コスプレプリクラ 2


先日、私は「コスプレとは、アンバランスさが重要」と言う意見を書いた。

さらに言うなら
「らしくない動作」が、面白さを呼ぶのだと言いたい。

この二点を反省材料にしながら、再び私達は若者の賑わうゲーセンに向かったのだ。


平日の午後。学生服姿の女子高生らの集団。男子高校生も制服だ。

ちょっと大人になると、「エビちゃん」を目指していそうなギャルと、

その彼氏らしき男の子と言う組み合わせ。

ゲーセン内は、10代〜20代前半の若人ばかりである。

コスプレプリクラを撮ろうとしている私と、悪友Kちゃんは完全に

この場から浮いている。いいのだ。これが30過ぎ女の現実なのだ。

私らに出来る事と言ったら、ただ一つだけ。

肌ツヤの良い女子に近寄らないことである。

しかし、こんな心配はよそに、

彼女らが
30過ぎの私らと接点を持つはずもなかろう。

きっと彼女らから見たら、私らは
微妙な女に映っている事であろう。

何故なら、結婚しているかどうかも分からない。

子供が居てもおかしくない年齢なのに

女二人でゲーセン、子供なしでプリクラである。

周りを見渡すと、私らより若くて可愛い子連れママがいる。

ああ。ゲーセンとは、やはり
若人の空間なのだろうか。

もしかすると、私ら30過ぎ女にとって、この場所とは

トワイライト ゾーンなのだろうか。(この場合、私らが。)

軽いめまいを感じながらも、私は気を引き締める。

そう、私らの目的とはコスプレ プリクラなのだ。


さて。 このコスプレがどのようなシステムになっているのかを

把握した私。今回も記入欄を埋め、着たい衣装を選ぶ。

Kちゃんは「私もゴスロリにしようかな」と言う。

うん、じゃあ後でチェンジしてみよう。そんな会話をしながら

Kちゃんは「まずは女子高生でいいか」と言う。

いつもパンツルックなKちゃんなだけに、

スカートが新鮮だろうなあと思ったのも つかの間。

Kちゃんは控え室から、デニムの上に

スカートを履いて「女子高生になってる?」と言う。

・・・・とりあえず、ブレザー姿で いいんでないかい。

私の背後から 本物の女子高生からの視線を感じる。

やっぱり本物には叶わない。

良いか Kちゃんよ、貴方は絶対

本物の女子高生と並んでは だめである。


さあ、次は私の出番である。念願のゴスロリを着る。

黒の衣装。白く大きなレースの襟。このレースは袖口にも

2段になって付いている。おお、これが「ゴスロリ」か。

ここで一つ疑問なのだが、この頭につけるレースの小物は

首でリボン結びで良いのだろうか。一応着けてみたが

赤ん坊がつけている帽子のように見える。

もう一つの疑問。スカートがボリューミーにならない。どうしたら

あのバレリーナみたいなフコフコ感が出るのか。

これでは普通の服と変わらないではないか。

とりあえず、衣装を身にまとって控え室から出てみる。

正面から 私と目を合わせまいとする、

精神的に大人な女子高生を発見。

もしかしたら彼女らもコスプレ衣装待ちであろうか。

では控え室を譲ろう。

さっさと私らは撮影に行こうではないか。


私達は美白のプリクラで撮影する事を

心に決めていた。色んな種類があり過ぎて 

どれがいいのか分からん。しかし、写るのは私ら。

どうせ大きな変化もないであろう、修正をする必要もなかろう。

目の前にあるプリクラ機械に入る。

そう言えば、10年くらい前にプリクラに居た、

黒い悪魔みたいなキャラは、何処へ行ったのだろう?

よく私に「ちょっとそこのお姉さん

プリクラしない?」と声をかけていた男子悪魔である。

「え?そんなの居たっけ?」と言うKちゃんは、もう100円玉を入れている。

余談だが、今のプリクラは 何処も400円である。

さて。ライトをガンガン浴びて、動くカメラを固定し、全身を撮る。

「スカートの下のデニム、見えている〜・・」そう言いながらKちゃんは

落書きペンやスタンプを押して、下半身周辺を修正する。

私は「みかりん、ゴスロリ」と書いてみる。またもや この字は

必要以上に引きつっている・・。

男子悪魔キャラの事も忘れ、二人でプリクラに日付を書いている。

仕上がったプリクラを見て「あれ?なんかあまり笑えないね」と言い合う。


「じゃあ、もう一枚撮ろう!」

今度はコスプレをチェンジである。控え室に行くのも面倒なので

私達は、この美白プリクラ機械内で着替える事にする。

いわば、これは「ナマ着替え」である。私はゴスロリ衣装を脱ぎ

頭の小物を外す。余談だが、脱ぐ時は上半身はさっさと脱ぐ方が

キレイに決まると思う。髪をなびかせると より効果的である。


女性諸君よ、嘘だと思うなら男の前でやってみるが良い。

さて。Kちゃんの女子高生ルックとチェンジである。

「ちょっと〜、私も これを頭に付けるの?」とKちゃんが言う。

勿論である。この小物をつけなくては、

単なる私服になってしまうではないか。

再びプリクラ撮影開始。こんな事に

一生懸命ポーズを作っているのだから

女とは、面白い生き物である。


2回目のプリクラ。仕上がりを見て私は大爆笑した。

違和感ありあり、「もう、私どうしよう・・・」と言う不安げなKちゃんの

表情が、なんとも言えないほど光っているのである。

一方、女子高生スタイルの私は

アホっぽく頭にリボンを描いてみた。

ごく普通の出来具合だが、

隣にいる、Kちゃんの存在感のお陰で
「生きているプリクラ」として

貴重な作品となった。


結論。コスプレとは

「自分らしくない自分」になる事で、

周りに幸せの微笑みを運ぶ、トリックだと思った。