親になっていた。

30代後半で結婚、出産をしたとの事。

今、小学生の娘さんが居るので

午後5時までが仕事らしい。

仕事と家庭、

それに子育てをしていて凄い!

時間は確実に過ぎているなあと思った。

里美さんは

「遠回りしたけど、今の(結婚生活)が

あるとは思わなかった」と言う。


え?そう?普通に願っていたら

その様な生活になるのでは?

だけど、私は里美さんのその言葉に

すごく苦労して頑張って来たんだなと

言うのを感じた。


ずっと、美容師として生きていたのだと

思ったけど、

途中で止めてしまった事もあったとの事。

そして、あの当時の明るい笑顔の奥には

大変な思いをしながら

頑張っていたのを、後から知った。


どこの業界でも「女だけの職場はイヤ」と

言うでしょ。

そういうのがあったんだね。

「男性が一人だけでもいると

だいぶ違う」とも言うよね。


職場の環境って、とても重要だと

私も思う。

やっぱり、人間関係がダメだと

仕事をするにも、

仕事の内容を覚えるにも

そんなに余裕がなくて

限界がすぐに来てしまう気がする。

頭の中&心の中が

「イヤ〜!イヤ〜!」って思っていると

学ぶ姿勢にならない。

そして「うわ!また失敗した」と思うと

「そうならないようにしないと」と

余計意識して、また失敗する。

悪循環。

そして辞める!と言うように

一直線にコースが決まる。


3年後に逢った里美さんは

シャンプーもパーマも

カットも、全てやってくれた。

若手のメンズに、ロットの巻き方を

指示している姿を見て

「里美さん、本当に素敵な

美容師さんだわ」と思った。


「一度は辞めてしまったけど

この業界に戻ってきて良かった」


と言っていた。


「どの業界もそうだと思うけど

仕事の勉強に

終わりって無いよね?
」と

里美さんが言う。

「ここで終わり!と言うのは無くて


もうどこまでも

勉強し続けないとダメなの」と。


私も、仕事の内容は違うけど

「関わって行くほど、内容が

深く濃くなっていって。

知識が増えるのは

いい武器です!」
と言った。

私は余計試験もあるから

里美さんの言葉が胸に滲みる。


「ハサミを持たせてもらえない

時期が長かった分、

復帰したらもう勉強し直したの」


・・・そんなに長い下積みだったのか。

夜も掛け持ちで

丸一日働いていたとの事。

「なんかね、暇だった頃の分が

今の忙しい方に

ガーと押し寄せられて

プラマイゼロみたい」と言う。

仕事を覚えて、指名客が増えて

やった分、成果が出たって。

仕事が出来ないと
職場の

ターゲットになりやすいんだよね。

強い人って、そういう対象にならない。

なんでもかんでも「お願いします」では

言っている方も小さくなる。

頼まれる方は、

態度も大きくなるんじゃない?


仕事が出来ないと、その群れから

いなくなるしかない。

男社会は大変と思ったけど

女だけの社会だって大変。

要は、どの業界も大変。


でも、仕事を一生懸命やって

一緒に結婚運と

家庭運も付いてきて良かったね。


里美さんの旦那さんって

年上?頼れる人?

「ううん。年下なの。」

ええ!ビックリ。

「私、根が暗いと思っていたから

まさかこんな風に自分が

ちゃんと仕事をして子供が居て・・って

今の自分が信じられないんだ」と言う。


今日は、私が思っていた里美さんとは

違った里美さんに逢った。

ずっと明るく

笑顔を絶やさない人だと思っていた。

根が暗いのが本当だとしても


転んでも叩かれても

ただで起き上がらない!

何かを掴んで起き上がっている!

でも、その上にある

その昔から変わらない笑顔が

里美さんの武器なんだと思う。


「まさか20年以上経って

みかりんにこうやって

会えると思わなかった」

「私もですよ!まさか私の友人と

繋がっているとは!」

「何年か経つと、グルっと人生

一周した感じになるよね。

面白いよね」

私もそう思う。

里美さんの努力の結果が

今の里美さんが手に入れた環境なのかな。


「あの時の美容室は辞めて

良かったよ!じゃないと

大先生からお見合いさせられた(笑)」


↑里美さんが断ったお見合いの話が

20代の頃、私にも

降りかかってきた事を思い出した。

「〇×△の息子さんですよね?」

「そう。」

・・・・その後、その男性はどうなったかは

分からない。



「懐かしい人と言えば

Aさん覚えている?

ホステスと掛け持ちしてた」

「あの派手なAさんですね。

ヤンキーな車に乗ってましたね」

「年下の旦那さんと一緒にお店出したの」

「おお〜!スナックですか」

「違う違う!ちゃんとした美容室だよ!(笑)

今も二人で経営しているみたい」

Aさんも、里美さんが辞めた3年後に

居なくなっていた。

20年前、Aさんが結婚したての頃

私の職場に二人で

買い物に来てくれた事あったな。

Aさんの彼(旦那さん)も美容師になるって

その時言ってた。

そうか・・今はもう福島県に居るんだね。


みんな、それぞれのステージで

人生を頑張って生きている・・・。


私も仕事の勉強を

し直していたタイミングで

里美さんに会えた。

一周したんだなあ。

里美さんの笑顔の下にあった

苦悩は努力に変えていた。

そして、何年経っても

変わらない笑顔が

今日も里美さんの指名客を増やすのだ。